古の冒険都市は観光地化の波に飲まれました 〜次は(俺・オレ・私・あたし・わたくし)のターン〜

杏仁霜

文字の大きさ
269 / 405
mission 4 ワンコ王国、建国のススメ!

グウェンの真実

しおりを挟む
Side-ラスファ 6

 グウェンは静かに語り始めた。
 そもそも、犬獣人の一族を窮地に陥れるつもりなどなかったことを。

「そもそも闇ギルドの連中が狙っていたのは、領主の土地だ。犬獣人を利用して領主の一族を滅亡させ、その上で自分たちが居座るつもりだった。魔力を持たない犬獣人族にとっては、この上なく御しやすい相手だったことだろうさ…」

 吐き出すようなグウェンの告白。今までの思いを乗せて、止まる気配もない。
「土地を奪い取った後で、闇ギルドの連中は何をするつもりだったんだ?」
 素朴な私の疑問に、グウェンは隻眼を閉じてため息をついた。
「あの土地に君臨して圧政を敷き、資金を集めるためだ。同時に、あの土地に眠る恐ろしい何かを目覚めさせるつもりだったそうだが…それが何か気づいたのは、ジョナサンの父親のみだった」
 
 その言葉に、私はアーシェを振り返った。アーシェは小さく頷く。魔術で確認したところ、ここまでの語りに嘘はないようだ。

「彼は口封じに殺され、その罪はすでに首輪をはめられていた俺が被ることになった。さらに犬獣人全体に計画がバレたと思って焦った闇ギルドの連中は、計画を変更することにしたらしい。…当の領主の耳に、犬獣人の反乱疑惑を吹き込んで獣人族全員を放逐させたのだ」

 …なるほど。ここでようやく合点がいった。確かにグウェンの『悪事』が領主側に漏れる事は少々不自然と思っていたところだ。首輪をはめたグウェンを取り込んだ挙句に『主犯』に仕立て上げ、何らかの『計画』を知った犬獣人たちをまとめて消そうとした、というのが真相だったのか。

 だが、そこに私たち『冒険者』がいたのは完全に計算外だったようだ。
 だからこそ若くして一族を受け継いだジョナサンが冒険者ギルドに相談を持ちかけたことや、レックスたち別勢力の存在は全くといっていいほど情報が入っていなかったことになる。

 「俺が軽率な一言…領主から土地を奪うなどと口走ってしまったばかりに、一族全体を苦難に巻き込んでしまったことに変わりはない。だが一族を陥れるつもりは最初からなかった。許してくれと言うつもりはない…だから殺せ。俺の首一つで償えるなら、安いものだ…」

「甘ったれんな!!!」
  項垂れたグウェンに向けて、大音声が響き渡った。いきなりなことに全員が肩を震わせる。声の主は、今まで傍観していたレックスだ。
「死んで償える罪が、この世にあると思うのか! お前が死んで、ジョナサンの親父が生き返るってのか? 死は、あくまで死だ。それ以上でも以下でもない!」

「レックス…?」
 彼の表情は、これまで見たことがないほどに険しくなっていた。レックスはグウェンの襟首を掴んで揺さぶる。
「俺は、元の国を帝国の侵攻で滅ぼされた。多くの命が踏みにじられた。国はいつか必ず取り戻す。だが、死んだ者はどうやったって生き返らねぇんだ! 生き残った者は、ただ生き抜くことでしか償えねぇ! 生きてるんだぞ、お前も! だったらとことんまで生き抜いて償え!」
「レックス…」

 普段明るく振舞っていても、彼の背景には壮絶な過去が広がっていたのだろう。この上なく真剣な彼の眼差しは、過去を見ていた。
「ああ。確かにその通りだ」
 その激白にいち早く同意したのは、デュエルだ。
「俺も元は傭兵だった。生まれた時から傭兵の一族として、金のために数多の戦場を渡ってきた。計り知れない罪を償うために、冒険者になったんだ。殺めてきた以上の人を救いたくてな」

 一歩、彼は進み出る。
「償いたいなら、冒険者になるのもいい。こっちに来るか?」
 デュエルの伸ばした手を見て、グウェンは戸惑っているようだった。

「あら? いつの間にか知り合っちゃってるの? どういう事か、説明してくれる?」

 そこにまた、別の声が割り込んできた。
 今度はなんなんだ…。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

社会の底辺に落ちたオレが、国王に転生した異世界で、経済の知識を活かして富国強兵する、冒険コメディ

のらねこま(駒田 朗)
ファンタジー
 リーマンショックで会社が倒産し、コンビニのバイトでなんとか今まで生きながらえてきた俺。いつものように眠りについた俺が目覚めた場所は異世界だった。俺は中世時代の若き国王アルフレッドとして目が覚めたのだ。ここは斜陽国家のアルカナ王国。産業は衰退し、国家財政は火の車。国外では敵対国家による侵略の危機にさらされ、国内では政権転覆を企む貴族から命を狙われる。  目覚めてすぐに俺の目の前に現れたのは、金髪美少女の妹姫キャサリン。天使のような姿に反して、実はとんでもなく騒がしいS属性の妹だった。やがて脳筋女戦士のレイラ、エルフ、すけべなドワーフも登場。そんな連中とバカ騒ぎしつつも、俺は魔法を習得し、内政を立て直し、徐々に無双国家への道を突き進むのだった。

ガチャで領地改革! 没落辺境を職人召喚で立て直す若き領主

雪奈 水無月
ファンタジー
魔物大侵攻《モンスター・テンペスト》で父を失い、十五歳で領主となったロイド。 荒れ果てた辺境領を支えたのは、幼馴染のメイド・リーナと執事セバス、そして領民たちだった。 十八歳になったある日、女神アウレリアから“祝福”が降り、 ロイドの中で《スキル職人ガチャ》が覚醒する。 ガチャから現れるのは、防衛・経済・流通・娯楽など、 領地再建に不可欠な各分野のエキスパートたち。 魔物被害、経済不安、流通の断絶── 没落寸前の領地に、ようやく希望の光が差し込む。 新たな仲間と共に、若き領主ロイドの“辺境再生”が始まる。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!

たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。 新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。 ※※※※※ 1億年の試練。 そして、神をもしのぐ力。 それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。 すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。 だが、もはや生きることに飽きていた。 『違う選択肢もあるぞ?』 創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、 その“策略”にまんまと引っかかる。 ――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。 確かに神は嘘をついていない。 けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!! そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、 神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。 記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。 それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。 だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。 くどいようだが、俺の望みはスローライフ。 ……のはずだったのに。 呪いのような“女難の相”が炸裂し、 気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。 どうしてこうなった!?

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

最強すぎて無職になりましたが、隣国の姫が勝手に嫁入りしてきました

eringi
ファンタジー
平凡なサラリーマン・佐藤亮は、満員電車で謎の光に包まれ異世界へ転移する。神様から「世界最強の力」を授かったはずが、本人はただの無職ニートとしか思っていない。冒険者ギルドで雑用を請け負う日々。そんな亮の周囲に、冷徹な騎士姫、天才魔導士、元盗賊の少女、竜人族の戦士など個性豊かな美少女たちが自然と集まってくる。一方、彼を「ただの運のいい凡人」と侮る貴族や悪徳商人たちは次々と痛快なざまぁ展開に。亮は「俺なんて大したことないのに」と呟きながら、気づけば国を揺るがす陰謀を解決し、世界を救うことに――。無自覚最強主人公による、爽快ハーレムファンタジー開幕!

処理中です...