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断絶
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「アップデートって?」
「…光、そろそろ時間みたい。」
「え?」
夢から醒めたように僕は意識を取り戻した。
「ルクス!!」
急に意識を失って倒れた僕の心配をしてジョー達が僕を囲んでいた。
「大丈夫か!?」
僕はハッキリしない頭を振りながら、先程までのルナとの会話が夢じゃないことを確信していた。
ジョーに抱えられながら立ち上がる。
そんな僕らの前に魔法陣のような物が現れて、そこから人影が現れた。
「記憶が戻ったか。」
幼女姿のソルだ。
(…何故また幼女なのか)
「ソル…」
「記憶が戻ってすぐで悪いが緊急事態だ。」
空気がピリッとする。
(ああ、とうとう来たのか…)
僕はソルがこれから告げる内容を現実世界に居る時から予想していた。
(ルナに記憶を消されるのは予想外だったが)
「現実世界の政府が政権交代することになった。」
「え、それって…」
カズヤはそれを聞いてハッとしたようだ。
ジョーはピンと来てないらしい。
レンとビオレッタも不思議そうな顔をしている。
「新しい与党は仮想世界反対派だ。」
そう、僕がまだ現実世界に居た頃には既に情勢は不安定だった。
政権が交代すれば、パーフェクト・ワールドを保護する契約も無くなり、繋いでいる脳の安全も保証出来ない。もし、脳が安全であったとしても仮想世界が無くなれば…身体を持たない脳だけが何処にも繋がらず、単体で存在することになる。
夢を見たりはするのだろうが、自分の意思で動き回れたこれまでの意識とは違ってくる。
だから、仮想世界の住民の意識を守る為に僕はある方法を考えていた。
昔、僕が不治の病に侵されていた時に、もし身体が朽ちてしまっても、脳が死んでしまっても生きられるように、自分の記憶や意識を仮想世界に移植することを考えていた。理論上では完成していた。
アレを使えないだろうかと…
(その為にこの世界に入ったというのに…)
(まさか記憶を失うとは…)
(記憶を失っていたからこそ、この世界では楽しく過ごせたんだけど…)
この世界を救いに来たというのに、何のために来たというのか。
僕は頭を抱えた。
「大丈夫か、ルクス!」
ジョーが僕の顔を覗き込む。
(いったいどうすれば…)
ソルが話を続ける。
「現行政府の与党が仮想世界反対派になったということは、このパーフェクト・ワールドは政府の保護から外れ、逆に閉鎖を余儀なくされるだろう。」
「閉鎖だって!?」
「閉鎖ってどういうことです!?」
ジョーもレンも深刻な状態なのは分かってきたようだ。
「それぞれの脳とこの世界を切り離すってことだよ。」
カズヤが悔しそうに言う。
「え、そんなことになったら、俺達はどうなるの?」
「脳と直接繋げる仮想世界は今のところこのパーフェクト・ワールドだけだから、脳はもう何処にも繋がれない。」
「そんな…」
ジョーはビオレッタの方に向き直り言った。
「俺が居なくなったらビオレッタはどうなる?」
「それは政府次第だろう。閉鎖で済まなくて仮想世界ごと消滅させられる可能性も…」
バン!!
ジョーがカズヤに掴みかかる。
咄嗟にレンと僕がジョーを抑え込む。
「ジョー、カズヤのせいじゃないんだ。」
「わかってるさ!そんなこと!!」
ジョーの感情の矛先がたまたまカズヤに向かっただけだ。
「何とかならないのかよォ…天才児。」
ジョーがこちらを向かずに呟く。
僕は思わずこう言った。
「方法なら、ある。パーフェクト・ワールドをネットワークから切り離し、現実世界から隔離させる。」
「でもそれじゃあ、ビオレッタを1人にしちまう…」
「仮想世界に意識の移植をする。」
「え、そんなこと出来るのか!?」
「理論上では…でも、これは僕の頭の中の理論だけで実証実験はまだなんだ。」
ジョーが言葉を無くす。
静まり返った中、幼女の声が響く。
「実証実験は済んでるよ。」
ソルが意味深な笑みを浮かべている。
「ルクス、申し訳無いけどお前の理論、私が実証して既に実装させてもらってるんだよ?」
「え!?」
「もうとうの昔に脳は手放している。」
「えーーーーっ!」
「いや、初期の頃はまだ脳の保存技術が完璧じゃなくてMY頭脳が激ヤバな状態になっちゃってさー!そんな時、お前がシステム内に隠し持ってた理論をさぁ、使わせてもらったというわけですよ。」
「じゃ、じゃあもう脳は…」
「とうの昔にお星さまに!キラッ☆」
僕らは一斉にツッコんだ!
「いやいやいやいやいや」
「話の内容と会話のトーンが噛み合ってない」
「キラッ☆じゃない」
「じゃあいったい何歳なんだよ」
ツッコミ疲れてハアハア言いながら、カズヤは更に聞いた。
「その意識は本物の意識なんですか?」
うーん、と考えこむフリを少ししてからソルは答える。
「分からない!」
「分からないって…」
「だってそうでしょ?俺は自分のこと俺だと思ってるけど実は違うかもなんて分からないでしょ?」
「確かに…」
「脳がくっついて無いと人格じゃないってんなら、ビオレッタやグラシアスやルナは人格として認められない?」
「…それは」
「それに俺は、自分の意識だとか魂のありどころなんてどうでもいい。」
「どうでもいいことは無いでしょう。」
(ソルの口調がすっかり俺になってるなぁ)
「俺はこの世界を維持して守っていくことの方が大事なんだ。それが叶うなら俺が俺かどうかなんてどうでもいい。そんなこと些細なことだ。」
「ソル…」
「ソル様…」
「魂が本当にあるとするならば、きっとここにあるんだろうさ!」
ソルはそう言って自分の胸を叩いてみせた。
その姿はかっこよかった。
(幼女だけどな…)
「…光、そろそろ時間みたい。」
「え?」
夢から醒めたように僕は意識を取り戻した。
「ルクス!!」
急に意識を失って倒れた僕の心配をしてジョー達が僕を囲んでいた。
「大丈夫か!?」
僕はハッキリしない頭を振りながら、先程までのルナとの会話が夢じゃないことを確信していた。
ジョーに抱えられながら立ち上がる。
そんな僕らの前に魔法陣のような物が現れて、そこから人影が現れた。
「記憶が戻ったか。」
幼女姿のソルだ。
(…何故また幼女なのか)
「ソル…」
「記憶が戻ってすぐで悪いが緊急事態だ。」
空気がピリッとする。
(ああ、とうとう来たのか…)
僕はソルがこれから告げる内容を現実世界に居る時から予想していた。
(ルナに記憶を消されるのは予想外だったが)
「現実世界の政府が政権交代することになった。」
「え、それって…」
カズヤはそれを聞いてハッとしたようだ。
ジョーはピンと来てないらしい。
レンとビオレッタも不思議そうな顔をしている。
「新しい与党は仮想世界反対派だ。」
そう、僕がまだ現実世界に居た頃には既に情勢は不安定だった。
政権が交代すれば、パーフェクト・ワールドを保護する契約も無くなり、繋いでいる脳の安全も保証出来ない。もし、脳が安全であったとしても仮想世界が無くなれば…身体を持たない脳だけが何処にも繋がらず、単体で存在することになる。
夢を見たりはするのだろうが、自分の意思で動き回れたこれまでの意識とは違ってくる。
だから、仮想世界の住民の意識を守る為に僕はある方法を考えていた。
昔、僕が不治の病に侵されていた時に、もし身体が朽ちてしまっても、脳が死んでしまっても生きられるように、自分の記憶や意識を仮想世界に移植することを考えていた。理論上では完成していた。
アレを使えないだろうかと…
(その為にこの世界に入ったというのに…)
(まさか記憶を失うとは…)
(記憶を失っていたからこそ、この世界では楽しく過ごせたんだけど…)
この世界を救いに来たというのに、何のために来たというのか。
僕は頭を抱えた。
「大丈夫か、ルクス!」
ジョーが僕の顔を覗き込む。
(いったいどうすれば…)
ソルが話を続ける。
「現行政府の与党が仮想世界反対派になったということは、このパーフェクト・ワールドは政府の保護から外れ、逆に閉鎖を余儀なくされるだろう。」
「閉鎖だって!?」
「閉鎖ってどういうことです!?」
ジョーもレンも深刻な状態なのは分かってきたようだ。
「それぞれの脳とこの世界を切り離すってことだよ。」
カズヤが悔しそうに言う。
「え、そんなことになったら、俺達はどうなるの?」
「脳と直接繋げる仮想世界は今のところこのパーフェクト・ワールドだけだから、脳はもう何処にも繋がれない。」
「そんな…」
ジョーはビオレッタの方に向き直り言った。
「俺が居なくなったらビオレッタはどうなる?」
「それは政府次第だろう。閉鎖で済まなくて仮想世界ごと消滅させられる可能性も…」
バン!!
ジョーがカズヤに掴みかかる。
咄嗟にレンと僕がジョーを抑え込む。
「ジョー、カズヤのせいじゃないんだ。」
「わかってるさ!そんなこと!!」
ジョーの感情の矛先がたまたまカズヤに向かっただけだ。
「何とかならないのかよォ…天才児。」
ジョーがこちらを向かずに呟く。
僕は思わずこう言った。
「方法なら、ある。パーフェクト・ワールドをネットワークから切り離し、現実世界から隔離させる。」
「でもそれじゃあ、ビオレッタを1人にしちまう…」
「仮想世界に意識の移植をする。」
「え、そんなこと出来るのか!?」
「理論上では…でも、これは僕の頭の中の理論だけで実証実験はまだなんだ。」
ジョーが言葉を無くす。
静まり返った中、幼女の声が響く。
「実証実験は済んでるよ。」
ソルが意味深な笑みを浮かべている。
「ルクス、申し訳無いけどお前の理論、私が実証して既に実装させてもらってるんだよ?」
「え!?」
「もうとうの昔に脳は手放している。」
「えーーーーっ!」
「いや、初期の頃はまだ脳の保存技術が完璧じゃなくてMY頭脳が激ヤバな状態になっちゃってさー!そんな時、お前がシステム内に隠し持ってた理論をさぁ、使わせてもらったというわけですよ。」
「じゃ、じゃあもう脳は…」
「とうの昔にお星さまに!キラッ☆」
僕らは一斉にツッコんだ!
「いやいやいやいやいや」
「話の内容と会話のトーンが噛み合ってない」
「キラッ☆じゃない」
「じゃあいったい何歳なんだよ」
ツッコミ疲れてハアハア言いながら、カズヤは更に聞いた。
「その意識は本物の意識なんですか?」
うーん、と考えこむフリを少ししてからソルは答える。
「分からない!」
「分からないって…」
「だってそうでしょ?俺は自分のこと俺だと思ってるけど実は違うかもなんて分からないでしょ?」
「確かに…」
「脳がくっついて無いと人格じゃないってんなら、ビオレッタやグラシアスやルナは人格として認められない?」
「…それは」
「それに俺は、自分の意識だとか魂のありどころなんてどうでもいい。」
「どうでもいいことは無いでしょう。」
(ソルの口調がすっかり俺になってるなぁ)
「俺はこの世界を維持して守っていくことの方が大事なんだ。それが叶うなら俺が俺かどうかなんてどうでもいい。そんなこと些細なことだ。」
「ソル…」
「ソル様…」
「魂が本当にあるとするならば、きっとここにあるんだろうさ!」
ソルはそう言って自分の胸を叩いてみせた。
その姿はかっこよかった。
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