上 下
14 / 36
恋人関係

驚く彼を見に行きます

しおりを挟む

町外れまで来てから、側近の人が竜化した背中に乗って、私は竜人の国に向かうことになった。

側近の人は、後で皇帝に殺される…と呟いているが、これは私の我儘なので、ゼブラさんには私から彼に罰が下らないようにお願いしておこう。
私の我儘を聞いてくれているのだから、むしろ評価してもらいたい。

竜の背中は不安定かと思ったが、不思議と身体がフィットした。
空を飛んでいるのに、あまり風も当たらないし…何か魔法みたいなものでもあるのかな。

側近の人は凄いスピードで飛んでいき、周囲の景色がどんどん変化していく。
森や砂漠、海を越えて、2時間ほど空を飛んだ。
同じ体制は少ししんどくなってきたが、それ以上に景色がとても良かったので、それほど苦痛にはならなかった。

私は生まれてからずっと、住んでいた街から出たことがない。
空を飛びながら、側近の人がいろんな場所を説明してくれた。


そして、ようやく見えて来た竜人の国を、側近の人は誇らしげに紹介してくれた。

「目の前に見える大陸、あれが、我らが皇帝の治める、竜人の国です。」

竜が飛んでいる。
自然も豊かで都市も発展している。

初めて見る光景に、胸が高鳴った。



お城の敷地内に側近の人が降り立って、私は漸く本当の意味で竜人の国に足を踏み入れる。
街だけでなくお城も立派だ。
レンガで詰まれた建築物は西洋のそれを思い出させるが、人間の国の城よりもいろんなものが大きい。
竜化しても大丈夫なようにしているのだろうか。

私たちが地面に降り立ったのを見て、周囲にいた騎士たちが集まって整列した。
その光景に、思わず腰が引けた。

私が住んでいた環境からかけ離れすぎて、別世界に来たみたいだ。


側近の人が私の横に人の姿で立ったら、騎士たちが一斉に膝をついた。

「こちらのことはよい。警備に戻れ。」

「はっ。」

側近の人が騎士たちを散らす姿を見ると、先程まで動揺していた姿が嘘のように思う。
皇帝の側近なだけはある…。
実は凄い人なのかも。
って、それはそうか、国でトップクラスに権力がないと、ゼブラさんと一緒にいられないよね。
私の街に来てくれるゼブラさんを含めた竜人の人たちは、みんな謙虚な人たちだったから、偉い人ってイメージがないんだよなぁ…
でも、いずれゼブラさんと結婚することを考えたら、そういうことも勉強していかないといけないんだと思う。

「番様、こちらでございます」

騎士たちが去ったのを見届けてから、側近の人はそっと私を先導してくれた。

うん、いろいろと考えるよりもまずはゼブラさんに会って、差し入れをしよう。




お城の中もいろんなところが大きかった。
ドアも廊下も広々としていて、ゼブラさんのいるところまで結構歩いた。
階段もとても長くて、少し息が切れた私を側近の人が凄く心配してくれたけど、(でも手を貸せないでわたわたしていた)なんとかゼブラさんがいるという執務室の前に到着した。


この先に、ゼブラさんがいる。

いつもと違う姿を見ることになるかもしれないからか、ちょっとだけ緊張してしまうけど…
早くクッキーを食べてもらって、忙しく仕事をしてる彼を甘やかしたい。

ちょっとだけ深呼吸をして、ドアに手をかけた。


すると…


「誰か!誰かいないか!」

ドアが勝手に開いて、中から男の人が慌てた様子で出てきた。

「何だ、騒々しい。どうした。」

私の後ろにいた側近の人がそう返すと、中から出てきた人が「ソルト様!?」と背筋を正した。

「それが、皇帝が気を失われて…!」

「!!?」

考えるよりも先に身体が動いた。
男の人が止めるのも振り払って、私は執務室の中に入った。

「ゼブラさん!?」

そこには、大きな机に突っ伏して動かない、ゼブラさんの姿があった。

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

人間ドリンクサーバー ~エマ喫茶へようこそ~【完結】

BL / 完結 24h.ポイント:674pt お気に入り:356

待って、待って!僕が好きなの貴方です!

N2O
BL / 連載中 24h.ポイント:7,415pt お気に入り:103

怒涛のソロ活(末っ子4)

BL / 完結 24h.ポイント:355pt お気に入り:4

超好みな奴隷を買ったがこんな過保護とは聞いてない

BL / 完結 24h.ポイント:1,136pt お気に入り:4,006

【完結】前世の記憶があっても役に立たないんですが!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:546pt お気に入り:2,248

異世界転生先で溺愛されてます!

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:99pt お気に入り:728

ひとつ屋根の下

恋愛 / 完結 24h.ポイント:411pt お気に入り:16

能力1のテイマー、加護を三つも授かっていました。

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:10,665pt お気に入り:2,239

処理中です...