一目惚れって信じます?

横沢 雪祢

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可愛い人

可愛い彼女は

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  僕の可愛い彼女は、時折突拍子もない行動をとる。






「あのぉ…ひぃーちゃん…?」
「何?」
「これは…、僕、どういう状態…??」
  朝、目を覚ますと僕は、状況を理解出来ない状態だった。思考回路が追い付かない。

「説明が必要か?」
「状況理解を深めるためにも、是非ともお願いしたいです」
「晴樹に引っ付いてる」
「…うん、そうだよね」
  僕の願望が見せた幻とかじゃなかった。

  朝起きたら、ひぃーちゃんが僕に引っ付いていた。
―――いや、抱き付いていた。

「あのぉ…何で、引っ付いているのですか…?」
「何故今さら敬語」
「だってぇ…」
  誰か、理解して欲しい。朝、起き抜けに、彼女が僕に抱き付いているこの状況。ひぃーちゃんは、分かってない。

「ひぃーちゃぁん…」
  助けてください、これは最早拷問です。
「何だ、情けない声出して」
「新手の嫌がらせですか」
「私に引っ付かれると、困るのか?」
  ひぃーちゃんが嗤う。

  メンタル的な、耐久性的な何かを、試されてるんですかね、これ。

「困らないから、困るというか…」
「じゃあ、問題ないな」
  ひぃーちゃんはより一層力を込めて僕に抱き付く。



  そして、僕は気が付いた。

「………ひぃーちゃん、熱いね?」
「そ?」
  うりうりと、額を僕の胸に擦り付けてくる。

……可愛い。可愛すぎるんだけどっ!

「いつもより、体温高くない?」
「引っ付いてるからだろ?」
「いつもより、可愛いね?」
「いつも可愛いだろ?」
「……うん、そうなんだけど」
  違う、そうじゃない。絆されるな僕。

「ひぃーちゃん、正直に答えてくれる?」
「どうぞ」
「昨日、髪の毛ちゃんと乾かしてから、寝た?」
「うん」
  ひぃーちゃんの鼻がすん、と反応する。

「そっか」
  ひぃーちゃんは、嘘を付くのが下手だ。

「ひぃーちゃん、僕、今日は、お休みなんだよ」
「…知ってる」
「僕、ひぃーちゃんとこのまま今日はずっーと寝ていたいな?」
「ん…」
  ひぃーちゃんの長い前髪をそっと指を通すようにして避け、顔を覗き込むとやはりいつもより頬が赤く見える。

「ひぃーちゃん、眠いの?」
「少し…だけ」
「締め切り近かったもんね?」
「…まぁ、ぼちぼち…?」
  ひぃーちゃんの背中をとん、とん、とゆっくりあやすようにすると、ひぃーちゃんから力が抜けて行くのを感じた。しばらくすると、すぅーとゆったりとした呼吸が聞こえ、ひぃーちゃんが眠りについたのだと分かった。




  ひぃーちゃんは、自己管理が出来ない。自分では体調が悪い事に気付かない。時折突拍子もない行動をとる時は、大抵、体調が悪い時だ。
  そんな時、僕はそっと知らないふりをして、ひぃーちゃんを労ると決めている。

  ……どんなに可愛くても、その時ばかりは、僕は我慢する。


  すっごくツラいけど…。







  可愛い彼女は、体調が悪い時程、たちが悪いくらい割り増しで可愛い。
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