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悪夢再び
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「神殿の食堂で歓迎会をするだと?」
料理長は切れ味の良さそうな包丁を光らせて僕たちを睨みつけている。
いつもの酒場『ル・イーダ』を貸切にする予定だったが、ルナが神殿から権限的に離れられないということで、神殿内の食堂を借りようということになった。
ジョーが
『神殿の食堂は俺の行きつけだから任せとけ!!』
と言ったので、
(そもそも神殿の食堂は神殿に勤めている全員が行きつけである)
のこのこ着いてきたらこの有り様だ。
「しかも、酒を出せだと…?」
「おう!頼むぜ!!」
この雰囲気の中で普通で居られるジョーの神経の太さは尊敬に値する。
料理長はため息をひとつついた。
「ダメだダメだ!食堂を宴会に使うなど以ての外だ!しかも聖なる神殿内で酒なんて言語道断だ!!バカかコノヤロウ!」
(ぐうの音も出ないな…)
「そこをなんとか!!俺達の仲じゃねーか!」
「何言ってんだ!プライベートで全く付き合いねーじゃねーか!!」
(ジョーよ…何故それでいけると思ったのか)
「ジョー、諦めよう。グラシエスさんは個人的にまた飲みに誘ったらいいじゃないか。」
僕はジョーに宥めるように言った。
するとジョーは真っ赤になって反論した。
「バカ!個人的に誘ったり出来るわけないじゃないか!!」
「なんでだよ!」
「断られたらどうするんだよ。」
「いやいやいや、え?そんなキャラ?」
「ジョーは恋愛に関してはからっきしなんだ。」
カズヤが会話に入って来た。
「からっきしって何だよ!」
「惚れっぽいくせに告白も出来ない。それをからっきしと言わずして何と言うのだ。」
「なんだとーー!!」
ジョーとカズヤがなんだか揉めだしたので、僕はそちらは放っておいて、料理長に尋ねてみた。
「どうしても無理なんだろうか?」
すると料理長は
「そもそも他の用途に食堂を利用したり酒を出したりする権限を俺は持ってないんだよ。」
(また権限か…)
「じゃあ、権限を持ってる偉い人に許可を貰えば良いのか。」
「まあな。」
(うーん、じゃあ…)
交渉の末、神殿の食堂にてグラシエスの歓迎会が無事開催出来ることになった。
歓迎会当日。
「よく許可を貰えたな!どうやったんだ!?」
「酒も用意されてるし!!」
ジョーもカズヤも驚きを隠せない様子だ。
「まあ…後で分かるよ。それより、グラシエスは?」
「もう来るはず…あ!」
グラシエスが現れた。
「可憐だ…!」
ジョーはもうグラシエスのドレス姿に釘付けだ。
「ルナも来るんだろ?」
「仕事が終わり次第来るって。」
グラシエスにメロメロになっているジョーは放っておいて、僕とカズヤはグラスを合わせる。
すると、背後から…
「ルクス!来たぞ!!」
その声に振り返るとそこには幼女が。
「ルクス、この子は?」
カズヤが訝しげに僕と幼女を交互に見て言った。
「創始者ソルだよ?」
「ソル?」
カズヤは幼女をじっと見詰める。
ステータスを確認している。
「久しぶりだなカズヤ!オフラインで会うのは何年ぶりだ?」
「…!!」
カズヤが見た事も無い顔で後退る。
「そ…そそそそそそそ!!」
(そそそそ?)
「そそそそそそそそそ!?」
(そを何回言う気だ?)
「創始者ソル様ーーーー!?」
(ステータスの確認が出来たんだな)
ハッとこちらを向き直り、
「な…?」
カズヤが僕に目で話しかける。
(何故…?かな)
「いや、食堂使うのに権限が要るって言うから、ソルに相談したら、参加させてくれるなら許可出すって言うんで…」
そう答えた。
「驚かせて悪いな。」
ソルがカズヤに微笑みかけながら言った。
「いやいやいやいや、滅相もございません!!わざわざお越しいただき恐悦至極でございますーーー!!」
「ハッハッハ」
「ソル様、アバターの雰囲気を随分お変えになったのですね。」
(雰囲気どころじゃないだろ)
「ルクスが著作権云々うるさいからな。」
「なんだと!?ルクス、貴様!!」
(え、僕のせい?)
「ハッハッハ!積もる話は飲みながらしようじゃないか。」
「はい!」
(カズヤ、喜んでるみたいだ)
2人がテーブル席に向かったのを見て、ホッとして、僕は壁によりかかった。
(ルナもそろそろ来るかな?)
そう思っていると、グラシエスがこちらに近付いてきて、グラスを僕にひとつ渡した。
「歓迎会してくれるなんて、嬉しいわ。あなたにも歓迎されてるってことかしら?」
(彼女の正体を知っている今となっては素直に歓迎とも言えない訳だが…)
グラシエスはシラっと腕に手を回してくる。
密着度が凄い。
(おいおい…)
(こんなとこルナに見られたら…)
グラシエスは意味深な微笑みで僕を通り越した向こうを見ていた。
振り返ってみると…
「ルクス~~~!!」
鬼の形相のルナが居た!!
「いや、違う、これはたまたま!」
「じゃあまた後でね。」
グラシエスは笑いながらその場を去る。
「ルクス、説明して貰えるかしら?」
「いや、あの、その!」
取り残された僕の足元に幼女の姿のソルが。
「お兄ちゃん、抱っこして?」
(NOーーーーーー!!)
「ルクス、そんな子供にまで手を出して!?」
「違うんだ、これには事情がーーー!!」
(コイツらーーー!!)
(最悪だーー!!)
料理長は切れ味の良さそうな包丁を光らせて僕たちを睨みつけている。
いつもの酒場『ル・イーダ』を貸切にする予定だったが、ルナが神殿から権限的に離れられないということで、神殿内の食堂を借りようということになった。
ジョーが
『神殿の食堂は俺の行きつけだから任せとけ!!』
と言ったので、
(そもそも神殿の食堂は神殿に勤めている全員が行きつけである)
のこのこ着いてきたらこの有り様だ。
「しかも、酒を出せだと…?」
「おう!頼むぜ!!」
この雰囲気の中で普通で居られるジョーの神経の太さは尊敬に値する。
料理長はため息をひとつついた。
「ダメだダメだ!食堂を宴会に使うなど以ての外だ!しかも聖なる神殿内で酒なんて言語道断だ!!バカかコノヤロウ!」
(ぐうの音も出ないな…)
「そこをなんとか!!俺達の仲じゃねーか!」
「何言ってんだ!プライベートで全く付き合いねーじゃねーか!!」
(ジョーよ…何故それでいけると思ったのか)
「ジョー、諦めよう。グラシエスさんは個人的にまた飲みに誘ったらいいじゃないか。」
僕はジョーに宥めるように言った。
するとジョーは真っ赤になって反論した。
「バカ!個人的に誘ったり出来るわけないじゃないか!!」
「なんでだよ!」
「断られたらどうするんだよ。」
「いやいやいや、え?そんなキャラ?」
「ジョーは恋愛に関してはからっきしなんだ。」
カズヤが会話に入って来た。
「からっきしって何だよ!」
「惚れっぽいくせに告白も出来ない。それをからっきしと言わずして何と言うのだ。」
「なんだとーー!!」
ジョーとカズヤがなんだか揉めだしたので、僕はそちらは放っておいて、料理長に尋ねてみた。
「どうしても無理なんだろうか?」
すると料理長は
「そもそも他の用途に食堂を利用したり酒を出したりする権限を俺は持ってないんだよ。」
(また権限か…)
「じゃあ、権限を持ってる偉い人に許可を貰えば良いのか。」
「まあな。」
(うーん、じゃあ…)
交渉の末、神殿の食堂にてグラシエスの歓迎会が無事開催出来ることになった。
歓迎会当日。
「よく許可を貰えたな!どうやったんだ!?」
「酒も用意されてるし!!」
ジョーもカズヤも驚きを隠せない様子だ。
「まあ…後で分かるよ。それより、グラシエスは?」
「もう来るはず…あ!」
グラシエスが現れた。
「可憐だ…!」
ジョーはもうグラシエスのドレス姿に釘付けだ。
「ルナも来るんだろ?」
「仕事が終わり次第来るって。」
グラシエスにメロメロになっているジョーは放っておいて、僕とカズヤはグラスを合わせる。
すると、背後から…
「ルクス!来たぞ!!」
その声に振り返るとそこには幼女が。
「ルクス、この子は?」
カズヤが訝しげに僕と幼女を交互に見て言った。
「創始者ソルだよ?」
「ソル?」
カズヤは幼女をじっと見詰める。
ステータスを確認している。
「久しぶりだなカズヤ!オフラインで会うのは何年ぶりだ?」
「…!!」
カズヤが見た事も無い顔で後退る。
「そ…そそそそそそそ!!」
(そそそそ?)
「そそそそそそそそそ!?」
(そを何回言う気だ?)
「創始者ソル様ーーーー!?」
(ステータスの確認が出来たんだな)
ハッとこちらを向き直り、
「な…?」
カズヤが僕に目で話しかける。
(何故…?かな)
「いや、食堂使うのに権限が要るって言うから、ソルに相談したら、参加させてくれるなら許可出すって言うんで…」
そう答えた。
「驚かせて悪いな。」
ソルがカズヤに微笑みかけながら言った。
「いやいやいやいや、滅相もございません!!わざわざお越しいただき恐悦至極でございますーーー!!」
「ハッハッハ」
「ソル様、アバターの雰囲気を随分お変えになったのですね。」
(雰囲気どころじゃないだろ)
「ルクスが著作権云々うるさいからな。」
「なんだと!?ルクス、貴様!!」
(え、僕のせい?)
「ハッハッハ!積もる話は飲みながらしようじゃないか。」
「はい!」
(カズヤ、喜んでるみたいだ)
2人がテーブル席に向かったのを見て、ホッとして、僕は壁によりかかった。
(ルナもそろそろ来るかな?)
そう思っていると、グラシエスがこちらに近付いてきて、グラスを僕にひとつ渡した。
「歓迎会してくれるなんて、嬉しいわ。あなたにも歓迎されてるってことかしら?」
(彼女の正体を知っている今となっては素直に歓迎とも言えない訳だが…)
グラシエスはシラっと腕に手を回してくる。
密着度が凄い。
(おいおい…)
(こんなとこルナに見られたら…)
グラシエスは意味深な微笑みで僕を通り越した向こうを見ていた。
振り返ってみると…
「ルクス~~~!!」
鬼の形相のルナが居た!!
「いや、違う、これはたまたま!」
「じゃあまた後でね。」
グラシエスは笑いながらその場を去る。
「ルクス、説明して貰えるかしら?」
「いや、あの、その!」
取り残された僕の足元に幼女の姿のソルが。
「お兄ちゃん、抱っこして?」
(NOーーーーーー!!)
「ルクス、そんな子供にまで手を出して!?」
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(コイツらーーー!!)
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