古の冒険都市は観光地化の波に飲まれました 〜次は(俺・オレ・私・あたし・わたくし)のターン〜

杏仁霜

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short mission 4 宅配戦線、異常あり!

恐怖の水攻め!

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Side-デュエル 4

 高台から見下ろして、やっぱり罠があったかと確信したが…思った以上に厳しい道のりにアーシェたちが音を上げた。
「ね…ちょ、っと。休まない?」

 地図上には載りにくい高低差という概念を失念していたのだが、ここまでとは思わなかった。
「作戦会議の時点で気づかなかった俺たちも俺たちだがな…」
「休みながらなら、どうにかなるだろ」

 しかし…余裕をもって出てきたのは正解だった。渓谷を突破する手もあるにはあったのだが、上流から水攻めを食らう危険を考えればこっちで正解だと思う。

 狭い渓谷においては、近くの川をせき止めて水を流すという戦略をよく使われる。どんなに精強な部隊でも、押し寄せる大量の水には抗えない。経験したからこそ語れる言葉だ。何度か死にかけたことは、俺にとって黒歴史トラウマだ。

「俺もよく水攻め食らったからな…」
「え、なんの話ですか?」
 苦い過去を思い返して、思わずこぼした独り言をラグに聞かれたらしい。適当に流すと俺は背中の木箱を下ろしつつ、手近な石に腰を下ろした。

「交代だ、アーチ!」
「へいへーい」
  一息つこうとした時、カーチスが水汲みから帰ってきた。と思えば、しきりに首をひねっている。
「今日の小川は、随分と水が少なかったですねぇ…」

 その直後、はるか下の渓谷から悲鳴や轟音が周囲の山々にこだまする。俺を除いた全員が思わず腰を浮かせるが、それ以上の異変がないと分かればすぐに腰を下ろし直した。

「…何かあったんでしょうか?」
 小首を傾げるラグ。俺は彼女に水袋を手渡しながら短く答えた。
「…大したことじゃない、しくじったんだ」
「?」
 山道は厳しかったが、森のルートに切り替えて大正解だった。

「水攻めは加減が難しいからな…」
 戦の最中で傭兵が使う水攻めも、失敗が多かったものだ。ほぼ素人である領主甥の私兵などに使いこなせる道理もない。
 とりあえず名も知らぬ数名の敵に心の中で手を合わせ、俺たちは先に向かう。

 しかし解せない。
 水攻めも罠も事前の準備を要するものだ。なのに何故今、罠の準備をしていた?
 出立は本来明日の朝と決められていたはず。


 アーチの情報だと、領主の甥は非常に嫌われているが悪知恵だけは回るらしい。実際、酒場に奴の息がかかった女を諜報に寄越していたという。
 今日の早朝に出立という話は昨夜のうちに決まったことだ。だがルートを変えたことまでは伝わっていないということになる。

 誰かが情報を流している…?
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