転生者の取り巻き令嬢は無自覚に無双する

山本いとう

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5.盗賊退治で遅れたんです、本当です。

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乙女ゲーム。

女性主人公を操作して、男性キャラクターを攻略する恋愛ゲームのことだ。
私はちょっとしか触った事が無いんだけれど、前世のチェルシー様は割と重度のユーザーだったらしい。

チェルシー様に、有名タイトルを知っているかと聞かれ、答えられらなかったので、前世は本当は男性だったのではと言われた、解せぬ。

チェルシー様によると、どうもこの世界は乙女ゲームの世界の可能性が高いらしい。
確かにインフラなど、不自然に発展している所は多いし、魔法もあるけれど、ゲームの世界なんてことはあるのだろか?
これから私の行くケニー公爵領では、その件も話し合う予定だ。


⭐  ⭐  ⭐  ⭐

ケニー公爵領に行くには3つ程、他の領を通らなければならない。
モールド伯爵領の隣であるサンタモニカ子爵領に入る前に、私たちは馬たちを休憩させるため、水場へと立ち寄った。
木陰に入り空を見上げると、疎らにある雲が速く動いている。

「困ったわ、なかなか見付からない物なのね」

頬に手を添えると、私は呟いた。
元孤児で、私と同じくらいの身長の少年のような見た目のトールは、私の独り言のような疑問に答えてくれる。

「モールド伯爵領は発展著しいとは言え、まだそれほど豊かなイメージはありません。お師匠…、お嬢様のお陰で騎士は強くなり、治安も良くなっているので、盗賊は近寄らないのでしょう」

私に足らない物。それは実戦経験である。
魔物退治は経験済みだが、対人での実戦となるとお父様は許してくれなかったし、モールド伯爵領は平和過ぎて機会に恵まれなかったのだ。
ケニー公爵領に行く間に良い機会が出来たので、対人戦の実戦を済ませておきたかった。
私達にとって、対人での経験を積むために、最も都合が良いのが盗賊退治である。

「そうなのね。ケニー公爵領へつくまでには、見つかるかしら? 実戦をまだしたことがないというのは不安だわ。ほら、実戦に勝る訓練はないと聞きます」

私には実戦を経験して、実戦と訓練の差を知り、モールド伯爵領のトレーニングを強化しなければならない義務があるのだ。
実戦経験の兵は素人と変わらないとも聞くし、実戦経験に近い任務も必要なのかしら?

「…お師匠様。い、いや、お嬢様、モールド伯爵領の調練は、実戦に遥かに勝るかと…」

「トール? モールド伯爵領のトレーニングを褒めてくれるのは嬉しいわ。それでも、私は実戦を経験してみたいの。確かあなたも実戦を済ませているのでしたね。…とても羨ましいわ」

サンタモニカ子爵領に盗賊はいるのかしら。
護衛の騎士たちには、盗賊の出るようなルートに変えて貰わないとならないかもしれない。

もしくは、アジトさえ解れば、積極的に盗賊退治してみるのも良いわね。
馬車が移動の手段となっているこの時代、予定時間には余裕を持たせている。
遅刻したとしても皆おおらかだ。
だから、ケニー公爵領に着くのが、もし三、四日遅れても問題はなかった。


⭐  ⭐  ⭐  ⭐


「それで、ケニー公爵領に来るのが遅くなったのね」

「申し訳ありませんわ…チェルシー様」

盗賊退治にちょっとハメを外したせいで、ケニー公爵領に着くのは、大幅に遅れた。
護衛の騎士たちは途中で止めたんだけれど、困っている人たちを見捨てるのは騎士道に反すると肉体言語で説得し、私たちは近領に跋扈する盗賊の退治を遂行したのだった。
侍女には手紙を持たせて先にケニー公爵領に行ってもらった。
私のサバイバル能力があがったりと、トレーニングの改良を思い付いたりと、良いこともあったんだけど、チェルシー様には謝り通しだ。

「それで、何か得る物はあったのかしら?」

「も、もちろんですわ! 新しい護身術のトレーニングの改良案もそうですけれど! トレーニングに勝る実戦はなかったとか! それに、盗賊の財産!」

モールド伯爵領に居なかった盗賊たちは、いざ隣領の先へと向かえば各地に潜んでおり、私たちはケニー公爵領へ到着が遅れてはいけないと、日に盗賊団のアジトを梯子しながら、頑張って殲滅してきたのだ。
盗賊たちは思いの外ひと財産を築いていた。
それを被害のあった村々に配ってきたので、結局到着は遅れに遅れてしまったのだ。
私が財産というと、途端にチェルシー様の目が細められる。
私は話すのをいったん止め、身を縮こまらせた。

「盗賊が過剰な財産を? その話、私に詳しく教えて貰いたいですわ」

良かった、チェルシー様も盗賊退治…、つまりトレーニングに興味があるみたい!
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