私の大好きなドラゴン

ゼガンとルカの対面

ピリピリした空気をまとう何かが近づいてくる。
周りにいたドラゴン達は一斉に散らばって逃げて行った。

先程までは、楽園みたいな華やかで気持ちがいい場所が、
今は死刑執行人がジワジワと近づくような空気が醸し出していた。

私・ルカ・コーン・チビ　だけになった。
コーンとチビは怯えてる様子だった。

ゼガンは威圧するように唸りながら大きく旋回した後、着地した。

（............ルカ）

（やあ！ゼガン　久しぶりだよねえー
　元気にしてたかい？
　僕はカミルと相変わらず充実した毎日を過ごしてるよー
　今日の朝、君の相棒が邪魔をしなければ今日は最高に
　イイ一日だったんだけどー
　まあ今日は思い描けないライルとの出会いで、
　楽しい一日を過ごせて僕は最高によかったね！
　君も今日は天界（ドラゴン族が住む）へ行ってたんでしょー
　僕の兄さんに会った？それとも爺さんどもに会ってきたの？
　もしかして途中で帰っちゃった？
　あーあ僕怒られちゃうかなあー
　カミル以外だったら別に怖くないけどー
　まあー取り合えず帰ろっか...）


ゼガンは大きく翼を振り飛びながら体当たりしてきた。
ルカは踊るようにかわして振り向きながら言った。


（何だよ来たそうそう！ここは、荒らしたらダメな所だぞ！
　大体ねー一人にしてる方が自業自得でしょー
　君の相棒は色んな意味で単細胞なんだからさーって...）


またしても、ゼガンが今度は風圧をぶつけて来た。
その拍子にチビとコーンは私を盾のように守りながらも一緒に
転がるように後ろに吹っ飛んでしまった。
私はふき飛ばされずにすんだけど....

（ライルまで吹き飛ばす気？
　全く考えずに何もかも、力任せに攻撃するもんじゃないよ！
　力が有り余ってるだろうけどー）


ゼガンの怒りを何とも思ってないヒョウヒョウとした態度で
あくびをしながら


（僕疲れちゃったんだけどーそれとも本当に僕と遊びたいわけー？）


ルカが豹変して底冷えしたように冷たい空気をまとい言ってきた。
お互い険悪な空気で寒々しい空気が流れているところに、


（ケンカはダメーーーーーー）

私は叫んだが、
私と向かい合ってるルカは私を見て手を振るように
無邪気に何度も翼をあげたが
ゼガンは私に後ろを向けてるし、
怒っているのか気づいてくれず、唸っていた。

どうしようと考えていたら、ルカが持って来てくれたブドウみたいに
たくさんの実が茎についているキャベツサイズの
バーの実をむしり取り思いっきり
ゼガンへ当たればいいと思い、片手で投げようと持ったが、
子供の私には重かったので両手で持ちなおし、
思いっきり下から、すくうように投げた.....が





運動音痴な私は
※私の真上に投げてしまい、そのまま落ちてきた、バーの実に頭を打って倒れた。

一部始終を正面から見ていたルカは体を震わせ、
ピタッと震えが止まったかと思ったら、
到底無邪気なルカとは思えない低いドスのきいた（雄たけび）をあげた。


ゼガンはルカの雄たけびが
自分の後ろで倒れてる私を見たのが原因と気づき慌てて私に近寄った。
私が覚えているのはここまで.....
この時不思議に？私を抱えた感覚がしたが、
私は頭がズキズキしてそのまま意識がなくなり眠りについた。





その後この、ドラゴンの憩い場こと楽園のようなこの場所は
戦闘するような空気はなくなり、
平穏で穏やかな場所に戻りつつあった。

一定のリズムでバンバンバンと
ドラゴンのしっぽが地面をたたく音が鳴り響いた。

ドラゴンのしっぽで一人の大人が入れるぐらい
陥没した穴が出来るほど...........
ルカは



笑っていた。



私だけではなく、たぶん周りのドラゴンや生き物達が聞いた
ルカの恐ろしいような雄たけびは、
実は笑って我慢して抑えられず出た笑い声だったのだ。

（ハハハハハハハハッハハハハハ...................）

【．．．．．．．．．．．．．．．．．．．．ルカ】

　　（聞こえてるよ！
　　　ライル？ライルは大丈夫だよコブ？が　っふふふふ
　　　出来ただけだから大丈夫　っつフフフフフフ）

　　【おい...............】

　　（ゼガンは見てないから分からないだろうけど、
　　　僕はぜーんぶ見たんだよ一部始終！！
　　　ライルがバーの実を投げてゼガンに気づかせようとして
　　　自分の真上に自分で投げたバーの実が落ちてバカみたいに
　　　ポカンと頭に落ちて倒れたんだ。
　　　どこの喜劇かと思った位だよ
　　　僕、窒息して笑って死にそうだったよ
　　　何回もこの名場面がよぎって笑えてしまうね！
　　　早くカミルに話したいよ！あー会いたいよー
　　　ねえ僕の話を聞いてるのかい！）
　
　　　【.............】
　　
　　　（睨むなよ！ハイハイ僕が悪かったよー
　　　　黙って連れ出したのはね！君の相棒が僕のカミルと話して
　　　　楽しそうに笑ってたから、腹いせにちょっとふざけるつもりだったんだよ。
　　　　だいたい君もこの場所がライルに危険が及ぶと思ってないだろう？　
　　　　むしろ、人間達の方がドラゴンよりライルにとっては危険だね。

　　　　※僕は君に言ってるんだよ！聞いてるのかい！
　　　　それは隠れてる君の相棒が一番分からないといけない事だよ！
　　　　陰でコソコソと君にしては陰湿だねー
　　　　僕が森から帰った時からいたのに声をかけないなんて
　　　　変質者みたいに気持ち悪かったんだよねー
　　　　まあ、僕はすぐに分かっていたけどあえて無視したんだけどー
　　　　ゼガンが来た時に、出てくれば僕達のライルも
　　　　コブ作らずに済んだんじゃないの？
　　　　それって最悪だよねー早く出てきたらー）

　　一番大きな木の後ろから出てきたのは、ゼガンの相棒ことカイルであった。