古の冒険都市は観光地化の波に飲まれました 〜次は(俺・オレ・私・あたし・わたくし)のターン〜

杏仁霜

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mission 1 俺たち、観光大使じゃない冒険者!

強敵・病の魔神!

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Side-デュエル 12

 「無茶よ、兄貴ってば!」
「そうですわ、すごい熱ですわよ! 今、神官魔法で全快させます!」
 そうか、神官魔法! それさえあれば!
 だがラドフォード卿が苦しげにそれを制した。
『いや、それは無理だ。これはあくまで疫病の『呪い』なのだ。解呪の術でなければ及ばない…!』

「そんな…そんな高位の呪文、わたくしはまだ…!」
 そのやりとりの間に、ラスファの精霊魔法の準備ができたようだった。
「行け…! ここまできたら、倒しきる以外に生き残るすべはない!」
 俺は頷いて彼の魔法と同時に槍を振るった。そうだ、休んだところで症状の進行が止まるはずがないのだ。
 それに、妙だ。呪いのせいか、いつもよりさらに感覚が研ぎ澄まされた感じだ。気功術を組み合わせる余裕はなくなったというのに、全方位が手に取るように見える気がする。ラスファの奴、一気にかたをつけるつもりか? どうやったのか、三連撃で放たれている。ならば、俺も三連撃で相手しようか!
 
 その時ふと閃いたのは、修行仲間のラインハルトの技だ。彼が得意とする、素早い槍の三段突き!
 何故だろう? 手合わせの時は、一度だって成功させたことがないというのに…今ならできる気がする!
 俺は腰を落として背後からの魔法の軌道を読みつつ、最も有効な角度からの突きを計算して地面を蹴る。そのまま身体ごとぶつかるように、一撃、二撃とパズスの腹に、胸にと槍をつき入れる。三撃目は俺の攻撃に備えて、体から飛び出した黒い煙を狙って突き上げた! ラグの神官魔法に加えて俺も一瞬、強化の気功術を乗せたらしかった。奴への攻撃が当たる、ほんの一瞬の刹那。気功術の消耗を極限に抑えた、必殺の一手! 
 数回の呼吸の間が、やけに長く思える。いつもより鋭い手応えが槍に伝わる。
 どうやら、三連撃とも最大級のダメージが決まったらしい。呪いに対する奴の集中がわずかに逸れたのか、わずかに身体が軽くなる。そこに畳み掛けるように、かすかに再生しかけた傷口にアーチが
短剣をねじ込み、同時にアーシェががら空きの背中に火炎魔法を叩き込む。

 その最後尾から、歌声が聞こえた。聖歌をラグが歌っている。そうか、俺たちの体力を、多少なりと回復してくれているのか! 通常の回復魔法を詠唱するよりも、同じ歌詞で聖句を謳うことで効果範囲を広げることができるんだったな。範囲が広がる分威力は落ちるが、一人一人を順番に癒すよりもはるかに効率がいい。やるな、ラグ!
 かすかに軽くなった体に鞭を打ち、次のラスファの攻撃魔法三連撃に身構える。

 一体、俺はどうしてしまったんだろうか? 今までに何度か似た状態に陥ったことはあったが、ここまで感覚が研ぎ澄まされたのは初めてだ! 共通しているのは、追い詰められた状態だということ。
 背後の様子がわかる。次のラスファの攻撃は炎から氷に切り替えられている。足元の松明が、消えてしまったんだろう…精霊魔法の最大の弱点だ。しかし、ここの遺跡に氷なんかあったか? いや、今はそんな疑問どうだっていい。

 俺もアーチもそうだが、彼の消耗は特に激しいだろう。病魔の言葉が正しいなら、三倍の呪いをまとめて受けているのだから。いつまでその援護が続くか…? 一人でもここで倒れたら、全員総崩れだ。とうにそれを知っているからこそ、方で息を弾ませながら相当な無理をしているのだ。すでに俺とラドフォード卿の援護を同時進行している時点で、ラスファは驚異的な働きをしている。とにかくここは、病魔の攻撃を阻止しながら数人がかりのダメージを蓄積するしかない!

「ヤロー…とっとと倒れろ!」
俺の三連撃直後のタイミングで、アーチの悪態が聞こえた。彼の病状も、決して芳しくない。一撃ごとに喉を鳴らしながら息を荒げ、動きを鈍らせている。アーチを動かしているのはおそらく「真っ先に倒れてたまるか!」という意地によるものだろう。傭兵の世界だったなら、その意地は無意味なものとして一笑に付されるであろう。だが、俺はこの無意味な意地を張り続けるアーチに、好意的な人間味を感じていた。
 傭兵として戦うなら、責務と契約金を放り投げて途中で逃げ出しているところだ。だが、俺たちは違う。ここで逃げたら、倒れたら俺たちの背後にいる多くに人々が危機に飲み込まれることを理解している。そこに命令が介在していなくとも、それこそが『自分の意思で戦い続ける』ということにほかならない!

『焦りが出てきおったか? この呪いは解くことはできぬ。ここで全員、朽ち果てるが良い。安心せよ、お主らの死は無駄にせず全て我が贄としてやろう』
 
 余裕ぶった病魔の声音が、今はひたすら腹立たしい。とはいえ…。
 
  病魔という魔神…強大すぎる敵を前に、俺たちは焦りを生じ始めていた。
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