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第二章 狂いと絶望

10話 告白

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私は海斗に、杏のことを話した。

何でか、自分の思いが口をついて出てくる。
美雪以外、誰にも話すつもりはなかったのに。

「意外だな。松川と森野は友達だと思ってた。傍から見ても楽しそうだったし」
「私も…」
私はうなだれた。

だが、1番辛いのは“悲しい”よりも“憎い”が勝っていることだ。
裏切られて悲しい。ではなく、仲良くならなければ良かったとさえ思う。

「まぁでも、ズルズルと表面上の付き合いをするよりは本性が分かって良かったんじゃないか?」
「……そう、かな」
「松川が、森野をもっと信頼するようになってたら今よりも苦しいだろうし」
「そうだね…」

確かに、それは一理ある。
大好きだと思ってもらえる人と過ごす方が幸せだから。
でも、江藤君は分かってない。
女って、面倒なんだよ。
友達という存在を失うと、待っているのは孤立だけだ。
そして一度孤立した人には、誰も手を差し伸べない。グループにいれない。

楽しい学校生活は友達によってきまるのだ。
そう、例えいじめられていたとしても友達がいるだけでどれほど支えになるだろう。

私は、大人の都合で美雪を。
そして勝手な都合で友達を失ったのだ。


翌週。
私はある決心をした。
海斗に自分の気持ちを伝えようと思ったのだ。
言っておくけど、期待しているわけじゃないよ。
ただ、自分の気持ちに終止符を打とうとしているだけだ。
かつての孤独に戻ってしまった以上、この思いは自分を追い詰めるだけだから。

私は、海斗を人気のない校舎裏に呼び出した。
「何?話って」

海斗の口調は、いつも優しい。
ごめんね。こんなのに想われて。

「私……。海斗君が、好き…だよ」
「え?それ……告白ってことでいいの?」
「うん。あ、でも返事は別に…」

そう言いかけると、海斗は突然笑い始めた。

「俺がちょっと優しくしたら、すぐにそう思うんだ?」
「え……?」
「松川1人にだけ優しくしてるとでも思ったのか?残念。俺は誰に対してもこうだよ。好感度上げたいし。」

「江藤…君?」

「俺がわざわざいじめられているような奴と付き合う訳が無いだろ。そもそも、お前のことを友達とか思う奴すら現れるかよ」



どう…して?
どうして私がこんな目に遭わなきゃならないの?
ただ、聞いてほしいだけだったのに…

もう嫌だよ。

ここには居たくない。
逃げたい。

私は藁にもすがる思いで担任の先生に全てを話すことにした。

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