19 / 36
恋人関係
ゼブラさんとお昼寝します
しおりを挟む「…強引なことをして、ごめんなさい。でも、こうでもしないとゼブラさん、休んでくれないでしょ?」
「ミーア…」
ゼブラさんは、戸惑った声で、私の名前を呼んだ。
なぜこんなことを、という気持ちがこもっている視線に、私も同じ気持ちを乗せて見つめ返す。
「早く仕事をしないといけない理由は何?」
ベッドサイドに立ってそう尋ねると、ゼブラさんは少し照れ臭そうに「ミーアと過ごす時間を…」と言って、次に落ち込んだ声で「重いよな…」と呟いた。
重いか重くないかわからないけど、私が重いと思わないんだったら問題ないよね。
私は、ゼブラさんが私と一緒にいる時間を作ってくれることは、凄く嬉しいんだ。愛されてると思うし、そこまでして会いに来てくれていたことがとても嬉しい。
でも…それ以上に、彼には無理をしてほしくない。
「ゼブラさんのその気持ち、凄く嬉しいよ。愛されてると思うし…私も、ゼブラさんと一緒にいる時間を増やしたいもん」
その言葉に、ゼブラさんはとても嬉しそうな顔をした。
私と想いが通じ合っていると分かって、より幸せオーラが周囲に漂う。
だけど…
「でも、だからって無理して欲しいわけじゃない。ゼブラさんが体調を崩して…私、凄く辛かったんだから」
思わず、ぼろりと涙が出た。
ゼブラさんがギョッとして、ベッドから抜け出して私の涙を拭いに来る。
「すまない、そんなに君が私を想ってくれているなんて…!泣かせたかったわけではないのだ、もう無理はしないから、どうか悲しまないでくれ…!」
ぽろぽろと流れ出した涙は、止まらない。
ゼブラさんはどこからか取り出したハンカチで、そっと私の涙を拭う。
しかし、なかなか涙が止まらないから、ずっと「すまない」と謝り続ける。
違う、今は謝罪の言葉が欲しいんじゃない。
彼の温もりを感じたいんだ。
「ゼブラさん…、抱きしめて、ぎゅってして…」
両手で彼の服の裾を握って、おねだりをすると、彼は恐る恐る私の身体に手を回した。
大きな身体に包まれると、やはり安心する。
「頭をぽんぽん撫でて」
もう一つ要求を追加したら、彼はすぐに行動に移してくれる。
こんな、私の我儘を許してくれる彼を、私はずっと離さないだろう。
不器用な手の動きに、彼がこれをするのが私だけだと想像できるとまた嬉しくて、漸く涙が止まった。
そのあと、侍女の人に寝巻きに着替えさせてもらって、昼食も持ってきてもらって、私とゼブラさんは今日一日寝室に缶詰することが決定した。
私がここに住むようになるんだから、これからは今以上に会えるようになるよ、今は無理しないで欲しい、と彼を説得して、今日一日は仕事を全くしないと約束してもらったのだ。
部下の人には申し訳ないと思ったのだけど、「しっかり皇帝を休ませて下さい」「私どもが何を言っても聞かなかったのです」と言われたので、ゼブラさんにはしっかり休んでもらおうと思う。
「ゼブラさん、ご飯食べよ」
スープなどが冷めないうちに早くご飯を食べようと、ゼブラさんを誘う。ゼブラさんの手を引いて、小さなテーブルに並んで座る。
彼は戸惑いながらも私に抵抗せず、私の横に収まった。
さっきまで私が泣いていたことから、私を刺激しないように彼は言われるがままに動く。
大きな身体をして権力もある彼が、私一人に振り回されているこの光景を部下の人たちが見たらどう思うだろう。
…いや、もう結構見られてるか。
目の前にあるスープをまず飲む。
あんまり高級なのを飲んだことがないから分からないけど、これは絶対美味しいやつだ!
ゼブラさんは私の様子を見ながら、自分のお皿に乗った食べ物を口に運ぶ。
うんうん、ちゃんとご飯食べてくれないと、回復しないからね。
パンもとても柔らかいし、キッシュも美味しい。
脂っこいものがなくて、あっさりしたものばかりだ。
食後にゼリーがあったので、それも早々に平らげた。
本当はゆっくり食べた方がお淑やかに見えるのかもしれないけど…私にそんな芸当はできない。
美味しいものが目の前にあったら、欲望のままに食べちゃうよ。
お腹がいっぱいになったところで、眠気が襲う。
私もちょっと朝からバタバタしてたから疲れちゃったみたいだ。
さっき侍女の人がいるところでもゆっくり紅茶を飲む時間があったけど、その時は眠くならなかったんだよね…。
ゼブラさんがそばに居るから、安心して眠気が出るのかな…
もらったアロマセットに手を伸ばすと、横にいるゼブラさんが私の代わりにそれらの準備をすると言ってくれた。
有難い。私が眠たくなってることを察してくれているようだ。
でも、ゼブラさんを眠らせないといけないのに、私が寝ちゃったら意味がない…。
なんとか眠気を飛ばして、アロマを手にしたゼブラさんの後に続いてベッドに向かう。
ゼブラさんは枕元にアロマオイルを染み込ませたコットンを設置して、柔らかい毛布をめくって私が入りやすいようにしてくれた。
「ゆっくり眠ると良い」
「私よりも、ゼブラさんが寝ないとだめ」
ベッドに乗り上げた私は、ゼブラさんの手を引いてベッドに誘った。
ゼブラさんは戸惑った顔をしながらも、私に抵抗しない。
言われるがままにベッドに入った。
でも、端っこの方にいるから、ベッドから落ちてしまいそう…。
なんとか中央の方に来てもらいたくて、眠たい頭をフルに使って彼を呼び寄せる。
「ゼブラさん」
名前を呼んで、両手を広げてみた。
目の前のゼブラさんはごくりと何かを飲み込んで、恐る恐る近づき…私の両手が彼を抱きしめられる距離まで来たところで、私は思いっきり彼の胸に飛びついた。
「な!ミーア!?」
「ゼブラさんがちゃんと寝付くまで離さないからね!」
「そ、そんな…!なんてこと…!!」
とても焦った彼は、声だけで必死に私を説得しようとするが、無理に引き剥がそうとしない。
ゼブラさんに手を出されるなら望むところだし。
むしろ、そろそろゼブラさんからちゅーしてほしい。
ぎゅうぎゅう抱きついて、ついでに胸も押し付けてみる。
びくんと身体を跳ねさせたゼブラさんの反応に楽しくなってきて、私は眠気も忘れて戯れついた。
結局、ゼブラさんは私以上に疲れたようで、手を繋いで寝ると言う折衷案を受け入れた彼は、あっさりと眠ってしまった。
アロマが効いたのかもしれないし、疲れていたからってのもあるだろう。
決して、私がじゃれついたからじゃない。……多分。
2
あなたにおすすめの小説
憎しみあう番、その先は…
アズやっこ
恋愛
私は獣人が嫌いだ。好き嫌いの話じゃない、憎むべき相手…。
俺は人族が嫌いだ。嫌、憎んでる…。
そんな二人が番だった…。
憎しみか番の本能か、二人はどちらを選択するのか…。
* 残忍な表現があります。
番など、御免こうむる
池家乃あひる
ファンタジー
「運命の番」の第一研究者であるセリカは、やんごとなき事情により獣人が暮らすルガリア国に派遣されている。
だが、来日した日から第二王子が助手を「運命の番」だと言い張り、どれだけ否定しようとも聞き入れない有様。
むしろ運命の番を引き裂く大罪人だとセリカを処刑すると言い張る始末。
無事に役目を果たし、帰国しようとするセリカたちだったが、当然のように第二王子が妨害してきて……?
※リハビリがてら、書きたいところだけ書いた話です
※設定はふんわりとしています
※ジャンルが分からなかったため、ひとまずキャラ文芸で設定しております
※小説家になろうにも投稿しております
番から逃げる事にしました
みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。
前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。
彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。
❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。
❋独自設定有りです。
❋他視点の話もあります。
❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。
【完結】番が見ているのでさようなら
堀 和三盆
恋愛
その視線に気が付いたのはいつ頃のことだっただろう。
焦がれるような。縋るような。睨みつけるような。
どこかから注がれる――番からのその視線。
俺は猫の獣人だ。
そして、その見た目の良さから獣人だけでなく人間からだってしょっちゅう告白をされる。いわゆるモテモテってやつだ。
だから女に困ったことはないし、生涯をたった一人に縛られるなんてバカみてえ。そんな風に思っていた。
なのに。
ある日、彼女の一人とのデート中にどこからかその視線を向けられた。正直、信じられなかった。急に体中が熱くなり、自分が興奮しているのが分かった。
しかし、感じるのは常に視線のみ。
コチラを見るだけで一向に姿を見せない番を無視し、俺は彼女達との逢瀬を楽しんだ――というよりは見せつけた。
……そうすることで番からの視線に変化が起きるから。
『番』という存在
彗
恋愛
義母とその娘に虐げられているリアリーと狼獣人のカインが番として結ばれる物語。
*基本的に1日1話ずつの投稿です。
(カイン視点だけ2話投稿となります。)
書き終えているお話なのでブクマやしおりなどつけていただければ幸いです。
***2022.7.9 HOTランキング11位!!はじめての投稿でこんなにたくさんの方に読んでいただけてとても嬉しいです!ありがとうございます!
『えっ! 私が貴方の番?! そんなの無理ですっ! 私、動物アレルギーなんですっ!』
伊織愁
恋愛
人族であるリジィーは、幼い頃、狼獣人の国であるシェラン国へ両親に連れられて来た。 家が没落したため、リジィーを育てられなくなった両親は、泣いてすがるリジィーを修道院へ預ける事にしたのだ。
実は動物アレルギーのあるリジィ―には、シェラン国で暮らす事が日に日に辛くなって来ていた。 子供だった頃とは違い、成人すれば自由に国を出ていける。 15になり成人を迎える年、リジィーはシェラン国から出ていく事を決心する。 しかし、シェラン国から出ていく矢先に事件に巻き込まれ、シェラン国の近衛騎士に助けられる。
二人が出会った瞬間、頭上から光の粒が降り注ぎ、番の刻印が刻まれた。 狼獣人の近衛騎士に『私の番っ』と熱い眼差しを受け、リジィ―は内心で叫んだ。 『私、動物アレルギーなんですけどっ! そんなのありーっ?!』
番など、今さら不要である
池家乃あひる
恋愛
前作「番など、御免こうむる」の後日談です。
任務を終え、無事に国に戻ってきたセリカ。愛しいダーリンと再会し、屋敷でお茶をしている平和な一時。
その和やかな光景を壊したのは、他でもないセリカ自身であった。
「そういえば、私の番に会ったぞ」
※バカップルならぬバカ夫婦が、ただイチャイチャしているだけの話になります。
※前回は恋愛要素が低かったのでヒューマンドラマで設定いたしましたが、今回はイチャついているだけなので恋愛ジャンルで登録しております。
番が逃げました、ただ今修羅場中〜羊獣人リノの執着と婚約破壊劇〜
く〜いっ
恋愛
「私の本当の番は、 君だ!」 今まさに、 結婚式が始まろうとしていた
静まり返った会場に響くフォン・ガラッド・ミナ公爵令息の宣言。
壇上から真っ直ぐ指差す先にいたのは、わたくしの義弟リノ。
「わたくし、結婚式の直前で振られたの?」
番の勘違いから始まった甘く狂気が混じる物語り。でもギャグ強め。
狼獣人の令嬢クラリーチェは、幼い頃に家族から捨てられた羊獣人の
少年リノを弟として家に連れ帰る。
天然でツンデレなクラリーチェと、こじらせヤンデレなリノ。
夢見がち勘違い男のガラッド(当て馬)が主な登場人物。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる