古の冒険都市は観光地化の波に飲まれました 〜次は(俺・オレ・私・あたし・わたくし)のターン〜

杏仁霜

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short mission 3 偽物・類似品にご注意!

プランB、いってみよう!

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Side-デュエル 3

 あの後。
 ひと晩森で夜明かしして、やっとアーチから連絡が来た。アーシェ自身は目を閉じて、アーチのところに連れて行かせた使い魔を通じて話を聞いているところだ。
 アーシェの使い魔と感覚共有しているために、アーチの言うことはわかる。だがこっちからメッセージを伝えることはできないのは困りものだ。

 まあ、わかっていたからこその事前打ち合わせなんだがな。

「アーチは何て?」

 使い魔通信がひと段落ついた頃を見計らっての俺の問いに、アーシェは苦笑いで首を振る。
「…やっぱり最初の計画はダメっぽいわ。例の『冒険者』は『商人』の訴えに耳を貸さずに酒盛り三昧だって」
「…だろうな。なら、準備するか」
 さしたる感情も交えず、ラスファは焚き火の跡に水をかける。彼も予測していたのだろう…淡々としたものだ。

「言っておくが、今回は目立つことが目的だからな」
「…」
 俺の言葉に、彼は俯いて答えない。無理もないか、目立つことが一番嫌いなのだから。
「よーっし! こうなったら、とことん目立っちゃうもんねー!!」
 対照的にテンションを上げるアーシェ。俺としては、足して二で割ったくらいのテンションで頼みたいところだ…アタマが痛い。

 日も高いうち、打ち合わせ通りの手順で俺たちは例の村に赴いた。村の門に差し掛かると、ちょび髭の門番が声をかけてくる。
「村に何か用かね?」
 彼はゴリゴリの俺の武装に目を止めると、不信感も露わに眉をひそめる。怪しい者を入れないようにという検問だ。まあ、コレが彼の仕事だからな。まして今はタチの悪い冒険者が中にいるのだ…野盗に襲われて困窮した商人とはわけが違う。気が高ぶるのは仕方ない。さして気に留めずに俺は答える。

「通りすがりの冒険者だ。少し休憩させてもらえたらと思ってな」
「そうでーす!」
 ひょっこりと俺の後ろから現れた、ちいさな少女に門番は目を見開く。まあ、規格外サイズの俺を見た後だと余計に小さく見えるだろうな。
「明け方からほぼずっと歩きづめで、もうヘトヘトなの。後の二人はともかく、あたしもう限界でさあ。ちょっと休ませて欲しいなって。ダメ?」
 最後の一言の時に、上目遣いで門番を見上げる。おい、どこでこんな仕草覚えたんだ?

 上目遣いが決め手になったとは思いたくないが、門番の警戒は明らかに弱まった。
「はー…お嬢ちゃんも冒険者なのかい? おじさん、驚いちゃったよ」
「そうなの! 兄貴とデュエルの三人で組んでるんだ。ね、兄貴?」
 その一言で門番の目がラスファに向く。
「…ああ」
「兄妹? …もしかして義理のかい?」
 いきなり切り込むように投げられた質問に、ラスファはあっさりと答える。
「似ていないとはよく言われるが、母親が違うからな。複雑だから、そこはあまり追求しないでもらえると助かる」
 「ああ、そりゃすまなかった」
 まあ、そこは事実だからな。怪しんでいた門番は、申し訳なさそうに身を縮めた。

「冒険者の身分証なら、これでいいか?」
 言いながら俺が突き出した手の甲に、じんわりと光る複雑な文様が浮き上がる。ラスファとアーシェもそれに倣って手の甲の身分証を見せた。

 あまり知られてはいないが、これが冒険者の身分証だ。正式に宿屋に所属して冒険者をするなら、必ずこの文様がきき手の甲に刻まれている。こんな風に自分の意思で浮き上がらせることも可能で、各宿屋に設置された水晶に照らせば、持ち主の経歴や階級レベルに至るまで読み取れる優れもの(しかも自動更新)だ。最初はカードの形だったんだが、冒険中の紛失や破損が後を絶たずにこういう形に落ち着いた。魔術師ギルドの技術開発部様さまだ。

 ちなみに登録された職業や技能スキル階級レベルなどによってデザインや色が異なるために、二つとして同じものは存在し得ない。
「ほおお!? こりゃたまげた!」
 案の定、少年のように門番は目を輝かせる。
「あ、ご覧になるの初めてですか?」
「正式な冒険者には、これが必ずあるんだよ!」
  門番はしげしげと身分証を眺める。

 程よく警戒が解けたところで、俺が本題に切り込んだ。
「何か問題でも起きているのか? 随分と警戒が強いようだが…」
 その質問に、門番は顔を曇らせる。
「ああ…まあその、ちょっとばかりな」

 …デスヨネー。
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