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フォルタン地区編
第5話 希望
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「ただいま」
ケロリとした表情で答えるロスタノ。
「っじゃないんですよ!咄嗟に魔力障壁解きましたよね!?また人を殺しちゃったのかと…」
「ああ…悪かった、悪かったよ。心労をかけたね」
目尻に涙をためる少年にロスタノは眉をハの字にして謝った。
「しかし良いパンチだったね。異常な身体の硬さに見合った非凡な膂力だ」
「あっ…そうだっ、お腹は大丈夫ですか?
内臓が破裂する感触がしたんですけど…」
「ほら、問題ないよ。私は基本的に死なないから」
服をペラりとめくり、殴られた腹を彼に見せる。
腹部には青痣すら残っていない。
「よ、よかったです…」
リアは胸を撫で下ろすと硬かった表情が柔らかくなっていった。
ロスタノは足下に転がっていた小石を拾うと純粋な握力で砕いた。
手の内からサラサラと漏れ出た粉塵が風に流されていく。
「私も君と同じでね。並外れた肉体硬度と筋力をもって産まれたんだ」
「…それは分かりましたけど。僕に殴らせるのではなくて、最初からそれを見せるのではいけなかったんですか?」
「先ほども言ったけど、君の覚悟が見たかったんだよ。トラウマごときで挫けるような子なら生かす意味がないと思ったからね」
その時、リアの脳内で「殺すね」というロスタノの放った一言が反芻された。
リアが警戒の色を顕にする。
ロスタノを殴り飛ばした衝撃で忘れていたが、態度も変えずリアのことを殺そうとした人なのだ。
「覚悟だけが理由ではないよ。
これから君が私と行動をともにするにあたって、その怪力で私をうっかり殺してしまうのではないかという憂いがあってはいけないからね。懸念を払ってもらいたかった。
あとは私のためだね。
私は蘇ったばかりだからね、生前に私自身の肉体にかけていた不死魔法の動作確認がしたかったんだよ。私の防御の要となる魔法だからね」
ロスタノは自分の腹の皮膚をつまみながら言った。
「あれ、僕ってこれからロスタノさんと一緒に行動するんですか?」
「今から君に教える技術は習得難易度が高くてね。一朝一夕で身に付くものじゃないんだよ」
リアが嫌そうな顔をした。
その原因は時間がかかるからではなく、ロスタノと長く一緒にいなければならないからである。
態度を変えぬまま殺しの決断をしたロスタノが不気味で怖くて仕方ないのだ。
「…どれくらいかかるんですか?」
「本人の才能次第だよ。一番早かった子で 32年ほどかかったかな」
「さんッ……!」
リアが目を剥く。
「まぁ、一生をかけて学んで何のコツも掴めず死んだ子もいるけど、安心して。才能が無くても見捨てて殺したりはしないよ。そこまで冷たい人ではないつもりだ」
リアの心中を察してか、そう告げた。
「それに、リアの怪力の由来は巨人種だよね?」
「はい…。父が巨人種の子孫で、ニンゲンの母との間に産まれたのが僕だと母から聞いています」
「なら寿命は300年くらいだろうから、習得より先に死ぬことはないんじゃないかな。君の才能によるけど」
リアを苦しめた怪力の根源が、怪力を抑える方法の習得の猶予時間を与えてくれるようだ。
その皮肉さにリアは苦い表情をする。
「早速、教えてあげたいところだけど、その前にフォルタン地区から出ようか。外の世界のことが知りたい」
◇◇◇
フォルタン魔法愛玩動物収容区──通称「フォルタン地区」は百メートル程度の分厚い壁に囲われている。
それはもちろん魔物の脱走対策であるが、飛行する魔物もいるため対策は壁のみに留まらない。
ロスタノが壁に指を近ずけると紫電がほとばしる。
しかし、ロスタノは身体を覆う魔力防壁を頼みに指を近ずけ続ける。
すると、指に細かな振動が伝わり始める。
しばらく指を近ずけていると、壁に指が着かないうちに指に抵抗を感じた。
「障壁魔法が三層重ねで展開されている…。しかも広域に渡って…。一体、外には何人の魔法使いが常駐しているのやら…」
あまり表情の変わらないロスタノにしては珍しく驚いている。
「機械ですよ。壁の外に巨大な機械が沢山設置されているんです」
「本当か。そうか…小人種の非魔法学と魔法の融合か。差別主義者と排他主義者ばかりのポロポクルが他種と協力するなんてね…」
ロスタノが感慨深そうに言った。
「それで、どうなんです?バリアは突破出来そうなんですか?」
「う~ん…できるけど…時間かかりそうだね」
「どれくらいです?」
「二ヶ月はかかるかな」
「うへぇ…」
ただでさえ習得に時間がかかると言われているのに、加えて二ヶ月も待だねばならないようだ。
リアは眉をひそめ、口をへの字にする。
「大丈夫だよ、バリアの解除と並行して教えるから」
ロスタノはリアの顔を見て笑いながら告げた。
「で、解除に専念したいところなんだけど…」
ロスタノは視線をリアから外し、辺りを見る。
垂涎しながら迫る四足獣に、空から降るクチバシの雨。
彼らの周りでは魑魅魍魎がひしめいていた。
理由は不明だが壁の付近は魔物の密度が尋常ではないのだ。
先程からロスタノが殺しまくっている。
おかげで、魔物がバタバタ死んでいくことに対するリアの反応はかなり薄くなっているわ
「先に魔物を鏖殺しようか」
ロスタノは声音も変えずにそう告げた。
ケロリとした表情で答えるロスタノ。
「っじゃないんですよ!咄嗟に魔力障壁解きましたよね!?また人を殺しちゃったのかと…」
「ああ…悪かった、悪かったよ。心労をかけたね」
目尻に涙をためる少年にロスタノは眉をハの字にして謝った。
「しかし良いパンチだったね。異常な身体の硬さに見合った非凡な膂力だ」
「あっ…そうだっ、お腹は大丈夫ですか?
内臓が破裂する感触がしたんですけど…」
「ほら、問題ないよ。私は基本的に死なないから」
服をペラりとめくり、殴られた腹を彼に見せる。
腹部には青痣すら残っていない。
「よ、よかったです…」
リアは胸を撫で下ろすと硬かった表情が柔らかくなっていった。
ロスタノは足下に転がっていた小石を拾うと純粋な握力で砕いた。
手の内からサラサラと漏れ出た粉塵が風に流されていく。
「私も君と同じでね。並外れた肉体硬度と筋力をもって産まれたんだ」
「…それは分かりましたけど。僕に殴らせるのではなくて、最初からそれを見せるのではいけなかったんですか?」
「先ほども言ったけど、君の覚悟が見たかったんだよ。トラウマごときで挫けるような子なら生かす意味がないと思ったからね」
その時、リアの脳内で「殺すね」というロスタノの放った一言が反芻された。
リアが警戒の色を顕にする。
ロスタノを殴り飛ばした衝撃で忘れていたが、態度も変えずリアのことを殺そうとした人なのだ。
「覚悟だけが理由ではないよ。
これから君が私と行動をともにするにあたって、その怪力で私をうっかり殺してしまうのではないかという憂いがあってはいけないからね。懸念を払ってもらいたかった。
あとは私のためだね。
私は蘇ったばかりだからね、生前に私自身の肉体にかけていた不死魔法の動作確認がしたかったんだよ。私の防御の要となる魔法だからね」
ロスタノは自分の腹の皮膚をつまみながら言った。
「あれ、僕ってこれからロスタノさんと一緒に行動するんですか?」
「今から君に教える技術は習得難易度が高くてね。一朝一夕で身に付くものじゃないんだよ」
リアが嫌そうな顔をした。
その原因は時間がかかるからではなく、ロスタノと長く一緒にいなければならないからである。
態度を変えぬまま殺しの決断をしたロスタノが不気味で怖くて仕方ないのだ。
「…どれくらいかかるんですか?」
「本人の才能次第だよ。一番早かった子で 32年ほどかかったかな」
「さんッ……!」
リアが目を剥く。
「まぁ、一生をかけて学んで何のコツも掴めず死んだ子もいるけど、安心して。才能が無くても見捨てて殺したりはしないよ。そこまで冷たい人ではないつもりだ」
リアの心中を察してか、そう告げた。
「それに、リアの怪力の由来は巨人種だよね?」
「はい…。父が巨人種の子孫で、ニンゲンの母との間に産まれたのが僕だと母から聞いています」
「なら寿命は300年くらいだろうから、習得より先に死ぬことはないんじゃないかな。君の才能によるけど」
リアを苦しめた怪力の根源が、怪力を抑える方法の習得の猶予時間を与えてくれるようだ。
その皮肉さにリアは苦い表情をする。
「早速、教えてあげたいところだけど、その前にフォルタン地区から出ようか。外の世界のことが知りたい」
◇◇◇
フォルタン魔法愛玩動物収容区──通称「フォルタン地区」は百メートル程度の分厚い壁に囲われている。
それはもちろん魔物の脱走対策であるが、飛行する魔物もいるため対策は壁のみに留まらない。
ロスタノが壁に指を近ずけると紫電がほとばしる。
しかし、ロスタノは身体を覆う魔力防壁を頼みに指を近ずけ続ける。
すると、指に細かな振動が伝わり始める。
しばらく指を近ずけていると、壁に指が着かないうちに指に抵抗を感じた。
「障壁魔法が三層重ねで展開されている…。しかも広域に渡って…。一体、外には何人の魔法使いが常駐しているのやら…」
あまり表情の変わらないロスタノにしては珍しく驚いている。
「機械ですよ。壁の外に巨大な機械が沢山設置されているんです」
「本当か。そうか…小人種の非魔法学と魔法の融合か。差別主義者と排他主義者ばかりのポロポクルが他種と協力するなんてね…」
ロスタノが感慨深そうに言った。
「それで、どうなんです?バリアは突破出来そうなんですか?」
「う~ん…できるけど…時間かかりそうだね」
「どれくらいです?」
「二ヶ月はかかるかな」
「うへぇ…」
ただでさえ習得に時間がかかると言われているのに、加えて二ヶ月も待だねばならないようだ。
リアは眉をひそめ、口をへの字にする。
「大丈夫だよ、バリアの解除と並行して教えるから」
ロスタノはリアの顔を見て笑いながら告げた。
「で、解除に専念したいところなんだけど…」
ロスタノは視線をリアから外し、辺りを見る。
垂涎しながら迫る四足獣に、空から降るクチバシの雨。
彼らの周りでは魑魅魍魎がひしめいていた。
理由は不明だが壁の付近は魔物の密度が尋常ではないのだ。
先程からロスタノが殺しまくっている。
おかげで、魔物がバタバタ死んでいくことに対するリアの反応はかなり薄くなっているわ
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ロスタノは声音も変えずにそう告げた。
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