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mission 3 祝祭の神様
再びの作戦会議
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Side-デュエル 8
それぞれに情報を収集して再び俺の部屋に集まったが、いきなり大きな壁に突き当たった。
魔術師ギルドの学生が絡んでいるというのに、肝心のアーシェがいないために伝手をたどることができないのだ。
アローガの街には、魔術師ギルドは存在しない。それゆえに才ある者は、エルダードまで学びに行くのが通例となっているそうだ。ならばその犯人もエルダードから来ているに違いないというのが結論となっている。
とりあえず盗賊ギルドは絡んでいないということと、神殿の者…今のところライラは別口で嫌がらせをやらかしたということしか分からなかった中で、ラスファの情報は貴重なものだった。
「今回、オメーの色仕掛けが役にたったぜ。憎いぜこのこの!」
これっぽっちも羨ましそうに聞こえないアーチの悪態に、ラスファは枕を奴の顔面に投げて応戦する。
それ、俺のベッドにあったものなんだがな…。
「まずはエルダードに戻って、魔術師ギルドに当たってみるか?」
何事もなかったかのように、ラスファが提案してくる。タイムロスは痛いが、致し方ないか。
話がまとまりかけたところで、慌ただしく扉がノックされた。
「すいません、デュエルさん! 町長夫人の使いの方がいらしてます!」
マイルスだ。俺たちは我先にと使いのもとに急いだ。
「すいません、奥様から至急お呼びするようにと言われてまいりました! 博物館にお越しください!」
「…何があったんだ?」
「杖を盗んだ犯人と目される人物がいらっしゃいました! 受付のコナーさんがお茶とお菓子でお引止めしております! お急ぎください!」
「「「何いいい!?」」」
慌てて走ってきたのだろう、十代後半のメイドとみられる少女は息を切らせながらそれだけ告げてうずくまる。介抱しがてら早速口説こうとするアーチの後頭部をスリッパで叩き、急いで博物館に向かった。申し訳ないが、急ぎの案件だ。道順はラスファが知っている。彼女をその場に残して俺たちもダッシュで向かった。
そう遠い場所ではなかった件の博物館は、古ぼけて寂れたところに建っていた。こんな隙だらけの所に例の杖が収められていたのか…。
「こちらで奥様がお待ちです」
ドワーフめいたヒゲが特徴的な受付の男に案内されて、俺たちは薄く開いた扉の隙間から垣間見る。部屋の中には、いつかのクレーム夫人が座っていた。俺と目が合うとバツが悪そうに目をそらすが、こっちはそれどころではなかった。
「アレが、杖を盗んだと思われる人物です」
彼に示されてこっそりと扉を覗くと、幸せそうに茶菓子を頬張る青年がいた。年の頃は十代後半、茶色いボサボサ頭に丸メガネ、そばかすが頰に散っている純朴そうな苦学生のようだ。ラスファから聞いた犯人の特徴と一致するが…。
「…アレが…?」
率直な感想をこぼすと、みんな同意見だったらしい。どう見てもそんな大胆な犯行をやらかすタイプに見えない。疑問の視線が飛び交う中、深くうなづく受付さん。
「…まずは、話を聞いてみるか?」
「…そうだな」
さっきのメイドさんを口説き損ねたのが心残りなのか、不承不承にアーチが頷く。先に面識があるラスファがそっと部屋に踏み込んだ。
「ああ、薬屋さん!」
何故か夫人はラスファをそう呼ぶと、安心したように立ち上がる。苦学生はほっこりするような笑みで立ち上がって会釈する。
「あ、どうも。例の杖についてお尋ねしたいことがあるとか。僕の資料で良かったら、ごらんになってください」
…なんだかなあ…。
見た目通り、いやそれ以上の純朴さだ。本当に彼が犯人なのか? 疑わしげな視線を向けると、受付さんは頷いた。
「いやあ、すっかりお世話になっちゃって。甘いお菓子なんて、久しぶりですよ! エルダードからずっと歩き詰めなんで、ほんとうにありがたいです。ありがとうございます」
そう言って深々と受付さんに頭を下げる苦学生。いや、もうほんと彼が犯人とは思えない。
第一彼が本当に犯人なら、こんなまったりと犯行現場でお茶なんかしてられないだろう。
「ちょっと聞きたいんだが…」
俺と同意見だったのだろうラスファが、一応といった様子で盗難があった日のアリバイを尋ねる。
「ああ、その日なら。頼まれごとをされまして、エルダードの魔術師ギルドの実験棟にいました」
手帳をめくりながら、彼はそう答える。なんとなくホッとしたのは、俺だけじゃなかったはずだ。
それぞれに情報を収集して再び俺の部屋に集まったが、いきなり大きな壁に突き当たった。
魔術師ギルドの学生が絡んでいるというのに、肝心のアーシェがいないために伝手をたどることができないのだ。
アローガの街には、魔術師ギルドは存在しない。それゆえに才ある者は、エルダードまで学びに行くのが通例となっているそうだ。ならばその犯人もエルダードから来ているに違いないというのが結論となっている。
とりあえず盗賊ギルドは絡んでいないということと、神殿の者…今のところライラは別口で嫌がらせをやらかしたということしか分からなかった中で、ラスファの情報は貴重なものだった。
「今回、オメーの色仕掛けが役にたったぜ。憎いぜこのこの!」
これっぽっちも羨ましそうに聞こえないアーチの悪態に、ラスファは枕を奴の顔面に投げて応戦する。
それ、俺のベッドにあったものなんだがな…。
「まずはエルダードに戻って、魔術師ギルドに当たってみるか?」
何事もなかったかのように、ラスファが提案してくる。タイムロスは痛いが、致し方ないか。
話がまとまりかけたところで、慌ただしく扉がノックされた。
「すいません、デュエルさん! 町長夫人の使いの方がいらしてます!」
マイルスだ。俺たちは我先にと使いのもとに急いだ。
「すいません、奥様から至急お呼びするようにと言われてまいりました! 博物館にお越しください!」
「…何があったんだ?」
「杖を盗んだ犯人と目される人物がいらっしゃいました! 受付のコナーさんがお茶とお菓子でお引止めしております! お急ぎください!」
「「「何いいい!?」」」
慌てて走ってきたのだろう、十代後半のメイドとみられる少女は息を切らせながらそれだけ告げてうずくまる。介抱しがてら早速口説こうとするアーチの後頭部をスリッパで叩き、急いで博物館に向かった。申し訳ないが、急ぎの案件だ。道順はラスファが知っている。彼女をその場に残して俺たちもダッシュで向かった。
そう遠い場所ではなかった件の博物館は、古ぼけて寂れたところに建っていた。こんな隙だらけの所に例の杖が収められていたのか…。
「こちらで奥様がお待ちです」
ドワーフめいたヒゲが特徴的な受付の男に案内されて、俺たちは薄く開いた扉の隙間から垣間見る。部屋の中には、いつかのクレーム夫人が座っていた。俺と目が合うとバツが悪そうに目をそらすが、こっちはそれどころではなかった。
「アレが、杖を盗んだと思われる人物です」
彼に示されてこっそりと扉を覗くと、幸せそうに茶菓子を頬張る青年がいた。年の頃は十代後半、茶色いボサボサ頭に丸メガネ、そばかすが頰に散っている純朴そうな苦学生のようだ。ラスファから聞いた犯人の特徴と一致するが…。
「…アレが…?」
率直な感想をこぼすと、みんな同意見だったらしい。どう見てもそんな大胆な犯行をやらかすタイプに見えない。疑問の視線が飛び交う中、深くうなづく受付さん。
「…まずは、話を聞いてみるか?」
「…そうだな」
さっきのメイドさんを口説き損ねたのが心残りなのか、不承不承にアーチが頷く。先に面識があるラスファがそっと部屋に踏み込んだ。
「ああ、薬屋さん!」
何故か夫人はラスファをそう呼ぶと、安心したように立ち上がる。苦学生はほっこりするような笑みで立ち上がって会釈する。
「あ、どうも。例の杖についてお尋ねしたいことがあるとか。僕の資料で良かったら、ごらんになってください」
…なんだかなあ…。
見た目通り、いやそれ以上の純朴さだ。本当に彼が犯人なのか? 疑わしげな視線を向けると、受付さんは頷いた。
「いやあ、すっかりお世話になっちゃって。甘いお菓子なんて、久しぶりですよ! エルダードからずっと歩き詰めなんで、ほんとうにありがたいです。ありがとうございます」
そう言って深々と受付さんに頭を下げる苦学生。いや、もうほんと彼が犯人とは思えない。
第一彼が本当に犯人なら、こんなまったりと犯行現場でお茶なんかしてられないだろう。
「ちょっと聞きたいんだが…」
俺と同意見だったのだろうラスファが、一応といった様子で盗難があった日のアリバイを尋ねる。
「ああ、その日なら。頼まれごとをされまして、エルダードの魔術師ギルドの実験棟にいました」
手帳をめくりながら、彼はそう答える。なんとなくホッとしたのは、俺だけじゃなかったはずだ。
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