209 / 216
4章
17歳 -無の月1-
しおりを挟む
あの日、龍さんから示された選択肢は
・この世界で人生を終える
・元の世界で人生を終える
の二つでした。そこに至るまでの過程によって違いは出ますが、つまるところどっちの世界で死にたいかという選択です。この選択が15年前ならば、少し悩んだとしても最後は前の世界に戻って死ぬ事を選択したと思います。
でも今は……。
「決めたのは決めたんだけどね、相談というかお願いが2つあるの」
そう切り出したのは、浮遊島(上)にそびえる未来樹のチェックをしていた時でした。上の島はたとえ母上たちであっても立ち入りはできません。何かしらの事情があって龍さんや三太郎さんが許可を出せば可能ですが、普段は下の島から通じる風の門が作動していないのです。なので母上たちに聞かせられない相談はここでするに限ります。
「願いじゃと?」
龍さんはそう言いながら振り返ると、少しだけ苦しげな表情をしました。
「あっ、大丈夫だよ。寿命を延ばしてなんてお願いじゃないから」
叔父上の蘇生が可能だったのは、叔父上がこの世界の魂と身体を持っていたからです。対し私の魂はこの世界の神である龍さんや三太郎さんの管轄外で、勝手に寿命を延ばしたりすることはできません。私の寿命を変えることができるのは、前の世界の神様だけなのです。
なので例えこの世界で人生を終える事を選んだとしても、その後で私の魂は元の世界へと戻されます。そして元の世界の輪廻の渦へと返る事になるのです。だからこの2つの選択は、命が燃え尽きる最後の一瞬をどっちの世界に居たいかという違いでしかありません。
「儂とて延ばせるものなら延ばしてやりたいのじゃがな……。
で、願いとは何じゃ?」
「さっきも言ったけれど、願いというか相談かな。
出来ることと出来ないことの振り分けが私にはできないから」
そう私と龍さんが話していると、続々と三太郎さんたちも集まってきます。周囲にたくさんの精霊の光を浮かべた三太郎さんは、最近少しずつ神様っぽさが増していて神々しく感じることがあります。まぁ、美味しいものと新しい事が大好きなところは全く変わっていないので、疎外感とか距離を感じる事はないのですが。
「我らとしても出来ることをしてやりたいが……。
そなたは何を望む?」
「まず1つめ。元の世界には行きたいんだけど、またこっちに戻ってきたいの。
往復することって可能??」
「それはこちらの世界で最後を迎えたいということですか?」
金さんの問に答えると、浦さんが少しだけホッとした表情でそう言います。
「そうだね。今はこっちの世界こそが私のいる世界だと思ってるから。
でもあっちの世界にいるお祖父ちゃんとお祖母ちゃんに最後に会いたいの。
そして ありがとう と ごめんね って伝えたい……。
直接じゃなくて手紙でも良いから、ちゃんとお別れがしたい」
これがとても贅沢な願いだってこと、私は身を持って知っています。もちろん普段から何かをしてもらったら「ありがとう」とは伝えていましたが、その「ありがとう」と、この「ありがとう」は全く別物なのです。確か一人暮らしが目前に迫っていた私は、その時に一念発起して感謝を伝えようと思っていました。ですが結局は伝えられないまま、こちらの世界へと来てしまったのです。
「不可能ではない。じゃがなぁ……。
先日の1件でも解るじゃろうが、あそこは時の流れが違う。
じゃからおぬしの時間感覚で1週間の旅路であったとしても、
こちらに戻ってきたら1年、ヘタをすれば10年過ぎていることもある」
龍さんが言う事はわかります。未来樹を持ち帰ったあの時、私の感覚では半日にも満たない時間だったというのに、叔父上たちは8日間も待ち続ける事になっていたのです。半日といっても12時間という訳じゃなく、早朝に出てお昼すぎぐらいの感覚です。そのまんまの比率で計算すれば、私が1週間留守にするという事は、この世界から半年以上姿を消す事になります。ましてや今回は前回に比べ移動距離が長く、その為に危険度も上がっています。龍さんの言う10年という数字も、決して大げさなものではないのでしょう。
「そこは上手に時の流れを見て……という訳にはいかない??」
「これまた不可能ではないのじゃが、神界の時の流れは不規則に入り乱れる。
その中から望む流れを掴むのは困難というのは解るじゃろう?」
龍さんの言葉に頷きます。横に1m、それも一瞬ズレただけで滞在時間が数日変わるような場所です、望むように進めると思うほうが間違いです。
「しかも望みの流れを掴む為に長期滞在し続けるのは、
霊力の消費が激しくて現実的ではない。じゃから実質的には不可能じゃろうな」
霊力が万全の龍さんですら、別の世界系列樹へ移るのは危険が伴うのだそうです。それを思うと17年前はよく成功したなぁと思ったのですが、アレが駄目だったらどちみち滅ぶのだから、死なば諸共!という一か八を通り越したかなり分の悪い賭けだったんだとか。その事を聞いた三太郎さんは、事情が解っているだけに苦情を口にこそしませんでしたが、苦虫を噛み潰したような表情になってしまいました。自分たちの知らないところで自分の命が賭けられていたのだから、そんな表情になってしまうのも仕方がありません。
「なぁなぁ、過去に戻ることはできねぇのか?」
ふと思いついたように桃さんが口にしました。確かに過去に戻れば、解決するアレコレがいっぱいあるように思います。ですが龍さんの口からはため息と一緒に、
「神といえどやってはならない事はあるのじゃよ」
「つまり、出来るんだな」
「……これじゃから勘の良い火の精霊は……」
今度は龍さんが苦虫を噛み潰したような表情になります。
「出来るか出来ないかと聞かれれば出来る。
じゃが、その時点で儂はその時の流れの中の異物となる。
そして排除すべき対象として、その時に居る儂から消されるじゃろう」
極端な話し、運良く最善の時の流れを掴みまくって旅立った1秒後に戻って来ることはOKですが、1秒前に戻ることは世界の運行に軋みをもたらすとして禁じられているんだそうです。万が一にもそのルールを破れば邪神という扱いになり、全ての神々から敵として粛清されてしまうのだとか。チート無双だと思っていた三太郎さんと龍さんですが、私が知らないだけで縛りはあるようです。
最終的に龍さんは
「往復する間にどれぐらいの日数が経過するかはわからないが
それを気にしないのであれば出来なくはないじゃろう。
おぬしがそれを望むのならば、儂は全力で叶えよう」
と言ってくれました。ただ高確率で手紙を送りこむだけになるだろうとは言われましたが、感謝を伝えることが出来るのならそれ以上は望みません。何にしても実際に時の流れを見てみないと解らないうえに、むこうの神様にも話を通す必要があるとかで最終判断はその時にってことになりました。
「もう一つの願いとは何です?」
「んー……、あのね。難しいことかもしれないんだけど……」
「何だよ、はっきり言えよ。櫻らしくねぇなぁ」
浦さんがせっかく水を向けてくれたのに、私はゴニョゴニョと口ごもってしまいました。すかさず桃さんがツッコミを入れてきますが、それぐらい荒唐無稽なお願いなのです。
「私の魂は前の世界の管轄だって事は知っているし、私という人生が終わったら
何処で終わってもあちらの世界に戻るべきって事は理解しているんだけど……」
そこまで言ってから再び口を閉じてしまいます。でもこれはちゃんと自分の口で伝えなくちゃいけないことです。私が何より望んでいることを!
「私……、私、この世界の子になりたい!!」
「・・・・・・・」
私の全身全霊の願いを聞いた龍さんや三太郎さんは何も言ってくれず、シーンと静まり返った空気があたりを支配します。私の魂の管轄は他所の世界の神なのに、この世界の子になりたいなんて言ったって困らせるだけだって事は解ってはいたのです。
でも諦めしか無かった心に、欲が生まれてしまったのです。
来世もその次もずっと一緒だと言ってくれた金さん、浦さん、桃さん。
なら、だったら、ずっと、ずーーっと一緒に、そばに居てよ!!っていう欲が。
でも、その欲は分不相応だったようです。俯く私の視界には地面しか無く、耳には誰の声も響いてきません。やっぱりさっきの発言は無かった事にしたいとか、穴掘って埋まりたいとか色々と思いますが、何より泣きたいかもしれません。
「なーんちゃって」と言って冗談にしてしまおうかと思った私の視界に、ニョキッと2本の腕が急に生えたと思ったらいきなり高くまで抱き上げられ、眼下に満面の笑みの桃さんの顔が現れました。
「すっげーー!! それ良いじゃん!!」
「魂は世界に帰属するという先入観の所為で、
櫻の魂をこちらの管轄に変えるという発想はありませんでしたねぇ……」
「全くだな。我も分け身を櫻に付けて
あちらの世界に送り返す事しか出来ぬと思うておったわ」
しみじみと言う金さんの言葉に、
「儂のように祝福を授ける程度ならばともかく、
分け身を付けるのはあちらの神から睨まれる可能性があるのじゃぞ!」
と愚痴る龍さん。世界間の移動には龍さんが必須で、あちらの風の神を知っているのも龍さんです。つまりそういった交渉も全て龍さんがしなくてはならず、思わず愚痴が出てしまった様子。
でもみんな、あまりにも思いがけない願いに固まってしまっていただけで、私の願いが馬鹿らしいとかありえないとか、否定的な感情があった訳ではないようです。その事にホッとした途端に気が抜けてしまって、涙が零れ落ちそうになりました。それを誤魔化すように空を見上げれば、結界越しに澄み切った青空が広がっています。この時期には珍しいぐらいの青空に、なんだか全て上手くいくような気がしてきたのでした。
「魂の所属を変えるにはどうすれば良いのじゃろうなぁ……。
何にしても彼方の神とも相談が必要なのは確かじゃな」
具体的な方法を話し合いたいのですが、なにせ前例のない事です。それに此方側だけで解決する問題でもありません。なので1つ目の相談通り、一度あちらの世界に行ってお祖父ちゃんお祖母ちゃんに伝言を残すついでに、元の世界の神と相談してから決めようということになりました。
かかる日数は不明なので気軽に行ってきますとは言えませんが、精霊様の御用事の為に長期留守にするけれど必ず戻って来ると母上たちには伝えました。
ですが、自分の余命が残り僅かだとは流石に言えませんでした。
親不孝の極みだなとは思うのですが、全ての懸念事項を終わらせたら、残りの時間全てを親孝行ならぬ家族孝行に使おうと思います。
叔父上たちは渋い顔をしていましたが、三太郎さんたちが一緒だと聞いて渋々頷いてくれました。年齢的にも独り立ちして家を出てもおかしくない年齢ですし、これも子どもの成長だと母上がとりなしてくれたおかげでもあります。確かにこの世界では早い子だと13歳になったら家を出ますし、17歳だと遅いぐらいです。
そしてこれを期に神界へと通じる風の門、通称「風神門」の守護をお父さんとお母さんから、龍さんが作り出した少し強めの風の精霊に変わりました。私同様にお父さんとお母さんの魂も彼方の世界の所属です。なので私の魂をあちらに戻すときに一緒に戻すという予定だったのですが、私がこちらに未来永劫残りたいと希望した事で予定が変わってしまいました。もともと両親の希望はせめて一度は普通の親子として天寿を全うしたいというものだったらしく、私がこちらに残るのなら自分たちも残ると言ってきたのです。嬉しい反面、なんだか両親の人生を捻じ曲げてしまったようで申し訳無さでいっぱいになってしまいます。
「違うわ、さくら。捻じ曲げてしまったのは私達。
だからこそ……、次こそはと思ってしまうの。
親の我儘に付き合わさせてしまって、ごめんなさいね」
そう言われてしまったら、納得するしかありません。
そうと決まれば準備を進めていくだけです。私は神界経由で元の世界に行くので、準備といっても腰に下げられる小袋に携帯保存食と霊力を籠めた霊石をたっぷり持っていくだけです。食事は必要ですが神界で調理はできませんし、何より食事に時間をかけたらその何倍もの時間がこちらでは経過してしまう可能性がある為、時間は一切無駄にできないのです。なので保存食は移動しながらでも、そしてそのままでも食べられる甘芋を干したものを入れておきました。同時に兄上も新たな行商の準備に入り、母上や叔父上、山吹に橡も日々を忙しく、でも笑顔で過ごしています。
そしてとうとう、その日がやってきました。
「母上、行ってきます」
そう言って母上をギュッと抱きしめます。私も大きくなりましたが、結局母上の背を追い越すことはできませんでした。そしていつもならそのまま旅立つのですが、
「叔父上、行ってきます」
と珍しく叔父上もギュゥと抱きしめます。最初は驚いた叔父上でしたが、神界へ向かうことに不安があるのかもしれないと思ったようで、
「あぁ、行っておいで。気をつけるのだよ?」
と優しく抱きしめ返してくれました。そして橡、山吹と順に抱きしめて挨拶をし、みんな少し不思議そうな顔をしつつも抱きしめ返してくれます。そして最後に兄上。
「兄上、行ってきます。それからいってらっしゃい。兄上も気をつけてね」
「あぁ、櫻も気をつけて。三太郎様に迷惑をかけないようにね」
「もう、いつも迷惑かけてるみたいな言い方しないでよ。
大丈夫、ちゃんと兄上と年齢差が開かないうちに帰ってくるから!」
兄上には少し茶化すような返事をしてから、改めてギュッと抱きしめます。それに対応するように兄上も私をギュッと抱きしめてくれました。
「我らの分け身を置いていくゆえ、何かあればそれ経由で連絡を」
「承知いたしました」
三太郎さんが長期留守にしてこちらの世界に何かあっては困るので、三太郎さんたちは自分の力を少し余分に籠めた霊石を核に、新しい精霊を作り上げていました。龍さんは核を必要としないのですが、まだまだ神となって日の浅い三太郎さんには核があったほうが作りやすいのだそうです。そして山幸彦さんと海幸彦さんに補佐を頼み、しばらくの間なら問題が起きても対処可能な体制を作り上げました。火の精霊の補佐が居ない事に若干の不安はありますが……。
「じゃぁ、行ってきます!!」
母上の、叔父上の、兄上の、橡の、山吹の、そしてその後ろで目をうるうるさせている青藍をはじめとした青・赤両部族の人たちの顔をしっかりと見渡して、私は元気に挨拶をして風神門をくぐったのでした。
遠くに見える光の洪水へと向かう私達ですが、そう簡単には進むことはできませんでした。なにせ時の流れが一定ではなく、あちこちに向かって流れるので一瞬の油断が命取りなのです。
そんな中、龍さんは器用に流れを読んで渡っていくのですが、同時に私の中に居る小さな分け身が私の質問に答え続けてくれます。
「あちらの神からは事故の直後に戻ってきてほしいと言われていてな、
うまくその時間につながる流れがあれば良いのじゃが……」
私をこちらの世界に呼ぶ際、負担軽減のために赤ん坊にまで時間を遡らせて小さくした結果、あちらの神の手元に私の服が残っているらしいのです。それで戻ってきた時にはその服を再び着させれば良いという事らしいのですが……
いや、ちょっと待って!!
私、こちらの世界に来た時……
叔父上の外套にくるまれた下って、おむつだけじゃなかった??
つまりあちらの風神様の手元に残っているのって、私の高校の制服に加えて下着も残っているってこと?!
いやぁあああああああああ!!!!
あまりの恥ずかしさに、顔が一気に熱くなります。
(神様だからそんな事気にしないかもしれないけれど、私が嫌すぎる!!
風神様に会ったら真っ先に土下座するレベルのやらかしだよっ!!)
「な、如何したのだ??」
急に顔を赤くしてジタバタとし始めた私に、金さんが怪訝そうに聞いてきます。それに対して「なんでもない」とは答えますが、明らかに挙動不審で三太郎さん全員から不審そうに見られてしまいました。
今日は万が一の対処のしやすさを考えて、龍さんだけでなく三太郎さんも外に出て移動しています。移動距離の長さを考えれば霊力の節約を重点におくべきなのかもしれませんが、となりの世界系樹に行くのは本来危険な事なのです。
「ねぇ、もう大御神が管理していた大樹は無い訳で……
私達の未来樹は、この神界とは全く別の時空に存在する訳でしょ??
だったらあちらの樹の近くに門を作れば良かったんじゃない??」
もっと近い場所に門があれば、危険も霊力の消費も考えなくて良いのに思って告げた言葉でしたが、その言葉に龍さんはポカーンと口を開けて固まってしまいました。しかもそのせいで別の流れへと逸れてしまっています。
「龍さん!!」
慌てて私がそう叫ぶのと、龍さんが正気に戻るのとは同時でした。
「そういう事はもっと早くに行ってほしかったのじゃが……」
再び流れに戻ってからガックシと肩を落とす龍さんですが、どうやら門を別の場所に開けば良いということに気づかなかったようです。
「ま、まぁいきなり近くに門を作ってしまったら、
あちらの風神様が嫌な気分になってしまうかもしれないし、ね??」
あまりの落ち込みっぷりにすかさずフォローを入れれば、「そ、そうじゃな」と気を取り直してくれました。やっぱり思いつきはすぐに口に出さずに、一度三太郎さんに相談してからの方が良いのかも……と思っていたら、
<我らはそなたの無茶振りに慣れておるが……>
<櫻のひらめきって、時に凶悪な武器なんだよなぁ……>
<今のは少しだけ彼が可哀想になってしまいましたよ……>
と三太郎さんからこっそりと心話が届きました。ワザとではなかったのですが、せっかく作ってくれたモノにケチをつけてしまった形になった事は確かなので、今一度龍さんには「ごめんね」と謝ったのでした。
キラキラ瞬く光が少しずつ大きくなり、私が感じる引力としか言いようのない力がどんどんと強くなっていきます。お父さんとお母さんは引力に引っ張られ過ぎて危険だったので、少し前に龍さんが精霊石の中へ一時的に入れて保護してくれました。
「あそこかぁ……」
私が戻る世界はもう母上や叔父上たちの待つ世界だと決めているのに、問答無用の郷愁が沸き起こります。これは魂と身体の帰属があちら側なので仕方ないのですが、一度あちらの世界へと戻ったが最後、二度と抜け出せないんじゃないかという不安が湧き上がってきました。
「早く行って、早く帰らないとね!」
あそこには帰るのではない、帰る場所は別なのだと改めて自分に言い聞かせます。それに頷く三太郎さんでしたが、ふと見れば金さんの周囲に漂っている精霊の一つの動きがおかしく……。他の精霊は極力金さんのそばを離れないように周囲を漂っているのに、一つだけが金さんから離れようとしているのです。
「あれ??、どうしてあの精霊だけ??」
「金、それを止めろ!!!!」
私がその精霊を指さして言うのと、龍さんが叫ぶのとはほぼ同時でした。急速に私達から離れていく土の精霊からは凄まじい邪念が周囲へと放たれ、
<アノ地……キサマ……消セ……バ……世界……再ビワレ……モノ!
フ……ハハハハハハ……ハハハハ……ハ!!>
同時に届いた心話と狂気に満ちた笑い声に私達は一気に血の気が引いてしまったのでした。
・この世界で人生を終える
・元の世界で人生を終える
の二つでした。そこに至るまでの過程によって違いは出ますが、つまるところどっちの世界で死にたいかという選択です。この選択が15年前ならば、少し悩んだとしても最後は前の世界に戻って死ぬ事を選択したと思います。
でも今は……。
「決めたのは決めたんだけどね、相談というかお願いが2つあるの」
そう切り出したのは、浮遊島(上)にそびえる未来樹のチェックをしていた時でした。上の島はたとえ母上たちであっても立ち入りはできません。何かしらの事情があって龍さんや三太郎さんが許可を出せば可能ですが、普段は下の島から通じる風の門が作動していないのです。なので母上たちに聞かせられない相談はここでするに限ります。
「願いじゃと?」
龍さんはそう言いながら振り返ると、少しだけ苦しげな表情をしました。
「あっ、大丈夫だよ。寿命を延ばしてなんてお願いじゃないから」
叔父上の蘇生が可能だったのは、叔父上がこの世界の魂と身体を持っていたからです。対し私の魂はこの世界の神である龍さんや三太郎さんの管轄外で、勝手に寿命を延ばしたりすることはできません。私の寿命を変えることができるのは、前の世界の神様だけなのです。
なので例えこの世界で人生を終える事を選んだとしても、その後で私の魂は元の世界へと戻されます。そして元の世界の輪廻の渦へと返る事になるのです。だからこの2つの選択は、命が燃え尽きる最後の一瞬をどっちの世界に居たいかという違いでしかありません。
「儂とて延ばせるものなら延ばしてやりたいのじゃがな……。
で、願いとは何じゃ?」
「さっきも言ったけれど、願いというか相談かな。
出来ることと出来ないことの振り分けが私にはできないから」
そう私と龍さんが話していると、続々と三太郎さんたちも集まってきます。周囲にたくさんの精霊の光を浮かべた三太郎さんは、最近少しずつ神様っぽさが増していて神々しく感じることがあります。まぁ、美味しいものと新しい事が大好きなところは全く変わっていないので、疎外感とか距離を感じる事はないのですが。
「我らとしても出来ることをしてやりたいが……。
そなたは何を望む?」
「まず1つめ。元の世界には行きたいんだけど、またこっちに戻ってきたいの。
往復することって可能??」
「それはこちらの世界で最後を迎えたいということですか?」
金さんの問に答えると、浦さんが少しだけホッとした表情でそう言います。
「そうだね。今はこっちの世界こそが私のいる世界だと思ってるから。
でもあっちの世界にいるお祖父ちゃんとお祖母ちゃんに最後に会いたいの。
そして ありがとう と ごめんね って伝えたい……。
直接じゃなくて手紙でも良いから、ちゃんとお別れがしたい」
これがとても贅沢な願いだってこと、私は身を持って知っています。もちろん普段から何かをしてもらったら「ありがとう」とは伝えていましたが、その「ありがとう」と、この「ありがとう」は全く別物なのです。確か一人暮らしが目前に迫っていた私は、その時に一念発起して感謝を伝えようと思っていました。ですが結局は伝えられないまま、こちらの世界へと来てしまったのです。
「不可能ではない。じゃがなぁ……。
先日の1件でも解るじゃろうが、あそこは時の流れが違う。
じゃからおぬしの時間感覚で1週間の旅路であったとしても、
こちらに戻ってきたら1年、ヘタをすれば10年過ぎていることもある」
龍さんが言う事はわかります。未来樹を持ち帰ったあの時、私の感覚では半日にも満たない時間だったというのに、叔父上たちは8日間も待ち続ける事になっていたのです。半日といっても12時間という訳じゃなく、早朝に出てお昼すぎぐらいの感覚です。そのまんまの比率で計算すれば、私が1週間留守にするという事は、この世界から半年以上姿を消す事になります。ましてや今回は前回に比べ移動距離が長く、その為に危険度も上がっています。龍さんの言う10年という数字も、決して大げさなものではないのでしょう。
「そこは上手に時の流れを見て……という訳にはいかない??」
「これまた不可能ではないのじゃが、神界の時の流れは不規則に入り乱れる。
その中から望む流れを掴むのは困難というのは解るじゃろう?」
龍さんの言葉に頷きます。横に1m、それも一瞬ズレただけで滞在時間が数日変わるような場所です、望むように進めると思うほうが間違いです。
「しかも望みの流れを掴む為に長期滞在し続けるのは、
霊力の消費が激しくて現実的ではない。じゃから実質的には不可能じゃろうな」
霊力が万全の龍さんですら、別の世界系列樹へ移るのは危険が伴うのだそうです。それを思うと17年前はよく成功したなぁと思ったのですが、アレが駄目だったらどちみち滅ぶのだから、死なば諸共!という一か八を通り越したかなり分の悪い賭けだったんだとか。その事を聞いた三太郎さんは、事情が解っているだけに苦情を口にこそしませんでしたが、苦虫を噛み潰したような表情になってしまいました。自分たちの知らないところで自分の命が賭けられていたのだから、そんな表情になってしまうのも仕方がありません。
「なぁなぁ、過去に戻ることはできねぇのか?」
ふと思いついたように桃さんが口にしました。確かに過去に戻れば、解決するアレコレがいっぱいあるように思います。ですが龍さんの口からはため息と一緒に、
「神といえどやってはならない事はあるのじゃよ」
「つまり、出来るんだな」
「……これじゃから勘の良い火の精霊は……」
今度は龍さんが苦虫を噛み潰したような表情になります。
「出来るか出来ないかと聞かれれば出来る。
じゃが、その時点で儂はその時の流れの中の異物となる。
そして排除すべき対象として、その時に居る儂から消されるじゃろう」
極端な話し、運良く最善の時の流れを掴みまくって旅立った1秒後に戻って来ることはOKですが、1秒前に戻ることは世界の運行に軋みをもたらすとして禁じられているんだそうです。万が一にもそのルールを破れば邪神という扱いになり、全ての神々から敵として粛清されてしまうのだとか。チート無双だと思っていた三太郎さんと龍さんですが、私が知らないだけで縛りはあるようです。
最終的に龍さんは
「往復する間にどれぐらいの日数が経過するかはわからないが
それを気にしないのであれば出来なくはないじゃろう。
おぬしがそれを望むのならば、儂は全力で叶えよう」
と言ってくれました。ただ高確率で手紙を送りこむだけになるだろうとは言われましたが、感謝を伝えることが出来るのならそれ以上は望みません。何にしても実際に時の流れを見てみないと解らないうえに、むこうの神様にも話を通す必要があるとかで最終判断はその時にってことになりました。
「もう一つの願いとは何です?」
「んー……、あのね。難しいことかもしれないんだけど……」
「何だよ、はっきり言えよ。櫻らしくねぇなぁ」
浦さんがせっかく水を向けてくれたのに、私はゴニョゴニョと口ごもってしまいました。すかさず桃さんがツッコミを入れてきますが、それぐらい荒唐無稽なお願いなのです。
「私の魂は前の世界の管轄だって事は知っているし、私という人生が終わったら
何処で終わってもあちらの世界に戻るべきって事は理解しているんだけど……」
そこまで言ってから再び口を閉じてしまいます。でもこれはちゃんと自分の口で伝えなくちゃいけないことです。私が何より望んでいることを!
「私……、私、この世界の子になりたい!!」
「・・・・・・・」
私の全身全霊の願いを聞いた龍さんや三太郎さんは何も言ってくれず、シーンと静まり返った空気があたりを支配します。私の魂の管轄は他所の世界の神なのに、この世界の子になりたいなんて言ったって困らせるだけだって事は解ってはいたのです。
でも諦めしか無かった心に、欲が生まれてしまったのです。
来世もその次もずっと一緒だと言ってくれた金さん、浦さん、桃さん。
なら、だったら、ずっと、ずーーっと一緒に、そばに居てよ!!っていう欲が。
でも、その欲は分不相応だったようです。俯く私の視界には地面しか無く、耳には誰の声も響いてきません。やっぱりさっきの発言は無かった事にしたいとか、穴掘って埋まりたいとか色々と思いますが、何より泣きたいかもしれません。
「なーんちゃって」と言って冗談にしてしまおうかと思った私の視界に、ニョキッと2本の腕が急に生えたと思ったらいきなり高くまで抱き上げられ、眼下に満面の笑みの桃さんの顔が現れました。
「すっげーー!! それ良いじゃん!!」
「魂は世界に帰属するという先入観の所為で、
櫻の魂をこちらの管轄に変えるという発想はありませんでしたねぇ……」
「全くだな。我も分け身を櫻に付けて
あちらの世界に送り返す事しか出来ぬと思うておったわ」
しみじみと言う金さんの言葉に、
「儂のように祝福を授ける程度ならばともかく、
分け身を付けるのはあちらの神から睨まれる可能性があるのじゃぞ!」
と愚痴る龍さん。世界間の移動には龍さんが必須で、あちらの風の神を知っているのも龍さんです。つまりそういった交渉も全て龍さんがしなくてはならず、思わず愚痴が出てしまった様子。
でもみんな、あまりにも思いがけない願いに固まってしまっていただけで、私の願いが馬鹿らしいとかありえないとか、否定的な感情があった訳ではないようです。その事にホッとした途端に気が抜けてしまって、涙が零れ落ちそうになりました。それを誤魔化すように空を見上げれば、結界越しに澄み切った青空が広がっています。この時期には珍しいぐらいの青空に、なんだか全て上手くいくような気がしてきたのでした。
「魂の所属を変えるにはどうすれば良いのじゃろうなぁ……。
何にしても彼方の神とも相談が必要なのは確かじゃな」
具体的な方法を話し合いたいのですが、なにせ前例のない事です。それに此方側だけで解決する問題でもありません。なので1つ目の相談通り、一度あちらの世界に行ってお祖父ちゃんお祖母ちゃんに伝言を残すついでに、元の世界の神と相談してから決めようということになりました。
かかる日数は不明なので気軽に行ってきますとは言えませんが、精霊様の御用事の為に長期留守にするけれど必ず戻って来ると母上たちには伝えました。
ですが、自分の余命が残り僅かだとは流石に言えませんでした。
親不孝の極みだなとは思うのですが、全ての懸念事項を終わらせたら、残りの時間全てを親孝行ならぬ家族孝行に使おうと思います。
叔父上たちは渋い顔をしていましたが、三太郎さんたちが一緒だと聞いて渋々頷いてくれました。年齢的にも独り立ちして家を出てもおかしくない年齢ですし、これも子どもの成長だと母上がとりなしてくれたおかげでもあります。確かにこの世界では早い子だと13歳になったら家を出ますし、17歳だと遅いぐらいです。
そしてこれを期に神界へと通じる風の門、通称「風神門」の守護をお父さんとお母さんから、龍さんが作り出した少し強めの風の精霊に変わりました。私同様にお父さんとお母さんの魂も彼方の世界の所属です。なので私の魂をあちらに戻すときに一緒に戻すという予定だったのですが、私がこちらに未来永劫残りたいと希望した事で予定が変わってしまいました。もともと両親の希望はせめて一度は普通の親子として天寿を全うしたいというものだったらしく、私がこちらに残るのなら自分たちも残ると言ってきたのです。嬉しい反面、なんだか両親の人生を捻じ曲げてしまったようで申し訳無さでいっぱいになってしまいます。
「違うわ、さくら。捻じ曲げてしまったのは私達。
だからこそ……、次こそはと思ってしまうの。
親の我儘に付き合わさせてしまって、ごめんなさいね」
そう言われてしまったら、納得するしかありません。
そうと決まれば準備を進めていくだけです。私は神界経由で元の世界に行くので、準備といっても腰に下げられる小袋に携帯保存食と霊力を籠めた霊石をたっぷり持っていくだけです。食事は必要ですが神界で調理はできませんし、何より食事に時間をかけたらその何倍もの時間がこちらでは経過してしまう可能性がある為、時間は一切無駄にできないのです。なので保存食は移動しながらでも、そしてそのままでも食べられる甘芋を干したものを入れておきました。同時に兄上も新たな行商の準備に入り、母上や叔父上、山吹に橡も日々を忙しく、でも笑顔で過ごしています。
そしてとうとう、その日がやってきました。
「母上、行ってきます」
そう言って母上をギュッと抱きしめます。私も大きくなりましたが、結局母上の背を追い越すことはできませんでした。そしていつもならそのまま旅立つのですが、
「叔父上、行ってきます」
と珍しく叔父上もギュゥと抱きしめます。最初は驚いた叔父上でしたが、神界へ向かうことに不安があるのかもしれないと思ったようで、
「あぁ、行っておいで。気をつけるのだよ?」
と優しく抱きしめ返してくれました。そして橡、山吹と順に抱きしめて挨拶をし、みんな少し不思議そうな顔をしつつも抱きしめ返してくれます。そして最後に兄上。
「兄上、行ってきます。それからいってらっしゃい。兄上も気をつけてね」
「あぁ、櫻も気をつけて。三太郎様に迷惑をかけないようにね」
「もう、いつも迷惑かけてるみたいな言い方しないでよ。
大丈夫、ちゃんと兄上と年齢差が開かないうちに帰ってくるから!」
兄上には少し茶化すような返事をしてから、改めてギュッと抱きしめます。それに対応するように兄上も私をギュッと抱きしめてくれました。
「我らの分け身を置いていくゆえ、何かあればそれ経由で連絡を」
「承知いたしました」
三太郎さんが長期留守にしてこちらの世界に何かあっては困るので、三太郎さんたちは自分の力を少し余分に籠めた霊石を核に、新しい精霊を作り上げていました。龍さんは核を必要としないのですが、まだまだ神となって日の浅い三太郎さんには核があったほうが作りやすいのだそうです。そして山幸彦さんと海幸彦さんに補佐を頼み、しばらくの間なら問題が起きても対処可能な体制を作り上げました。火の精霊の補佐が居ない事に若干の不安はありますが……。
「じゃぁ、行ってきます!!」
母上の、叔父上の、兄上の、橡の、山吹の、そしてその後ろで目をうるうるさせている青藍をはじめとした青・赤両部族の人たちの顔をしっかりと見渡して、私は元気に挨拶をして風神門をくぐったのでした。
遠くに見える光の洪水へと向かう私達ですが、そう簡単には進むことはできませんでした。なにせ時の流れが一定ではなく、あちこちに向かって流れるので一瞬の油断が命取りなのです。
そんな中、龍さんは器用に流れを読んで渡っていくのですが、同時に私の中に居る小さな分け身が私の質問に答え続けてくれます。
「あちらの神からは事故の直後に戻ってきてほしいと言われていてな、
うまくその時間につながる流れがあれば良いのじゃが……」
私をこちらの世界に呼ぶ際、負担軽減のために赤ん坊にまで時間を遡らせて小さくした結果、あちらの神の手元に私の服が残っているらしいのです。それで戻ってきた時にはその服を再び着させれば良いという事らしいのですが……
いや、ちょっと待って!!
私、こちらの世界に来た時……
叔父上の外套にくるまれた下って、おむつだけじゃなかった??
つまりあちらの風神様の手元に残っているのって、私の高校の制服に加えて下着も残っているってこと?!
いやぁあああああああああ!!!!
あまりの恥ずかしさに、顔が一気に熱くなります。
(神様だからそんな事気にしないかもしれないけれど、私が嫌すぎる!!
風神様に会ったら真っ先に土下座するレベルのやらかしだよっ!!)
「な、如何したのだ??」
急に顔を赤くしてジタバタとし始めた私に、金さんが怪訝そうに聞いてきます。それに対して「なんでもない」とは答えますが、明らかに挙動不審で三太郎さん全員から不審そうに見られてしまいました。
今日は万が一の対処のしやすさを考えて、龍さんだけでなく三太郎さんも外に出て移動しています。移動距離の長さを考えれば霊力の節約を重点におくべきなのかもしれませんが、となりの世界系樹に行くのは本来危険な事なのです。
「ねぇ、もう大御神が管理していた大樹は無い訳で……
私達の未来樹は、この神界とは全く別の時空に存在する訳でしょ??
だったらあちらの樹の近くに門を作れば良かったんじゃない??」
もっと近い場所に門があれば、危険も霊力の消費も考えなくて良いのに思って告げた言葉でしたが、その言葉に龍さんはポカーンと口を開けて固まってしまいました。しかもそのせいで別の流れへと逸れてしまっています。
「龍さん!!」
慌てて私がそう叫ぶのと、龍さんが正気に戻るのとは同時でした。
「そういう事はもっと早くに行ってほしかったのじゃが……」
再び流れに戻ってからガックシと肩を落とす龍さんですが、どうやら門を別の場所に開けば良いということに気づかなかったようです。
「ま、まぁいきなり近くに門を作ってしまったら、
あちらの風神様が嫌な気分になってしまうかもしれないし、ね??」
あまりの落ち込みっぷりにすかさずフォローを入れれば、「そ、そうじゃな」と気を取り直してくれました。やっぱり思いつきはすぐに口に出さずに、一度三太郎さんに相談してからの方が良いのかも……と思っていたら、
<我らはそなたの無茶振りに慣れておるが……>
<櫻のひらめきって、時に凶悪な武器なんだよなぁ……>
<今のは少しだけ彼が可哀想になってしまいましたよ……>
と三太郎さんからこっそりと心話が届きました。ワザとではなかったのですが、せっかく作ってくれたモノにケチをつけてしまった形になった事は確かなので、今一度龍さんには「ごめんね」と謝ったのでした。
キラキラ瞬く光が少しずつ大きくなり、私が感じる引力としか言いようのない力がどんどんと強くなっていきます。お父さんとお母さんは引力に引っ張られ過ぎて危険だったので、少し前に龍さんが精霊石の中へ一時的に入れて保護してくれました。
「あそこかぁ……」
私が戻る世界はもう母上や叔父上たちの待つ世界だと決めているのに、問答無用の郷愁が沸き起こります。これは魂と身体の帰属があちら側なので仕方ないのですが、一度あちらの世界へと戻ったが最後、二度と抜け出せないんじゃないかという不安が湧き上がってきました。
「早く行って、早く帰らないとね!」
あそこには帰るのではない、帰る場所は別なのだと改めて自分に言い聞かせます。それに頷く三太郎さんでしたが、ふと見れば金さんの周囲に漂っている精霊の一つの動きがおかしく……。他の精霊は極力金さんのそばを離れないように周囲を漂っているのに、一つだけが金さんから離れようとしているのです。
「あれ??、どうしてあの精霊だけ??」
「金、それを止めろ!!!!」
私がその精霊を指さして言うのと、龍さんが叫ぶのとはほぼ同時でした。急速に私達から離れていく土の精霊からは凄まじい邪念が周囲へと放たれ、
<アノ地……キサマ……消セ……バ……世界……再ビワレ……モノ!
フ……ハハハハハハ……ハハハハ……ハ!!>
同時に届いた心話と狂気に満ちた笑い声に私達は一気に血の気が引いてしまったのでした。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
悪役令嬢の心変わり
ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。
7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。
そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス!
カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ぽっちゃり女子の異世界人生
猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。
最強主人公はイケメンでハーレム。
脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。
落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。
=主人公は男でも女でも顔が良い。
そして、ハンパなく強い。
そんな常識いりませんっ。
私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。
【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
悪役令嬢の慟哭
浜柔
ファンタジー
前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。
だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。
※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。
※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。
「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。
「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。
私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシェリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?
その狂犬戦士はお義兄様ですが、何か?
行枝ローザ
ファンタジー
美しき侯爵令嬢の側には、強面・高背・剛腕と揃った『狂犬戦士』と恐れられる偉丈夫がいる。
貧乏男爵家の五人兄弟末子が養子に入った魔力を誇る伯爵家で彼を待ち受けていたのは、五歳下の義妹と二歳上の義兄、そして王都随一の魔術後方支援警護兵たち。
元・家族の誰からも愛されなかった少年は、新しい家族から愛されることと癒されることを知って強くなる。
これは不遇な微魔力持ち魔剣士が凄惨な乳幼児期から幸福な少年期を経て、成長していく物語。
※見切り発車で書いていきます(通常運転。笑)
※エブリスタでも同時連載。2021/6/5よりカクヨムでも後追い連載しています。
※2021/9/15けっこう前に追いついて、カクヨムでも現在は同時掲載です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる