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mission 3 祝祭の神様
アドリブ作曲はお手の物?
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Side-アーチ 1
よう、待ちに待った祝祭だ! みんな楽しんでるか? あ、オレ? そりゃ楽しんでるに決まってんだろ!
外回りを済ませて詰所に戻って来てみりゃ、付き人を連れた綺麗なねーちゃんが何故かリュートを抱え爪引きながら応接室に座っていた。
「お、どした? 迷子か人探しか?」
彼女は答えない。よく見りゃ、テーブルには白紙の楽譜が載っていてペンが添えられている。
「?」
静かにするように付き人が身振りで俺を制すると、彼女は取り憑かれたような仕草でリュートを奏で始めた。
清涼感のある、静かな音色。かと言って、弱々しさはなく誇り高さを感じられる曲だ。へえ、やるじゃねぇか。
オレは部屋の隅に立てかけられたもうひと張りのリュートを手に取ると、その音色に合わせて奏で始める。ねーちゃんはそんなオレを見て驚くように目を見開いたが、止めるなと目配せしてさらに続けた。
応接室からの音楽に気づいて覗きに来た連中がいたが、構うもんかよ! 観客なら大歓迎だ、さっさと来ねぇといい席埋まっちまうぜ?
そういや最近、誰かとセッションする事は無かったなとふと思った。ソロも悪くねぇが、音楽はこういう楽しみ方もあったと思い出した。残念なことに、オレの周りにゃ楽器できる奴がとんといねぇ。デュエルもラスファも、そこんトコ不調法だし、オレと同じレベルで演奏できる相手ってのは実は初めて会ったかもな。
付き人はペンを取ると、猛烈な勢いで白紙の楽譜を埋め始めた。どうやら今のアドリブ曲を紙に起こしているらしい…大したもんだ。聴きながら記録するってのは、地味に見えて案外難しいんだが。
最後の一音を終えると、付き人がテーブルから顔を上げて突進して来た。その勢いでオレの手を握りしめて振り回す。おいおい! どうせならオレ、握手するならそっちのねーちゃんの方がいいんだけどよ?
「ありがとうございます! おかげでいい曲ができました! 芸術神の祝福を受けたお方に、こんな所でお目にかかれるとは!」
…へ? 芸術神? 祝福? 何のこっちゃ?
周囲からも拍手が湧き起こる。お、おう…案外観客多かったのな。
そういやデュエルから、芸術神の神官と聖女候補が現界してる芸術神を探しに来たと聞いた気がするな。じゃあ、この二人がそうか? そっちに水を向けると、二人は幸せそうに頷いた。
「是非、貴方にも協力して頂きたい!」
…あ、これゼッテー面倒な依頼になるぞ…。
神が来る場所ってのに心当たりは無かったが、とりあえずいいことを思いついた。
「なあ、さっきの。外でもっぺんやんねぇ?」
相変わらず喋らねぇ聖女候補をオレは振り返った。キョトンとした顔でオレを見返すねーちゃん。
「探してんだろ、芸術神。そんなら聴きに来たくなるような演奏かましてやろうぜ?」
なに、言葉が不自由なら音楽があるだろ! オレは何より純粋に、もう一度彼女とセッションしてみたかった。場所は人が集まりそうな広場の片隅で、一応自警団って肩書きに反しない自由演奏ができる場所を見つけた。
実家にいた頃からずっと続いている、唯一の長続きした趣味だ。こっちに来て久しく忘れかけてたが、音楽ってのは楽しむって事が何より大事なことなんだよな。
メインのところはとりあえず、また彼女に合わせる形だ。数小節先行してもらう形で曲調を掴んだら、合わせて演奏開始だ。へへ、ここに来るまでずっと彼女はオレにべったり張り付いて歩いてたんだぜ? モテる男は辛いねえ♪
今度始まった演奏は、随分と軽快な曲だった。早いテンポで明るく、どこかトリッキーな曲調だ。さっきとは全然違った感じだが、これはこれで悪くねぇ。ストリート演奏向きな曲を作曲したってことか。やるねぇ? 曲調を掴むなり、オレはよく調律されたリュートに手を滑らせる。
出だしは好調、周囲の観光客も注目を集めている。へへ、見てろよ? まだまだこんなもんじゃねぇぜ!
オレらがノリノリで演奏している曲を、付き人がまた楽譜に書き起こしている。イイぜいいぜ? どんどん書いてってくれ! てか、ついてこれるのかアンタ? すげえな。
彼女の音とオレの音、今度は交互に会話のような形式でセッションは続く。どうも彼女は、言葉よりも演奏の方が雄弁に語ってるような感じだな…。こっち方面に偏りすぎて、言葉の方が不自由になっちまった感がある。だからこその、聖女候補ってやつかもしれねぇな…。普段からフワフワした印象があるが、他のもんを色々とかなぐり捨てて芸術…この場合は音楽に全てをつぎ込んだ感じだ。
名残惜しい気分で演奏を終えると、いつの間にか集まっていた観客の間から怒涛のような拍手が沸き起こった。
演奏に夢中になりすぎて忘れかけてたが、目的は芸術神を探して連れ戻すことだったよな…。
「どうよ? いそうか、芸術神?」
「…」
同じく目的を忘れかけていたらしい彼女が周囲を見渡してかぶりを振る。
「なら、もっかい時間ズラしてやってみるか? 今度は場所も変えてさ」
彼女がパァッと顔を輝かせる。よっしゃ、決まりだな!
観客の間から聞こえる心地いいアンコールに応え、オレらはもう一曲披露して一旦帰った。
今度は対照的に、重厚で気高く…どこか女性的な印象の曲だった。よくこんだけ個性的な曲を次々と思いつくもんだ。流石だな、聖女候補ってやつは?
よう、待ちに待った祝祭だ! みんな楽しんでるか? あ、オレ? そりゃ楽しんでるに決まってんだろ!
外回りを済ませて詰所に戻って来てみりゃ、付き人を連れた綺麗なねーちゃんが何故かリュートを抱え爪引きながら応接室に座っていた。
「お、どした? 迷子か人探しか?」
彼女は答えない。よく見りゃ、テーブルには白紙の楽譜が載っていてペンが添えられている。
「?」
静かにするように付き人が身振りで俺を制すると、彼女は取り憑かれたような仕草でリュートを奏で始めた。
清涼感のある、静かな音色。かと言って、弱々しさはなく誇り高さを感じられる曲だ。へえ、やるじゃねぇか。
オレは部屋の隅に立てかけられたもうひと張りのリュートを手に取ると、その音色に合わせて奏で始める。ねーちゃんはそんなオレを見て驚くように目を見開いたが、止めるなと目配せしてさらに続けた。
応接室からの音楽に気づいて覗きに来た連中がいたが、構うもんかよ! 観客なら大歓迎だ、さっさと来ねぇといい席埋まっちまうぜ?
そういや最近、誰かとセッションする事は無かったなとふと思った。ソロも悪くねぇが、音楽はこういう楽しみ方もあったと思い出した。残念なことに、オレの周りにゃ楽器できる奴がとんといねぇ。デュエルもラスファも、そこんトコ不調法だし、オレと同じレベルで演奏できる相手ってのは実は初めて会ったかもな。
付き人はペンを取ると、猛烈な勢いで白紙の楽譜を埋め始めた。どうやら今のアドリブ曲を紙に起こしているらしい…大したもんだ。聴きながら記録するってのは、地味に見えて案外難しいんだが。
最後の一音を終えると、付き人がテーブルから顔を上げて突進して来た。その勢いでオレの手を握りしめて振り回す。おいおい! どうせならオレ、握手するならそっちのねーちゃんの方がいいんだけどよ?
「ありがとうございます! おかげでいい曲ができました! 芸術神の祝福を受けたお方に、こんな所でお目にかかれるとは!」
…へ? 芸術神? 祝福? 何のこっちゃ?
周囲からも拍手が湧き起こる。お、おう…案外観客多かったのな。
そういやデュエルから、芸術神の神官と聖女候補が現界してる芸術神を探しに来たと聞いた気がするな。じゃあ、この二人がそうか? そっちに水を向けると、二人は幸せそうに頷いた。
「是非、貴方にも協力して頂きたい!」
…あ、これゼッテー面倒な依頼になるぞ…。
神が来る場所ってのに心当たりは無かったが、とりあえずいいことを思いついた。
「なあ、さっきの。外でもっぺんやんねぇ?」
相変わらず喋らねぇ聖女候補をオレは振り返った。キョトンとした顔でオレを見返すねーちゃん。
「探してんだろ、芸術神。そんなら聴きに来たくなるような演奏かましてやろうぜ?」
なに、言葉が不自由なら音楽があるだろ! オレは何より純粋に、もう一度彼女とセッションしてみたかった。場所は人が集まりそうな広場の片隅で、一応自警団って肩書きに反しない自由演奏ができる場所を見つけた。
実家にいた頃からずっと続いている、唯一の長続きした趣味だ。こっちに来て久しく忘れかけてたが、音楽ってのは楽しむって事が何より大事なことなんだよな。
メインのところはとりあえず、また彼女に合わせる形だ。数小節先行してもらう形で曲調を掴んだら、合わせて演奏開始だ。へへ、ここに来るまでずっと彼女はオレにべったり張り付いて歩いてたんだぜ? モテる男は辛いねえ♪
今度始まった演奏は、随分と軽快な曲だった。早いテンポで明るく、どこかトリッキーな曲調だ。さっきとは全然違った感じだが、これはこれで悪くねぇ。ストリート演奏向きな曲を作曲したってことか。やるねぇ? 曲調を掴むなり、オレはよく調律されたリュートに手を滑らせる。
出だしは好調、周囲の観光客も注目を集めている。へへ、見てろよ? まだまだこんなもんじゃねぇぜ!
オレらがノリノリで演奏している曲を、付き人がまた楽譜に書き起こしている。イイぜいいぜ? どんどん書いてってくれ! てか、ついてこれるのかアンタ? すげえな。
彼女の音とオレの音、今度は交互に会話のような形式でセッションは続く。どうも彼女は、言葉よりも演奏の方が雄弁に語ってるような感じだな…。こっち方面に偏りすぎて、言葉の方が不自由になっちまった感がある。だからこその、聖女候補ってやつかもしれねぇな…。普段からフワフワした印象があるが、他のもんを色々とかなぐり捨てて芸術…この場合は音楽に全てをつぎ込んだ感じだ。
名残惜しい気分で演奏を終えると、いつの間にか集まっていた観客の間から怒涛のような拍手が沸き起こった。
演奏に夢中になりすぎて忘れかけてたが、目的は芸術神を探して連れ戻すことだったよな…。
「どうよ? いそうか、芸術神?」
「…」
同じく目的を忘れかけていたらしい彼女が周囲を見渡してかぶりを振る。
「なら、もっかい時間ズラしてやってみるか? 今度は場所も変えてさ」
彼女がパァッと顔を輝かせる。よっしゃ、決まりだな!
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