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mission 2 孤高の花嫁
転がり出る新事実
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Side-ラスファ 1
翌朝から早速、依頼された空き屋敷の謎について調査開始となった。
祭りと同じく、華やかな催し物の後は、慌ただしい後片付けと相場は決まっている。忙しそうにしている屋敷内の人間から話を聞くのは流石に気が引けて、まずは噂の真相を探ろうという流れになった。お互い手に入った情報を持ち寄れば、自ずと情報収集の方向性も見えてくる。
今回は二手に分かれての調査になったが、アーチは昨日の酒がまだ残っているらしい。そんなのと外に出てラグに全て介助させるのは流石に酷ということになり、結局奴は城に残留ということになった。
「全く、アーちんってば、困ったものよねー。二日酔いなんて…プロの冒険者なのに」
「すいません…絡まれたわたくしのために、飲み比べを挑まれてしまったんです…。申し訳ないですわ…」
「あー、ラグちゃん綺麗だったもんね。無理もないわ。多分、この中で一番夕べのパーティーを楽しんだんじゃないの、ラグちゃん?」
「そんな…でも、うふふ」
申し訳なさそうにしながらもラグは、どこか夢見心地な様子で頬を染める。やつのエスコートでパーティに参加できたことが、よほど嬉しかったのだろう。ふと夕べのアーシェのエスコート役を思い出した。…生意気な、十年早い…!
「兄貴は散々な目にあったみたいだしね」
「厭なことを思い出させるな…」
何しろ、あの姉妹は行く先々でエスコート役をやらされた私やデュエルを見せびらかしては高笑いという無限ループを繰り返すばかりだったのだ。嫌々行ったパーティで晒し者にされた挙句それでは、こちらもたまったものではない。隙を見てさっさと逃げて来たが、寝るまで高笑いが耳から離れず難儀した。
聞き込み調査の組み分けはデュエルとラグ、私とアーシェの組み合わせになった。まあ、デュエルならラグを任せて大丈夫だ。とりあえずは『出る』と噂の屋敷近くに出向いて情報を集めることにしよう。ちなみにデュエルたちは、衛士に詰所で話を聞くそうだ。
花嫁の実家は言うなれば高級住宅街に当たる、中心街からやや外れた高台にあった。とは言っても坂道はそう長くはない。住みやすいところだったんだろう、緑が多く風通しの良い落ち着いた雰囲気の場所だ。良からぬ噂が流れているという事は、さぞかし恐れられているだろうと身構えながら周辺を見て回ったが…別段なんということもない。道端では主婦たちが立ち話に花を咲かせ、子供達が歓声をあげて走り回っている。
「強盗事件があったと思えないほど、のどかな光景だよね…」
「三月にもなるそうだからな。こんなものかも知れん」
まずは屋敷の様子を探ることにしたが、さすがに鍵がかかっていて入れない。中にも外にも今の所、凶々しい気配もなく別段普通の屋敷と変わらない。場所を間違えたのだろうか?
「あんたら、コーデュロイさんのお宅に何かご用かね? それとも、お身内の方かね?」
通りすがりにと言った感じでかけられた声に振り返ると、そこには中年の夫人が悲しげに佇んでいた。身なりは悪くないが、寂しげな雰囲気で小さな身体がより小さく見える。
何か言おうとしたアーシェを遮って、私は話を切り出した。
「久しぶりに会う知り合いなんだが…留守か?」
アーシェは「え?」と不思議そうに見上げてくるが、小声で話を合わせるように年を押す。こういう場合、下手に知っているそぶりを見せるより全く知らないふりをしたほうが都合がいい。
「それはお気の毒に…。実は、ここのご家族は三月ほど前に強盗にあってね…。あたしもずっと懇意にしていたんだけど、本当に悪夢のような出来事だったよ」
そう言うと、彼女はしゃくり上げながら目頭を抑える。相当懇意にしていたらしく、突然の惨劇をいまだに受け入れられないのだろう。
「まさか…全員、か? ナディアという娘がいたはずなんだが…」
「ナディアちゃんは、生まれた時から知ってるよ。奇跡的に助かったんだが、助けた貴族のところに嫁入りが決まったって聞いたよ。なんでも、恋仲の人がいるというのに一方的に言い寄られていたそうじゃないか…」
転がり出た新たな情報に、確信した。現時点で彼女が最も正しい情報源だろう。
しかし、妙だ。今まで一度も恋仲の男の存在など出ていなかったが…どういうことだ?
「ああ、そうだったのかい…アンタだったんだね。そうだよね、こんな素敵な彼がいたら貴族の求婚もはねつけるだろうさ。なかなか会えないってことは、遠くに住んでいたんだろうね?」
そう言うと、彼女は目元をわずかに綻ばせた。
…………え? ちょっと待て。なんか、話が妙な方向に転がっていないか?
「いや、その…」
それ以上私が何か言う前に、アーシェがすかさず割り込んだ。
「そうなの! ナディアさんがあたしのお義姉さんになるって楽しみにしていたのに! たまにしか会えなかったけど、あたし、ナディアさん大好きだったのに! なんで強盗なんかに入られちゃうのよ? 何かナディアさんとこに強盗に入られる理由があったの?」
待て待て待て! いきなり何を言い出すこいつは!
内心大慌ての私をよそに、涙ながらのアーシェの言葉に動かされたらしい婦人は涙を拭きながら私たちを促した。
「立ち話もなんだから、うちに来るかい? すぐそこなんだよ」
背中を向けた夫人についていきながら、アーシェはドヤ顔で親指を立てる。その頰を、こっそりつまんで引っ張ってやった。
…お前、人に何やらす気だ?
翌朝から早速、依頼された空き屋敷の謎について調査開始となった。
祭りと同じく、華やかな催し物の後は、慌ただしい後片付けと相場は決まっている。忙しそうにしている屋敷内の人間から話を聞くのは流石に気が引けて、まずは噂の真相を探ろうという流れになった。お互い手に入った情報を持ち寄れば、自ずと情報収集の方向性も見えてくる。
今回は二手に分かれての調査になったが、アーチは昨日の酒がまだ残っているらしい。そんなのと外に出てラグに全て介助させるのは流石に酷ということになり、結局奴は城に残留ということになった。
「全く、アーちんってば、困ったものよねー。二日酔いなんて…プロの冒険者なのに」
「すいません…絡まれたわたくしのために、飲み比べを挑まれてしまったんです…。申し訳ないですわ…」
「あー、ラグちゃん綺麗だったもんね。無理もないわ。多分、この中で一番夕べのパーティーを楽しんだんじゃないの、ラグちゃん?」
「そんな…でも、うふふ」
申し訳なさそうにしながらもラグは、どこか夢見心地な様子で頬を染める。やつのエスコートでパーティに参加できたことが、よほど嬉しかったのだろう。ふと夕べのアーシェのエスコート役を思い出した。…生意気な、十年早い…!
「兄貴は散々な目にあったみたいだしね」
「厭なことを思い出させるな…」
何しろ、あの姉妹は行く先々でエスコート役をやらされた私やデュエルを見せびらかしては高笑いという無限ループを繰り返すばかりだったのだ。嫌々行ったパーティで晒し者にされた挙句それでは、こちらもたまったものではない。隙を見てさっさと逃げて来たが、寝るまで高笑いが耳から離れず難儀した。
聞き込み調査の組み分けはデュエルとラグ、私とアーシェの組み合わせになった。まあ、デュエルならラグを任せて大丈夫だ。とりあえずは『出る』と噂の屋敷近くに出向いて情報を集めることにしよう。ちなみにデュエルたちは、衛士に詰所で話を聞くそうだ。
花嫁の実家は言うなれば高級住宅街に当たる、中心街からやや外れた高台にあった。とは言っても坂道はそう長くはない。住みやすいところだったんだろう、緑が多く風通しの良い落ち着いた雰囲気の場所だ。良からぬ噂が流れているという事は、さぞかし恐れられているだろうと身構えながら周辺を見て回ったが…別段なんということもない。道端では主婦たちが立ち話に花を咲かせ、子供達が歓声をあげて走り回っている。
「強盗事件があったと思えないほど、のどかな光景だよね…」
「三月にもなるそうだからな。こんなものかも知れん」
まずは屋敷の様子を探ることにしたが、さすがに鍵がかかっていて入れない。中にも外にも今の所、凶々しい気配もなく別段普通の屋敷と変わらない。場所を間違えたのだろうか?
「あんたら、コーデュロイさんのお宅に何かご用かね? それとも、お身内の方かね?」
通りすがりにと言った感じでかけられた声に振り返ると、そこには中年の夫人が悲しげに佇んでいた。身なりは悪くないが、寂しげな雰囲気で小さな身体がより小さく見える。
何か言おうとしたアーシェを遮って、私は話を切り出した。
「久しぶりに会う知り合いなんだが…留守か?」
アーシェは「え?」と不思議そうに見上げてくるが、小声で話を合わせるように年を押す。こういう場合、下手に知っているそぶりを見せるより全く知らないふりをしたほうが都合がいい。
「それはお気の毒に…。実は、ここのご家族は三月ほど前に強盗にあってね…。あたしもずっと懇意にしていたんだけど、本当に悪夢のような出来事だったよ」
そう言うと、彼女はしゃくり上げながら目頭を抑える。相当懇意にしていたらしく、突然の惨劇をいまだに受け入れられないのだろう。
「まさか…全員、か? ナディアという娘がいたはずなんだが…」
「ナディアちゃんは、生まれた時から知ってるよ。奇跡的に助かったんだが、助けた貴族のところに嫁入りが決まったって聞いたよ。なんでも、恋仲の人がいるというのに一方的に言い寄られていたそうじゃないか…」
転がり出た新たな情報に、確信した。現時点で彼女が最も正しい情報源だろう。
しかし、妙だ。今まで一度も恋仲の男の存在など出ていなかったが…どういうことだ?
「ああ、そうだったのかい…アンタだったんだね。そうだよね、こんな素敵な彼がいたら貴族の求婚もはねつけるだろうさ。なかなか会えないってことは、遠くに住んでいたんだろうね?」
そう言うと、彼女は目元をわずかに綻ばせた。
…………え? ちょっと待て。なんか、話が妙な方向に転がっていないか?
「いや、その…」
それ以上私が何か言う前に、アーシェがすかさず割り込んだ。
「そうなの! ナディアさんがあたしのお義姉さんになるって楽しみにしていたのに! たまにしか会えなかったけど、あたし、ナディアさん大好きだったのに! なんで強盗なんかに入られちゃうのよ? 何かナディアさんとこに強盗に入られる理由があったの?」
待て待て待て! いきなり何を言い出すこいつは!
内心大慌ての私をよそに、涙ながらのアーシェの言葉に動かされたらしい婦人は涙を拭きながら私たちを促した。
「立ち話もなんだから、うちに来るかい? すぐそこなんだよ」
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