底辺家族は世界を回る〜おじさんがくれた僕の値段〜

ROKUMUSK

文字の大きさ
4 / 53
第一章

オアシス2

しおりを挟む
 オアシスは大きかった。
僕のじゅくじゅくになった足を見て、おじさんはここに3日いると言った。

「おじさん」
「…」

僕が女だと言ってから、おじさんは問いかけに答えてくれなくなった。顔すら見ない。その背中が僕を拒絶しているのが分かる。でも納得いかないよ。

「おじさんが悪いんだろ」
「…」

まったく!大人の癖に子供みたいに拗ねてさ。嫌になるよ!何で僕がおじさんの機嫌を取らなきゃなんないのさ!




 オアシスには、旅人のテントを張る場所として草が沢山生えている広場があって、そしてそこの近くには食べ物を売るお店が並んでる。

 僕は夜の暗い世界に並ぶお店の光をただ見てた。賑やかな声が嬉しい。人の声を久しぶりに聞いた気がする。

村を思い出すよ。

村の建物は全部木で出来ていたけれど、オアシスにある建物は真っ白な石で出来てる。屋根はなくて四角だったり、丸くててっぺんが尖った変な物がある。

 初めて村を出て、気が付いたらこんな所にやってきた。ここに母さん達も居たらよかったのに。見せたかったな。

 オアシスに着いてすぐ、
僕はおじさんに手当をされた。商品価値が下がるから男だと
言う様に言われて、これから2日は足を使うなとも言われた。オアシスを見て回る事は出来なそう。ちょっと残念だな。

 ここは不思議な花の香りに鼻がチクチクする辛そうな匂いが沢山だ。まるで絵本に出てくる魔人の国みたい。そしてオアシスの入り口に、見た事の無い大きな蛇や蜥蜴の様な騎獣が居るんだ。あいつらは意外と可愛い。

はぁ…頭が働かない。
おじさん、僕はこれからどうなるの?

「僕は男じゃないよ」

テントの中で日中の強烈な日差しを僕達は避けていた。だから、否が応でもおじさんは僕と居なくちゃならないし、僕はおじさんのご機嫌を取らなきゃいけなかった。

「…」
「確認しないおじさん達が悪い」
「…」

元々話をしてくれる人じゃなかったけど、僕の質問を無視する事はなかった。だから僕はおじさんと仲良くなれるって思ってた。それで助けて貰えるとか…思ってる訳じゃないけど。そうしてくれるかもしれない。そんな期待はあったかも。

「ねぇ、おじさん!」
「…」
「ねぇってば!」
「うるせぇぞ!黙ってろ!」

おじさんの機嫌が悪い。
ずっとイライラしてて、昨日はテントに寝に戻ったけれど朝になったら居なくて、夜中になるまで戻ってこなかった。今日は朝からテントの中にいるけれど、僕はこの張り詰めた雰囲気が嫌だった。

 ただゴロゴロしてるなら街にでも行きゃあいいのにと思う。邪魔なおじさんだよ。それに、忘れてることに腹が立つけど、僕は昨日からご飯を貰えて無い。こんな最悪な雰囲気の中、お腹が空いたとは言えなくて、それにお金なんて持ってないから、昨日は隣のテントから干し肉を一欠片くすねて食べた。おじさんが出て行ってくれたらまた行けるんだけどな。

 夜中、トイレがしたくて這って外に出た。サラサラの砂の上を蛇みたいに這いつくばって、壁沿いに生い茂るヤチの木の根元に穴を掘った。そしてぺたりと座ってほっと一息く。用を足していると、おじさんの声がした。

「坊主!おいっ!坊主!」

そんな声を聞きつつ、スッキリして僕はズボンを上げて穴に砂を被せていた。背後でおじさんの声が聞こえていて、僕を探しているのは分かったけれど、ずっと無視されて腹が立っていたから、僕も返事をしなかった。

「くそっ!坊主っ!どこ行った!返事をしろっ!」

だんだん小さくなるおじさんの声を黙って聞いた。焦った声に最初は笑いが込み上げて来たけれど、どうしてだろう?今は泣きたくて仕方がないんだ…僕はここだよ、そう言ってしまいそうになる。
 
…誰に?誰に知って欲しかった?

「父さん、母さん!ふぅっ、うえっ、えぇっ」

僕の家族はもうどこにも居ないんだ。そんな事が今更になって僕の心を占めていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

無能妃候補は辞退したい

水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。 しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。 帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。 誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。 果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか? 誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

処理中です...