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嵐13  ≪完≫

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 馬を乗り継いで茉緒はアユタヤに到着した。密かに王宮に入ってリーにサンベット王と九郎を呼んでもらった。2人が揃うまでリーと話をする。
「限界だったのだな?」
「すいません。列強が組むとは思わなかったのです」
「影武者は?」
「今はほとんど彼が表に出ています」
 下忍の半分を古い造船所に行かせ残りをこの部屋の警備に当てた。夜になってサンベット王と九郎が姿を見せた。街はイギリスの兵が警備している。王宮内にイギリスの総監の執務室と私室がある。
「久しぶりだな」
 王が握手を求める。ずいぶん疲れた顔をしている。九郎は今は茉緒と同じ指名手配される身になっている。ゴラクの小頭に変装している。
「下忍はいくら残っている?」
「20人ほどです」
 九郎が答える。
「連絡用に5人を残しカトマンズに連れて行く。近衛軍はどれほど集められる?」
「軍としておけないので屯田兵として今は3千が動かせます」
「私は連れて行ってもらえないのか?」
 王が寂しそうな顔で言う。
「いえ、今度は一緒です」
「ハル王女と一緒になれるのだな?」
「それはだめです。ハル王女は今年中に王女となります。私が時々抱かれてあげます。王宮も出来上がっていますよ。リーには迷惑をかけるな」
 リーの目に涙が溢れている。今晩は一緒に寝よう。
「明日の夜には出発するぞ」
 これからアユタヤも影武者になる。










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