【本編完結済】未来樹 -Mirage-

詠月初香

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4章

17歳 -水の極日8-

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意識がゆらゆらと波に揺られるように揺蕩って、浮上したり沈下したりを繰り返します。この17年間、変わることがほとんど無かった私の心の中にある部屋。ここは真夏でも暑くならないし、真冬でも寒くなりません。私の精神世界だから室温も私の思うままになるようです。その慣れ親しんだ部屋で寝返りをうってから再び丸まって眠っていると、横にいた桃さんがぽんぽんと背中をあやすように撫でてくれました。この部屋の中で赤ん坊だった事はありませんし、肉体年齢的にもあやされて喜ぶような年齢はとうの昔に終わっています。なので恥ずかしいような擽ったいような気持ちになるのですが、不思議と気持ち良くも思えて……。

疲れているってことが一番の理由なんでしょうが、三太郎さんが傍に居てくれるからこその安らぎや心強さもあって、なかなか起き上がる事ができません。

(寝てる場合じゃない……はずなんだけど、なんだっけ……。
 何かしなくちゃいけないことがあったような……)

意識が浮上する度にそう思うのですが、直ぐに意識は朧げになって霧散してしまいます。

(確か緋桐殿下さんといっしょに火の大社おおやしろに行ったはず……)

次に意識が浮上した時、そんな事を思い出しました。記憶も意識も何もかもがあやふやで、緋桐さんの敬称すら定まらず。そのまま再び意識が…………。




今朝、火の大社で緋桐さんの守護精霊と落ち合った私は、彼?に火の精霊力の誘導をお願いしました。ここまでは良かったのです。ここまでは!

緋桐さんの守護精霊は二つ返事で引き受けてくれたのですが、問題が発覚したのはその後でした。まず1つめにして最大の問題となったのは、私が大社の中に入れない事です。何でも火の守護を持たない(と他人からは見えている)私は、規則で外苑までしか入れないんだとか。一時的な加護を受けたい人の為の施設が外苑と内苑の境目にあるのですが、そこですら中枢部からは遠く。例外的に国賓は大社本殿の外回廊までは入れるそうですが、逆にいえば国賓ですら外回廊止まりです。

できるだけ霊力の集まる場所を見つけ、そこを指定して霊石の霊力の補充や浄化をお願いする予定だったのですが、計画がいきなり頓挫してしまいました。お願いする相手が精霊だけなら私が目視する必要は無いのですが、霊石の管理は人間がする事になるので人間側にも話を通さなくてはなりません。その話を通すのに王家出身の緋桐さんが居た方が話しが早いだろうと思って彼に同行をお願いしていた訳ですが、それ以前の問題でした。

しかも時期が悪すぎました。水の極日の期間、火の大社は火の霊力を少しで弱めない為に外部との接触を極限まで減らすのだそうです。そのために加護の受付も、この10日間は受け付けないという徹底ぶりです。なので例え緋桐さんが居たとしても「申し訳ございませんが、水の極日が終わってから今一度足をお運びください」と言われてお終いでしょう。

日数に余裕があるのならそれでも良いのですが、この後は再び天都に行って水の神社かむやしろにも話を通す必要があります。そのためには菖蒲あやめ様に声をかけた方が良いでしょうし、そのためには今度こそ先触れを出して予定を聞く必要があります。準備のための準備が必要だなんて華族や宮家って面倒くさいって思ってしまいますが、前世の気安い友人相手だって連絡無しの突撃訪問は褒められた行為じゃありません。

更にいえば蒔蘿じら殿下と一緒にいられる貴重な機会なので、電報システムや通話のできるアイテム開発に関して意見を聞きたいですし、兄上主導で進めているソーラークッカーの方も気になります。それに前回は断念せざるを得なかった油梨あぶらなしの実、できれば苗を探す時間もほしいですし、その他の油が取れる植物や料理の幅を広げるスパイス類も探したいのです。

本当に色々とやりたいことが山積みで……。

優先順位を考えたら世界の崩壊対策が最優先かつ集中してやるべきで、それ以外は世界の崩壊を止めてからにするべきなのでしょうが、どうにも心がそれに集中することを嫌がります。世界が崩壊するなんて現実味のない話しだからなのか、そうする事で心の平穏を守っているのかは自分でも判断できません。

何にしても時間が惜しいと判断した私達は、絶対に拒否ができない手段を取ることにしました。とはいえ武力で押し通すような乱暴な方法は論外なので、ヤマト国の土の大社で使った手と同じことをやる事にしました。緋桐さんの手引きで人目の無い場所へ移動した私は、今一度ヴェールがしっかりと顔を隠しているか確認をしてから、私の中にいる龍さんと桃さんに声をかけました。

「桃さん、準備は良い? 思いっきり大社周辺を浄化しちゃって。
 龍さんもお願いね。風はあまり私に当てないでほしいな」

<おう、任せとけ!>

<解っておる解っておる>

ふたりとも良い返事です。気心のしれた桃さんはもちろん、龍さんですら最近では私の意図を的確に汲み取ってくれるので、細かいお願いまでしなくてすみます。次の瞬間、龍さんは私の周りに結界を張ってから超高速で天高くまで飛翔させてくれました。当然ながら私一人で、緋桐さんは隠れてもらっています。後で「先ほど火の神の啓示を受けた」とか言って、私を神の使いとしてエスコートする役目を請け負って貰う予定です。

ギュッとつぶっていた目を開けてみれば、はるか下方に米粒より小さい人が居るのがわかります。私の目には個人の判別ができないほどの距離ですが、この世界の人の視力は洒落にならない程に高いので、念の為にもう少しだけ上昇してもらいます。血の気が引いていく気がしますが、なんとかその感覚を無視してやるべきことに集中します。

「いくよ、桃さん」

その言葉を待っていたかのように桃さんの霊力がゆっくりと私の中を満たしていき、一拍おいてからゴォゥ!という炎が爆発的に燃えるような音と共に一気に下方へと放出されました。それは直径1m弱のリングのように輪となって地上に降り注ぎ、地上に触れたであろう瞬間から横へと光の輪が広がっていきます。まるで地上にオーロラが現れたかのような光景で、光の輪が揺らめく光の布となって幾度も幾度も走り抜けます。その頃には大社の中にいた神職たちが外へと出てきていて、私の視力では良く見えませんが小さくなって動かないところを見ると跪いているのかもしれません。

「桃さん、ここから霊力が一番強い場所ってわかる?」

<あー、そうだなぁ。おおよその位置はあの建物の中だって判るが、
 細かい場所までは解らねぇなぁ>

はるか上空から見れば真っ白い漆喰で作られた火の大社の真ん中に、オリンピックの聖火台のような巨大な炎が燃えているのが分かるのですが、どうやらそこでは無いようです。人々が中心だと思っている場所と、実際の中心がずれているなんて事は良くある事ではありますが、今回に限って言えば、あそこなら私がわざわざ大社内に入る必要もなく済んだのにと思えて仕方がありません。

ただココで愚痴っていても仕方がありません。入らないと駄目なら、入るだけです。

「龍さん、お願いがあるんだけど……」

そう言って龍さんにお願いしたのは、私の声を神職の耳元へ風で届けてもらう事でした。

<ふむ。神職の連中と緋桐の耳にだけ届くように風を使えば良いのじゃな>

緋桐さんは想定していなかったのですが、確かに緋桐さんにも聞こえていた方が良いに決まってます。なので「それでお願い」と龍さんに伝えてから、一度大きく深呼吸をして気持ちを落ち着けると、私はできるだけ静かに、少しだけ低めの声を出すことを心がけて話し出しました。

「火の神に仕えし者たちよ。
 これよりこの世界は様々な困難に見舞われる事でしょう。
 ですから常に災害に備えなさい、手を取り合い助け合いなさい。
 それら災害は人々の所為ではなく、神代の昔から定められていた事です。
 ゆえに神は人々を哀れと思い、救いの道を授けられました」

ここでもう一度深呼吸をします。心臓がばっくんばっくんと大きな音を立てていますが、この音が龍さんの風に乗って地上にまで届いていない事を祈るばかりです。とりあえず世界の崩壊の前に起こるであろう大小様々な災害への注意を促し、それが緋桐さんが王族を抜けた所為でもなければ、梯梧でいご殿下が王位を継ぐからでもないって事だけはしっかり強調しておきます。

「先日、神の力の結晶を有効に使うすべを土の神の民が身につけました。
 これにより人間であっても浄めの力を扱えるようになります。
 火の民よ、雄々しき武人たちよ。あなたたちの手は弱き者を守るため、
 そして穢を払うための手です。努々ゆめゆめ力の使い方を間違えぬよう……」

そこまで言ってから、今一度桃さんに霊力を地上に向かって放ってもらいます。今空に浮かんでいる者は火の神の力を持つ人ならざる者だと、地上に居る人に思ってもらう必要があります。そうやって僅かでも私と結びつく要素が無いように、徹底しておきます。

「浄めの力を使う為の準備のため、今よりそちらへ御先みさきと共に向かいます」

そう神職に伝えてから、龍さんにお願いして今度は緋桐さんにだけこっそりと風を飛ばしてもらい、

「すぐに戻ってきますが、一度兄上のところへ行ってきます」

と伝えます。熱砂の海の方向へと視線を向けた途端にクスッと笑ってしまったのは、ただでさえオーバーキルだった反対派が再起不能になるだろうなぁと思ってしまったからで……。うん、我ながら性格悪いかも。




その後、熱砂の海で同じような事をやって再び火の大社へと戻ってきました。今頃あちらでは、私から風の便りという名の耳打ちを受けた兄上と蒔蘿殿下の無双が展開されていることでしょう。ちょっとだけ見てみたかった気もします。

一度宿屋に寄ってきたのですが、その際に夜着パジャマのドーリス式キトンへと着替えてきました。この世界のどこにも無い服なので、この世の者でない感が出せるはずです。ただ流石に露出が高すぎてこのままでは後で母上に怒られそうなので、後日皐月さつき姫殿下に見せて社交界に広めてもらう予定だった数種類のレースを重ねて足し、丈を踝まで延ばします。これによって膝上はしっかりと隠されていて、ヒザ下は重なったレースの奥に少しだけ肌が見えるかも?というロング丈のキトンへと変わりました。更には念の為にレースのヴェールも2枚重ねにしておきます。

(これでレースのお披露目はできなくなっちゃったなぁ)

神の使い=レースという図式が出来上がってしまうので、姫殿下に持ち込む事はできなくなりました。そもそもレース自体は1年前にも持ち込んでいたのですが、あれは比較的シンプルなモノでした。しかし小火宴しょうかえんでの苧環おだまき姫との騒動や熱砂の海での誘拐騒動が重なり、皐月姫殿下に披露するどころか完全にケチが付いた状態になってしまい……。

なので今回は前回と同じレースとは思えない程、複雑な編み方をしたモノを持ち込んだのです。平面なレースの上に、同じくレースで作られた花をあちこちにあしらった立体的なレースです。顔を覆うヴェールや膝下に継ぎ足したヴェールも、一番外側にこの立体的なレースを使っています。立体に立体を重ねると野暮ったい感じになりますが、少しずつ模様の違う平面のレースを重ねた最上段に1枚立体レースをあしらうことで、白一色でありながらゴージャス感があります。綺羅びやかな物が好きな姫殿下にも気に入ってもらえると思っていただけに残念で仕方がありませんが、こればかりは仕方がありません。

「変わった衣装だな?
 この花は布にくっついているのか??」

「アマツ大陸のどこを探しても無い衣装でしょ?」

緋桐さんに「これ、私の夜着です」とはとても言えないので、この服を選んだ意味だけ伝えてクルリと回ってみせます。膝下のレース部分がひらひらと波打ちながら広がって、即席の割には我ながら綺麗にできたと思います。とても夜着には見えません。緋桐さんとは長期間に渡って一緒に旅をしましたが、流石に夜着姿を見せるような事はありませんでした。だからこれが夜着だとは気づかないようで、

「あぁ、珍しいがとても神秘的で良い衣装だとおもう」

と褒めてくれました。母上お手製のキトンを褒められて、誇らしさと嬉しさがこみ上げます。ただこのままふわふわした気持ちで大社に向かうわけにはいかず、咳払い一つしてから気持ちを切り替えます。それを察した緋桐さんもスッと表情を引き締めると

「では、行こうか」

と、約1年前の小火宴の時と同じように私に手を差し出してくれ、私はその手に自分の手を重ねました。ただ違うのはあの時は圧倒的に緋桐さんの方が身分が上だったのですが、今回に限っては私は「神の使者」という圧倒的上位の存在の振る舞いをしなくてはならないことです。

<桃さん、私と同化して……。圧倒的なまでの火の霊力を見せたいから>

そう心話で伝えると<了解!>という意思と同時に、火の霊力が先程以上に自分の中で高まるのが解ります。それと同時に何かが焦げた匂いや、紙が燃えた匂い、乾いた土の匂いなどが鼻をくすぐります。桃さんと同化すると霊力に匂いを感じるんですよね。

そのあとはトントン拍子で話が進みました。

平伏するお爺さん……おそらく神職のトップ……やおじさんたち、それに巫女さんたちの前を静々と歩くのではなく、龍さんの力で少し浮いて移動します。人外設定をこれでもかと見せつけてから、緋桐さんに促されるまま祭壇の前へと進んでクルリと振り返ります。

「先ほど申しました通り、貴方がたには穢を祓う神兵となって頂きたいのです。
 もちろん無理強いをするつもりはありません」

「喜んで!! 心より喜んで神の兵となりましょう!」

感極まったような声にびっくりしてお爺さんを見れば、滂沱の如く涙を流しています。その言動に若干引いてしまい、切に、本当に切にその信仰心が悪い方へ働かないように願ってしまいます。

「今一度申しておきますが、貴方がたに与えられた力は弱き者を守る為の力。
 そしてその弱き者は決して火の民の弱者だけを指す言葉ではありません。
 土の民も水の民も神の前では等しく……。それを理解しておりますか?」

「水の民も……でございますか?」

「空に輝く大きな炎。あの太陽は火の民だけを照らしていますか?
 大いなる海原、あの水の恵みは火の民には与えられていませんか?

 それとも……

 貴方がたは水の恵みは要らぬと言っているのですか?」

「そ、そのような事は決して!!!」

「神々は役割こそ違えど、どの民であろうと恵みを与えています。
 その意味をしっかりと心に刻みなさい」

アマツ三国の長い戦争の歴史は遠い過去となったはずなのに、未だにヒノモト国とミズホ国の間には深い溝があります。仕方ないとは思いますが、今後のことを考えると何時までも「仕方ない」で済ましてはおけません。この国に水の妖が出現する事もあるでしょうし、ミズホ国で火の妖が出ることだってあるでしょうから。

その時、跪く人々の後ろの方から「やはり神は緋桐殿下を選ばれたのよ」「そうだな、やはり緋桐殿下こそが」という言葉が聞こえてきました。おそらく龍さんが風を使って届けてくれたのだと思います。

「何やら思い違いをしている人が後ろのほうに居るようですが、
 神は人が作りし国の王に誰がなろうとも気にしません。
 もちろん悪逆非道な行いをすれば守護は消えるでしょうが……。
 この者をわたくしの御先みさきとして選んだのは、
 王位につく兄を助けたいという気持ちに応えただけです」

犯罪者のように髪を切り落とし、王家どころか国まで出た緋桐さん。そんな彼の努力を私のせいで無に帰したくありません。反梯梧殿下派なのか親緋桐さん派なのかは解りませんが、しっかりと釘をさしておきます。まさか聞こえると思っていなかった後方の巫女や神職たちは、床に額をこすりつけるようにして平伏してガタガタと震えだしました。うっかりしていましたが、三太郎さんとここまで同化してしまうと、私の感情一つで霊力が動いてしまいます。彼らからしてみれば、神の使いから霊力をぶつけられたと思ったのかもしれません。

私は内側にいる桃さんと確認しながら一番火の霊力が集まる場所を見つけると、そこを緋桐さんに教えます。そして後の事は全て緋桐さんに任せて、私は再び宙へと飛び立ち、一度祭壇の上をクルリと回ってから超超高度まで一気に飛び上がりました。ジェットコースターが苦手なうえに、高い場所も苦手な私にとって血の気が引くどころか気が遠くなりそうな行為ですが、あのまま歩いて大社を出るわけにもいきませんし、気合と根性でなんとか……と思ったのですが、はるか下方にある小さな建物や水平線が丸くなっているのを見た途端、あまりの恐怖に意識が遠くなります。その途端に急な落下感に襲われ、その落下感が更なる恐怖を呼び……。

(もう、駄目……)

そう思った時、私の中から龍さんが現れて私をグッと抱き上げたのが解りました。
ですが、そこから先のことは全く記憶になく……。




気がつけば、いつもの部屋にいつもの面々。

「まったく……。心配させないでください」

と浦さんが起きたばかりの私を注意し、金さんが

「我の力が及ばぬところで気を失いでない。肝が冷えたぞ。
 そなたの体力の無さを甘く見ていた。今後徹夜は禁止だ」

と後に続きます。

「ま、無事で良かった」

と苦笑いしつつ頭を撫でてくる桃さん。……1人足りません。

「龍さんは??」

「今もそなたを抱えて空を飛んでおるよ」

どうやら先程から感じていた浮遊感は、龍さんと一緒に空を飛んでいるからのようでした。

「良かった、それほど時間はまだ経ってないんだね」

やらなくてはならない事ややりたい事が山積みなのに、時間を無駄にはできません。ほっと安堵してそう言えば、

「いや、5~6時間ぐらいは経ってるぞ」

という衝撃の事実が桃さんから伝えられました。徹夜の所為で爆睡していたようで、何度揺すっても起きなかったんだそうです。いっそ叩いて……。

「じゃぁ、龍さんはどうして何時間も空に?」

そう尋ねると、三太郎さんは一度顔を見合わせてから教えてくれました。

「火の大社があの直後、神の使いが現れて啓示を授けられたと発表したのですよ。
 しかも神の使いは空高くへと飛んで帰られたとも……」

「その結果、ヒノモト国中の人間が空を事あるごとに見上げていて、
 迂闊に高度を下げられねぇんだよ」

まじかーと思いましたが、たしかに自分もヒノモト国の人間なら、ひと目でも見ようと空を見上げていると思います。

「一度海に出て、沖から海中を進んで陸に戻る方が安全かな?」

「恐らくは……」

三太郎さんと龍さんが揃っていれば陸海空全てで行動が可能になるので、こんな一見無茶な案もすんなり実現可能です。

「じゃぁ、それで行こう。
 兄上たちが戻る前に帰っておかないと、心配させちゃうからね」

兄上たちが戻って来る時間は伝えられていないので、少しでも早く帰っておいた方が良さそうです。こうして私達は空を飛び、海を潜り、地を駆けて宿屋へと戻ったのでした。
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