古の冒険都市は観光地化の波に飲まれました 〜次は(俺・オレ・私・あたし・わたくし)のターン〜

杏仁霜

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Intermission 5 田舎大将、出陣!

田舎大将、感心!

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Side-ドラン 3

 おらの目的は果たされることなく、リドの手綱を握る事に終始させられていた。
 おかしいよな、ホントならとっくに強ぇやつとやりあって冒険者の第一歩を踏み出してる頃だってのによ?
 
 「まだまだ、オレは負けねぇぜ!」
 リドの調子はずっとこんなだ。いい加減におとなしくしてくれりゃいいのに。
 そもそもこいつ、何と戦ってるんだろな?
  諌めりゃ諌めたで、二言目には「親父に言うぞ!」なんて凄むし、呆れて物も言えない。なんでここまで来て、父親村長の威光が届くと思ってるんだかなあ?

「次行くぞ、次!」
 リドは相変わらずさっさと人混みを泳ぎ渡る。都会に慣れてねぇおらは、ついてくだけで手一杯だ。
「盗賊ギルドってやつ、見に行こうぜ!」
 その馬鹿なセリフに、おらはめまいがしただ。盗賊ギルドってアレだろ? 犯罪の統括してるって言うヤベェとこ。

 流石にそれだけはと必死に止めて、おらはため息をついた。こんな事なら村長のとこに報告行かなきゃよかった、と。
「どうした、揉め事か?」
 不意に、視界が陰った。いつの間にか、見上げるような大男がこちらを見下ろしている。短い黒髪に黒目で腕には『臨時自警団』の腕章、鼻先には一本の傷が走っていた。柔和そうな顔つきだが着ている鎧は多くの傷が刻まれていて、歴戦の戦士だろうとは一目でわかった。

「はは、この馬鹿が観光に来て盗賊ギルドを見物したいって阿呆なこと言ってんだ。兄さんからもなんか言ってくんねぇか?」
「おい!」
 この街に来てから、この馬鹿のおかげで苦労しかしてねぇ。これぐれぇ言っても、バチはあたらねぇだろ?

 だがそれに対して、大男は顔色一つ変えずに額を掻いて言い放った。
「ああ…あの辺りはきな臭いからな。お薦めはしないぞ。ここだけの話、そこの界隈で昨夜首無し死体が見つかってな。よくあることなんだが…」
「!」
 「捜査が難航していてな、未だに首が見つからないんだ。…もちろん、犯人も」
 そう言って凄みのある顔でニヤリと笑う。

「…そそそうですか! お仕事お疲れ様です! よし、じゃあ土産物でも見に行くか!」
 歴戦の大男にこうも言われれば、リドも歯がたたねぇ。冷や汗を流しながらおらの腕を引っ張って立ち去ろうとする。もう一度おらは大男を振り返ると、彼は片目つぶっていたずらっぽい笑みを向けていた。はは、そういうことか!
 おらは感謝しながらこっそりと手を振り返し、リドを追いかける。
 すげーいい奴だ! それに強そうだし! リドさえいなけりゃ、手合わせを申し込めたかも知れねぇのにな…。
 
  おらたちは再び賑やかな大通りへと戻っていた。
 リドはさっきの大男の言葉を間に受けて挙動不審になっちまってるが、まだ悪さをしてぇようだ。懲りねぇよなあ…。
「お、あのねーちゃん可愛いな。声かけてくるか」
 またか…。
 リドの見る方には、長い黒髪に青白い肌、小柄で細身の清楚な白いワンピースの娘がいた。さっきの巨乳美女とは随分タイプが違うが、これはこれで好みなんだろう。ストライクゾーンが広いだなあ…。というか、大人しそうだから目をつけたといったほうが正しいだか。

「よう、ねえちゃん。オレの女にならねぇか?」
「誰だ、お前」
「なに、旅のものだ」
 …カッコつけて言っているが、それただの観光客ってだけだかんな?
「無理。ヨメの方がいい」
 彼女はバッサリと意味不明な一言で切り捨てて去ろうとする。
「いやいや、待てってねえちゃん! オレと…」
 そろそろ止めるべ! 彼女の腕を掴んで引き寄せようとするリドだが、その瞬間おらもリドも目が点になった。
 
「え? え? え? え?」
 なんと、掴まれた腕はそのままに彼女は意に介さずに歩いている。片腕にリドを引きずったままで。それでも離さないリドもある意味あっぱれだが、そのまましばらくズリズリと尻を引きずられた後、振り切られて石畳に大の字に転がった。

「え? え? どういうこと? 何があった?」
 リドは大の字のままで呆然と呟いてるが、ンなことおらが知りてぇよ。
「ほらな、誰彼構わず声かけるから、こんなことになるだよ」
「あたたた…」
 我に返って立ち上がるが、周囲から小さく笑い声が上がる。
「ん?」
「おい、リド! 尻!」

 しばらく彼女に引き摺られていたリドの尻には、擦り切れて大穴が開いていた。

「○×△◇ッ!?」
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