底辺家族は世界を回る〜おじさんがくれた僕の値段〜

ROKUMUSK

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第二章

巡礼者の夜に染まる2人

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 日が傾き始め、2人は荷造りを始めた。
 荒く織られた丈夫なラグはアルベルトの荷に括られ、茶鍋と小さな鉄鍋はユリアーナの荷に括り付けられた。それが妙に嬉しいユリアーナは、ぴょんぴょん跳ねてカチャカチャと荷がぶつかる音を楽しげに聞いていた。

「…さぁ、行くぞ」

「うん!」

 時を感じない砂漠を2人は歩く。
日時計は姿を隠し、止まった夜の時の中、まるで巡礼者の様に導に定められた星をなぞり歩いていた。

 会話も無く、話し掛ける旅人もいない。

これから起きるかも知れない事を一つ一つ想像してはそれに対しての対策を考えているアルベルト。その背の先に連なる星々を、『ひとーつ、ふたーつ』と小声で数えながらユリアーナも歩いた。

 静かな世界に、ポツリポツリと同じ道を行く、黒く影を落とした者達の孤独な行進。いつまでも終わりがないように思える光景だった。

イーリクァース花祭りルゥリィルェル時下がりイーヒルーメ神々がシャヒリャーク喜ぶトゥーブ歌うヤチシャーブヤチの木の下

 何処からともなく、長い孤独の終わりを告げるように歌が聞こえる。まるで旅人を誘うように。

 祈祷の様な歌は一歩進むにつれ、旅人の不安や疲れを癒して行く。
 そして篝火に照らされたフリオリのオアシスに訪れた者達は安堵した。やっと砂漠を抜けられたと、誰もが胸を撫で下ろした。



「ユリアーナ、今からサザンガード入国申請とお前の証文証書を申請する手続きをしてくる」

「しょうもんしょうしょ?」

「お前が売り物だという証明する書類が証文」

「う、うん…」

「俺がお前を売る売人だとレークイスが認定した書類が証書…これは2枚が揃って初めて人買いは人を売る事が許されるし、買い手はお前を買う事ができる」

「なんか…うん」

ユリアーナはアルベルトの言葉に、何だか良く分からないのに、とても難しい言葉で自分が売り物としてアルベルトの側に居たという事を感覚的に感じた。そして信じてはいてもやはり売られるのだろうか?そんな不安な感情が顔に出ていた。

「…お前は俺と旅に出る…それがもし嫌なら…カッカドールで良い養子先を…見つけてやる」

「アルおじさんっ!嫌な訳ないじゃん!違うっ、違うよっ!なんか、なんか…僕、分かんない言葉だったから…もしかしたら売られるのかって思って」

「ユリアーナ。2度は言わない…」

「う、うん」

「お前が、俺の側が嫌だと言わない限り…俺はお前を連れて旅をする」

「‼︎」

それまでしょぼくれていた顔を見せていたユリアーナだったが、その言葉に今度こそアルベルトが自分を売る事や、手放す事は無いと理解し破顔した。そしてアルベルトは続ける。

「いつか…お前が俺の様に商売が出来るようになったら…」

「うん」

「どこかで家を買おう…お前の帰る場所を準備してやる」

アルベルトはいつもの憮然とした表情であったが、それが逆にユリアーナを安心させた。嘘では無いのだと感じさせた。

「俺を信じるか?」

「あっ、当たり前だろっ!だって僕はっ!アルおじさんに僕を売ったんだからっ!」








 オアシスの外れにある広い池で、水浴びや騎獣の水飲みができる。手続きを終えたアルベルトは、ユリアーナを連れてそこへ向かった。

 ユリアーナは魔力を蓄える魔力貯蔵タンクの性質を持ち、貴族の血を引いている可能性があった。そして力を誇るレークイスには垂涎の存在だと、アルベルトは見ていた。

「ユリアーナ」

「なに?」

「髪を染める」

「染める?僕の髪を?」

「そうだ」


銀髪、金髪、白髪は魔力の扱いに長けているか、魔力量の多い証。もしそうでなければ虚弱な者としてレークイスがアルシャバーシャへの売り渡しを拒否する可能性があるとアルベルトは言った。

「なんで?売れた方がいいんだろ?」

「お前の髪色が…銀髪だからだ」











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