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遠謀9

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 思ったより列強の攻めは強い。第2アユタヤは遅すぎたくらいだ。だが辛うじて租界地政策が功を奏しているようだ。1週間で荷の準備は出来た。今朝王宮前の広場で王に挨拶をして出発だ。今回は茉緒が隊列を率いていく。屯田兵は3千参加することになった。これに商人隊が千付いていく。
 王に茉緒が別れを告げていると、隊列の中から籠が現れる。
「儂も行くぞ」
 籠から出てきたのは宗久だ。後ろに百ほどの荷隊が続いている。
「第2のアユタヤか。楽しそうだ。残っている豊臣の財宝を持ってきたぞ」
 同じことを考えていたのだ。租界地は人が溢れている。列国は不思議そうにこの光景を見詰めている。九郎の報告ではまだ列国はこの行動の意味を知らないでいるようだ。
 長旅の末カトマンズの都に入る。ハル王女が自ら女人隊を連れて出迎える。
「わざわざ」
「今晩は王宮にお泊りを?」
「宗久を合わせます。ヒデは?」
「向こうに行ったきりです」
 茉緒は商人隊を商館に入れ、屯田兵はそのまま開拓地に移動させる。夜には王の主催で晩餐が開かれる。茉緒は今回は近衛軍の隊長としてハル王女の隣に座る。
「宗久さまは昔からの茉緒の知り合いだとか?」
「そうですよ。昔はそれは恐ろしい忍者でした」
「それ程?」
「信長にも抱かれた忍者ですよ」






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