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月夜

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歓迎会は続いている。



あの後、怒りに震えるルナをジョーやカズヤが間に入って宥めてくれて、なんとか事なきを得た。

(グラシアスとソルのお陰で散々だ…)

僕は壁にもたれてみんなの様子を見ている。


ルナも久しぶりに大勢と話せて楽しそうだ。

(ここに来る人間は全員がルナから最初にこの世界の説明を受けるけど、その後は神殿で働いていても話す機会は少ないからな…)

(ちょっとした同窓会みたいなのかもな)

(喜んでくれてよかった)

(喜ぶ?ちょっと待て、ルナはNPCだぞ?感情なんて…)

(でも…)

「ルクス!」

「なんだよ、グラスが空じゃねーか!」

上機嫌になったジョーが酒をついでくれる。

「サンキューな、ルクス!」

「グラシアスと少しは話せたか?」

「まぁ、ボチボチな!」

ジョーは照れて頭をかいた。

「彼女無口だけど、こちらの話をなんでも聞いてくれて微笑んでくれるんだ。その笑顔が女神様みたいでなぁ…」

「…よかったな。」

(仮想世界は現実世界とは違うけれど確かに感情は存在する)

(本当に?)

(僕の脳がそう感じているだけでは無いのか?)


乾杯をしながら、感慨深そうにジョーが言った。

「本当にルクスには助けて貰ってばかりだな。」

「今日はやけにしおらしいんだな。」

「茶化すなよ。」

ジョーと雑談を交わす。

ジョーは元の世界ではどんな人物だったんだろうか。元の世界でもし出会っていても友人になっただろうか。

考えても仕方ないことを何となく思った。


「あ!グラシアスのグラスも空いてる!ちょっと行ってくる!!」


そう言ってジョーはバタバタとグラシアスの方へ向かっていった。

(グラシアスのグラスって早口言葉みたいだな)

「なんだよ、忙しないやつだな‪w」

(それでも…)

僕の中の答えなんて出なさそうな疑問が頭の中でモヤモヤしたまま、グラスの中の酒を見詰めていた。


「ルクス」

ニヤニヤして近付いてくる。

今度は幼女だ。

「今日は許可が貰えて助かりました。」

「いやいやなんのなんの!もっと感謝してくれても良いのだぞ?」

「相変わらずのキャラですね。」

「そんなに褒めるな。」

(褒めてませんよ)

(なんだとーー!!)

(心に直接話しかけるのやめい!!)


「まあ、なんだ。こちらも久しぶりに人と話せて実に楽しい。」

「また誘いますよ。カズヤが喜びますし。そういえばカズヤは?」

ソルにベッタリだったカズヤの姿が近くに無い。

「アイツは酒が弱いな。潰してきたよ。」

幼女が悪党顔で笑っている。

(やれやれ…)

「ルクス、この世界はどうだ?」

「楽しいですよ。仕事して酒飲んで。」

「…そりゃ良かった。」

ちょっと他人事のように振る舞うソルだが、彼がこの世界を作ってくれたから、こうしてみんなと過ごせて毎日楽しいんだよな。

(ずっとこうして居たいと思うほどに…だけど)

僕は意を決して言った。

「ソル、僕が居るせいでもしこの世界に影響が出てるなら…」

「ルクス、まだ調査結果は出ていないよ。」

「でも…」

「ルクスは優しいんだね。」

ソルは幼女のままなのに大人の表情で微笑んで窓から見える空を指さした。

「今日は満月だね。」

「そうですね。」

綺麗な月夜だ。

現実世界と同じく満ち欠けする月。

(ソルにしてはロマンチックな仕様だ)

現実世界のことは憶えてないけど、僕は月が好きだった気がする。

「私はそろそろ帰るとしようかな。」

「あ…」

ソルには聞きたいことがたくさんあるのに考えがまとまらない。

「慌てて答えを出さなくてもいいさ。」

また心を読まれたのか、何か察したのかは分からないが…

「またな。」

幼女の後ろ姿に大人の男性の後ろ姿がダブって見えた。

(ソル…)

僕は酔い醒ましに庭に出てみた。

月のあかりでかなり明るい。

「ルクス」

後ろからルナの声がした。

「今日はありがとう。私が参加しやすいように神殿の食堂を使う許可を貰ってくれたんでしょ?なのに…」

振り返るとルナが月あかりに照らされてキラキラしていた。

「私、怒りっぽくて…」

(ウサギと月か…)

銀の髪がキラキラとなびく。

僕はルナに見蕩れていた。

この綺麗な世界を、ルナの居るこの世界を守りたい、そう思った。


「ルクス?」

「月が綺麗だね。」

「…そうですね。」

ルナは照れたような笑顔を見せた。

僕らはしばらく月を見上げていた。


「またこうして一緒に月を見よう。」


なんだか懐かしい気持ちで胸がいっぱいになって実はちょっと涙が出たんだけど逆光でルナには見られてないはず。多分。



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