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mission 2 孤高の花嫁
再びの姉妹
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Side-アーチ 19
「父上、じつは私は…」
そろそろ帰り支度するかと荷物をまとめようとしたところで、オレはある扉の前でそんな話し声を聞いちまった。この声はフランシスか? 改まってなんだ、どうした?
「じつは、私は冒険者は冒険者でも…観光大使をしておりました!」
その一言で、オレは悟った。なんだ、観光大使やってることをとうとうカミングアウトしちまったのか。それに対して領主の答えは落ち着いたもんだった。
「…知っておる」
「は!? い、いえその…観光大使ですよ?正規の冒険者ではなくて、半分役者の観光大使ですよ?」
「だから、知っておる。三月ほど前にメイドのダイアナがエルダードに観光に行ってきたときに、報告として聞いた。舞台の上で生き生きと物語の勇者を演じておったと」
あー…まあ、そうだわな。格好からしてこんな派手だしな。
「まあ、良いではないか。正規の冒険者とは違う大変さもあろう? それに、ダイアナから報告された時には誇らしかったぞ。ただ…半端な覚悟で行っておる訳ではあるまいな? やるからには、とことん極めるが良い!」
「ち、父上…!」
なんでえ、オヤジさん全部知ってたんじゃねぇの。ってことは、フランシスが自分からカミングアウトするのを待ってやがったな? 喰えねぇオヤジだ。ま、オレにゃ関係ねぇけどな。
その場を離れ、部屋に帰ろうとしたところで目の前を血相変えた厨房エルフがすっ飛んで行った。
「おい? 何だよ、何があった?」
珍しいこともあるもんだ、こいつがこんな慌てるとは?
「すぐ隠れろ、アーチ! 例の姉妹が押しかけてきた!」
「なに!?」
「しかも、ドレスに婚約指輪持参だ!」
オレは血の気がどっと引くのをはっきりと感じた。何つー恐ろしいことを! ンなもん、捕まったら一巻の終わりじゃねーか!
「何処におられますの、愛しいお方?」
「貴方のかわいい小鳥が、迎えにきましてよ?」
とうとう、声が届く距離まで来やがった! どうすんだよおい!
「仕方ない…『光精よ、我らが姿包み隠せ』!」
おお♪ 姿を消す精霊魔法か! ナイスだ! 叫びかけてオレは奴に睨まれた。そういやこれ、声を出したら姿が見えるようになるんだっけ? アブね!
姿を消したオレらの前を、白いドレス姿の姉妹とうんざり顔の従者がが通り過ぎる。
おいおいおい、姿現したらソッコーで教会に連行されちまうやつだコレ!
「お嬢様…もうお戻りになりませんか?」
疲れ切った従者の声。それに対するは姉のイーディス。
「お黙り! 運命のお方をやっと見つけたのですよ? さっさと探すのです!」
その時、姉妹たちの前に洗濯カゴを抱えたメイドが通り過ぎた。
「ちょっと聞くけど、この前の結婚式でアタクシをエスコートしていたあのお方たちはどこに?」
「ああ、あのお方でしたら…」
ヤベェ! 頼む、答えねぇでくれ!
だがメイドさんの声はそこから出なかった。パクパクと口は動いているが、喋る声は出てこねぇ。何だ、奇跡か?
すぐ横で、ラスファが冷や汗を流してやがった。あ、こいつまた精霊魔法で声を封じたんか…。どんだけ本気だ、こいつ! だが本気ではオレも負けちゃいねぇぜ。
「ねえ、何よ? 答えなさいよ!」
「?? ?…?」
見栄っ張り姉妹にゃ彼女が声を詰まらせたとしか見えてねぇらしい。セーフ!
だが、こんなん一時しのぎにしかならねぇわな。…やべ、オレも冷や汗が出て来やがった。
その時、近くをリネットが通りかかった! ラッキー!
「おい、おい! リネット! ちょっと来てくれ!」
彼女は訝しげにしながらも扉の影から読んだ俺たちのそばにきてくれた。
「…何、どうしたの?」
…………。
「大変悲しいお話でございますが、聞いていただけますか?」
目頭をハンカチで抑えながら、進み出てきた一人のメイド。彼女に姉妹は詰め寄った。
「何かあったの?」
「ええ。あのお方たち…アーチ様とラスファ様でございますが…あの時の災害で招待客の皆様を避難誘導されていたのですが…」
リネットはそう言いながら声を詰まらせてわっと泣き伏す。見栄っ張り姉妹は、目と口を最大限に丸くして続きを聞く。
「あの後で起きた災害で招待客を誘導した後で、裏庭に住まう古木の精霊に連れ去られておしまいに…」
「な、なんですって!?」
「私たちの運命のお方が、精霊ごときに!?」
「ええ…」
流石に元は盗賊なだけある。想像以上の演技力で、見栄っ張り姉妹を黙らせちまった。
「ああ…あのお方たちは、いつまでも私たちの心の中に…」
「美しい思い出として覚えておいて差し上げましょう…!」
「さあさ、お嬢様がた。次のお見合いの日取りでございますが…」
つむじ風が去った後のように、見栄っ張り姉妹は返って行った。
「リネット…助かった、恩にきるわ…」
安堵にへたり込むオレたちに、彼女はにっこりと笑う。
いいけど、エルダードに行ったらしばらくおごりなさいよ? あたし、お金ないんだから! アドルフ卿って、結構ケチだったのよねー。せめて一月はお願いね?
「「…え…?」」
…ちくしょう! オレとしたことが、頼るべき相手を間違えちまったか!
「父上、じつは私は…」
そろそろ帰り支度するかと荷物をまとめようとしたところで、オレはある扉の前でそんな話し声を聞いちまった。この声はフランシスか? 改まってなんだ、どうした?
「じつは、私は冒険者は冒険者でも…観光大使をしておりました!」
その一言で、オレは悟った。なんだ、観光大使やってることをとうとうカミングアウトしちまったのか。それに対して領主の答えは落ち着いたもんだった。
「…知っておる」
「は!? い、いえその…観光大使ですよ?正規の冒険者ではなくて、半分役者の観光大使ですよ?」
「だから、知っておる。三月ほど前にメイドのダイアナがエルダードに観光に行ってきたときに、報告として聞いた。舞台の上で生き生きと物語の勇者を演じておったと」
あー…まあ、そうだわな。格好からしてこんな派手だしな。
「まあ、良いではないか。正規の冒険者とは違う大変さもあろう? それに、ダイアナから報告された時には誇らしかったぞ。ただ…半端な覚悟で行っておる訳ではあるまいな? やるからには、とことん極めるが良い!」
「ち、父上…!」
なんでえ、オヤジさん全部知ってたんじゃねぇの。ってことは、フランシスが自分からカミングアウトするのを待ってやがったな? 喰えねぇオヤジだ。ま、オレにゃ関係ねぇけどな。
その場を離れ、部屋に帰ろうとしたところで目の前を血相変えた厨房エルフがすっ飛んで行った。
「おい? 何だよ、何があった?」
珍しいこともあるもんだ、こいつがこんな慌てるとは?
「すぐ隠れろ、アーチ! 例の姉妹が押しかけてきた!」
「なに!?」
「しかも、ドレスに婚約指輪持参だ!」
オレは血の気がどっと引くのをはっきりと感じた。何つー恐ろしいことを! ンなもん、捕まったら一巻の終わりじゃねーか!
「何処におられますの、愛しいお方?」
「貴方のかわいい小鳥が、迎えにきましてよ?」
とうとう、声が届く距離まで来やがった! どうすんだよおい!
「仕方ない…『光精よ、我らが姿包み隠せ』!」
おお♪ 姿を消す精霊魔法か! ナイスだ! 叫びかけてオレは奴に睨まれた。そういやこれ、声を出したら姿が見えるようになるんだっけ? アブね!
姿を消したオレらの前を、白いドレス姿の姉妹とうんざり顔の従者がが通り過ぎる。
おいおいおい、姿現したらソッコーで教会に連行されちまうやつだコレ!
「お嬢様…もうお戻りになりませんか?」
疲れ切った従者の声。それに対するは姉のイーディス。
「お黙り! 運命のお方をやっと見つけたのですよ? さっさと探すのです!」
その時、姉妹たちの前に洗濯カゴを抱えたメイドが通り過ぎた。
「ちょっと聞くけど、この前の結婚式でアタクシをエスコートしていたあのお方たちはどこに?」
「ああ、あのお方でしたら…」
ヤベェ! 頼む、答えねぇでくれ!
だがメイドさんの声はそこから出なかった。パクパクと口は動いているが、喋る声は出てこねぇ。何だ、奇跡か?
すぐ横で、ラスファが冷や汗を流してやがった。あ、こいつまた精霊魔法で声を封じたんか…。どんだけ本気だ、こいつ! だが本気ではオレも負けちゃいねぇぜ。
「ねえ、何よ? 答えなさいよ!」
「?? ?…?」
見栄っ張り姉妹にゃ彼女が声を詰まらせたとしか見えてねぇらしい。セーフ!
だが、こんなん一時しのぎにしかならねぇわな。…やべ、オレも冷や汗が出て来やがった。
その時、近くをリネットが通りかかった! ラッキー!
「おい、おい! リネット! ちょっと来てくれ!」
彼女は訝しげにしながらも扉の影から読んだ俺たちのそばにきてくれた。
「…何、どうしたの?」
…………。
「大変悲しいお話でございますが、聞いていただけますか?」
目頭をハンカチで抑えながら、進み出てきた一人のメイド。彼女に姉妹は詰め寄った。
「何かあったの?」
「ええ。あのお方たち…アーチ様とラスファ様でございますが…あの時の災害で招待客の皆様を避難誘導されていたのですが…」
リネットはそう言いながら声を詰まらせてわっと泣き伏す。見栄っ張り姉妹は、目と口を最大限に丸くして続きを聞く。
「あの後で起きた災害で招待客を誘導した後で、裏庭に住まう古木の精霊に連れ去られておしまいに…」
「な、なんですって!?」
「私たちの運命のお方が、精霊ごときに!?」
「ええ…」
流石に元は盗賊なだけある。想像以上の演技力で、見栄っ張り姉妹を黙らせちまった。
「ああ…あのお方たちは、いつまでも私たちの心の中に…」
「美しい思い出として覚えておいて差し上げましょう…!」
「さあさ、お嬢様がた。次のお見合いの日取りでございますが…」
つむじ風が去った後のように、見栄っ張り姉妹は返って行った。
「リネット…助かった、恩にきるわ…」
安堵にへたり込むオレたちに、彼女はにっこりと笑う。
いいけど、エルダードに行ったらしばらくおごりなさいよ? あたし、お金ないんだから! アドルフ卿って、結構ケチだったのよねー。せめて一月はお願いね?
「「…え…?」」
…ちくしょう! オレとしたことが、頼るべき相手を間違えちまったか!
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