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第二章
影は踏ませず羽ばたく為に
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染料を髪に馴染ませながら、アルベルトはユリアーナの額や頬を拭う。
「目を開けるな。染料が目に入ると染みるぞ」
「分かった!…で、何で売らないんだ?銀髪だとだめなのか?」
銀髪のままでは、レークイスがユリアーナの売却を許可しない可能性があると聞き、ユリアーナは思った事をアルベルトに質問した。
「レークイスがもしもお前に身体的欠陥があるとみなせば売る事はしないだろう。アルシャバーシャ様から睨まれたくないからな」
「睨まれる?」
「銀髪や金髪、白髪は話した通り魔力に関わる者だという証明だ。魔力の扱いが上手い者、魔力を蓄える事が出来る者…」
アルベルトの言葉に、前に聞いた“あの言葉”を思い出したユリアーナは、「あ、あぁ!タンク!」と声を上げ、頷いた。
頷く頭をガシリと掴んで、アルベルトはさらに染料を揉み込んだ。
「あの方はどの国でも一目置かれている。お前の所有権はレークイスにあるが……もしも…お前が果物を買って、食べようとしたらそれが腐っていた。どうする?」
「交換してもらう?」
「国同士だとそれじゃ済まん。レークイスは強国とはいえ聖貨幣の保有量が少ない。売買如きで諍いを起こしたくは無いはずだ…だから、そんな欠陥品を売るくらいなら最初から売らない、という選択をするだろう」
「欠陥品って思われなかったら?」
「…死んだ少年と同じ道を辿るかもしれん」
その言葉にユリアーナは息を呑み、
目を更にギュッと瞑った。
そして少しの沈黙の後、ユリアーナは話を変えようと聖貨の事を聞いた。
「な、なぁ…何で聖貨が少ないと喧嘩したくないんだ?」
「大国と呼ばれる国はレークイスと関わりを持ちたがらん。当然商人の出入も少ない。だから共通貨幣の聖貨が入ってこない…逆にレークイスの商人は外に出るが、聖貨に換金するには一定額以上の金でないと両替商は換金せんからな…増やしにくい」
「うーん。今でも聖貨が少ないのに、女男に嫌われたらもっと手に入らなくなるかもって事?」
「ざっくり言えばそうだ。アルシャバーシャ様に目をつけられたら他の国もその意向に追従する」
「ついじゅう…」
「同じ様にする、という事だ」
アルベルトはお前が自由になるには絶対に売られなくてはならないとユリアーナに言い聞かせた。そしてどう振舞うべきかも教え説いた。
「流すぞ」
それまで月明かりを反射させていた銀髪は漆黒となり、身なりが幾分良くなったとはいえ、ガリガリに痩せた身体と相まって余計に貧相な子供に見える様になった。
「フリオリを出たら直ぐにサザンガードだ。そこは中央が管理しているとはいえ、レークイスの属国の様な国だ」
「属国?」
「手下の様な国という事だ」
「そっか。じゃあ思いっきり演技する?」
「いや、お前はサザンガードの役人を睨んでろ」
「にっ、睨む⁉︎」
「あぁ、睨んでいればいい」
アルベルトが何を考えているのかが分からずユリアーナは首を傾げていたが、アルベルトが悪巧みをしている様に微かにニッと笑った為、頷いた。
「アルおじさん、悪いこと考えてんだろ」
「いや、お前が手の付けられないシャークだと思わせられれば良いと思っているだけだ」
「⁉︎」
よく分からない、何をどうしたらそうなるのかとユリアーナがしつこく聞いてくるのを聞き流しながら、アルベルトはそれ以上を言わなかった。
「あ!」
「……」
「ねぇアルおじさん。僕、ユリアーナの名前で売られるの?」
「…しまった‼︎」
「目を開けるな。染料が目に入ると染みるぞ」
「分かった!…で、何で売らないんだ?銀髪だとだめなのか?」
銀髪のままでは、レークイスがユリアーナの売却を許可しない可能性があると聞き、ユリアーナは思った事をアルベルトに質問した。
「レークイスがもしもお前に身体的欠陥があるとみなせば売る事はしないだろう。アルシャバーシャ様から睨まれたくないからな」
「睨まれる?」
「銀髪や金髪、白髪は話した通り魔力に関わる者だという証明だ。魔力の扱いが上手い者、魔力を蓄える事が出来る者…」
アルベルトの言葉に、前に聞いた“あの言葉”を思い出したユリアーナは、「あ、あぁ!タンク!」と声を上げ、頷いた。
頷く頭をガシリと掴んで、アルベルトはさらに染料を揉み込んだ。
「あの方はどの国でも一目置かれている。お前の所有権はレークイスにあるが……もしも…お前が果物を買って、食べようとしたらそれが腐っていた。どうする?」
「交換してもらう?」
「国同士だとそれじゃ済まん。レークイスは強国とはいえ聖貨幣の保有量が少ない。売買如きで諍いを起こしたくは無いはずだ…だから、そんな欠陥品を売るくらいなら最初から売らない、という選択をするだろう」
「欠陥品って思われなかったら?」
「…死んだ少年と同じ道を辿るかもしれん」
その言葉にユリアーナは息を呑み、
目を更にギュッと瞑った。
そして少しの沈黙の後、ユリアーナは話を変えようと聖貨の事を聞いた。
「な、なぁ…何で聖貨が少ないと喧嘩したくないんだ?」
「大国と呼ばれる国はレークイスと関わりを持ちたがらん。当然商人の出入も少ない。だから共通貨幣の聖貨が入ってこない…逆にレークイスの商人は外に出るが、聖貨に換金するには一定額以上の金でないと両替商は換金せんからな…増やしにくい」
「うーん。今でも聖貨が少ないのに、女男に嫌われたらもっと手に入らなくなるかもって事?」
「ざっくり言えばそうだ。アルシャバーシャ様に目をつけられたら他の国もその意向に追従する」
「ついじゅう…」
「同じ様にする、という事だ」
アルベルトはお前が自由になるには絶対に売られなくてはならないとユリアーナに言い聞かせた。そしてどう振舞うべきかも教え説いた。
「流すぞ」
それまで月明かりを反射させていた銀髪は漆黒となり、身なりが幾分良くなったとはいえ、ガリガリに痩せた身体と相まって余計に貧相な子供に見える様になった。
「フリオリを出たら直ぐにサザンガードだ。そこは中央が管理しているとはいえ、レークイスの属国の様な国だ」
「属国?」
「手下の様な国という事だ」
「そっか。じゃあ思いっきり演技する?」
「いや、お前はサザンガードの役人を睨んでろ」
「にっ、睨む⁉︎」
「あぁ、睨んでいればいい」
アルベルトが何を考えているのかが分からずユリアーナは首を傾げていたが、アルベルトが悪巧みをしている様に微かにニッと笑った為、頷いた。
「アルおじさん、悪いこと考えてんだろ」
「いや、お前が手の付けられないシャークだと思わせられれば良いと思っているだけだ」
「⁉︎」
よく分からない、何をどうしたらそうなるのかとユリアーナがしつこく聞いてくるのを聞き流しながら、アルベルトはそれ以上を言わなかった。
「あ!」
「……」
「ねぇアルおじさん。僕、ユリアーナの名前で売られるの?」
「…しまった‼︎」
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