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プロローグ
最凶の最期
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空間が一直線に裂けた。
魔力弾がビームの如く飛んでいく。
地面は抉れ、軌道上にプラズマがほとばしる。
それを冷や汗混じりで避ける勇者たち。
勇者たちの内、一人の女が怯まず刀剣を片手に魔力弾を放った相手に飛び掛かる。
「殺すッ」
彼女の斬撃は強固な鱗に阻まれるが、ヒビを入れることに成功する。
攻撃を受けた巨大なドラゴンは長い首を鞭のようにしならせて女を跳ね飛ばす。
「龍鱗、堅牢、不動、反発─────」
ドラゴンの耳が魔法詠唱を捉える。
詠唱の主は男の魔法使い。
その男目掛けてドラゴンが突進を仕掛ける。
しかし、ドラゴンと男の間に割って入ったのは三メートルはあろうかという高身長の巨漢。
巨漢はドラゴンの首元を両腕でホールドする。
巨漢は少し押されつつもドラゴンのタックルを受け止めきる。
タックルが失敗に終わった刹那、耳を劈く咆哮をあげたドラゴンの周囲から電撃が放たれる。
その電撃はドラゴンの周囲360度の敵と障害物を満遍なく破壊する。
───────はずであった。
「ドラゴンから離れろ…ッ!」
魔法使いの男が声を振り絞り、巨漢がドラゴンから飛び退く。
その瞬間、ドラゴンが放った全方位攻撃を更に包み込むように障壁が展開される。
電撃はバリアによって跳ね返り、ドラゴンが喰らってしまう。
巨龍の鱗が砕け、柔らかそうなピンク色の肉が露出する。
滝のように流血するが、ドラゴンには回復能力も備わっている。
しかし、回復に注力する隙を見逃す勇者たちではない。
女魔法使いが傷を腐食させ回復を遅らせた。
間髪入れず巨漢がドラゴンの尾を鷲掴んで投げ、宙でエルフの弓使いが弱点に矢を撃ち込む。
戻ってきた剣士の女が飛んできたドラゴンの首と両手脚を落とす。
すかさず魔法使いがドラゴンの死体を魔法で焼却する。
「ハァハァ…っ、ハァハァ…」
切傷だらけの身体を血と汗が伝う勇者たち。
魔神の、最強の配下にして最凶の妻ロスタタルゲェノがようやく倒された。
まさか龍の姿だとは思いもよら
「まだだよ」
勇者たちの背筋が凍る。
燃え盛る龍の死骸の上に立つのは覇気のない老婆であった。
◆◆◆
血溜まりに伏す勇者たち。
「一歩、及ばなかったね」
彼らを見下ろす老婆。
服はボロボロであったが、五体満足で切り傷も全て癒えていた。
「私も殺せない程度なら…やはり全ては魔神に委ねるしか……」
ぼやきながらロスタタルゲェノが勇者たちを一瞥する。
女剣士が一人、魔法使いが男女二人、大男が一人……?
エルフの弓使いがいない……!
そう気づくのと首にエルフの細剣が突き刺さるのは同時であった。
「ようやく隙、見せましたね」
「ぐぷ」
口内に血が溜まる。
エルフは血だらけになりながらも不敵に笑うが、老婆には不死魔法があるため首の傷はすぐ癒える。
致命傷にはならない。
瞬きする間にエルフの首は血のドレスを纏い、空を舞うことになる。
老婆は身体中の魔力を片手に集約させようとする。
しかし、できない。
魔力を操作する感覚が掴めない。
突如浜辺に打ち上げられてしまった魚のような気分を味わう。
「エルフの魔法か……ッ!」
このままでは魔法の制御は疎か魔力操作による防御もできない。
しかし、魔法の発動はできる。
(我が身諸共蒸発させる…ッ!)
ロスタタルゲェノは決断する。
しかし、叶わなかった。
呼吸ができないのだ。
一体何故か。
血を吐きながら魔法の詠唱をする男魔法使いの姿を見た老婆はもう分かっていた。
「─────ッ!」
老婆は喉に刺さったレイピアを掴んだ。
エルフが驚くが、対処する暇なくレイピアが握り折られる。
老婆の魔力使用が可能になる。
ひとたび魔力を纏えば、その非力な老婆は最凶の魔神妃ロスタタルゲェノに変貌する。
───しかし、圧縮が甘かった。
老婆の首に肉薄する女剣士の剣。
その剣速に対応しつつ、剣士の怪力に耐えうる強度まで魔力を圧縮するには時間が無さすぎた。
魔力防壁はチーズよりも易々と撫で斬りにされ、老婆の胴は袈裟に斬られる。
(とうとう死ぬのか、私は)
上半身が傷口に沿って斜めに滑り落ちていく。
(夫の悲願はどうなるのだろうね)
存外軽い音をたてて半身が地に落ちる。
(地獄で吉報を待っているよ、魔神)
ロスタタルゲェノは暗闇と静寂に包まれていく。
魔力弾がビームの如く飛んでいく。
地面は抉れ、軌道上にプラズマがほとばしる。
それを冷や汗混じりで避ける勇者たち。
勇者たちの内、一人の女が怯まず刀剣を片手に魔力弾を放った相手に飛び掛かる。
「殺すッ」
彼女の斬撃は強固な鱗に阻まれるが、ヒビを入れることに成功する。
攻撃を受けた巨大なドラゴンは長い首を鞭のようにしならせて女を跳ね飛ばす。
「龍鱗、堅牢、不動、反発─────」
ドラゴンの耳が魔法詠唱を捉える。
詠唱の主は男の魔法使い。
その男目掛けてドラゴンが突進を仕掛ける。
しかし、ドラゴンと男の間に割って入ったのは三メートルはあろうかという高身長の巨漢。
巨漢はドラゴンの首元を両腕でホールドする。
巨漢は少し押されつつもドラゴンのタックルを受け止めきる。
タックルが失敗に終わった刹那、耳を劈く咆哮をあげたドラゴンの周囲から電撃が放たれる。
その電撃はドラゴンの周囲360度の敵と障害物を満遍なく破壊する。
───────はずであった。
「ドラゴンから離れろ…ッ!」
魔法使いの男が声を振り絞り、巨漢がドラゴンから飛び退く。
その瞬間、ドラゴンが放った全方位攻撃を更に包み込むように障壁が展開される。
電撃はバリアによって跳ね返り、ドラゴンが喰らってしまう。
巨龍の鱗が砕け、柔らかそうなピンク色の肉が露出する。
滝のように流血するが、ドラゴンには回復能力も備わっている。
しかし、回復に注力する隙を見逃す勇者たちではない。
女魔法使いが傷を腐食させ回復を遅らせた。
間髪入れず巨漢がドラゴンの尾を鷲掴んで投げ、宙でエルフの弓使いが弱点に矢を撃ち込む。
戻ってきた剣士の女が飛んできたドラゴンの首と両手脚を落とす。
すかさず魔法使いがドラゴンの死体を魔法で焼却する。
「ハァハァ…っ、ハァハァ…」
切傷だらけの身体を血と汗が伝う勇者たち。
魔神の、最強の配下にして最凶の妻ロスタタルゲェノがようやく倒された。
まさか龍の姿だとは思いもよら
「まだだよ」
勇者たちの背筋が凍る。
燃え盛る龍の死骸の上に立つのは覇気のない老婆であった。
◆◆◆
血溜まりに伏す勇者たち。
「一歩、及ばなかったね」
彼らを見下ろす老婆。
服はボロボロであったが、五体満足で切り傷も全て癒えていた。
「私も殺せない程度なら…やはり全ては魔神に委ねるしか……」
ぼやきながらロスタタルゲェノが勇者たちを一瞥する。
女剣士が一人、魔法使いが男女二人、大男が一人……?
エルフの弓使いがいない……!
そう気づくのと首にエルフの細剣が突き刺さるのは同時であった。
「ようやく隙、見せましたね」
「ぐぷ」
口内に血が溜まる。
エルフは血だらけになりながらも不敵に笑うが、老婆には不死魔法があるため首の傷はすぐ癒える。
致命傷にはならない。
瞬きする間にエルフの首は血のドレスを纏い、空を舞うことになる。
老婆は身体中の魔力を片手に集約させようとする。
しかし、できない。
魔力を操作する感覚が掴めない。
突如浜辺に打ち上げられてしまった魚のような気分を味わう。
「エルフの魔法か……ッ!」
このままでは魔法の制御は疎か魔力操作による防御もできない。
しかし、魔法の発動はできる。
(我が身諸共蒸発させる…ッ!)
ロスタタルゲェノは決断する。
しかし、叶わなかった。
呼吸ができないのだ。
一体何故か。
血を吐きながら魔法の詠唱をする男魔法使いの姿を見た老婆はもう分かっていた。
「─────ッ!」
老婆は喉に刺さったレイピアを掴んだ。
エルフが驚くが、対処する暇なくレイピアが握り折られる。
老婆の魔力使用が可能になる。
ひとたび魔力を纏えば、その非力な老婆は最凶の魔神妃ロスタタルゲェノに変貌する。
───しかし、圧縮が甘かった。
老婆の首に肉薄する女剣士の剣。
その剣速に対応しつつ、剣士の怪力に耐えうる強度まで魔力を圧縮するには時間が無さすぎた。
魔力防壁はチーズよりも易々と撫で斬りにされ、老婆の胴は袈裟に斬られる。
(とうとう死ぬのか、私は)
上半身が傷口に沿って斜めに滑り落ちていく。
(夫の悲願はどうなるのだろうね)
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ロスタタルゲェノは暗闇と静寂に包まれていく。
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