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拮抗5

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 合図を送った。夕食後に王様を塔から救い出す。茉緒はそのために塔の中に2日も王様と一緒にいた。それでチャクラバットとの今までの経緯の話も聞いた。彼は20年前にもビルマの軍を引き入れて先王から王の座を奪おうとした。この時は親衛隊長が防いでくれたのだが、残念ながら今はその地位を奪われてしまっている。
「食事を下げに参りました」
 リーだ。後ろに王子もいる。
「兵は眠らしたよ」
 合鍵で農夫に着替えた王様を外に出す。リーが炊事場の裏を抜けて汚物を出す出口に着く。すでに合図は出ていて街中が大騒ぎになっている。小舟がすでに着いている。
「今回は街の中の堀を抜けるから菰の中に入っててください」
 ヒデだ。彼はどこにでも出入りする。ゆっくり小舟が進む。確かに至る所で喧嘩の声がしている。街の至る所にも煙が上がっている。警備兵が走り回っている。
「この騒ぎでは警備隊しか動きません。ゴラクが鼻薬をかかせているので捕まえる気はないのです」
「親衛隊は?」
「王宮の中です」
 ヒデが菰に向かって説明する。堀の周りに人が群がっている。茉緒は剣を握る。
「心配しないであれは商人隊です。あの人ごみに交じって部屋に入るのです」
「茉緒さまどうぞ」
 声をかけられて部屋の通路に入る。壁が開いて地下に降りる。
「王様ご苦労様です」
 ゴラクが頭を下げる。
「久しぶりだな。今回は世話をかける。でもこの娘は誰だ?」
「日本から来た忍者のお頭です」
「儂がもう少し若ければ・・・」
「殺されますよ」
 ゴラクと王様が笑っている。







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