古の冒険都市は観光地化の波に飲まれました 〜次は(俺・オレ・私・あたし・わたくし)のターン〜

杏仁霜

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intermission 2 ~わらしべアーシェ~

チケットでトラブル?!

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Side-アーシェ 5

 見つからないチケットを探して、あたしはトボトボその辺を歩き回った。困った、どうしよう…。
 この時期、よく路地裏を通った風が突風になることが多いんだよね…。忘れてたよ…。
 初対面だったけどさ、ナナ先輩って怖い人かなあ? そりゃそうだよね、さらっと『生贄』発言とかしちゃう人だし。
 はあ…。あたしは何度ついたかもわからないため息をつく。その時だった。
「ラッキーだったわ、あのフランシス様のプラチナチケット! 風で飛んでくるなんて、ついてる!」

 そんな声が雑踏の中から聞こえてきた。あたし、耳はいい方なんだよね。声の方向に猛ダッシュすると、チケットをかざして嬉しそうに微笑む癖のありそうな観光客らしいお姉さん二人連れが楽しそうに笑っていた。
「あ、そのチケット!」
 駆け寄ると、お姉さんたちは『マズい』って顔でチケットを隠してしまう。ちょっと、それ人としてどうなの!
「あたしが飛ばしちゃったチケット、返してください!」
「えー、これあたしのだし。あんたの物って証拠はあるの?」
「っ…!」
 最悪だ。このお姉さんたち、二人してニタニタと笑ってあたしの反応を楽しんでる。
 フランシスのチケットなんて、心底どうでもいいけど…こんな奴に渡すのも、なんか嫌!
 拳を握りしめて、彼女たちをにらんだその時だった。

「…なんだ、揉め事か?」
 そこに買い出しで通りかかったらしい兄貴が、ひょいと現れた。
 お姉さんたちは、顔色を変える。うん、よく見る反応だわ。兄貴ってやたらと見た目はいいから、よくこういうタイプの女が擦り寄ってくるのよね…。本人はこういうやつ大っ嫌いだけど。
「ああん、聞いてくださいよお、超イケてるお兄さん! この子、あたしのチケットを横取りしようとしてて困ってて! それも、フランシス様の超プラチナチケットを!」
「そうそう、苦労して手に入れたのに図々しいったら!」
 えー…そう来るの? 
「こう言ってるが…そうなのか?」
 兄貴は、呆れかえりながらも一応って感じであたしに向かって聞く。
「違うよ。風で飛ばされちゃって、拾ったお姉さんたちがネコババしようとしてるの。一応取りに行ったら、絡まれちゃって」
 あたしの答えに、二人が気色ばむ。
「なによこのガキ! 嘘ばっかり言って!」
「お兄さぁ~ん、こんな嘘つきのちんちくりんブスより、あたしたちを信じてくれるわよね?」
「そうだ! こんな図々しい子なんか放っといて、あたしたちと遊びません?」
「ちょうど、フランシス様のプ・ラ・チ・ナ・チケットもあるし~。一緒に…ねえ? お兄さんみたいな人連れてたら、あたしらも鼻が高いし♪」
 ギットギトに媚びながら、彼女たちは体をくねらせる。性格の悪さが丸出しになるような会話。ああもう嫌、関わりたくない!

 その様子に、周囲の気温がすうっと下がる。
「…うちの妹を泥棒呼ばわりするつもりか?」
 底冷えする一言に、二人はキョトンとする。
「…え?」
「兄妹…なの?」
 二人はどっと青ざめた。
「ちょっと、兄貴…」
「そもそもこいつが、フランシスのチケットなんぞ欲しがるわけがないだろう」
 あ、それには全力で同意。
「嘘、だって入手困難の超プラチナチケットなのに?」
「同じ宿屋でしょっちゅう顔合わせてるバカのチケットなんぞ、要らん! どうせ、本人から無理やり押し付けられたんだろ?」
 最後の一言は、あたしに向けた言葉だ。黙って頷くと、お姉さんたちが揃って泡を吹いた。
「ひいいいいいいっ!?」

 その宣言は、この性格悪いお姉さんたちにとってまさしく死刑宣告に近かった。
 ネコババがバレるわ、逆ナンしかけた兄貴の目の前でその妹を罵倒しまくるわ、お目当ての観光大使冒険者の直の知り合いだわ…。そりゃそうだよね。
 
 泡を食って逃げるお姉さんズ。結局チケットは持ってかれたけれど、落として行ったお土産ものらしいピンク色の新品石鹸を拾った。
「いいのか? チケット取り戻さなくて?」
「いいよ、これで交換はされたってことで…多分」
「?」
「フランシスのチケットなんて、要らないし。あの人たちに絡まれたのが面倒だっただけだし。…フォローありがと」
 あたしの言葉に腑に落ちない様子だった兄貴だけど、無理やり納得した様子で「暗くなる前に帰れよ」と言いながら買い出しに戻ってった。

 次はナニに変わるんだろ?
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