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mission 4 ワンコ王国、建国のススメ!
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side-デュエル 2
『白銀亭』の戸口をくぐれば、アーチは寝るつもりかそそくさと自室に戻った。
ラスファは厨房にこもって朝食の用意に勤しむ。どこまでも対照的だ。
「おはようございます、デュエルさん! またお稽古ですか?」
挨拶をしてきた黒髪の少女が手を振ってきた。
彼女はラグランジュ・メイナー。仲間うちからはラグと呼ばれている。黒くまっすぐな黒髪に澄んだ青い瞳。黒い神官の衣装と四角い学者帽子をまとって、小さなメガネをかけた小柄な少女だ。ちなみに清楚な雰囲気で密かに人気があるようだ。
知識神に仕える神官見習いで、見習いの字はそろそろ取れつつある。学生をしながら冒険者もやっている努力家で、良くも悪くもまっすぐで一途な性格だ。
「ああ、久々にしごいてもらったところだ」
「朝からお疲れ様です。お怪我などはありませんか?」
「ああ、あってもかすり傷程度だ」
そう言った俺を彼女は引き止めた。
「いけませんよ、かすり傷でも油断したら! ちょっと見せてください」
そのまま俺の肘に擦り傷を見つけると、神に祈りを捧げ始めた。見る間に傷が消えてゆく。
「…相変わらずすごいな」
「いえ、神のご加護の賜物ですから!」
そう言って彼女はにっこりと笑った。
「あのおっちゃんの稽古で擦り傷で済むって、逆に凄いよねー。デュエルの身体って、何でできてんの? 鉄?」
カウンター席で書き物をしていた、小さな少女がぴょんと立ち上がる。
彼女はアーシェラン・バリニーズ。小柄で幼い印象だが、実はさっきのラグよりも一つ年上だったりする。栗色の巻き毛をポニーテールに結った魔術師ギルドの学生だ。ちなみに彼女はラスファの異母妹に当たる。母親が違うんだそうで、その証拠とばかりに彼女も少しばかり耳が尖っていた。人間とエルフ族の混血である、ハーフエルフの証だ。
「あーもう、レポートも煮詰まっちゃった! 気分転換したーい!」
「提出期限、いつでしたっけ?」
「あと三日! あーあ、レポート免除を狙えそうな手ごろな依頼ってこないかなあ?」
補足するとエルダードの魔術師ギルドや神殿の学生は、冒険者としての依頼があれば様々な便宜を図ってもらえることが多い。さっき彼女が言ったところのレポート免除というのもその一つ。それは習ったことは実戦で役立てることをモットーにしているためだ。
まあどっちみち依頼の内容をレポートにして報告する義務が生じるので、どのみち同じという説もあるが。
「なんだ、揃ってるじゃないか。ちょうどいい、あんたたちにご指名の依頼がきてるよ!」
そう言いながらこの宿の女将さんがカウンターから顔を出した。商魂たくましい女将さんも、元は冒険者。マスターである旦那さんとの馴れ初めもそれだ。
「指名付きの依頼と言われると、嫌な予感しかしないが…まさか…」
何事かと出てきたラスファが嫌そうに聞き返す。彼もおかみさんの現役時代にパーティを組んでいたそうだ。その頃の女将さんは清楚可憐だったそうなんだが…現在に至るまで何があったら、こんなにたくましくなるのか…聞きたいような聞きたくないような…。女性は化けるという事なのだろうか?
「その通りだよ! 依頼主は他ならぬ冒険者ギルドさ。あんたたちもギルドからの信頼が厚くなってきているじゃないか!」
この先の期待にか鼻息荒いおかみさんに対して、俺たちの上には葬式のような空気が舞い降りた。
絶対ロクな事じゃない!
『白銀亭』の戸口をくぐれば、アーチは寝るつもりかそそくさと自室に戻った。
ラスファは厨房にこもって朝食の用意に勤しむ。どこまでも対照的だ。
「おはようございます、デュエルさん! またお稽古ですか?」
挨拶をしてきた黒髪の少女が手を振ってきた。
彼女はラグランジュ・メイナー。仲間うちからはラグと呼ばれている。黒くまっすぐな黒髪に澄んだ青い瞳。黒い神官の衣装と四角い学者帽子をまとって、小さなメガネをかけた小柄な少女だ。ちなみに清楚な雰囲気で密かに人気があるようだ。
知識神に仕える神官見習いで、見習いの字はそろそろ取れつつある。学生をしながら冒険者もやっている努力家で、良くも悪くもまっすぐで一途な性格だ。
「ああ、久々にしごいてもらったところだ」
「朝からお疲れ様です。お怪我などはありませんか?」
「ああ、あってもかすり傷程度だ」
そう言った俺を彼女は引き止めた。
「いけませんよ、かすり傷でも油断したら! ちょっと見せてください」
そのまま俺の肘に擦り傷を見つけると、神に祈りを捧げ始めた。見る間に傷が消えてゆく。
「…相変わらずすごいな」
「いえ、神のご加護の賜物ですから!」
そう言って彼女はにっこりと笑った。
「あのおっちゃんの稽古で擦り傷で済むって、逆に凄いよねー。デュエルの身体って、何でできてんの? 鉄?」
カウンター席で書き物をしていた、小さな少女がぴょんと立ち上がる。
彼女はアーシェラン・バリニーズ。小柄で幼い印象だが、実はさっきのラグよりも一つ年上だったりする。栗色の巻き毛をポニーテールに結った魔術師ギルドの学生だ。ちなみに彼女はラスファの異母妹に当たる。母親が違うんだそうで、その証拠とばかりに彼女も少しばかり耳が尖っていた。人間とエルフ族の混血である、ハーフエルフの証だ。
「あーもう、レポートも煮詰まっちゃった! 気分転換したーい!」
「提出期限、いつでしたっけ?」
「あと三日! あーあ、レポート免除を狙えそうな手ごろな依頼ってこないかなあ?」
補足するとエルダードの魔術師ギルドや神殿の学生は、冒険者としての依頼があれば様々な便宜を図ってもらえることが多い。さっき彼女が言ったところのレポート免除というのもその一つ。それは習ったことは実戦で役立てることをモットーにしているためだ。
まあどっちみち依頼の内容をレポートにして報告する義務が生じるので、どのみち同じという説もあるが。
「なんだ、揃ってるじゃないか。ちょうどいい、あんたたちにご指名の依頼がきてるよ!」
そう言いながらこの宿の女将さんがカウンターから顔を出した。商魂たくましい女将さんも、元は冒険者。マスターである旦那さんとの馴れ初めもそれだ。
「指名付きの依頼と言われると、嫌な予感しかしないが…まさか…」
何事かと出てきたラスファが嫌そうに聞き返す。彼もおかみさんの現役時代にパーティを組んでいたそうだ。その頃の女将さんは清楚可憐だったそうなんだが…現在に至るまで何があったら、こんなにたくましくなるのか…聞きたいような聞きたくないような…。女性は化けるという事なのだろうか?
「その通りだよ! 依頼主は他ならぬ冒険者ギルドさ。あんたたちもギルドからの信頼が厚くなってきているじゃないか!」
この先の期待にか鼻息荒いおかみさんに対して、俺たちの上には葬式のような空気が舞い降りた。
絶対ロクな事じゃない!
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