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4章
17歳 -水の極日5-
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(あぁ……山だ……)
龍さんのおかげで身体に受ける風はほとんど無く、木々が後ろに吹っ飛んで行くように見える超高速移動中でもしっかりと周囲の確認ができます。おかげでどこまでも連なる山々を久しぶりに見ることができました。今住んでいる島だって海底から伸びている山と呼べなくは無いですが、こうして遠くまで連なる山々を見るのは、あの日、あの時以来です。
懐かしさ。そして寂しさと悲しさ。なんとも言えない感情が湧き上がってきては、ぐるぐると渦巻いて言葉になりません。
あの山のずっと向こうに私が育った山があります。たくさんの思い出が眠る場所であり、同時に赤ん坊の頃から一緒だった2頭の馬が眠る場所でもあります。できることならこのままお墓参りに行きたいのですが、寄り道をする余裕が今の私にはありません。ただ視線をそちらに向け続ける事しかできず、心の中で祈りを捧げます。
(あの時はありがとう……。どうか安らかに)
月が中天を通り過ぎて西へと傾き始めた頃、私達はようやくヤマト国の王都である大和にたどり着きました。ようやくとは言いますが、人間の足どころか三太郎さんですら一晩では移動できない距離です。こんな高速移動が可能だったのは、ひとえに龍さんのおかげです。正確な速度は解りませんが、恐らく新幹線以上の速度が出ていたと思います。
そして茴香殿下が治めているアスカ村ではなく王都へ来たのは、確率の問題だったりします。現在の茴香殿下は王太子となっていて、1年のうちの半分以上を王都で過ごしているそうです。当人は政務よりも研究がしたいらしく、少しでもアスカ村に居たがるそうなのですが、王太子としての役目もあるのでどうしても王都に留まる日数が増えるのだとか。また茴香殿下程ではないのですが、双子の弟の蒔蘿殿下も同じように領地と王都を往復しているので、王都の方が双子の殿下のどちらかを捕まえやすいのです。
「……はずだったんだけどなぁ」
眼下には質実剛健といえばよいのか、無骨なまでに実用性重視の頑強な城が見えます。こんな上空に人が浮かんでいるとは誰も思わず、注意がコチラに向いていないので助かっていますが、下手をすれば弓を射掛けられてもおかしくない状況です。まぁ、かなり上空なので矢は届く前に失速するでしょうが。
蒼宮家もそうでしたが、空から光の帯が消えたという非常事態なせいで警戒が厳重過ぎてこれ以上近づけないのです。そしてこの距離だからこそ、緋色宮家の時のように顔見知りを見つけたくても顔の判別ができません。
私の視力では。
三太郎さんや龍さんなら行けるかも!とは思うのですが、龍さんは茴香殿下や蒔蘿殿下、そしてその配下の二人の随身である忍冬さんと片喰さんの顔を知らないので、三太郎さんの誰かに出てきてもらう必要があります。
<金さん、いける?>
<いや、我よりも浦が良いと思う。
覚えているか? 浦と限りなく同化した時のことを>
それはマガツ大陸での事。確かに浦さんと自分の境界がわからなくなる程、同化したことがありました。あれからというもの、浦さんの霊力を借りると視界に霊力の流れや色が見えるようになりました。
蛇足ですが土や火の大妖を倒す際には金さんや桃さんとも同化し、それぞれ触覚や嗅覚が鋭くなりました。金さんの場合は霊力に触れて流れを変えたりできるようになりましたし、桃さんの場合は匂いで霊力の感知ができるようになったのです。なので予測でしかありませんが、龍さんと同化すると聴覚か味覚が鋭くなるのかもしれません。
<あぁ、なるほど視界の強化ですか?>
<でもあれ。霊力が見えるようになるだけのような?>
とはいえ、霊力が見えたという事に気を取られて、視力自体の強化に気づいていなかった可能性もあります。なので物は試しと言う事でやってみたところ……
<……すごい、見えるわ>
ざっと上空2kmぐらいのところに居るのですが、この距離だというのに人の顔の判別ができるのです。驚きすぎて当初の目的を忘れてしまいそうになりましたが、慌てて見知っている顔を探します。とはいえ現在の時刻は、そろそろ東の空の端の色が変わり始めそうな時刻。警備員の数は多くても、見知った顔は王族やそれに準ずる身分な為にこの時間に外に居るとは思えません。
刻一刻と時間が過ぎていきますが、見知っている顔は見つけられず。
<駄目、見つか>
とまで心話で言った、その時。王城の一室の大きな窓が開き、一人の男性が露台へと歩み出てきました。しかもその男性の顔にはしっかりと見覚えがあったのです。
「居た、居たよ!!!!」
思わず声を上げ、その男性の居る露台を指さしました。私の指先を確認した龍さんが、その露台に向けて急降下を開始します。
その男性は私達が露台に着地するまで、全くこちらに気づいていませんでした。空から人が降ってくるなんて思ってもいなかったでしょうし、龍さんの霊力のおかげで風切音なども完全に消えていたので、気づかなくても仕方がありません。
なので私が突然現れ、完全に虚を衝かれた形となった男性は咄嗟に飛び退くと、すぐさま腰に下げていた護身用と思われる装飾皆無の剣へと手を伸ばし、間髪入れずに抜いて飛びかかってきました。
「何者!!!」
「ま、待って忍冬さん!! 私です!」
龍さんが私を抱え、露台から再び浮上して攻撃範囲外へ回避してくれたおかげで助かりましたが、あのままあそこにいれば首が胴体からさようならするところでした。
「何故私の名を……」
過去には一緒に旅をしたこともあるのですが、それもかれこれ7年程前の事。私のことを忘れてしまっているのかもしれません。
<櫻、貴女、布で顔を隠していること忘れているのでは?>
浦さんからのツッコミがきて、初めて「……あ!」と気づきました。ヒノモト国、正確には日差しが激強の海域に入ってからというもの、叔父上から貰ったヴェールを改良して目元だけ開けた布を常に身につけていました。しかも以前とは違い、今は龍さんのおかげで風で顔に張り付くようなこともなく、不快感や不便さよりも快適さのほうが上回った所為でうっかり身につけたままになっていました。
それにヒノモト国では緋桐さんのおかげで、梯梧殿下の前でもヴェールは付けたままで良かったですし、緋色宮家や蒼宮家で問題視されなかったのは牡丹様や菖蒲様は私の素性を知っているので顔を隠す事は当然だと思ってくれていたからでしょう。その結果、ヴェールを付けたままここまで来てしまいました。
「えと、一度は忍冬さんの娘にもなった、私ですよ!!
とと様って呼んでいた事、覚えていませんか??」
私だと解ってもらえるよう、過去の話を持ち出しながらヴェールを取り外します。それまで眉間に深い皺を刻んで睨みつけていた忍冬さんは、私の言動に目を丸くしてしまいました。
「さ、櫻嬢か?! いや、確かに姫沙羅様と良く似ているが……。
本当にあの、これぐらいしかなかった櫻嬢なのか?!」
忍冬さんはそう言うと、手のひらを自分の膝のあたりまで下げました。いや待って。
「そんなに小さくは無かったです!!」
そこは断固として否定しておきます。身体の大きなヤマト国の人にとって、私は確かに小さくは感じたと思いますが、そこまで小さくはない!!
「は……はは、そうだったな。あの幼い子どもが、もうこんなに大きく」
ようやく表情が私の知っている忍冬さんになりました。ただその表情には疲労が強く現れていて、気が抜けた所為もあるのでしょうが声に力がありません。
「大丈夫ですか? なんだか具合が悪そうに見えます」
「心配ない、大丈夫だ。ただ、ここのところ忙しくてな。
それよりどうしたのだ?」
自分の研究の為なら三日三晩徹夜しても平気なヤマト国人が、ここまで疲労困憊になるってどれだけ大変なことがあっただんだと思ったのですが、考えるまでもなく原因は空のアレに決まっています。
「ひとまず中へ……と言いたいところだが、後ろの男は?」
「忍冬さんは金さんと浦さんには会ったことがありますよね?
この方も別の精霊様です」
忍冬さんは呪詛騒動のときに一度だけ、金さんと浦さんの姿を見ています。あの時は私だけでなく全員が手一杯で、何の説明もできませんでした。
「精霊様?
失礼致しました。ご挨拶は後で改めて……」
龍さんに一礼した忍冬さんは部屋の中へと案内してくれました。家具等は最上質でありながら簡素なその部屋は、茴香殿下の部屋の隣にある随身用の待機室らしく、仮眠用の小さめの御帳台と書机ぐらいしかありません。忍冬さんは仮眠を終え、夜伽番の随身と交代するために起床したばかりとの事でした。
「忍冬さんが居るってことは、茴香殿下はここにおられるの?」
「えぇ。とは言っても明日には殿下はアスカ村へ出発されますが」
何でもアスカ村のほうで問題が起きたらしく、茴香殿下は予定を繰り上げて戻る事になったのだとか。その為に忍冬さんは殿下が王都に残した仕事を片付ける必要があり、明日からは別行動なんだそうです。
「入れ違いにならなくて本当に良かったぁ。
殿下たちのどちらかに早急に話さなくてはならない事があるの」
「それは山吹から届いた書簡の内容と関係が?」
「それのこともあるし、それ以外のことも」
王太子に会うのに許可も取らず、更には話す内容すらも大雑把というあり得ない状況ですが、忍冬さんは一言「解りました」とだけ答えて立ち上がると、隣室へとつながる扉へと向かいました。
その後、私達はあの殿下の隠れ家へと移動しました。王宮ではどうしても人目があるため、内密の話しをするには向かないのです。龍さんのおかげで防音などの結界は張れますが、霊力を使わなくても済む手段があるのなら霊力は温存しておくべきです。
中庭にある四阿で待っていると、現れたのは茴香殿下と忍冬さん。そして蒔蘿殿下と片喰さんまでもがやってきました。
「お久しぶりです」
「やぁ、櫻ちゃん。本当に大きくなったねぇ」
にこやかに笑顔で接してくれるのは片喰さんです。昔から蒔蘿殿下と同じぐらい人当たりの良い人ではありますが、今日はなんだか何時も以上ににこやかです。
「皆さんは全く変わらないですね」
本当に何一つ変わってないんですよ。ヤマト国の人が長寿なのは知っていますが、老いてからの時間が長いのではなく若い時間が長いようで……。確かに叔父上や母上も年齢の割には若々しいですが、それは生活環境によるものも大きく。私達ほど恵まれていない生活環境の殿下たちが、初めて会った時と全く変わらない姿というのは驚異的です。
「再会を懐かしむ気持ちは解るのじゃが、時間が無いのではないか?」
挨拶が一区切りついたところで、龍さんがそう切り出しました。確かに時間に余裕はありません。優先順位を付けてさっさと問題をやっつけていく必要があります。
「そうですね。
茴香殿下、蒔蘿殿下。今回は助力のお願いに参りました」
私はそう宣言すると、頭を下げたのでした。
「……まさか理解が追いつかないなんて言葉を使う日が来るとは」
ぐったりとした茴香殿下が、天井を仰ぎ見ながら大きく息を吐きます。
「違うだろ、茴香。
理解が追いつかないんじゃなくて、理解したくないが正解じゃないか?」
その直ぐ横ではテーブルの上で組んだ腕に頭を乗せるようにぐったりとしている蒔蘿殿下が、茴香殿下の言葉に突っ込みを入れました。それに対し「そうかもしれん」とだけ返す茴香殿下です。忍冬さんは再び眉間に深い皺が刻まれてしまいましたし、片喰さんはどこか遠くを見たままです。
隠れ家とはいえ、ここは王族の持ち物。なのでこの四阿もかなり大きいのですが、龍さんに加えて三太郎さんまでもが実体化した為に、かなり手狭に感じます。そんな手狭になった四阿のあちこちから溜息が聞こえてくるので、居心地が悪くて仕方がありません。
「とりあえず念の為に今一度確認するぞ?
届いた書簡にもあったが、天空の光の帯の消失は凶事では無いのだな?」
「その現象自体は全く凶事じゃないです。
龍さんのもとへと精霊力が戻っただけなので」
「となると、急を要するのはヒノモト国の件だな」
一度大きく深呼吸をしたあと、茴香殿下がそう切り出しました。
「あぁ。ずいぶんと舐めた真似をしてくれる」
あまりに不穏な声音にびっくりしてそちらを見れば、蒔蘿殿下が見たことのない悪い笑みを浮かべていました。私が見ている事に気づいた蒔蘿殿下はパッと表情をいつもの笑顔に戻すと、
「櫻嬢、その件は俺が引き受けるから安心して良いよ」
と言ってくれます。頼もしい反面、なんだか嫌な予感がします。
「片喰。しばらくの間、ヒノモト国に行ってきて良いか?」
「駄目に決まっているだろう!!」
嫌な予感、即的中です。どうやら私と一緒にヒノモト国に行きたいらしい蒔蘿殿下が、片喰さんに残りの仕事を全て押し付けようとして口喧嘩じみたやり取りを始めてしまいました。そんな二人をいつもの事とばかりに放置した茴香殿下が
「次に急を要するのは浄化の剣の作成……か。
不躾ながら申し上げます。精霊様方におかれましては……」
「あー、面倒だからそういうのは良い。正直時間がねぇんだよ。
浄化の剣は俺様も浦も金も、何度も相談したうえで決めたことだ」
桃さんが若干の苛立ちを滲ませながら、そう言い切りました。それに金さんや浦さんも頷きます。もしこの時点で霊石に紋を刻むことに成功していなかったら、三太郎さんたちも少しは悩んだ可能性がありますが、既にそれには成功しています。ならば何も悩む必要は無いという結論に三太郎さんたちは達しました。
ただ浄化の剣に使う霊石、その霊力の補充をどうするかという問題があるのです。
霊力の強い地で時間をかければ回復も可能ですが、その場合は無数の浄化の剣が必要になります。回復している間、別の剣を使う事になりますから。流石にそれは現実的ではありません。
例外は緋桐さんに作った剣で、あの剣だけは龍さんのお陰で何処に居ても全ての精霊力が回復していきます。なので常時使用可能なのですが、それでも砂漠では水の精霊力の回復は遅くなりますし、海上に居れば火の精霊力の回復は遅くなります。
「各国の大社に協力を求められませんか?」
そう提案すると殿下は少し考えるように黙ってしまいました。宗教というのは政治と密接に関わるようになると、色々と面倒なことになるのは前世の歴史が証明しています。中学校の時の先生が「泣くよ坊さん、平安京って覚えろよー。平安京に遷都したのは、坊さんを奈良に置き去りにするためだからな」なんて話していた事を思い出します。もしかしたらコチラの世界でも政治と宗教は色々とあるのかもしれません。それに大社=精霊力の強い場所という訳ではありませんから、絶対に大社じゃないと駄目だという訳でもないのです。ただ呪詛騒動のときのように、信仰が集まる地というのはそれなりに力を持ちます。人が立ち入ることが許されていない精霊の為の地へ入り込んで霊石の回復を試みるよりも、ずっと現実的で平和的です。
「我が国から土の大社に協力を要請することはできると思いますし、
土の大社側も断る事はないでしょう。ただ他国の事までは……」
と忍冬さんが思案顔で答え、それに茴香殿下も頷きます。
まぁ、それは当然の話しです。一応ではありますが、各大社や神社は国や朝廷には縛られない独立した機関となっています。なので国が神社に命令することはできませんし、逆も同じです。その慣例を無視して他国の、そしてヤマト国が火や水の大社に命令を出しては新たな騒乱の火種になってしまいます。
「他国に関してまで貴方が背負う必要はありません」
「そうだな。そなた達は己の成すべきことを為せ。
だが大社で回復させる場合、ただそこに安置するだけでは……」
金さんが言うには、精霊力の強い地というのはまさに精霊力があふれる出る地なので、霊力の回復は放置でOKなんだそうです。ただ大社は人が住む地の中では格段に精霊力が強い地ではあるものの、どちらかといえば人々の信仰の力が精霊力を増幅させている地らしく。ただそこに霊力が空っぽになた霊石を置いておいても、回復速度はあまり早く無いのだそう。
「じゃぁ、どうすれば?」
「精霊力を霊石へと導く役目を持つ誰か、あるいは何かが必要じゃな」
答えをくれたのは龍さんですが、その答えは絶望一歩手前の返答でした。精霊力を導く誰かって言われても直ぐに思いつきませんし、何かに至っては想像すらできません。
八方塞がりとか四面楚歌とか嫌な単語が脳内をちらつき出しますが、諦めたらそこで終わりです。何とか知恵を絞り出さねばと唸っていると、金さんの髪の付近に浮かんでいた震鎮鉄の一つが光ったかと思うと、その光はテーブルの上へと移動しました。そして光が収まった時、そこにはいつか見た金色の玉が鎮座していました。
その存在を確認した途端、私は横に座っていた桃さんの両耳を大慌てで手で塞ぎます。アレの言葉は桃さんを傷つける可能性が高く……。
(なんで急に出てきたの?!)
と焦る私の耳に、
「そのお役目、どうか私にお任せください」
という低い声が聞こえてきたのでした。
龍さんのおかげで身体に受ける風はほとんど無く、木々が後ろに吹っ飛んで行くように見える超高速移動中でもしっかりと周囲の確認ができます。おかげでどこまでも連なる山々を久しぶりに見ることができました。今住んでいる島だって海底から伸びている山と呼べなくは無いですが、こうして遠くまで連なる山々を見るのは、あの日、あの時以来です。
懐かしさ。そして寂しさと悲しさ。なんとも言えない感情が湧き上がってきては、ぐるぐると渦巻いて言葉になりません。
あの山のずっと向こうに私が育った山があります。たくさんの思い出が眠る場所であり、同時に赤ん坊の頃から一緒だった2頭の馬が眠る場所でもあります。できることならこのままお墓参りに行きたいのですが、寄り道をする余裕が今の私にはありません。ただ視線をそちらに向け続ける事しかできず、心の中で祈りを捧げます。
(あの時はありがとう……。どうか安らかに)
月が中天を通り過ぎて西へと傾き始めた頃、私達はようやくヤマト国の王都である大和にたどり着きました。ようやくとは言いますが、人間の足どころか三太郎さんですら一晩では移動できない距離です。こんな高速移動が可能だったのは、ひとえに龍さんのおかげです。正確な速度は解りませんが、恐らく新幹線以上の速度が出ていたと思います。
そして茴香殿下が治めているアスカ村ではなく王都へ来たのは、確率の問題だったりします。現在の茴香殿下は王太子となっていて、1年のうちの半分以上を王都で過ごしているそうです。当人は政務よりも研究がしたいらしく、少しでもアスカ村に居たがるそうなのですが、王太子としての役目もあるのでどうしても王都に留まる日数が増えるのだとか。また茴香殿下程ではないのですが、双子の弟の蒔蘿殿下も同じように領地と王都を往復しているので、王都の方が双子の殿下のどちらかを捕まえやすいのです。
「……はずだったんだけどなぁ」
眼下には質実剛健といえばよいのか、無骨なまでに実用性重視の頑強な城が見えます。こんな上空に人が浮かんでいるとは誰も思わず、注意がコチラに向いていないので助かっていますが、下手をすれば弓を射掛けられてもおかしくない状況です。まぁ、かなり上空なので矢は届く前に失速するでしょうが。
蒼宮家もそうでしたが、空から光の帯が消えたという非常事態なせいで警戒が厳重過ぎてこれ以上近づけないのです。そしてこの距離だからこそ、緋色宮家の時のように顔見知りを見つけたくても顔の判別ができません。
私の視力では。
三太郎さんや龍さんなら行けるかも!とは思うのですが、龍さんは茴香殿下や蒔蘿殿下、そしてその配下の二人の随身である忍冬さんと片喰さんの顔を知らないので、三太郎さんの誰かに出てきてもらう必要があります。
<金さん、いける?>
<いや、我よりも浦が良いと思う。
覚えているか? 浦と限りなく同化した時のことを>
それはマガツ大陸での事。確かに浦さんと自分の境界がわからなくなる程、同化したことがありました。あれからというもの、浦さんの霊力を借りると視界に霊力の流れや色が見えるようになりました。
蛇足ですが土や火の大妖を倒す際には金さんや桃さんとも同化し、それぞれ触覚や嗅覚が鋭くなりました。金さんの場合は霊力に触れて流れを変えたりできるようになりましたし、桃さんの場合は匂いで霊力の感知ができるようになったのです。なので予測でしかありませんが、龍さんと同化すると聴覚か味覚が鋭くなるのかもしれません。
<あぁ、なるほど視界の強化ですか?>
<でもあれ。霊力が見えるようになるだけのような?>
とはいえ、霊力が見えたという事に気を取られて、視力自体の強化に気づいていなかった可能性もあります。なので物は試しと言う事でやってみたところ……
<……すごい、見えるわ>
ざっと上空2kmぐらいのところに居るのですが、この距離だというのに人の顔の判別ができるのです。驚きすぎて当初の目的を忘れてしまいそうになりましたが、慌てて見知っている顔を探します。とはいえ現在の時刻は、そろそろ東の空の端の色が変わり始めそうな時刻。警備員の数は多くても、見知った顔は王族やそれに準ずる身分な為にこの時間に外に居るとは思えません。
刻一刻と時間が過ぎていきますが、見知っている顔は見つけられず。
<駄目、見つか>
とまで心話で言った、その時。王城の一室の大きな窓が開き、一人の男性が露台へと歩み出てきました。しかもその男性の顔にはしっかりと見覚えがあったのです。
「居た、居たよ!!!!」
思わず声を上げ、その男性の居る露台を指さしました。私の指先を確認した龍さんが、その露台に向けて急降下を開始します。
その男性は私達が露台に着地するまで、全くこちらに気づいていませんでした。空から人が降ってくるなんて思ってもいなかったでしょうし、龍さんの霊力のおかげで風切音なども完全に消えていたので、気づかなくても仕方がありません。
なので私が突然現れ、完全に虚を衝かれた形となった男性は咄嗟に飛び退くと、すぐさま腰に下げていた護身用と思われる装飾皆無の剣へと手を伸ばし、間髪入れずに抜いて飛びかかってきました。
「何者!!!」
「ま、待って忍冬さん!! 私です!」
龍さんが私を抱え、露台から再び浮上して攻撃範囲外へ回避してくれたおかげで助かりましたが、あのままあそこにいれば首が胴体からさようならするところでした。
「何故私の名を……」
過去には一緒に旅をしたこともあるのですが、それもかれこれ7年程前の事。私のことを忘れてしまっているのかもしれません。
<櫻、貴女、布で顔を隠していること忘れているのでは?>
浦さんからのツッコミがきて、初めて「……あ!」と気づきました。ヒノモト国、正確には日差しが激強の海域に入ってからというもの、叔父上から貰ったヴェールを改良して目元だけ開けた布を常に身につけていました。しかも以前とは違い、今は龍さんのおかげで風で顔に張り付くようなこともなく、不快感や不便さよりも快適さのほうが上回った所為でうっかり身につけたままになっていました。
それにヒノモト国では緋桐さんのおかげで、梯梧殿下の前でもヴェールは付けたままで良かったですし、緋色宮家や蒼宮家で問題視されなかったのは牡丹様や菖蒲様は私の素性を知っているので顔を隠す事は当然だと思ってくれていたからでしょう。その結果、ヴェールを付けたままここまで来てしまいました。
「えと、一度は忍冬さんの娘にもなった、私ですよ!!
とと様って呼んでいた事、覚えていませんか??」
私だと解ってもらえるよう、過去の話を持ち出しながらヴェールを取り外します。それまで眉間に深い皺を刻んで睨みつけていた忍冬さんは、私の言動に目を丸くしてしまいました。
「さ、櫻嬢か?! いや、確かに姫沙羅様と良く似ているが……。
本当にあの、これぐらいしかなかった櫻嬢なのか?!」
忍冬さんはそう言うと、手のひらを自分の膝のあたりまで下げました。いや待って。
「そんなに小さくは無かったです!!」
そこは断固として否定しておきます。身体の大きなヤマト国の人にとって、私は確かに小さくは感じたと思いますが、そこまで小さくはない!!
「は……はは、そうだったな。あの幼い子どもが、もうこんなに大きく」
ようやく表情が私の知っている忍冬さんになりました。ただその表情には疲労が強く現れていて、気が抜けた所為もあるのでしょうが声に力がありません。
「大丈夫ですか? なんだか具合が悪そうに見えます」
「心配ない、大丈夫だ。ただ、ここのところ忙しくてな。
それよりどうしたのだ?」
自分の研究の為なら三日三晩徹夜しても平気なヤマト国人が、ここまで疲労困憊になるってどれだけ大変なことがあっただんだと思ったのですが、考えるまでもなく原因は空のアレに決まっています。
「ひとまず中へ……と言いたいところだが、後ろの男は?」
「忍冬さんは金さんと浦さんには会ったことがありますよね?
この方も別の精霊様です」
忍冬さんは呪詛騒動のときに一度だけ、金さんと浦さんの姿を見ています。あの時は私だけでなく全員が手一杯で、何の説明もできませんでした。
「精霊様?
失礼致しました。ご挨拶は後で改めて……」
龍さんに一礼した忍冬さんは部屋の中へと案内してくれました。家具等は最上質でありながら簡素なその部屋は、茴香殿下の部屋の隣にある随身用の待機室らしく、仮眠用の小さめの御帳台と書机ぐらいしかありません。忍冬さんは仮眠を終え、夜伽番の随身と交代するために起床したばかりとの事でした。
「忍冬さんが居るってことは、茴香殿下はここにおられるの?」
「えぇ。とは言っても明日には殿下はアスカ村へ出発されますが」
何でもアスカ村のほうで問題が起きたらしく、茴香殿下は予定を繰り上げて戻る事になったのだとか。その為に忍冬さんは殿下が王都に残した仕事を片付ける必要があり、明日からは別行動なんだそうです。
「入れ違いにならなくて本当に良かったぁ。
殿下たちのどちらかに早急に話さなくてはならない事があるの」
「それは山吹から届いた書簡の内容と関係が?」
「それのこともあるし、それ以外のことも」
王太子に会うのに許可も取らず、更には話す内容すらも大雑把というあり得ない状況ですが、忍冬さんは一言「解りました」とだけ答えて立ち上がると、隣室へとつながる扉へと向かいました。
その後、私達はあの殿下の隠れ家へと移動しました。王宮ではどうしても人目があるため、内密の話しをするには向かないのです。龍さんのおかげで防音などの結界は張れますが、霊力を使わなくても済む手段があるのなら霊力は温存しておくべきです。
中庭にある四阿で待っていると、現れたのは茴香殿下と忍冬さん。そして蒔蘿殿下と片喰さんまでもがやってきました。
「お久しぶりです」
「やぁ、櫻ちゃん。本当に大きくなったねぇ」
にこやかに笑顔で接してくれるのは片喰さんです。昔から蒔蘿殿下と同じぐらい人当たりの良い人ではありますが、今日はなんだか何時も以上ににこやかです。
「皆さんは全く変わらないですね」
本当に何一つ変わってないんですよ。ヤマト国の人が長寿なのは知っていますが、老いてからの時間が長いのではなく若い時間が長いようで……。確かに叔父上や母上も年齢の割には若々しいですが、それは生活環境によるものも大きく。私達ほど恵まれていない生活環境の殿下たちが、初めて会った時と全く変わらない姿というのは驚異的です。
「再会を懐かしむ気持ちは解るのじゃが、時間が無いのではないか?」
挨拶が一区切りついたところで、龍さんがそう切り出しました。確かに時間に余裕はありません。優先順位を付けてさっさと問題をやっつけていく必要があります。
「そうですね。
茴香殿下、蒔蘿殿下。今回は助力のお願いに参りました」
私はそう宣言すると、頭を下げたのでした。
「……まさか理解が追いつかないなんて言葉を使う日が来るとは」
ぐったりとした茴香殿下が、天井を仰ぎ見ながら大きく息を吐きます。
「違うだろ、茴香。
理解が追いつかないんじゃなくて、理解したくないが正解じゃないか?」
その直ぐ横ではテーブルの上で組んだ腕に頭を乗せるようにぐったりとしている蒔蘿殿下が、茴香殿下の言葉に突っ込みを入れました。それに対し「そうかもしれん」とだけ返す茴香殿下です。忍冬さんは再び眉間に深い皺が刻まれてしまいましたし、片喰さんはどこか遠くを見たままです。
隠れ家とはいえ、ここは王族の持ち物。なのでこの四阿もかなり大きいのですが、龍さんに加えて三太郎さんまでもが実体化した為に、かなり手狭に感じます。そんな手狭になった四阿のあちこちから溜息が聞こえてくるので、居心地が悪くて仕方がありません。
「とりあえず念の為に今一度確認するぞ?
届いた書簡にもあったが、天空の光の帯の消失は凶事では無いのだな?」
「その現象自体は全く凶事じゃないです。
龍さんのもとへと精霊力が戻っただけなので」
「となると、急を要するのはヒノモト国の件だな」
一度大きく深呼吸をしたあと、茴香殿下がそう切り出しました。
「あぁ。ずいぶんと舐めた真似をしてくれる」
あまりに不穏な声音にびっくりしてそちらを見れば、蒔蘿殿下が見たことのない悪い笑みを浮かべていました。私が見ている事に気づいた蒔蘿殿下はパッと表情をいつもの笑顔に戻すと、
「櫻嬢、その件は俺が引き受けるから安心して良いよ」
と言ってくれます。頼もしい反面、なんだか嫌な予感がします。
「片喰。しばらくの間、ヒノモト国に行ってきて良いか?」
「駄目に決まっているだろう!!」
嫌な予感、即的中です。どうやら私と一緒にヒノモト国に行きたいらしい蒔蘿殿下が、片喰さんに残りの仕事を全て押し付けようとして口喧嘩じみたやり取りを始めてしまいました。そんな二人をいつもの事とばかりに放置した茴香殿下が
「次に急を要するのは浄化の剣の作成……か。
不躾ながら申し上げます。精霊様方におかれましては……」
「あー、面倒だからそういうのは良い。正直時間がねぇんだよ。
浄化の剣は俺様も浦も金も、何度も相談したうえで決めたことだ」
桃さんが若干の苛立ちを滲ませながら、そう言い切りました。それに金さんや浦さんも頷きます。もしこの時点で霊石に紋を刻むことに成功していなかったら、三太郎さんたちも少しは悩んだ可能性がありますが、既にそれには成功しています。ならば何も悩む必要は無いという結論に三太郎さんたちは達しました。
ただ浄化の剣に使う霊石、その霊力の補充をどうするかという問題があるのです。
霊力の強い地で時間をかければ回復も可能ですが、その場合は無数の浄化の剣が必要になります。回復している間、別の剣を使う事になりますから。流石にそれは現実的ではありません。
例外は緋桐さんに作った剣で、あの剣だけは龍さんのお陰で何処に居ても全ての精霊力が回復していきます。なので常時使用可能なのですが、それでも砂漠では水の精霊力の回復は遅くなりますし、海上に居れば火の精霊力の回復は遅くなります。
「各国の大社に協力を求められませんか?」
そう提案すると殿下は少し考えるように黙ってしまいました。宗教というのは政治と密接に関わるようになると、色々と面倒なことになるのは前世の歴史が証明しています。中学校の時の先生が「泣くよ坊さん、平安京って覚えろよー。平安京に遷都したのは、坊さんを奈良に置き去りにするためだからな」なんて話していた事を思い出します。もしかしたらコチラの世界でも政治と宗教は色々とあるのかもしれません。それに大社=精霊力の強い場所という訳ではありませんから、絶対に大社じゃないと駄目だという訳でもないのです。ただ呪詛騒動のときのように、信仰が集まる地というのはそれなりに力を持ちます。人が立ち入ることが許されていない精霊の為の地へ入り込んで霊石の回復を試みるよりも、ずっと現実的で平和的です。
「我が国から土の大社に協力を要請することはできると思いますし、
土の大社側も断る事はないでしょう。ただ他国の事までは……」
と忍冬さんが思案顔で答え、それに茴香殿下も頷きます。
まぁ、それは当然の話しです。一応ではありますが、各大社や神社は国や朝廷には縛られない独立した機関となっています。なので国が神社に命令することはできませんし、逆も同じです。その慣例を無視して他国の、そしてヤマト国が火や水の大社に命令を出しては新たな騒乱の火種になってしまいます。
「他国に関してまで貴方が背負う必要はありません」
「そうだな。そなた達は己の成すべきことを為せ。
だが大社で回復させる場合、ただそこに安置するだけでは……」
金さんが言うには、精霊力の強い地というのはまさに精霊力があふれる出る地なので、霊力の回復は放置でOKなんだそうです。ただ大社は人が住む地の中では格段に精霊力が強い地ではあるものの、どちらかといえば人々の信仰の力が精霊力を増幅させている地らしく。ただそこに霊力が空っぽになた霊石を置いておいても、回復速度はあまり早く無いのだそう。
「じゃぁ、どうすれば?」
「精霊力を霊石へと導く役目を持つ誰か、あるいは何かが必要じゃな」
答えをくれたのは龍さんですが、その答えは絶望一歩手前の返答でした。精霊力を導く誰かって言われても直ぐに思いつきませんし、何かに至っては想像すらできません。
八方塞がりとか四面楚歌とか嫌な単語が脳内をちらつき出しますが、諦めたらそこで終わりです。何とか知恵を絞り出さねばと唸っていると、金さんの髪の付近に浮かんでいた震鎮鉄の一つが光ったかと思うと、その光はテーブルの上へと移動しました。そして光が収まった時、そこにはいつか見た金色の玉が鎮座していました。
その存在を確認した途端、私は横に座っていた桃さんの両耳を大慌てで手で塞ぎます。アレの言葉は桃さんを傷つける可能性が高く……。
(なんで急に出てきたの?!)
と焦る私の耳に、
「そのお役目、どうか私にお任せください」
という低い声が聞こえてきたのでした。
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