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フォルタン地区編
第6話 空飛ぶ魔法要塞
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「魔物をすべからく鏖殺しようか」
魔物の群れを前にロスタノが言う。
「え…この数をですか…?」
ロスタノ達を囲う魔物の数は数万は下らない。
しかも、有象無象の集まりという訳では無い。
サイクロプスやケルベロスなど、戦争で前線に出されるような高い戦闘力を持った魔物も数え切れぬほどいる。
ロスタノの実力に疑いなど既にないが、この数をちまちま倒していたのでは何日かかることか。
また何日か待つのかなぁ。
でも二ヶ月間に比べれば全然待てるな。
リアはそう思いながら、ロスタノに顔を向ける。
───────首が無い。
「ひっ…ぎょぅぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!????」
いや違う、首が伸びているのだ。
それに伸びた首は黒い鱗で覆われており、段々太くなっている。
頭部は二本の角を生やしたトカゲのような見た目に変わっていた。
変わりだしたのは首と頭部にとどまらない。
首の根元が膨らむと脚も含めた胴体を包み込み、象のような手足が生えた。
それが四足歩行で立つと段々巨大化していき、尾が生える。
背から細長くて黒い肉の塊が伸び切ると、傘のように広がり翼となった。
体高六十メートル、体長は百メートルにも達するその姿は正に───
「……ドラゴンだ……」
リアは間抜けに口をあんぐりと開けて仰天した。
それは魔物どもも同様であった。
しかし、魔物はすぐに気づいた。
雀の涙ほどだった大きさの獲物が食い切れぬほどデカくなったことに。
ヨダレを滝のごとく流した狼の魔物たちがドラゴンの首元を狙って狂ったように飛びついた。
ドラゴンから聞こえる詠唱に気づかずに。
「ギャンギャンッ!!!!」
虚空から現れた火球に丸焼きにされる魔物たち。
よく見ればドラゴンの身体には鱗に交じって大小様々な人の口が所々についていた。
『リア、私の背に乗れるかい?』
「…!! ロスタノさんなんですね! 一応!」
『ああ、姿は変えたけど』
ドラゴンになったロスタノの首元の巨大な人の口が喋った。
「あ…そこで喋るんですね…。っというか、ロスタノさんってドラゴンだったんですか…?ドラゴンなんて童話でしか聞いたことないですけど…」
『いや、人だよ。魔法で模倣しているだけだよ。…というか早く乗りなさい。飢えた魔物に食われるよ』
「ひぇっ」
ロスタノを警戒している魔物ばかりでなく、リアを喰らおうと虎視眈々と狙っているものもいるのだ。
リアの身体がいくら硬いといっても、咬合力の強い魔物なら喰い殺される可能性はある。
『乗れそう? 鱗掴むと登りやすいと思…』
「ほっ」
軽く息を吐くとロスタノの背に飛び乗る。
リアにはパンチ力もあればジャンプ力もあるのだ。
『…さすがだね』
ロスタノが感嘆を漏らした。
『じゃあ、離陸するよ。一応、鱗に捕まっておくといいよ』
ロスタノが走り出す。
象の前の蟻のように魔物がプチプチと潰されていく。
リアの見る景色は大きく揺れているが、驚いたことにロスタノの背に接着しているかの如く安定感がある。
魔法なのだろう。
龍の両翼が大きく羽ばたいた。
すっと景色の揺れが落ち着く。
地を均す足音も同時に聞こえなくなっていた。
リアは顔に風を感じた。
巨大な山々が段々と低くなり、やがて視界から失せた。
ロスタノの背にしがみつきながら、地面を覗いてみると魔物は視認できぬほど小さくなっていた。
「…わぁ…凄い」
リアの瞳には、霊峰フォルタンを中心に木の根の如く広がっていく山脈が映っていた。
地上から見ると山と岩と雪しかない殺風景な土地であったが、上空からだとまた違った趣がある。
『いい眺めだろう。インクだけで描いたような白黒の世界…。これから朱を混ぜてしまうのが心苦しいほどに』
そう告げた途端、辺りがざわめき始める。
「え、え、…なんですかこの…音? 声?」
『魔法詠唱だよ。この龍の体は敵が多い際の殲滅用に開発したんだよ。だから詠唱用の口も沢山ついている』
リアの頬を風が撫でる。
ロスタノが進んでいるが故の向かい風ではない。
ロスタノの周囲に巨大な水球が無数に出現し、空を覆った。
水球を通った陽光が大地を彩る。
謎の風は空気中の水分の動きだったようだ。
リアがそう気づいたときには、水球は次々と落下し始めていた。
大地で噴水のごとく巨大な水飛沫が上がる。
一体、どれ程の魔力量があればこれ程の水柱を作れるのだろうか。
『水『水門』鞠、『水破』豪雨『水…』、洪『毒』水、雪消『水屑』、水『水魔』天、巨水』
リアは耳が慣れてきたのか、雑多な音の塊であったものが魔法の詠唱に聴こえてきた。
とは言えど、まだ良く聴き取れないが。
そんな風にリアが耳を澄ましている間にロスタノはフォルタン地区を一周していた。
水飛沫で辺りには霧がかかっているため良く見えないが、大地は満遍なく水浸しになっていることだろう。
だが、
「あれ?魔物結構生き残ってますよ?飛んでる魔物もいますし」
水球で丁寧に狙撃した訳では無いため地面の魔物は生き残っているのもいるだろうし、当然、飛行可能な魔物は今も元気に飛び狂っている。
魔物の溺死を狙っているのだとばかり思っていたリアは疑問に思った。
返答の代わりに詠唱の声が聞こえなくなってくる。
とうとう、下から響く魔物の鳴き声がけたたましく感じてきたその時、
『『杳杳として肉爆』』
水っぽい爆発音が空間を支配した。
比較的付近を飛んでいた鳥型の魔物が一斉に赤い水滴となり、跡形もなく散った。
水魔法『杳杳として肉爆』は魔力を溶かした水を破裂させる魔法。
ロスタノの魔力がたっぷり溶けた水球を身に浴び、その水を飲んでしまった魔物どもは生ける爆弾と化したのだ。
リアは慌てて大地を覗いた。
依然、霧でよく見えないがその霧は薄紅色に染まっていた。
魔物の群れを前にロスタノが言う。
「え…この数をですか…?」
ロスタノ達を囲う魔物の数は数万は下らない。
しかも、有象無象の集まりという訳では無い。
サイクロプスやケルベロスなど、戦争で前線に出されるような高い戦闘力を持った魔物も数え切れぬほどいる。
ロスタノの実力に疑いなど既にないが、この数をちまちま倒していたのでは何日かかることか。
また何日か待つのかなぁ。
でも二ヶ月間に比べれば全然待てるな。
リアはそう思いながら、ロスタノに顔を向ける。
───────首が無い。
「ひっ…ぎょぅぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!????」
いや違う、首が伸びているのだ。
それに伸びた首は黒い鱗で覆われており、段々太くなっている。
頭部は二本の角を生やしたトカゲのような見た目に変わっていた。
変わりだしたのは首と頭部にとどまらない。
首の根元が膨らむと脚も含めた胴体を包み込み、象のような手足が生えた。
それが四足歩行で立つと段々巨大化していき、尾が生える。
背から細長くて黒い肉の塊が伸び切ると、傘のように広がり翼となった。
体高六十メートル、体長は百メートルにも達するその姿は正に───
「……ドラゴンだ……」
リアは間抜けに口をあんぐりと開けて仰天した。
それは魔物どもも同様であった。
しかし、魔物はすぐに気づいた。
雀の涙ほどだった大きさの獲物が食い切れぬほどデカくなったことに。
ヨダレを滝のごとく流した狼の魔物たちがドラゴンの首元を狙って狂ったように飛びついた。
ドラゴンから聞こえる詠唱に気づかずに。
「ギャンギャンッ!!!!」
虚空から現れた火球に丸焼きにされる魔物たち。
よく見ればドラゴンの身体には鱗に交じって大小様々な人の口が所々についていた。
『リア、私の背に乗れるかい?』
「…!! ロスタノさんなんですね! 一応!」
『ああ、姿は変えたけど』
ドラゴンになったロスタノの首元の巨大な人の口が喋った。
「あ…そこで喋るんですね…。っというか、ロスタノさんってドラゴンだったんですか…?ドラゴンなんて童話でしか聞いたことないですけど…」
『いや、人だよ。魔法で模倣しているだけだよ。…というか早く乗りなさい。飢えた魔物に食われるよ』
「ひぇっ」
ロスタノを警戒している魔物ばかりでなく、リアを喰らおうと虎視眈々と狙っているものもいるのだ。
リアの身体がいくら硬いといっても、咬合力の強い魔物なら喰い殺される可能性はある。
『乗れそう? 鱗掴むと登りやすいと思…』
「ほっ」
軽く息を吐くとロスタノの背に飛び乗る。
リアにはパンチ力もあればジャンプ力もあるのだ。
『…さすがだね』
ロスタノが感嘆を漏らした。
『じゃあ、離陸するよ。一応、鱗に捕まっておくといいよ』
ロスタノが走り出す。
象の前の蟻のように魔物がプチプチと潰されていく。
リアの見る景色は大きく揺れているが、驚いたことにロスタノの背に接着しているかの如く安定感がある。
魔法なのだろう。
龍の両翼が大きく羽ばたいた。
すっと景色の揺れが落ち着く。
地を均す足音も同時に聞こえなくなっていた。
リアは顔に風を感じた。
巨大な山々が段々と低くなり、やがて視界から失せた。
ロスタノの背にしがみつきながら、地面を覗いてみると魔物は視認できぬほど小さくなっていた。
「…わぁ…凄い」
リアの瞳には、霊峰フォルタンを中心に木の根の如く広がっていく山脈が映っていた。
地上から見ると山と岩と雪しかない殺風景な土地であったが、上空からだとまた違った趣がある。
『いい眺めだろう。インクだけで描いたような白黒の世界…。これから朱を混ぜてしまうのが心苦しいほどに』
そう告げた途端、辺りがざわめき始める。
「え、え、…なんですかこの…音? 声?」
『魔法詠唱だよ。この龍の体は敵が多い際の殲滅用に開発したんだよ。だから詠唱用の口も沢山ついている』
リアの頬を風が撫でる。
ロスタノが進んでいるが故の向かい風ではない。
ロスタノの周囲に巨大な水球が無数に出現し、空を覆った。
水球を通った陽光が大地を彩る。
謎の風は空気中の水分の動きだったようだ。
リアがそう気づいたときには、水球は次々と落下し始めていた。
大地で噴水のごとく巨大な水飛沫が上がる。
一体、どれ程の魔力量があればこれ程の水柱を作れるのだろうか。
『水『水門』鞠、『水破』豪雨『水…』、洪『毒』水、雪消『水屑』、水『水魔』天、巨水』
リアは耳が慣れてきたのか、雑多な音の塊であったものが魔法の詠唱に聴こえてきた。
とは言えど、まだ良く聴き取れないが。
そんな風にリアが耳を澄ましている間にロスタノはフォルタン地区を一周していた。
水飛沫で辺りには霧がかかっているため良く見えないが、大地は満遍なく水浸しになっていることだろう。
だが、
「あれ?魔物結構生き残ってますよ?飛んでる魔物もいますし」
水球で丁寧に狙撃した訳では無いため地面の魔物は生き残っているのもいるだろうし、当然、飛行可能な魔物は今も元気に飛び狂っている。
魔物の溺死を狙っているのだとばかり思っていたリアは疑問に思った。
返答の代わりに詠唱の声が聞こえなくなってくる。
とうとう、下から響く魔物の鳴き声がけたたましく感じてきたその時、
『『杳杳として肉爆』』
水っぽい爆発音が空間を支配した。
比較的付近を飛んでいた鳥型の魔物が一斉に赤い水滴となり、跡形もなく散った。
水魔法『杳杳として肉爆』は魔力を溶かした水を破裂させる魔法。
ロスタノの魔力がたっぷり溶けた水球を身に浴び、その水を飲んでしまった魔物どもは生ける爆弾と化したのだ。
リアは慌てて大地を覗いた。
依然、霧でよく見えないがその霧は薄紅色に染まっていた。
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