古の冒険都市は観光地化の波に飲まれました 〜次は(俺・オレ・私・あたし・わたくし)のターン〜

杏仁霜

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intermission 7 神官少女の憂鬱

つながる事実

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side-デュエル 1

 いつもの日常、いつもの白銀亭。
 俺たちは冒険者生活から、通常の宿屋での生活に戻っている。相変わらず騒々しく相変わらず忙しない宿屋 兼 食堂 兼 カフェは、いっぱいに観光客と常連客を詰め込んでいた。

 一歩表に出れば観光地の光景が広がり、子供の声が方々で弾けていた。ガイドブックを手にした観光客も行き来しては楽しげに歓声を上げている。

 今は昼のラッシュが落ち着いて、ディナー前の仕込みどきだ。客足は落ち着き、静かなひと時を迎えている。

 いつもと同じ、エルダードの光景。
 だが、だけは、いつもと全く違った様子でため息をついていた。まさに心ここに在らずといった様子で、ぼんやりと虚空を見つめている。
 賑やかな時は忙しく立ち働いていたがミスは多く、果実水をこぼしたりオーダーミスをやらかしたりと散々だった。普段からソツなくこなしているだけに、今日の有り様は際立っている。

「ラグ、寝不足か? 今回の仕事の報告書、手間取ってたのか?」
「あ、いいえ。大丈夫ですよ。最近ちょっと疲れが溜まってるみたいです…」
 気になって声をかければ、明らかにムリな笑顔でそう答える。…これが大丈夫に見えるわけがない。

 だが、これ以上どう声をかけていいかがわからない。
 ラグは真面目で責任感が強い性格だ。色々と自分の中で抱え込むタイプというのもわかっているつもりだ。大きな悩みを抱えているのは明らかだが、それ以上どうやって声をかけてやればいいのかがわからない。


「どしたの、デュエル? そこにじっと立ってると邪魔だよ? ただでさえでっかいんだからさ」

 俺にはそのアーシェの声が、天啓に聞こえた。
「アーシェ.…。最近ラグの様子がおかしいと思わないか?」
「うん…。何かあったのかな? 失恋? なら、アーちんの事シメなくちゃだわ」
「どうもそれとは違うんじゃないのか?」
「うん、知ってる。」

 アーシェはそう言いながら、茫洋としたままのラグの背中を見つめた。サバサバしているように見えるが、彼女なりの心配の仕方だろう。
 見かねたのか、アーシェはその後買い物と称して外に連れ出して行った。外で何か話しが聞けたらという腹だろうか? 流石に女将さんも、何も言わずに送り出していた。


 二人を見送った後に、アーチが何事か情報を持って来た。
「おう、なんだデュエルだけか? まあいいや、ちょっと聞いてくれや」
 珍しく真面目に情報集めおつとめに回っていたようだが、ラグが不在なことにホッとしたように話し始める。

「例のオプファー商会の件だ」
 俺は表情を引き締めて次の言葉を待った。
「数年前…勢いを増したオプファー商会は同業界に大きなコネを作るために、とある他商会に縁談を持ち込んでたらしい」

「縁談を? それが今の件と関わりがあるのか?」
「ああ、大アリだ。そこのバカ息子はあっちこっちでトラブルばかり起こしては、金で揉み消してきた問題児。当然、相手の娘は嫌がるってもんだ」
「まあ、そうなるだろうな」
「その、縁談を持ち込まれた商会ってのが…地元じゃ最大手のメイナー商会だ」

「!」
 その瞬間、俺は状況に察しがついた。メイナー商会…それは…!

「そういうこった」
 奴はやりきれないため息とともに、言葉を吐き出す。
「今回のことは、逃げ出した娘の所在を見つけ出したオプファー商会の嫌がらせだ」

 なんてこった…その事を気にして、ラグは…! 
 俺は事実の残酷さに、奥歯を鳴らした。
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