古の冒険都市は観光地化の波に飲まれました 〜次は(俺・オレ・私・あたし・わたくし)のターン〜

杏仁霜

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intermission 7 神官少女の憂鬱

遺跡奥の『彼女』

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Side-デュエル 8

 大きな扉をくぐった瞬間、何か違和感を覚えた。
 何というか…心の奥底を隅々まで覗き込まれたような…。
 周りを見ると、全員が同じ感覚を持っていたらしい。居心地悪そうに周囲を見渡している。
 何が起きたんだ…?

『おや、よく来たねお客人』

 扉の先には、シュールな光景が広がっていた。
 二階建ての建物くらいはあろうかという大きさの魔獣スフィンクスが、予想外に穏やかに語りかけて来たのだ。声の調子からして、凛とした感じの女性の人格を持っているようだ。

 人面にライオンの身体。さらに翼を備えた黄金のスフィンクスは、深い知性を感じさせる瞳でこちらを見下ろして来た。古代においては番人や、罪人に対する裁判を担ってきた種族だったはず。
 ただ、その右前足で例のバカ息子を踏んづけていた。
 
「ぐぐぐぐぐ…! 」

 スフィンクスは足の下でもがく男に、ミミズでも見るかのような一瞥を投げつつ吐き捨てた。
『この男の記憶や意識を読み取ってみたが…数多くの罪や欲にまみれ、汚らわしい。元の場所に戻せばまた罪を重ねるに決まっている。さりとて食らうのも殺すのも、この場を汚すことになる。どうしたものか…』

  記憶や意識を読む? 俺の疑問を読み取ったように『彼女』はため息と共に、ほんの僅か足に力を込めた。
 そうか…さっきの違和感は…!
「てかおいおい、何いきなりオレたちの心読んでくれてんだよ? 勝手にのぞいちゃダメって、母親から教わらなかったのか?」

 冗談めかしてアーチが抗議する。俺たちの非難を受けて、スフィンクスは謝罪する。

『すまぬ。言い訳するわけではないが、それはここにある扉にかけられた古代術で足を踏み入れれば、もれなく発動する代物だ。そして私も此処に縛られている。不快なら『魂詠みの扉』を破壊してくれて構わない』

 ふむ…。
 『彼女』は、高潔な精神を持っているようだ。あまりに潔い謝罪ぶりに、俺たちは毒気を抜かれた。

『ただし、発動するのは初回に来た一度だけだ。これ以上心を覗かれる心配はいらない』

 …それなら破壊する理由はなさそうだ。少なくとも、俺たちには。仲間たちも警戒を解いた。

「あー…。悪いが、それ返してもらうわけにはいかないか?」
 俺は足の下を指差しながら、慎重に言葉を選び問いかける。そんな状況であるのも関わらず、バカ息子は不明瞭にモゴモゴと暴れている。父親の権威が通じそうにない相手に、初めて本気で怯えているらしい。ちょっと溜飲下がるな、これ。

『返すほどの価値もない。本来は、我々スフィンクスは罪人を裁く役割を果たしてきた。この罪を知った上で、ただ返すわけにもいかぬ』

 スフィンクスは、迷いなくきっぱりと断る。
「あ、やっぱり?  …でもそんなの食べたら、お腹壊しちゃいますよ?」
 どちらかというとスフィンクスの方を心配しながら、アーシェが上目遣いで問う。
 …なんなんだ、このやりとりは?
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