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4章
17歳 -水の極日7-
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(も、もう、無理ぃ……)
必死に足を前へ前へと動かすのですが、これ以上は一歩も動けないと諦めてしまいたくなる程に足が重くて仕方がありません。堪えきれない荒い息はヒューヒューと笛のような音を立てていて、喉も乾ききってしまっています。少しでも多くの酸素が欲しくて何度も空気を目一杯吸い込んでいるのですが、ヒノモト国の灼熱の空気はちっとも呼吸を楽にはしてくれません。
アスカ村を飛び去ったあと、最短距離&最高速度でヒノモト国へと戻ってきたのですが、ヒノモト国の王都の外れに到着した時には既に日は昇りきっていました。なので王宮の使者は兄上の元へ向かっているか、下手をすれば既に到着していると思われ、気が急くのに足がもつれて進まないのです。
ヤマト国の土の大社やアスカ村で盛大なパフォーマンスを披露したのだから、ここでも空を飛んで兄上の元へと向かってしまえば良い……とはいかないのがツライところです。
というのも神や精霊の使いという「救済の象徴」が必要だという三太郎さんたちの意見には賛成しますが、一般的に知られている天女以上の力を持つ存在が私と繋がってしまうと色々と面倒だなとも思うんです。その面倒が私一人にかかるのなら「まぁ良いか」と思ってしまわなくもないのですが、私から兄上、そして母上や叔父上へと線が繋がってしまい、家族のみんなを危険に晒す可能性があると思うと素性は隠すに限ります。少なくとも叔父上たちに相談して結論が出るまでは、私個人の判断では動く訳にはいきません。
「櫻嬢、失礼」
私の斜め後ろにいた蒔蘿殿下が声をかけてきたかと思ったら、私をひょいと自分の左腕に座らせるようにして抱き上げます。子供の頃に良く抱えられた体勢ではありますが、私は既に17歳。流石にこれは恥ずかしい!
「で、殿下?!」
「ごめんね、このほうが速いから」
申し訳無さそうなその言葉に嘘偽りはなく、蒔蘿殿下は私を抱えたままぐんぐんと速度を上げて道を走り抜けていきます。ヤマト国の人たちはパワータイプの人が多く、スピードはヒノモト国人のほうが優れている印象でしたが、それでも私と比べたら圧倒的に速い事は火を見るより明らかです。
そんな蒔蘿殿下ですが、いつもの柔和な表情や雰囲気はなく、かなり厳しい表情をしています。それに軽やかなトークが持ち味の蒔蘿殿下が、茴香殿下のように言葉が少なく……。どうやら時間が押し迫っているという事もありますが、何よりあまりの気温の高さに流石の蒔蘿殿下も参ってしまっているようです。
不慣れな暑さに参っている蒔蘿殿下の負担を軽減する為に、私も抱きかかえられていないで自分で走った方が良いとは思うのですが、私の走行スピードは蒔蘿殿下の歩く速度+アルファ程度のスピードなので、今だけは申し訳ないけれど蒔蘿殿下に甘えることにします。何より「自分で走る」「いや、抱き上げる」という問答をしている時間も惜しいのです。
「その先を右です」
道案内をしながら頭から被ったヴェールの位置を直します。龍さんの霊力が今は働いていない為に、布が顔に張り付くんですよね。蒔蘿殿下もヒノモト国の風習に倣って白い布を頭からかぶっていますが、服はヤマト国伝統の服なので少しだけチグハグ感があります。
角を曲がった先は宿のある通りなのですが、遠くに人だかりが見えました。嫌な予感にジワッと汗が滲みます。
「殿下、あそこです!!」
「承知!」
ラストスパートといわんばかりにスピードを上げた蒔蘿殿下は、その大きな身体の長い脚で一気に距離を縮めました。
「ですから! 準備をする間、少しお待ち下さいと申し上げております!」
兄上の声が聞こえてきますが、その声には微かに焦りがにじみ出ていました。太陽は確かに昇っていますが、我が家だけで通用する24時制でいえば6時を過ぎたばかりという時間です。ヒノモト国風でいえば火の大社の一の鐘が鳴ったばかりで、人々は起床して身支度をしている最中といった頃合いです。それを証明するように通りに面した窓から覗く顔は、少し寝ぼけ眼だったり寝癖がついていたりしています。
「止めよっ! それでも誇り高きヒノモトの民か!!」
兄上の腕を掴んで無理やり引っ張っていこうとしている兵士を止めているのは、緋桐さんでした。その姿を見つけて少しだけホッとします。王族の地位を返上したと当人が言っていたので以前のような権力は無いでしょうが、それでも武力に優れる緋桐さんを尊敬する人はヒノモト国にはたくさんいます。
私達は人垣の中へいきなり突入はせずに、裏手へと周って外付けの階段に向かいました。そして人目が無いことを確認してから、蒔蘿殿下は階段の踊り場に向かって大きく飛びあがり、片手で縁を掴むといとも簡単に階段上へと移動します。幸いにも皆の目は騒動の大元である兄上や緋桐さんの居る正面玄関のほうへ向いていたので、コチラを見ている人は誰も居ません。その事にホッとするべきなのでしょうが、今の私はいきなりの大ジャンプに吃驚してしまい、心臓がバックンバックンと早鐘をうっていてそれどころじゃありません。
(と、飛び上がる前に一声かけてほしかった……)
私が心臓の乱打を抑え込もうと深呼吸している間に、蒔蘿殿下はトントンと軽やかな足音を(おそらくわざと)立てて階段を下りていきました。私達が現れた途端に何故か周囲は静まりかえり、視線がこちらに集中していることがわかります。確かに蒔蘿殿下……というか身長が2mを余裕で超えるヤマト国人は、服装とあいまってこの国ではとにかく目立ちます。殿下と一緒だと迷子にならなくて良さそうだなぁなんて思っていたら、
「櫻嬢、大丈夫か?!」
「わわっ?! え?? 緋桐さん??」
いきなり横から腰を掴まれてグイッと引き寄せられ、バランスを崩しそうになって反射的に抵抗して腕に力が入ります。そしてしがみついたまま後ろを見れば、不機嫌そうな顔をした緋桐さんが私に向かって手を伸ばしていました。私よりずっと背が高い緋桐さんの顔が、私より低い場所にあり……。色々なことが立て続けに起こって今の今まで忘れていたのですが、自分が蒔蘿殿下に抱き上げられたままな事を思い出しました。しかもその殿下の頭を抱きしめちゃってる!
「じ、蒔蘿殿下、もう大丈夫です」
「そう? 櫻ちゃんなら何時でも抱きあげるから言ってね」
そう言って私をゆっくりと下ろしながらニコッと笑う蒔蘿殿下。どうやらいつもの調子が戻ってきたようです。というか、小さい時と違って再会後は「櫻嬢」って呼んでいたのに、何故またちゃん呼びに戻したんだろう? 殿下にとって私は子供だから気にするなっていう気遣いなのかな?
「じ……ら殿下? って蒔蘿殿?!」
緋桐さんの驚いた声に、周囲にざわめきが走りました。何より兄上の周りを囲んでいたヒノモト国の使者の顔色が、ここまで変わる?と思うぐらいに一気に悪くなります。ただ兵士たちの様子に変化がないところを見ると、どうやら諸々の事情を知っているのは使者だけのようです。
「久しいな、緋桐殿。
この度、吉野家が新しい技術をこの地にて展開すると聞いてな。
それに我が国で作られたモノが使われるとあれば、
私も確認しておきたいと思ったのだが……。同行して良いかな?」
良いかな?と聞いてはいるものの、蒔蘿殿下からは「否」とは言わせない圧を感じます。それに表情も何時もと同じような柔和な笑顔なのに、なんだか背中がゾクッとするような笑顔で……
(あっ、目が笑ってないんだ……)
なんだか急に蒔蘿殿下が怖く感じてしまいます。そんな私の表情の変化に気づいたのか、少し苦笑いをした蒔蘿殿下は
「ほら、槐くんにも色々と言わなくちゃいけない事があるんでしょ?」
と、私の知っている笑顔で優しく促してくれました。それに私は頷いてから兄上へと小走りで向かいます。その間も周囲の目は蒔蘿殿下と緋桐さんへと向いていて、私達平民の兄妹には関心が無いようです。その隙に私は兄上の元へと向かうと、朝の支度に手間取ってしまっただけだと周囲に思われるように普通の声量で「お待たせしました」と言ってから、声を潜めて
「報告しなくちゃいけない事が色々とあるんだけど、
無くなった部品の予備は少しだけど貰ってきたから安心して。
まぁ、蒔蘿殿下が来てくださったから、
予備は無くても大丈夫かもしれないけどね」
と伝えます。兄上も私に合わせるように「大丈夫だよ、殿下の案内ご苦労さま」と普通の声量で応え、私の背中をポンポンと叩いて労をねぎらう振りをしながら、耳元で囁き返してきました。
「無事で良かった。あとは僕に任せて櫻は三太郎様たちと部屋に居て。
熱砂の海は櫻には暑すぎるし、何より良い思い出が無いだろうから」
兄上は気遣ってそう言ってくれますが、私の方も同時進行で動かないといけないことがあるのです。突然現れた他国の王族への対応で使者や兵士がてんやわんやになっている間に、兄上にしっかりと忘れずに報告しておきます。
「そうしたいのは山々なんだけど、ちょっと行く場所があって……。
其の為に緋桐さんを借りたいんだけど、兄上の方は大丈夫?」
「あぁ、僕の方は構わない。蒔蘿殿下もおられるしね」
それにと兄上が続けて言うには、熱砂の海では梯梧殿下や宰相補佐といった人たちと合流する予定らしく。妨害側がオーバーキルされそうなメンバーが待ち構えているんだそうです。思わず心の中で合掌して、ご愁傷さまと言ってしまいました。まぁ自業自得なんですが……。
その後、私は兄上や蒔蘿殿下と別れて一度部屋へと戻りました。当然ながら緋桐さんも一緒です。そして窓にかかっている布をしっかりとおろして外からの視線を遮ると、三太郎さんと龍さんに出てきてもらいます。そして緋桐さんに一通り事情を説明してもらっている間に、私はお風呂へ向かいます。昨晩から続く怒涛の展開にお風呂どころか身体を拭く時間すら無く、気持ち悪くて仕方がありません。
ヒノモト国では水の極日ですら雨は滅多に降らないのですが、国内を流る川の水量が増えて水位がぐっと上がります。ヒノモト国の主要な大河はヒノモト国と天都の境を越えて伸びているので、そちらの方で大雨になっているのでしょう。特に今年は例年以上に水位が上がっているらしく、前回来た時に比べると宿で使える水も増えていて助かります。
とはいえ我が家のようにザブザブ使う事はできないので、タライに水を溜めてそこに入り、頭から順に石鹸で洗い流していきます。途中でたらいの水を何度か浄水の霊石で綺麗にしながら入り、最後もしっかり浄水で水を綺麗にしてから出ます。浦さんの浄水レベルを考えると飲水にできるレベルにまで綺麗になっているのですが、流石に心理的に抵抗があって飲水にはできません。でもお風呂として使うには充分で、同じ水を兄上と二人で使うことができます。
「はぁ……。やっと一息ついたぁ」
ゆっくりと大きく呼吸をすると、慣れ親しんだ甘い匂いがして心が落ち着いていきます。私が使っている石鹸は前世でも庭に植えられていた蝋梅という花と良く似た香りの花の精油が使われていて、甘い香りが特徴です。そこに極少量のリンゴ酢をお湯で薄めたリンスの香りも加わって、甘さに少しだけ酸味を感じる香りになっています。
「ふぁ……あ。ダメダメ!」
ようやく一息いれられたのは良いのですが、その所為なのか急に眠気が襲ってきました。徹夜な上に、移動距離も会った人の数も前代未聞なので仕方がないのですが、眠る訳にはいかないので両頬をパチンッと叩いて眠気を飛ばします。
そして髪の水分を「撥水」と「乾燥」の霊石で適度に飛ばし、手早く身だしなみを整えます。下着と服を替え、母上が持たせてくれた艶糸を使ったレースのヴェールを手に部屋を出ました。レースは意外な事にこの世界にもあるのですが、前世のような複雑な模様のものではなく、極めてシンプルなものでした。前世でも奈良時代には日本にレースが入ってきていたので、古代~中世日本レベルのこの世界にあってもそれほど不思議ではないのかもしれません。
ただし母上と橡が作ってくれたこのレースは記憶映像の中で祖母が編んでいたモノを元に作っているので、かなりゴージャスなレース編みとなっています。問題は母上や橡にお願いする為には、一度私が作る必要があったって事でしょうか。母上たちに記憶映像は見せられないからなぁ……。
私が小さいパターンを四苦八苦して作り上げたのに対し、母上たちは私が作った小さなパターンを見ただけであっという間に理解し、しかも短時間で綺麗な1.5m四方のヴェールを作り上げた時には、この世界の人はやっぱりすごいなと思ったものです。男性陣の身体能力の高さにばかり目がいきがちですが、女性は女性でやっぱりすごいんですよ。手先の器用さもさることながら、一度で編み方や仕組みを覚える記憶力や応用力なんかも優れている気がします。
「つまり火の大社で霊石の霊力の回復と浄化を頼めないか……ってことか」
「うん。緋桐さんの剣は特別製だから常時回復するんだけど、
これから出回る予定の浄化の剣はそうはいかないから」
部屋で水分補給をしつつ、緋桐さんと話を詰めていきます。大社や神社は王家とは別の権力を持ちますが、王家からの要請を無下にはできません。もちろん逆の場合も無下にはできず、王家と大社は持ちつ持たれつの関係です。
「土の大社の方は茴香殿下が手を回してくれているから、
あとは火と水の大社なんだけど……」
ついでに水はミズホ国にある大社ではなく、天都の神社を使う予定なことも伝えます。ただ大社にしろ神社にしろそこで回復させるには一つだけ問題があって、手伝ってくれる精霊が必要なんです。幸いにも土の大社は軽銀さんが手伝ってくれる事になりましたが、火の精霊と水の精霊にも協力を要請しなくてはなりません。
そして私が会ったことのある精霊の中で、火の精霊は桃さんを除くと緋桐さんの守護精霊しかいないのです。問題は緋桐さんへの守護と同時に、周囲の霊力を霊石に流すような霊力操作ができるのかどうか……。こればかりは三太郎さんもやってみないと分からないそうで、こうして座っている間も龍さんと桃さんが緋桐さん経由で守護精霊に「大至急来られたし」というメッセージを送り続けています。
緋桐さんへの説明も終わり、後は緋桐さんの守護精霊待ちなのですが、ここでじっと待っているのも時間の無駄なような気がして、
「時間が惜しいから、あとは大社に向かいながら……」
と言って立ち上がると、私の手を緋桐さんが掴みました。
「ひとつ尋ねたいんだが、蒔蘿殿や茴香殿とは仲が良いのか?」
「え? そりゃぁ叔父上の友人で、私も小さい頃からの知り合いなので」
「それだけか?」
「他に何が??」
「いや、先程お会いした時に挑発されたうえに釘をさされたような気が……」
視線をそらし、微妙に言葉を濁す緋桐さん。蒔蘿殿下が緋桐さんを挑発する理由に心当たりはないので、おそらく蒔蘿殿下のあの言動がそう思えただけなんだと思います。それとも私が兄上と話しているときに、なにかあったのでしょうか?
「櫻は保護者が多いですからねぇ」
と言う浦さんも
「まぁ、それだけ危なっかしいという事だ」
と苦笑する金さんも間違いなく保護者枠で、言われてみれば私の周りは保護者だらけな気がします。幼少時ならばともかく、そろそろ良い年齢なので独り立ちするべきなんでしょうが、三太郎さんの居ない生活なんて考えられないので、独り立ちはまだまだできそうにありません。
「おっ、あいつが近くまで来たぞ!」
会話に加わっていなかった桃さんが、急にそう言って立ち上がりました。どうやら緋桐さんの守護精霊が近くまで来ているようです。
「思っていたよりも早くに来てくれて良かったぁ。
龍さん、桃さん、火の大社で落ち合いましょうと伝えて」
此処に来てもらうより現地で待ち合わせのほうが良いだろうと、そうお願いをします。
「……しかと伝えた。では儂らは再び中へ戻るとするか」
その龍さんの言葉を最後に、部屋の中は私と緋桐さんの二人きりになりました。なんだか少し緋桐さんの様子が変ですが、今やることに変わりません。
「じゃぁ、行こう!」
ヴェールをしっかりと被って私は部屋の扉を開けたのでした。
必死に足を前へ前へと動かすのですが、これ以上は一歩も動けないと諦めてしまいたくなる程に足が重くて仕方がありません。堪えきれない荒い息はヒューヒューと笛のような音を立てていて、喉も乾ききってしまっています。少しでも多くの酸素が欲しくて何度も空気を目一杯吸い込んでいるのですが、ヒノモト国の灼熱の空気はちっとも呼吸を楽にはしてくれません。
アスカ村を飛び去ったあと、最短距離&最高速度でヒノモト国へと戻ってきたのですが、ヒノモト国の王都の外れに到着した時には既に日は昇りきっていました。なので王宮の使者は兄上の元へ向かっているか、下手をすれば既に到着していると思われ、気が急くのに足がもつれて進まないのです。
ヤマト国の土の大社やアスカ村で盛大なパフォーマンスを披露したのだから、ここでも空を飛んで兄上の元へと向かってしまえば良い……とはいかないのがツライところです。
というのも神や精霊の使いという「救済の象徴」が必要だという三太郎さんたちの意見には賛成しますが、一般的に知られている天女以上の力を持つ存在が私と繋がってしまうと色々と面倒だなとも思うんです。その面倒が私一人にかかるのなら「まぁ良いか」と思ってしまわなくもないのですが、私から兄上、そして母上や叔父上へと線が繋がってしまい、家族のみんなを危険に晒す可能性があると思うと素性は隠すに限ります。少なくとも叔父上たちに相談して結論が出るまでは、私個人の判断では動く訳にはいきません。
「櫻嬢、失礼」
私の斜め後ろにいた蒔蘿殿下が声をかけてきたかと思ったら、私をひょいと自分の左腕に座らせるようにして抱き上げます。子供の頃に良く抱えられた体勢ではありますが、私は既に17歳。流石にこれは恥ずかしい!
「で、殿下?!」
「ごめんね、このほうが速いから」
申し訳無さそうなその言葉に嘘偽りはなく、蒔蘿殿下は私を抱えたままぐんぐんと速度を上げて道を走り抜けていきます。ヤマト国の人たちはパワータイプの人が多く、スピードはヒノモト国人のほうが優れている印象でしたが、それでも私と比べたら圧倒的に速い事は火を見るより明らかです。
そんな蒔蘿殿下ですが、いつもの柔和な表情や雰囲気はなく、かなり厳しい表情をしています。それに軽やかなトークが持ち味の蒔蘿殿下が、茴香殿下のように言葉が少なく……。どうやら時間が押し迫っているという事もありますが、何よりあまりの気温の高さに流石の蒔蘿殿下も参ってしまっているようです。
不慣れな暑さに参っている蒔蘿殿下の負担を軽減する為に、私も抱きかかえられていないで自分で走った方が良いとは思うのですが、私の走行スピードは蒔蘿殿下の歩く速度+アルファ程度のスピードなので、今だけは申し訳ないけれど蒔蘿殿下に甘えることにします。何より「自分で走る」「いや、抱き上げる」という問答をしている時間も惜しいのです。
「その先を右です」
道案内をしながら頭から被ったヴェールの位置を直します。龍さんの霊力が今は働いていない為に、布が顔に張り付くんですよね。蒔蘿殿下もヒノモト国の風習に倣って白い布を頭からかぶっていますが、服はヤマト国伝統の服なので少しだけチグハグ感があります。
角を曲がった先は宿のある通りなのですが、遠くに人だかりが見えました。嫌な予感にジワッと汗が滲みます。
「殿下、あそこです!!」
「承知!」
ラストスパートといわんばかりにスピードを上げた蒔蘿殿下は、その大きな身体の長い脚で一気に距離を縮めました。
「ですから! 準備をする間、少しお待ち下さいと申し上げております!」
兄上の声が聞こえてきますが、その声には微かに焦りがにじみ出ていました。太陽は確かに昇っていますが、我が家だけで通用する24時制でいえば6時を過ぎたばかりという時間です。ヒノモト国風でいえば火の大社の一の鐘が鳴ったばかりで、人々は起床して身支度をしている最中といった頃合いです。それを証明するように通りに面した窓から覗く顔は、少し寝ぼけ眼だったり寝癖がついていたりしています。
「止めよっ! それでも誇り高きヒノモトの民か!!」
兄上の腕を掴んで無理やり引っ張っていこうとしている兵士を止めているのは、緋桐さんでした。その姿を見つけて少しだけホッとします。王族の地位を返上したと当人が言っていたので以前のような権力は無いでしょうが、それでも武力に優れる緋桐さんを尊敬する人はヒノモト国にはたくさんいます。
私達は人垣の中へいきなり突入はせずに、裏手へと周って外付けの階段に向かいました。そして人目が無いことを確認してから、蒔蘿殿下は階段の踊り場に向かって大きく飛びあがり、片手で縁を掴むといとも簡単に階段上へと移動します。幸いにも皆の目は騒動の大元である兄上や緋桐さんの居る正面玄関のほうへ向いていたので、コチラを見ている人は誰も居ません。その事にホッとするべきなのでしょうが、今の私はいきなりの大ジャンプに吃驚してしまい、心臓がバックンバックンと早鐘をうっていてそれどころじゃありません。
(と、飛び上がる前に一声かけてほしかった……)
私が心臓の乱打を抑え込もうと深呼吸している間に、蒔蘿殿下はトントンと軽やかな足音を(おそらくわざと)立てて階段を下りていきました。私達が現れた途端に何故か周囲は静まりかえり、視線がこちらに集中していることがわかります。確かに蒔蘿殿下……というか身長が2mを余裕で超えるヤマト国人は、服装とあいまってこの国ではとにかく目立ちます。殿下と一緒だと迷子にならなくて良さそうだなぁなんて思っていたら、
「櫻嬢、大丈夫か?!」
「わわっ?! え?? 緋桐さん??」
いきなり横から腰を掴まれてグイッと引き寄せられ、バランスを崩しそうになって反射的に抵抗して腕に力が入ります。そしてしがみついたまま後ろを見れば、不機嫌そうな顔をした緋桐さんが私に向かって手を伸ばしていました。私よりずっと背が高い緋桐さんの顔が、私より低い場所にあり……。色々なことが立て続けに起こって今の今まで忘れていたのですが、自分が蒔蘿殿下に抱き上げられたままな事を思い出しました。しかもその殿下の頭を抱きしめちゃってる!
「じ、蒔蘿殿下、もう大丈夫です」
「そう? 櫻ちゃんなら何時でも抱きあげるから言ってね」
そう言って私をゆっくりと下ろしながらニコッと笑う蒔蘿殿下。どうやらいつもの調子が戻ってきたようです。というか、小さい時と違って再会後は「櫻嬢」って呼んでいたのに、何故またちゃん呼びに戻したんだろう? 殿下にとって私は子供だから気にするなっていう気遣いなのかな?
「じ……ら殿下? って蒔蘿殿?!」
緋桐さんの驚いた声に、周囲にざわめきが走りました。何より兄上の周りを囲んでいたヒノモト国の使者の顔色が、ここまで変わる?と思うぐらいに一気に悪くなります。ただ兵士たちの様子に変化がないところを見ると、どうやら諸々の事情を知っているのは使者だけのようです。
「久しいな、緋桐殿。
この度、吉野家が新しい技術をこの地にて展開すると聞いてな。
それに我が国で作られたモノが使われるとあれば、
私も確認しておきたいと思ったのだが……。同行して良いかな?」
良いかな?と聞いてはいるものの、蒔蘿殿下からは「否」とは言わせない圧を感じます。それに表情も何時もと同じような柔和な笑顔なのに、なんだか背中がゾクッとするような笑顔で……
(あっ、目が笑ってないんだ……)
なんだか急に蒔蘿殿下が怖く感じてしまいます。そんな私の表情の変化に気づいたのか、少し苦笑いをした蒔蘿殿下は
「ほら、槐くんにも色々と言わなくちゃいけない事があるんでしょ?」
と、私の知っている笑顔で優しく促してくれました。それに私は頷いてから兄上へと小走りで向かいます。その間も周囲の目は蒔蘿殿下と緋桐さんへと向いていて、私達平民の兄妹には関心が無いようです。その隙に私は兄上の元へと向かうと、朝の支度に手間取ってしまっただけだと周囲に思われるように普通の声量で「お待たせしました」と言ってから、声を潜めて
「報告しなくちゃいけない事が色々とあるんだけど、
無くなった部品の予備は少しだけど貰ってきたから安心して。
まぁ、蒔蘿殿下が来てくださったから、
予備は無くても大丈夫かもしれないけどね」
と伝えます。兄上も私に合わせるように「大丈夫だよ、殿下の案内ご苦労さま」と普通の声量で応え、私の背中をポンポンと叩いて労をねぎらう振りをしながら、耳元で囁き返してきました。
「無事で良かった。あとは僕に任せて櫻は三太郎様たちと部屋に居て。
熱砂の海は櫻には暑すぎるし、何より良い思い出が無いだろうから」
兄上は気遣ってそう言ってくれますが、私の方も同時進行で動かないといけないことがあるのです。突然現れた他国の王族への対応で使者や兵士がてんやわんやになっている間に、兄上にしっかりと忘れずに報告しておきます。
「そうしたいのは山々なんだけど、ちょっと行く場所があって……。
其の為に緋桐さんを借りたいんだけど、兄上の方は大丈夫?」
「あぁ、僕の方は構わない。蒔蘿殿下もおられるしね」
それにと兄上が続けて言うには、熱砂の海では梯梧殿下や宰相補佐といった人たちと合流する予定らしく。妨害側がオーバーキルされそうなメンバーが待ち構えているんだそうです。思わず心の中で合掌して、ご愁傷さまと言ってしまいました。まぁ自業自得なんですが……。
その後、私は兄上や蒔蘿殿下と別れて一度部屋へと戻りました。当然ながら緋桐さんも一緒です。そして窓にかかっている布をしっかりとおろして外からの視線を遮ると、三太郎さんと龍さんに出てきてもらいます。そして緋桐さんに一通り事情を説明してもらっている間に、私はお風呂へ向かいます。昨晩から続く怒涛の展開にお風呂どころか身体を拭く時間すら無く、気持ち悪くて仕方がありません。
ヒノモト国では水の極日ですら雨は滅多に降らないのですが、国内を流る川の水量が増えて水位がぐっと上がります。ヒノモト国の主要な大河はヒノモト国と天都の境を越えて伸びているので、そちらの方で大雨になっているのでしょう。特に今年は例年以上に水位が上がっているらしく、前回来た時に比べると宿で使える水も増えていて助かります。
とはいえ我が家のようにザブザブ使う事はできないので、タライに水を溜めてそこに入り、頭から順に石鹸で洗い流していきます。途中でたらいの水を何度か浄水の霊石で綺麗にしながら入り、最後もしっかり浄水で水を綺麗にしてから出ます。浦さんの浄水レベルを考えると飲水にできるレベルにまで綺麗になっているのですが、流石に心理的に抵抗があって飲水にはできません。でもお風呂として使うには充分で、同じ水を兄上と二人で使うことができます。
「はぁ……。やっと一息ついたぁ」
ゆっくりと大きく呼吸をすると、慣れ親しんだ甘い匂いがして心が落ち着いていきます。私が使っている石鹸は前世でも庭に植えられていた蝋梅という花と良く似た香りの花の精油が使われていて、甘い香りが特徴です。そこに極少量のリンゴ酢をお湯で薄めたリンスの香りも加わって、甘さに少しだけ酸味を感じる香りになっています。
「ふぁ……あ。ダメダメ!」
ようやく一息いれられたのは良いのですが、その所為なのか急に眠気が襲ってきました。徹夜な上に、移動距離も会った人の数も前代未聞なので仕方がないのですが、眠る訳にはいかないので両頬をパチンッと叩いて眠気を飛ばします。
そして髪の水分を「撥水」と「乾燥」の霊石で適度に飛ばし、手早く身だしなみを整えます。下着と服を替え、母上が持たせてくれた艶糸を使ったレースのヴェールを手に部屋を出ました。レースは意外な事にこの世界にもあるのですが、前世のような複雑な模様のものではなく、極めてシンプルなものでした。前世でも奈良時代には日本にレースが入ってきていたので、古代~中世日本レベルのこの世界にあってもそれほど不思議ではないのかもしれません。
ただし母上と橡が作ってくれたこのレースは記憶映像の中で祖母が編んでいたモノを元に作っているので、かなりゴージャスなレース編みとなっています。問題は母上や橡にお願いする為には、一度私が作る必要があったって事でしょうか。母上たちに記憶映像は見せられないからなぁ……。
私が小さいパターンを四苦八苦して作り上げたのに対し、母上たちは私が作った小さなパターンを見ただけであっという間に理解し、しかも短時間で綺麗な1.5m四方のヴェールを作り上げた時には、この世界の人はやっぱりすごいなと思ったものです。男性陣の身体能力の高さにばかり目がいきがちですが、女性は女性でやっぱりすごいんですよ。手先の器用さもさることながら、一度で編み方や仕組みを覚える記憶力や応用力なんかも優れている気がします。
「つまり火の大社で霊石の霊力の回復と浄化を頼めないか……ってことか」
「うん。緋桐さんの剣は特別製だから常時回復するんだけど、
これから出回る予定の浄化の剣はそうはいかないから」
部屋で水分補給をしつつ、緋桐さんと話を詰めていきます。大社や神社は王家とは別の権力を持ちますが、王家からの要請を無下にはできません。もちろん逆の場合も無下にはできず、王家と大社は持ちつ持たれつの関係です。
「土の大社の方は茴香殿下が手を回してくれているから、
あとは火と水の大社なんだけど……」
ついでに水はミズホ国にある大社ではなく、天都の神社を使う予定なことも伝えます。ただ大社にしろ神社にしろそこで回復させるには一つだけ問題があって、手伝ってくれる精霊が必要なんです。幸いにも土の大社は軽銀さんが手伝ってくれる事になりましたが、火の精霊と水の精霊にも協力を要請しなくてはなりません。
そして私が会ったことのある精霊の中で、火の精霊は桃さんを除くと緋桐さんの守護精霊しかいないのです。問題は緋桐さんへの守護と同時に、周囲の霊力を霊石に流すような霊力操作ができるのかどうか……。こればかりは三太郎さんもやってみないと分からないそうで、こうして座っている間も龍さんと桃さんが緋桐さん経由で守護精霊に「大至急来られたし」というメッセージを送り続けています。
緋桐さんへの説明も終わり、後は緋桐さんの守護精霊待ちなのですが、ここでじっと待っているのも時間の無駄なような気がして、
「時間が惜しいから、あとは大社に向かいながら……」
と言って立ち上がると、私の手を緋桐さんが掴みました。
「ひとつ尋ねたいんだが、蒔蘿殿や茴香殿とは仲が良いのか?」
「え? そりゃぁ叔父上の友人で、私も小さい頃からの知り合いなので」
「それだけか?」
「他に何が??」
「いや、先程お会いした時に挑発されたうえに釘をさされたような気が……」
視線をそらし、微妙に言葉を濁す緋桐さん。蒔蘿殿下が緋桐さんを挑発する理由に心当たりはないので、おそらく蒔蘿殿下のあの言動がそう思えただけなんだと思います。それとも私が兄上と話しているときに、なにかあったのでしょうか?
「櫻は保護者が多いですからねぇ」
と言う浦さんも
「まぁ、それだけ危なっかしいという事だ」
と苦笑する金さんも間違いなく保護者枠で、言われてみれば私の周りは保護者だらけな気がします。幼少時ならばともかく、そろそろ良い年齢なので独り立ちするべきなんでしょうが、三太郎さんの居ない生活なんて考えられないので、独り立ちはまだまだできそうにありません。
「おっ、あいつが近くまで来たぞ!」
会話に加わっていなかった桃さんが、急にそう言って立ち上がりました。どうやら緋桐さんの守護精霊が近くまで来ているようです。
「思っていたよりも早くに来てくれて良かったぁ。
龍さん、桃さん、火の大社で落ち合いましょうと伝えて」
此処に来てもらうより現地で待ち合わせのほうが良いだろうと、そうお願いをします。
「……しかと伝えた。では儂らは再び中へ戻るとするか」
その龍さんの言葉を最後に、部屋の中は私と緋桐さんの二人きりになりました。なんだか少し緋桐さんの様子が変ですが、今やることに変わりません。
「じゃぁ、行こう!」
ヴェールをしっかりと被って私は部屋の扉を開けたのでした。
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