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ニューフェイス

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「歓迎会楽しかったなぁ。」

ジョーが僕の部屋でため息をついてる。

「仕事中だろ?早く戻れよ。」

「お前だって仕事中だろ!?」

「今日は調べ物があって半休貰ったんだよ!」

ルナに僕のステータスを見てもらったところPPが思いの外貯まっていたのでその全てをいくつかの権限の購入に充てた。

そのひとつが図書館へのアクセスだ。
ありとあらゆる本がデータ化してあり、直接赴き手に取ることもできるし、自宅に居ながら閲覧も可能だ。

(今日は自分なりに色々調べようと思ってたのに…)

「どうしたんだよ、ジョー。お前、仕事は好きなんだろ?」

「仕事はそりゃ好きなんだけど…」

「なんだよ、歯切れの悪い。」

「いや、新人がさぁ…」

「新人?」

「いやぁ、それがなぁ。」

「新人がどうしたんだよ。」

「なんていうかさぁ。」

「…」

要領の得ない話をいつまでも聞いている暇は無いので、直接会ってみることにした。

普段、神殿の騎士達は詰所に居るか練習場に居る。とりあえず練習場に行く。

このパーフェクト・ワールドがオープンしたのは100年以上前。ジョーはその初期の頃に入ってるから、なかなかのベテランだ。

その上、初期は人数制限もあったせいでこの世代は人数が少ないらしい。

だから、レア感もあって後輩達に尊敬されて敬われてると聞いていた。
(この前の歓迎会でもそんな感じだったしな)

そう聞いていたのだが。

どうも雲行きが怪しいらしい。

黒髪に赤い瞳。

小柄な少年。

ジョーの言う新人の風貌はそんな感じだ。

ジョーが現れても挨拶もしない。

僕は顔見知りの騎士にだいたいの事情を聞いた。

なんと…

練習試合でジョーがあの新人に負けたと言うのだ。


(ジョーよ…それで居心地悪くなって僕のところに避難してたのかよ…)

僕は情けなくて頭を抱えた。

「しかし…ジョーを倒すとは」

ジョーはバツが悪そうに

「いや、凄く戦いにくかったんだよ、何だかこう…裏をかかれてばかりというか…」

「百戦錬磨なんだろ?それくらい何とか出来ただろうに。新人だからって相手をなめてたんじゃないのか?」

「まぁ、それもあるけど…」

ジョーはすっかり弱腰だ。

新人の様子を窺うと、バッチリ目が合ってしまった。

「あんた、誰?」

新人から話しかけてきたぞ。

「あー、僕は部外者で…」

「ルクスは戦闘魔法の使い手だぞ!」

ジョーが僕のセリフを遮って割り込んできた。

「へえ…」

新人はニヤリと笑った。

(ジョーのせいで興味を持たれてしまったじゃないか)

「あんた、名前は?」

「ルクスだ!」

僕が答える前にジョーが答えてしまった。

「ルクス…?知らない名前だな。」

(僕もキミのことは知らないけど)

「僕の名前はレン!ルクス、お手合わせ願おう!!」

(ほらきたー)

僕はジョーを睨んだが、ジョーの方はワクワクしているようだ。

(完全な巻き込まれ事故!)

「ちょっと待て、僕は騎士じゃないから剣は使えないよ?」

「構わない。では魔法で勝負だ!」

(めんどくさー!)


「では、この的に向かって戦闘魔法で攻撃してみてくれ。攻撃が決まるとその攻撃力が数値で表示されるぞ。」

嬉しそうに説明をしているジョーの横に
直径20cmくらいの的らしい的が立っている。

(的らしい的だなぁ)

「なるほど。その数値が高い方が勝ちってわけか。」

「先行はどちらにする?」

レンが1歩前に出た。

「僕がいこう。ルクスはどうやらこの的を使うのは初めてのようだしね。」

「あー、そうして貰えると助かる。」

「僕の攻撃を見て戦意喪失してしまうかもしれないけど。」

「ハハ…」

レンが的の前に立つ。

(お手並み拝見)

レンは何やらブツブツと詠唱を始める。

「ブリザード!!」

(何だと!?)

凄まじい氷の礫が的を襲う!

的の横に数字が出る。

「360!!」

「おおお…」

周りがザワザワしている。

確かに派手な技だ。

数値もきっと高いのだろう。

「では次、ルクス!」

僕は的の前に立った。

(的だよなぁ…)

僕は修復の魔法の時のようにワードを脳内で組み合わせてイメージを増幅していく。

(最初は詠唱した方が良いってカズヤは言ってたけど恥ずかしいんだよな)

それでも何とか形になってきたので僕は手を銃のようにして魔法を撃ってみた。

バン!!

(ん?何だか周りが静かだな)

「ルクス、終わったのか?」

不安げなジョーが的に近付く。

「ああ。点数出たか?」

「け、計測不能になってる…」

「なんだ、壊れたのか?」

ザワザワし始めた。

レンが走り寄ってくる。

「どういうことだ!」

「どうもこうも…」

「魔法は発動したのか?音しか聞こえなかったけど。」

「ちゃんと発動してるだろ?ほら、的の真ん中。」

「…?」

「穴があいてるーーー!?」

「いやいやいや、おかしいだろ!?」

「この的はどんな強い魔法が当たっても形状を変えたりしないんだぞ!?」

ザワザワが収まらない。

「まー、計測不能ってことは僕が負けってことだろ?もう戻っていい?」

(僕は勝負より今日の半休の方が大事なのだ)

「待て!!」

レンはわなわなと震えている。

「寒いのか?」

「違うわ!!」

「あ、そういえば。なんであんな小さい的に対してブリザードなんだ?威力が下がるだろ?」

「ブリザードは僕が取得してる1番の大技だぞ!」

「いや、だから、ブリザードだとエネルギーが分散するでしょ?範囲魔法はどうしても威力が減るから。」

「な…!?そんなの攻略本に載ってないぞ!?」

「いやいや、攻略本に載ってなくてもそんなの当然…」

(ん?攻略本?)

「そもそも攻撃魔法の使い手だというお前の名前も載ってなかったし!」

「この世界の攻略本…出てるの?」

「公式じゃないけど出てるよ。元の世界に居る時どれだけ読み漁ったか!」

「なるほど。それでジョーの弱点も知ってたと…」

「あ!」

レンが口を抑えた。

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