黄金竜のいるセカイ

にぎた

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終章 セカイに光あれ

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 白い影たちの黄色い涙に包まれながら、カリンダは必死に叫びつづけていた。

 やがて、魂たちの氾濫はカリンダの心にまで流れ込んでくる。

 悲痛な声の洪水。カリンダはいつしか、心の中で「お母さん」と叫ぶようになっていた。目を閉じて、ヒカルの言葉を信じ、幼いころに見た母の優しい顔を。

――カリンダ。

 頭で想起していたはずの母が笑う。

「お母さん?」
「こんなに大きくなって……」

 母の目から黄色い涙が溢れ、そして頭の中を真っ白な光が包み込む。

――頼みましたよ。

 目を開けると、カリンダは自分も泣いていたことに気がついた。影たちから解放されていたことも、今度は目の前の少女が白い影に押さえつけられていることも、今気がついたのだ。
 それから、自分の手にいつの間にか握りしめていた白く輝く宝石のことも。



「リオン?」

――ごめんなさい。
 ああ、その声は確かにリオンのものだ。ハスキーでいて透き通った声。

「俺こそごめん! あのときはこのセカイに来たばっかりで、なにがなんだか分からなくてさ……だから――」

――いいから早く! 竜神様は動きだしているのよ! 謝る暇があるなら早く行きなさい!

 感動の再開のはずが、またもや怒られてしまったヒカル。だが、それもリオンらしい。

「うん……ありがとう」

 ヒカルは偽リオンを横目に懐中時計を拾いあげた。

「ふふふ……無駄って言ってるのに」
「一つ言っておく。リオンはそんな笑い方をしない」

 そして、あらためてリオンの白い影を見た。
――ありがとう。
――こちらこそ。

 ヒカルはカリンダの手を握ると、走り出した。

「行こう、カリンダ!」

 青い光で折れた右腕を治し、二人は梯子を昇っていった。目指すは中核部メインルーム。完成された懐中時計が眠る、黄金竜の心臓だ。



「もう無駄よ! 無駄って言ってるでしょ!」

 ヒカルとカリンダが去ったあとも叫び続けるリオンもどきの元に、白い影たちが集まってくる。

「貴方たちだってこのままだと消えてしまうわ。何千年も我慢してきたのに、ついに手に入りそうな争いのないセカイを、みすみす手放すと言うの?」
「争いはどこでも起きるのよ」

 少しだけハスキーな少女の声。

「たとえ、平和を願う方舟の中であってもね」



 オニが光に飲まれた。

 黄金竜が落として行った金色の卵。オニの拳で入ったヒビから白い光が漏れ、瞬く間に卵が孵ったのだ。

 ウインは見ていた。拡散していく真っ白な光りに飲み込まれ、そして消滅していく様を。

 あの光は何だ?

 その光はオニだけではなく、周囲の兵士たちにも襲いかかる。さらに、光はこちらにも迫ってきているではないか。

 あの光に触れてはいけない。

 ウインはとっさに魔法防御壁バリヤーを張った。しかし、白い光が触れるだけで壁は薄氷のように砕かれる。

「ならば!」

 今度は壁を幾枚も重ねる。光は壁を割ることは無くなったが、その計り知れない威力で、壁ごとメリメリと押し始めたではないか。

「止められない!」

 壁が光に負ける――。その時、剣を放り投げたブリーゲルがウインが唱えた壁に手をあてた。

「兄さん!」
「ぐおおおお!」

 兵士たちも彼に倣い、剣や盾を投げ捨て、光の進行を止めようと壁に手を当てる。光と兵士たちの力比べだ。壁が壊れては、ウインがまた唱えて補充する。兵士たちは歯を食いしばり、光の拡散を阻止すべく壁を押す。

「たく……休んでる暇もねえ」
「パッチ!」

 ウインをかばい、背中にオニの攻撃を受けたパッチが、よろよろと起き上がり壁に手を当てる。

「ふんっ!」

 傷口から血が噴き出る。
 しかし、光が完全に止まったではないか。

 すべてを飲み込む浄化の光――ウインの創り出した魔法壁に、兵士たちやパッチの協力で、止まった。だが、いつまでもこうしている訳にはいかない。黄金の卵はグラダのみではなく、世界中に落されたのだから。
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