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mission 3 祝祭の神様
宝珠の謎とゴブリンの群れ
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Side-ラスファ 7
単独行動はいつものことだ。デュエルやアーチも含め、駆け出しとは程遠いメンバー構成だからな。もし途中で敵から襲撃なり喰らおうとも、ほぼ無傷で切り抜けられるという自負はある。というわけで今回も、それぞれの観点で事件を探ろうという事になった。
とりあえず私は…。
そもそも盗まれたという四つの宝珠の役割を尋ねてみたのだが、女神はまともに答えなかった。というよりも、本人が忘れかけているとはどういう事なんだか? こうなると、もはや威厳がどうのというよりも…いや、言うまい。
それならいっそ自分で調べてやるということで、例の神殿後に足を向けてみた。犯人の意図がそこに見えるのかもしれない。やつはこれを使って、何をなそうとしているのだろうか?
重要そうなものだから何らかの手がかりはあるのだろう。
ひっそりと静まった森の空気はやはり落ち着く。たとえ故郷を捨てようとも、本能的にエルフ族というのは森と引き合うものらしい。
偽装した神殿跡の入り口をくぐると、地下室独特の湿気やカビ臭さが漂う。足元に水たまりを踏みながら階段を下りきると、宝珠を奪われた女神像が微笑みとともに両腕を広げ立っていた。
以前に来た時は気づかなかったが、扉の裏に何か彫り込まれたレリーフがある。試しに扉を閉じてよく見ると、暗闇の中で古代文字の詩文が刻まれているのが見えた。ちなみにエルフ族は暗闇でも関係なく目が見えるため、灯りなど必要ない。
『右手に喜び、左手に悲しみ』
『英雄の志を胸に』
『自らの心を戒めよ』
『聖なる光、ここに現れん』
『聖者の魂の導きのままに』
これは…あの宝珠のことを書いているのか?
とりあえず全てを書き留めて他の壁も探すが、これ以上のものは出てこない。ただ、隙間から一条の光が漏れているだけだ。これは…妙に気になる。もしかしたら…。
『心せよ、我が契約者』
いきなり聞こえた虚空からの声に、私は振り向く。そこには白いドレスに身を包んだ貴婦人の姿があった。彼女は面白そうにこちらを眺めながら、さ小さく笑い声を立てた。
『周囲に、異様なものどもが溢れておるぞ? 如何する? 妾の力で切り抜けるか?』
「…異様なもの? 何にだ?」
周囲に人がいないからこその会話だ。彼女の姿は、私と限られた者にしか視えない…そう、あの女神のように。
『それは、お主の方が詳しかろう?』
「…ゴブリンか…」
この女は、常に私のそばでこっちの行動を見続けている。退屈しのぎだと言っているが、真意は計り知れない。
幸い神殿跡は偽装されているために、閉じれば入り口はわかりづらい。だが、相手は一度ここに来て宝珠を盗んだ奴だ。ここになだれ込むのも時間の問題か…。
それなら。
音を立てないように扉の裏側に張り付くと、精霊魔法で姿を消す。向こう側にはゴブリンが集まっているようだった。
「『光精よ、我が姿包み隠せ』」
ほぼ同時に入り口が一気に引き開けられた。まばゆ光が神殿跡に満ちると同時にゴブリンどもがぞろぞろと中に入ってくる。
奴らは気づいていない。扉を全開にしたことで、重要そうな碑文の詩を自ら隠していることに。
ゴブリンの数はそう多くはないが、数体が組みになって統制された行動をとっているように思えた。
奴らと入れ替わりで外に出て、ついでに周囲の様子を調べて帰ることにしたが…操られていることは確定になるだろう。
通常考えられる数を上回っているということは、例の杖の効果範囲である、徒歩にして半径二日の距離内にいるゴブリンを徐々に森に集めているということだろうか? これは、急いだ方がいい。近いうちに何かをやらかすことは間違いない!
ゴブリンどもの間をかいくぐって街に戻ることは大した手間ではない。女神像の台座に隠された宝珠を見逃したくらいだ、魔力を感知することはできないのは間違いないのだから。
だがこの数…! デュエルがエルダードに戻っているのは痛い誤算だった。
一挙にアローガに攻め込まれでもしたら、幾ら何でもデュエル抜きではヤバい!
単独行動はいつものことだ。デュエルやアーチも含め、駆け出しとは程遠いメンバー構成だからな。もし途中で敵から襲撃なり喰らおうとも、ほぼ無傷で切り抜けられるという自負はある。というわけで今回も、それぞれの観点で事件を探ろうという事になった。
とりあえず私は…。
そもそも盗まれたという四つの宝珠の役割を尋ねてみたのだが、女神はまともに答えなかった。というよりも、本人が忘れかけているとはどういう事なんだか? こうなると、もはや威厳がどうのというよりも…いや、言うまい。
それならいっそ自分で調べてやるということで、例の神殿後に足を向けてみた。犯人の意図がそこに見えるのかもしれない。やつはこれを使って、何をなそうとしているのだろうか?
重要そうなものだから何らかの手がかりはあるのだろう。
ひっそりと静まった森の空気はやはり落ち着く。たとえ故郷を捨てようとも、本能的にエルフ族というのは森と引き合うものらしい。
偽装した神殿跡の入り口をくぐると、地下室独特の湿気やカビ臭さが漂う。足元に水たまりを踏みながら階段を下りきると、宝珠を奪われた女神像が微笑みとともに両腕を広げ立っていた。
以前に来た時は気づかなかったが、扉の裏に何か彫り込まれたレリーフがある。試しに扉を閉じてよく見ると、暗闇の中で古代文字の詩文が刻まれているのが見えた。ちなみにエルフ族は暗闇でも関係なく目が見えるため、灯りなど必要ない。
『右手に喜び、左手に悲しみ』
『英雄の志を胸に』
『自らの心を戒めよ』
『聖なる光、ここに現れん』
『聖者の魂の導きのままに』
これは…あの宝珠のことを書いているのか?
とりあえず全てを書き留めて他の壁も探すが、これ以上のものは出てこない。ただ、隙間から一条の光が漏れているだけだ。これは…妙に気になる。もしかしたら…。
『心せよ、我が契約者』
いきなり聞こえた虚空からの声に、私は振り向く。そこには白いドレスに身を包んだ貴婦人の姿があった。彼女は面白そうにこちらを眺めながら、さ小さく笑い声を立てた。
『周囲に、異様なものどもが溢れておるぞ? 如何する? 妾の力で切り抜けるか?』
「…異様なもの? 何にだ?」
周囲に人がいないからこその会話だ。彼女の姿は、私と限られた者にしか視えない…そう、あの女神のように。
『それは、お主の方が詳しかろう?』
「…ゴブリンか…」
この女は、常に私のそばでこっちの行動を見続けている。退屈しのぎだと言っているが、真意は計り知れない。
幸い神殿跡は偽装されているために、閉じれば入り口はわかりづらい。だが、相手は一度ここに来て宝珠を盗んだ奴だ。ここになだれ込むのも時間の問題か…。
それなら。
音を立てないように扉の裏側に張り付くと、精霊魔法で姿を消す。向こう側にはゴブリンが集まっているようだった。
「『光精よ、我が姿包み隠せ』」
ほぼ同時に入り口が一気に引き開けられた。まばゆ光が神殿跡に満ちると同時にゴブリンどもがぞろぞろと中に入ってくる。
奴らは気づいていない。扉を全開にしたことで、重要そうな碑文の詩を自ら隠していることに。
ゴブリンの数はそう多くはないが、数体が組みになって統制された行動をとっているように思えた。
奴らと入れ替わりで外に出て、ついでに周囲の様子を調べて帰ることにしたが…操られていることは確定になるだろう。
通常考えられる数を上回っているということは、例の杖の効果範囲である、徒歩にして半径二日の距離内にいるゴブリンを徐々に森に集めているということだろうか? これは、急いだ方がいい。近いうちに何かをやらかすことは間違いない!
ゴブリンどもの間をかいくぐって街に戻ることは大した手間ではない。女神像の台座に隠された宝珠を見逃したくらいだ、魔力を感知することはできないのは間違いないのだから。
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