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獣人も風邪を引く
しおりを挟む皇太子殿下と勉強会をするようになって1ヶ月。
勉強会といっても、皇太子殿下は読書をしながら時々私が困ってたら助けてくれる感じだけど、
一緒の空間にいるようになってから、ちょっとずつ皇太子殿下との距離が近くなって来た。
気持ちは親戚の子どもが心を開いてくれた感じ。
皇太子殿下も、私に対してツンケンしてる時があるけど…思春期の反抗期だと思うようになってきた。
そういう時期は誰だってあるから、仕方がないことだし…反抗期はあった方が良いって言うもんね。
…私はなかったけど。
そして、今日も勉強会をしようと蔵書室に向かったら…
「皇太子殿下、今日は部屋で休んでください」
顔を真っ赤にして、目をとろんとさせた皇太子殿下が椅子に座って私を待っていた。
だめだめだめ!これ完全に、風邪引いてる…!
「平気だ…」
声も鼻声だ。
獣人と言えども、風邪はちゃんと引くらしい。
流石に心配になったのか、いつも部屋の外で待機する皇太子殿下付きの侍女さんが心配そうに部屋の入り口に立っている。
「皇太子殿下、だめです。体調を戻すまでは勉強会をお休みにしましょう…?」
「でも…」
かなり無理しているのだろう、皇太子殿下は少しだけ息を乱して、分厚い本を手に取る。
頑張り屋さんだとは思っていたが、そんなに無理する必要はないはずだ。
体調を崩している時くらい、ゆっくり休むべきである。
「でも…、なんですか?」
辛そうな皇太子殿下を目の前にしてこんなことを思うのは不謹慎だが、
目が潤んでいつもより弱っている姿はいつもより数割増して可愛い。
でもだからこそ、それほど弱ってるということ…。
何としてでも部屋に戻って休んでもらわないと…
「部屋に戻ったら、お前がいないじゃないか…」
………え、
何…?
どういうこと!?
いきなりデレた!?
皇太子殿下の身体がふらつくのを見て、取り敢えず背中を支えた。
これはもう待ったなしで部屋へ直行である。
私は視線を侍女さんたちに向けて、皇太子殿下の身体を持ち上げて抱っこした。
私は一応力持ちで肉付きも良い方だし、皇太子殿下は14歳にしては幼い方なので、重いけど持ち上げることはできる。
「な…ッ」
「皇太子殿下、自分で部屋に行かないなら、私が連れて行くまでです」
「や、やめろ…自分で行くから…!」
本当に嫌そうなので、あっさりとおろしてあげる。
すると、皇太子殿下は「俺だけなのか…」とぽつりと呟いて、侍女に連れられて部屋に向かった。
その日は勉強する気にならず、私は部屋に戻ることにした。
………うーん、気になる。
部屋に戻ったところですることもなく。
何かしようにも、皇太子殿下のことが気になる。
かなり辛そうだったけど、ちゃんと眠れただろうか。
…私がお見舞いに行って迷惑じゃなかったら行くところなんだけど…
「エミ様、皇太子殿下のところへお見舞い、行ってもよいと思いますよ」
!!
「行っても迷惑じゃないですかね…?」
「長居しなければ問題ないかと」
「そっか…」
それなら、行ってみようかな…。
さっき、部屋で寝てたら私に会えないから無理矢理頑張って蔵書室に来てたみたいだったし。
弱ってる時って本音が出るって言うから…
皇太子殿下も、私と過ごす時間を楽しんでくれてたんだね。
それは私も同じ気持ちだから、嬉しいな。
「りんごでも持って行って、むいてあげようかな…」
「!エミ様、りんごがむけるのですか?」
え、りんごってむけたらすごいの?
侍女さんは珍しく目をキラキラさせている。
あ、そういうことか。
この世界って獣人が多いんだけど、獣人は力が強かったりする人が多かったり、とても素早いっていう特性があるんだけど、
手先の器用さはあんまりなんだって。
そこは、人間が優れているところなんだけど…人間は人口が少ないから、こういうりんごをむいたりとかは、料理人でも難易度が高いとされてるようだ。
って、前に家庭教師の先生が雑談で話してたな…
よし、そうと決まればりんごを用意してもらって、早速皇太子殿下の部屋まで行こう。
私は果物ナイフも借りて、侍女さんと皇太子殿下の部屋へ向かうのだった。
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