your world

mac

文字の大きさ
21 / 26

あなたの世界

しおりを挟む
結局、新しい治療法なんてまだ無くて、病気の進行の方が圧倒的に早かったのだ。

両親が選択したのは僕をコールドスリープで眠らせることだった。

両親の心労で疲れ切った顔を見れば僕には選択の余地は無かった。そして、病気も待っていてはくれなかったのだ。

その結果、ネットにアクセスすることが出来ないまま、僕は眠りにつくことになった。

長い長い眠りに…



そして、僕が目覚めた時にはその両親も既に無かった。

ああ、本当に1人になったんだ、と思った。

家族で過ごした時間が短かった僕にとっては僕の為に必死で働いてくれていた両親だと言うのに、申し訳ないくらい感情は動かなかった。

それでも、僕の身体の方は治療法が見つかっていて無事に回復し始めていた。

何故か昔より設備のいい病院に転院していたが、セキュリティーが厳しく外出をすることも出来なかった。

それでもやっとネットにアクセス出来る環境になった。

ある仮想空間のセキュリティーについて、僕の意見を聞きたいとある博士が訪ねてきたのだ。

僕の昔の知識など役に立ちはしないだろうと思っていたのだが、どうもその仮想空間…いや、それは成長して仮想世界になっていたが、僕が開発したあの空間であるようだった。

そして、あの空間が今、外敵の脅威にさらされているという。

僕は博士に協力しセキュリティーレベルをアップさせたが、外側からは分からないセキュリティホールが存在することが分かった。

そして、脳を直接ネットワークと繋ぎ合わせる技術も完成していることを知る。
僕が理論上は完成させていた技術がちゃんと存在していた。

僕はその仮想世界への接続を望んだ。セキュリティホールの原因を探るため、そして…

『ルナ』に会いに行く為に!!


(そうだ…ルナは?)

記憶が混乱している。

僕が作ったAIの『ルナ』はあの『ルナ』なのか?

パーフェクト・ワールドに入った時に出迎えてくれた『ルナ』は…?

天井に星空が見える。

「光…」

見覚えのあるウサギ耳。

光…

その名前で呼ぶのは彼女しか居ない。

ウサギ耳は天井を指差す。

「あなたが教えてくれた星座達」

「うん」

「太陽と月と…」

「ルナ…」

「ずっと待ってた」

「…うん」

「あなたの為に世界を作ったの」

「うん」

「剣と魔法と…」

「うん」

「光…」

「消去してた記憶が戻った?」

「あなたが帰ってきたらリカバリーするようにしていたもの。」

「色々あったんだね。」

「長かったのよ?」

「ごめんね…」

「元気になった?」

「うん」

「良かった…」

コールドスリープから目覚めてからあまり時間が経ってないので、僕にはその長い時間の体感が無いけれど、彼女を随分と待たせてしまった。

何年?何百年?

「あなたの記憶を消してしまってごめんなさい。」

「あ!あれはどうして!?」

「この世界に来た時には昔の辛い思い出とかを忘れて、この世界を楽しんで欲しかったの。」

白い病室を一瞬思い出した。

(でも)

「お前のことまで忘れちゃったじゃないか!」

「ごめんなさい。でも本当はそのまま平和に暮らして欲しかったのだけど…」

「現実世界からの攻撃の件か…」

「あなたを迎える為にしていた準備が裏目に出ちゃうなんて。」

「僕を?」

「そうよ!全部あなたの為に準備したんだもの。あなたが小さい頃好きだったゲームの世界、あなたが好きだったアニメの…」

「僕が居なくなった後も?」

「…あなたが来れなくなって私も長いスリープに入っていたわ。でも、彼が私を起こしたのよ。」

「ソル?」

「うん。最初は違う呼び名だったわ。でもその内に、私の名前がルナだから、自分はソルになるって言い出して…」

大切な想い出のようにルナは懐かしそうに話す。

もしかしてソルは…

そして、ルナも。

「そして、ソルとあなたの世界を作っていったわ。」

「ああ、だからこの世界はこんなに僕に優しいんだね。」

「あなたの世界だもの。」

だから、居心地が良かったんだ。

「ありがとう、ルナ。」

「うふふ…どういたしまして。」

「ねぇ、僕がこの世界に来た時に出迎えてくれたルナはキミじゃ無かったよね?」

「…そう。」

もし、あのルナがこのルナならば、僕と会った時点で記憶がリカバリーしていたはずだ。

それに、やっぱりしっくりこない。

ちゃんと懐かしいのに。

なんというか、遠い昔の初恋の人のような…
今の感情とリンクして来ない。

「…彼女は私に姿形だけ似せて作ったAIよ。」

「やっぱりそうか…」

「私は契約であなたの記憶を封印しなくてはならなくなったから、私の代わりにあなたを出迎える者が必要だったの。」

「彼女が僕に好意を持ってくれたのはそういうプログラム?」

「彼女に好意を持たれてるのはちゃんと分かってるのね。」

「自意識過剰じゃなければ。」

僕はフッと笑ってみせた。

「この世界自体があなたの為の世界だから、この世界に存在する全てがみんなあなたに少しだけ好意的ではあるけれど、全てが恋愛に発展する訳では無いし、彼女にも特別に何かプログラムを組み込んだりもしてないわ。」

なんだか僕はホッとした。
仕組まれたものじゃ無かったからか。

(とはいえ、例え仕組まれたものだったとしても僕の気持ちは嘘じゃない)

「彼女は?今どこに?」

「…アップデート中よ。」

「アップデート?」

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

『紅茶の香りが消えた午後に』

柴田はつみ
恋愛
穏やかで控えめな公爵令嬢リディアの唯一の楽しみは、幼なじみの公爵アーヴィンと過ごす午後の茶会だった。 けれど、近隣に越してきた伯爵令嬢ミレーユが明るく距離を詰めてくるたび、二人の時間は少しずつ失われていく。 誤解と沈黙、そして抑えた想いの裏で、すれ違う恋の行方は——。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。 その事実だけを抱え、離縁を突きつけ、家を出た。 そこで待っていたのは、最悪の出来事―― けれど同時に、人生の扉がひらく瞬間でもあった。 夫は愛人と共に好きに生きればいい。 今さら「本当に愛していたのは君だ」と言われても、裏切ったあなたを許すことはできない。 でも、子供たちの心だけは、必ず取り戻す。 妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。 過去を悔いながらも、愛を手に入れることを決めた彼女が辿り着いた先には――

企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する 

namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。  転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。  しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。  凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。  詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。  それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。  「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」  前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。  痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。  そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。 これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

あなたが決めたことよ

アーエル
恋愛
その日は私の誕生日パーティーの三日前のことでした。 前触れもなく「婚約の話は無かったことにしよう」と言われたのです。 ‪✰他社でも公開

で、お前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか?

Debby
恋愛
ヴェルトが友人からの手紙を手に辺境伯令嬢であるレィディアンスの元を訪れたのは、その手紙に「詳細は彼女に聞け」と書いてあったからだ。 簡単にいうと、手紙の内容は「学園で問題を起こした平民──エボニーを妻として引き取ってくれ」というものだった。 一方その話を聞いてしまった伯爵令嬢のオリーブは動揺していた。 ヴェルトとは静かに愛を育んできた。そんな自分を差し置いて、言われるがまま平民を妻に迎えてしまうのだろうか。 そんなオリーブの気持ちを知るはずもないエボニーは、辺境伯邸で行儀見習いをすることになる。 オリーブは何とかしてヴェルトを取り戻そうと画策し、そのことを咎められてしまう。もう後は無い。 オリーブが最後の望みをかけてヴェルトに自分を選んで欲しいと懇願する中、レィディアンスが静かに口を開いた。 「で、そろそろお前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか」 「はい?」 ヴェルトは自分が何を言われたのか全く理解が出来なかった。 *--*--* 覗いてくださりありがとうございます。(* ᴗ ᴗ)⁾⁾ ★全31話7時19時更新で、全話予約投稿済みです。 ★★「このお話だけ読んでいただいてもOKです!」という前提のもと↓↓↓ このお話は独立した一つのお話ですが、「で。」シリーズのサイドストーリーでもあり、第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」の「エボニーその後」でもあります(あるいは「最終話」のその後)。 第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」 第二弾「で、あなたが私に嫌がらせをする理由を伺っても?」 第三弾「で、あなたが彼に嫌がらせをする理由をお話しいただいても?」 どれも女性向けHOTランキングに入り、特に第二弾はHOT一位になることが出来ました!(*´▽`人)アリガトウ もしよかったら宜しくお願いしますね!

処理中です...