古の冒険都市は観光地化の波に飲まれました 〜次は(俺・オレ・私・あたし・わたくし)のターン〜

杏仁霜

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mission 3 祝祭の神様

防衛対策と使い魔

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Side-ラスファ 8

 手紙を託したパンサーを見送って、デュエルの帰りを待つまでの間に、できることはしておきたい。とりあえず万一に備えての安全確保を優先して、コネのある町長宅に押しかけさせてもらった。
 
 なぜだか上機嫌で茶の準備を始める夫人を押しとどめて事情を説明すると、町長の顔色が変わった。即座に見張り台に人員を配備すると関係各所に警告を発令し、避難誘導に協力してくれると確約してくれたのだ。やはり、この町長は有能だった! 
 
 私も町長からの紹介状を貰うと、各所に避難警告を伝えに走る。なにせ、弱いゴブリンとはいえ数十、数百の大群だ。対応を誤れば街一つが地図から消えることにもなりかねない!

 街の地図と照らし合わせて重要施設や一般市民の住宅街などを中心に回るが、ここで大きな誤算が起きた。
 オラクル祭の期間真っ最中のために、祭に浮かれた市民は何かのイベントと思い込んで避難情報が正しく伝わらないのだ。どうすれば…?

 こうしている間にも、ゴブリンの群れは街に迫っている。エルダードで同じことが起きたとしても、潤沢な戦力が揃っているために深刻な被害は出ないだろう。だが、ここは一般市民が大半を占めるアローガの街だ。同じように行くはずがない…いや、待て。

 二つある街の門をあえて一方だけ開けてゴブリンの群れを一箇所に集中させるまではアーチと同じだが…簡単なものでいい、門の前になんらかの罠を仕掛けられないか?
 遠距離で操られている知能の低いゴブリンなら、そこで数を減らせるかもしれない。

 徐々に集まってきた数人の地元自警団員に簡単な罠の設置を頼むと、手近な見張り台に登って街の周囲を見回してみた。
 少し離れて広がる森に潜伏していると思われるゴブリンは、その数約数百…思ったよりも多そうだ。   犯人は、杖を持ち歩いて効果の範囲を広げ、その分掌握できるゴブリンの数を増やしているのか…?
 
 その時、大きな黒フクロウが森に向けて飛び立つのが見えた。…なんだ…?

「あの黒フクロウを射て、ラスファ!」
 見張り台の下から、珍しく切羽詰まったようなアーチの声が届いた。
 ___そうか、使い魔___!
 
 そう悟ってからは、躊躇などなかった。
 瞬時に矢をつがえ、弓を引きしぼる。
 放たれた矢は狙いあやまつことなく、黒いフクロウの胴体に真っ直ぐ射抜いた。甲高い悲鳴をあげながら、黒いフクロウは羽を撒き散らしながら落ちて行く。

 全ては、一呼吸ほどの間に終わった。


「お見事~!」
 見張り台を降りた私を迎えたのは、誠意のカケラもないアーチの拍手だった。
「なぜわかった? あれが使い魔だと…」
「なに、神殿で修道女の一人が手紙つけて放すのを見てな。ここまで追いかけたらちょうど、オメーがいたんだよ」
「…手紙?」

 落ちた黒フクロウを回収すると、アーチの言う通り手紙が結んである。

『計画に支障あり。決行はギリギリまで遅らせるべき』

 決行と言うのが、多分ゴブリンを…。
「ってーかさあ。これ、ヤバくね? 決行を遅らせるってメッセージ、止めちまったぞ? 支障ってのは、オレたちのことか?」
「これを送ったという、修道女は?」
「その辺は大丈夫だ、捕まえてある。ちょいと尋問してくるかね?」
 私は頷いた。街の重大事だ、尋問はアーチに任せると、襲撃開始は本日夕刻の鐘よりという情報を得て来た。

 しばらくして芸術神の神殿に出向くと、若い修道女がアーチにべったりとくっついて離れない状況に出くわしたんだが。…いや、聞く気は無いがどんな尋問の仕方を…?
 不穏な神殿をよそに街の人々は門前の厳戒態勢を読み取り、すっかり静かになっていた。警備していた地元自警団員が、湧き出る野次馬どもを追い払う。
 もうじき日没の時刻だ。夕刻の鐘も近い。

 だが肝心のデュエルは、まだ姿を見せなかった。

 
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