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1章
0歳 -火の陽月3-
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「それで俺様に協力してほしい事って何だ?」
浦さんとの話が一段落した所で、目をキラキラとさせ笑顔でグイグイとくるイケメン桃さん。以前、「金の字や浦の野郎は何かにつけて頼み事をされるのに俺はされない……」と愚痴っていた事もあり、ようやく出番か!!とかなりの意気込み具合です。そんなイケメンの圧力にちょっと腰が引けそうになりますが、快適な生活の為に引いている場合じゃありません。
「桃さんって炭化って技が得意なんですよね?
山のあちこちにある竹林から竹を採取して、炭にしてほしいんです。
大きさはそこまで大きくなくても良いんですが、そこそこの量が欲しいです。
竹炭には臭いを吸着して消してくれる効果があるから……」
得意なんじゃなくてそれしかできないんですよという浦さんのツッコミをさらりと流しながら手を合わせて拝み倒します。
木炭よりも臭いを吸着してくれるといわれている竹炭。竹炭があればあのとんでもない臭いも少しはマシになってくれないかなぁと期待したくなるけれど、正直なところあの臭いはそれだけでどうにかなるようなモノじゃなさそうで、竹炭と同時に別対策も考えなくては。
なんで竹炭を思い出したかといえば、先程見た小学校の記憶が晩秋に開催されるバザーの準備だったから。私が通っていた小学校は通常の授業とは別に「里山学習」というのに力を入れていたのです。その特別授業で作った物を夏の宿泊学習で使ったりバザーで売ったりしていたんですよね。野菜やその加工品、様々な工芸品も小学生の拙さはあるものの村の人には好評だったように思います。
ちなみに私が受けた里山学習というのは、里山の環境を適切に維持する意味と方法を大人たちから教えてもらう事だったのだけど、その幅が広い事広い事……。春の田んぼで泥んこ大会から始まり、畑に竹林にと一年中、村中が活動場所でした。その中で竹林の適正な保ち方のついでに、竹細工や竹炭の作り方を教わったんですよね。
勿論、子供だけじゃ危ないから常に大人がついてくれて、中でも特に危ない作業は大人がやってくれて私達は見学だけだったんだけども。木炭よりも竹炭の方が消臭効果が高いというのもその時に覚えた事。他にも葛の蔦を利用した籠などの細工物や、ハゼの木の実を使った蝋燭とか石鹸も作っていました。もっとも私はいつも葛の籠作り班だったから、竹炭や蝋燭作りは作業の合間にチラリと見た事がある程度だけれど。
そうそう竹炭もだけど石鹸もできるだけ早くに作りたいなぁ。
「竹で炭を作るぐらいなら幾らでも作ってやるが……。
ホントお前ってヘンテコだよなぁ。
そんなに臭いとか汚れって気になるものなのか?」
そう首を傾げながら桃さんはボヤいてる。
いや、気になるなんてレベルじゃないからね、あの家……というか岩屋は。
ただ桃さんの言い分もわかる……というか、三太郎さんたちの説明で理解しました。この世界ではあの岩屋はそれなりに良い部類に入るって事を。華族や大商人といった上流階級は当然ながら別だけども、庶民の大半を締める中級階級の職人さんや商人さんといった人たちは此処と同じか、此処より少し下といった感じの場所で生活しているのだとか。
そこから更にランクが下がれば掘っ立て小屋や竪穴式住居のような場所に住む層があり、更にその下には木の洞や洞窟に莚で風よけをしただけの建物?や、橋の下で野宿といった、隙間風や汚れ・臭いがあって当然という層がいます。ついでに掘っ立て小屋にしても竪穴式住居にしても一部屋を家族みんなで使う感じでプライベートなんてもの存在しません。
でもあの岩屋は小さいながらも男女が分かれて寝泊まりできるように板張りの部屋が二つあり、更にはDK……Dは土間でKは厨……があり、設備的にも竈があるから、そこそこのランクの家って事になるらしいです。他にも小さめではあるけれど機織り機や釣り具を含めた狩猟道具があるのもすごいのだとか。このあたりの道具は沙羅さんのお父さんが念の為に以前から少しずつ準備していたんだろうなぁ。この世界における男性の嗜みは「狩猟」で、女性の嗜みは「機織」だから。
なぜなら、この世界の神話において神が最初の人間の男女に役目として与えたと言われているのが狩猟と機織りだからです。神話の一文に
「男よ、この女はお前の守るべきもの。ゆえに女が満足に働ける食事を与えよ
女よ、この男はお前の守るべきもの。ゆえに男が満足に働ける道具を与えよ」
とあるのだそうです。ゆえに男性は狩りをし、その獲物を解体するところまでやります。更には女子供が安全に過ごせる場所を見つけて維持します。そして女性は男性が満足に働ける道具を作ります。その道具に料理や衣服が含まれているというのがこの世界での解釈です。男女のどちらが上とか下とかではなく、そういう役割分担だという事ですね。そして狩猟や機織りの腕前がそのまま神の寵愛の深さとも言われているそうです。
「まぁ、桃太郎のいう事もわかるが、
我としては櫻の言い分も異世界の映像を見て納得はできた。
確かにこのような家に住んでいた者にとって、
この世界の……いや、あの家の環境はきつかろう」
わかってもらえて嬉しい!
でもこの世界の人にとったら桃さんの感覚が当たり前なんだろうなとは思う。
だから碧宮家の人たちにも理解してもらえない感覚かもしれない。
そう思うと途方に暮れそう。
だって価値観とか感覚ってなかなか変えづらいものだから。
例えば戦国一の美人と言われているお市の方だって、現代人の感覚からすれば美人じゃないと思う。それは顔の作り云々といった問題じゃなくて、殿上眉を描く為に引眉(眉を剃ったり抜いたり)していたし、歯はお歯黒でまっ黒。そして顔面は白粉で真っ白ともなれば、子供が夜見たら怖くて泣くレベルだと思う。
でもお市の方から見れば私達現代人の方がありえない化粧をしている訳で……。その感覚の差は簡単に埋まらない。価値観や感覚に反せず、生活に便利な物なら受け入れる事もできるかもしれないけれど。
情報が溢れかえり、様々な価値観があるという事を知っている現代人ですら、他国や他民族の文化に眉をひそめる事もあるし……。
と、思考が横道にそれちゃった。
ただ衛生面は絶対に譲れないところなのです。私のストレス的にも……何より皆の為にも。なにせ槐君が13歳の頃。今から10年後ぐらいにに疫病が流行り、子供と女性を中心にかなりの人が亡くなります。幸い槐君と櫻は生死の境を彷徨いつつも何とか生き残れたけれど、沙羅さんと橡さんが亡くなってしまうのです。
と、違った……。兄上の命は助かるけれど母上と橡は亡くなってしまうのです。
名前の呼び方もそろそろ小説を読んでいた私ではなく、ここで生きていく私基準にしなくては。母上、叔父上、兄上、橡、山吹……呪文のように繰り返し繰り返し、何とか自分の中に浸透させ中です。でも年上の人を呼び捨てにするのって、どうしても抵抗感があるのですよね。なので橡と山吹だけは何か別の呼び方ができないかなぁ……と思案中です。
で、話を戻すとあの優しい人たちが死んでしまう未来がこの先に控えているんです。
そんな事、許せる訳がないじゃないですか。
だから前々から浦さんには水の衛生面をお願いしていたし、金さんにはどこか風通しと日当たりの良い……それでいて人が来ないような場所を探してもらっていました。もちろん皆で住む為に。
「うん、正直きつい。
だから桃さんが作ってくれる竹炭でしのぐ間に、
金さんの方を本格的に進めたいんだけど。」
「あぁ、一応希望に沿った候補地は見つけたのだが少々問題がある。
だがこの近辺ではあそこ以上に良い土地は見つからないだろうな。」
もともとあの岩屋は一時避難所だから長期滞在には向いていません。
にもかかわらず皆が移動しないのは、赤ん坊である私が増えた事で腰が重くなってしまっている事と、何よりも行く当てがない事が原因のようなのです。
「問題ですか?」
「あぁ、あの辺りは7ztfg@が住んでいてな。
7ztfg@をどうにかせねばならん」
あっ、まただぁ……。
心話は便利ではあるのですが、一部の言葉がどうにも理解できない事があります。
ようは元居た世界に存在しないモノ、或は私の知識にない(イメージできない)言葉は変換ができないようで……。
そういう時はこちらの世界の発音をゆっくりともう一度お願いして、こちらの言葉で覚えます。そのうえでどういったものかを説明してもらうのです。これが今のところやっている言葉の練習のやり方です。なので心話を一旦中止して、この世界の言葉を使った会話で今回の7ztfg@についてゆっくりと説明してもらいます。
いや、確かに心話でばーーーっと翻訳してもらった方が早いのは早いんですけど、
私は自分を知っています、えぇ知っていますとも。特別怠惰な性格ではないと思いたいですが、特別勤勉な性格でもありません。
自動翻訳してくれる三太郎さんたちが常に傍にいる環境では、ついつい頼りすぎてしまって何時まで経ってもこちらの世界の言葉が身につかないという未来がありありと見えてしまうのです。だからきっちりと時間(毎日体感10分)とルール(知らない単語が出た時)を決めて、毎日少しずつ言葉の練習を積み重ねています。
その結果、桃さん曰く「ササガニのでっかい奴」とのことで。
ふむふむ……笹色の蟹って事でしょうか。それとも沢蟹?
今までもこうやって少しずつこの世界の言葉を覚えていたのですが、面白い事に違う世界なのに同じ発音の言葉がちらほらとあるのです。「やま」「うみ」「そら」といった自然を表す二文字の言葉ばかりなのですが、何とも不思議です。
まぁ何にしても沢蟹?の大きいサイズならタラバガニぐらいかな?
その問題を解決さえすれば住めるのなら、そこに決めてしまっても良いんじゃないでしょうか。
「死の月が来る前に大人二人と子供二人が冬を越せる程度にはしたいの。
時間も限られているし、明日から動こう!」
そう決意して三人を見回すと、三太郎さんたちはそれぞれの言葉で同意を示してくれたのでした。
浦さんとの話が一段落した所で、目をキラキラとさせ笑顔でグイグイとくるイケメン桃さん。以前、「金の字や浦の野郎は何かにつけて頼み事をされるのに俺はされない……」と愚痴っていた事もあり、ようやく出番か!!とかなりの意気込み具合です。そんなイケメンの圧力にちょっと腰が引けそうになりますが、快適な生活の為に引いている場合じゃありません。
「桃さんって炭化って技が得意なんですよね?
山のあちこちにある竹林から竹を採取して、炭にしてほしいんです。
大きさはそこまで大きくなくても良いんですが、そこそこの量が欲しいです。
竹炭には臭いを吸着して消してくれる効果があるから……」
得意なんじゃなくてそれしかできないんですよという浦さんのツッコミをさらりと流しながら手を合わせて拝み倒します。
木炭よりも臭いを吸着してくれるといわれている竹炭。竹炭があればあのとんでもない臭いも少しはマシになってくれないかなぁと期待したくなるけれど、正直なところあの臭いはそれだけでどうにかなるようなモノじゃなさそうで、竹炭と同時に別対策も考えなくては。
なんで竹炭を思い出したかといえば、先程見た小学校の記憶が晩秋に開催されるバザーの準備だったから。私が通っていた小学校は通常の授業とは別に「里山学習」というのに力を入れていたのです。その特別授業で作った物を夏の宿泊学習で使ったりバザーで売ったりしていたんですよね。野菜やその加工品、様々な工芸品も小学生の拙さはあるものの村の人には好評だったように思います。
ちなみに私が受けた里山学習というのは、里山の環境を適切に維持する意味と方法を大人たちから教えてもらう事だったのだけど、その幅が広い事広い事……。春の田んぼで泥んこ大会から始まり、畑に竹林にと一年中、村中が活動場所でした。その中で竹林の適正な保ち方のついでに、竹細工や竹炭の作り方を教わったんですよね。
勿論、子供だけじゃ危ないから常に大人がついてくれて、中でも特に危ない作業は大人がやってくれて私達は見学だけだったんだけども。木炭よりも竹炭の方が消臭効果が高いというのもその時に覚えた事。他にも葛の蔦を利用した籠などの細工物や、ハゼの木の実を使った蝋燭とか石鹸も作っていました。もっとも私はいつも葛の籠作り班だったから、竹炭や蝋燭作りは作業の合間にチラリと見た事がある程度だけれど。
そうそう竹炭もだけど石鹸もできるだけ早くに作りたいなぁ。
「竹で炭を作るぐらいなら幾らでも作ってやるが……。
ホントお前ってヘンテコだよなぁ。
そんなに臭いとか汚れって気になるものなのか?」
そう首を傾げながら桃さんはボヤいてる。
いや、気になるなんてレベルじゃないからね、あの家……というか岩屋は。
ただ桃さんの言い分もわかる……というか、三太郎さんたちの説明で理解しました。この世界ではあの岩屋はそれなりに良い部類に入るって事を。華族や大商人といった上流階級は当然ながら別だけども、庶民の大半を締める中級階級の職人さんや商人さんといった人たちは此処と同じか、此処より少し下といった感じの場所で生活しているのだとか。
そこから更にランクが下がれば掘っ立て小屋や竪穴式住居のような場所に住む層があり、更にその下には木の洞や洞窟に莚で風よけをしただけの建物?や、橋の下で野宿といった、隙間風や汚れ・臭いがあって当然という層がいます。ついでに掘っ立て小屋にしても竪穴式住居にしても一部屋を家族みんなで使う感じでプライベートなんてもの存在しません。
でもあの岩屋は小さいながらも男女が分かれて寝泊まりできるように板張りの部屋が二つあり、更にはDK……Dは土間でKは厨……があり、設備的にも竈があるから、そこそこのランクの家って事になるらしいです。他にも小さめではあるけれど機織り機や釣り具を含めた狩猟道具があるのもすごいのだとか。このあたりの道具は沙羅さんのお父さんが念の為に以前から少しずつ準備していたんだろうなぁ。この世界における男性の嗜みは「狩猟」で、女性の嗜みは「機織」だから。
なぜなら、この世界の神話において神が最初の人間の男女に役目として与えたと言われているのが狩猟と機織りだからです。神話の一文に
「男よ、この女はお前の守るべきもの。ゆえに女が満足に働ける食事を与えよ
女よ、この男はお前の守るべきもの。ゆえに男が満足に働ける道具を与えよ」
とあるのだそうです。ゆえに男性は狩りをし、その獲物を解体するところまでやります。更には女子供が安全に過ごせる場所を見つけて維持します。そして女性は男性が満足に働ける道具を作ります。その道具に料理や衣服が含まれているというのがこの世界での解釈です。男女のどちらが上とか下とかではなく、そういう役割分担だという事ですね。そして狩猟や機織りの腕前がそのまま神の寵愛の深さとも言われているそうです。
「まぁ、桃太郎のいう事もわかるが、
我としては櫻の言い分も異世界の映像を見て納得はできた。
確かにこのような家に住んでいた者にとって、
この世界の……いや、あの家の環境はきつかろう」
わかってもらえて嬉しい!
でもこの世界の人にとったら桃さんの感覚が当たり前なんだろうなとは思う。
だから碧宮家の人たちにも理解してもらえない感覚かもしれない。
そう思うと途方に暮れそう。
だって価値観とか感覚ってなかなか変えづらいものだから。
例えば戦国一の美人と言われているお市の方だって、現代人の感覚からすれば美人じゃないと思う。それは顔の作り云々といった問題じゃなくて、殿上眉を描く為に引眉(眉を剃ったり抜いたり)していたし、歯はお歯黒でまっ黒。そして顔面は白粉で真っ白ともなれば、子供が夜見たら怖くて泣くレベルだと思う。
でもお市の方から見れば私達現代人の方がありえない化粧をしている訳で……。その感覚の差は簡単に埋まらない。価値観や感覚に反せず、生活に便利な物なら受け入れる事もできるかもしれないけれど。
情報が溢れかえり、様々な価値観があるという事を知っている現代人ですら、他国や他民族の文化に眉をひそめる事もあるし……。
と、思考が横道にそれちゃった。
ただ衛生面は絶対に譲れないところなのです。私のストレス的にも……何より皆の為にも。なにせ槐君が13歳の頃。今から10年後ぐらいにに疫病が流行り、子供と女性を中心にかなりの人が亡くなります。幸い槐君と櫻は生死の境を彷徨いつつも何とか生き残れたけれど、沙羅さんと橡さんが亡くなってしまうのです。
と、違った……。兄上の命は助かるけれど母上と橡は亡くなってしまうのです。
名前の呼び方もそろそろ小説を読んでいた私ではなく、ここで生きていく私基準にしなくては。母上、叔父上、兄上、橡、山吹……呪文のように繰り返し繰り返し、何とか自分の中に浸透させ中です。でも年上の人を呼び捨てにするのって、どうしても抵抗感があるのですよね。なので橡と山吹だけは何か別の呼び方ができないかなぁ……と思案中です。
で、話を戻すとあの優しい人たちが死んでしまう未来がこの先に控えているんです。
そんな事、許せる訳がないじゃないですか。
だから前々から浦さんには水の衛生面をお願いしていたし、金さんにはどこか風通しと日当たりの良い……それでいて人が来ないような場所を探してもらっていました。もちろん皆で住む為に。
「うん、正直きつい。
だから桃さんが作ってくれる竹炭でしのぐ間に、
金さんの方を本格的に進めたいんだけど。」
「あぁ、一応希望に沿った候補地は見つけたのだが少々問題がある。
だがこの近辺ではあそこ以上に良い土地は見つからないだろうな。」
もともとあの岩屋は一時避難所だから長期滞在には向いていません。
にもかかわらず皆が移動しないのは、赤ん坊である私が増えた事で腰が重くなってしまっている事と、何よりも行く当てがない事が原因のようなのです。
「問題ですか?」
「あぁ、あの辺りは7ztfg@が住んでいてな。
7ztfg@をどうにかせねばならん」
あっ、まただぁ……。
心話は便利ではあるのですが、一部の言葉がどうにも理解できない事があります。
ようは元居た世界に存在しないモノ、或は私の知識にない(イメージできない)言葉は変換ができないようで……。
そういう時はこちらの世界の発音をゆっくりともう一度お願いして、こちらの言葉で覚えます。そのうえでどういったものかを説明してもらうのです。これが今のところやっている言葉の練習のやり方です。なので心話を一旦中止して、この世界の言葉を使った会話で今回の7ztfg@についてゆっくりと説明してもらいます。
いや、確かに心話でばーーーっと翻訳してもらった方が早いのは早いんですけど、
私は自分を知っています、えぇ知っていますとも。特別怠惰な性格ではないと思いたいですが、特別勤勉な性格でもありません。
自動翻訳してくれる三太郎さんたちが常に傍にいる環境では、ついつい頼りすぎてしまって何時まで経ってもこちらの世界の言葉が身につかないという未来がありありと見えてしまうのです。だからきっちりと時間(毎日体感10分)とルール(知らない単語が出た時)を決めて、毎日少しずつ言葉の練習を積み重ねています。
その結果、桃さん曰く「ササガニのでっかい奴」とのことで。
ふむふむ……笹色の蟹って事でしょうか。それとも沢蟹?
今までもこうやって少しずつこの世界の言葉を覚えていたのですが、面白い事に違う世界なのに同じ発音の言葉がちらほらとあるのです。「やま」「うみ」「そら」といった自然を表す二文字の言葉ばかりなのですが、何とも不思議です。
まぁ何にしても沢蟹?の大きいサイズならタラバガニぐらいかな?
その問題を解決さえすれば住めるのなら、そこに決めてしまっても良いんじゃないでしょうか。
「死の月が来る前に大人二人と子供二人が冬を越せる程度にはしたいの。
時間も限られているし、明日から動こう!」
そう決意して三人を見回すと、三太郎さんたちはそれぞれの言葉で同意を示してくれたのでした。
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