私の大好きなドラゴン

どら娘

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昔のしこり

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その頃、村からは離れていたとはいえ、赤いドラゴンが紫のドラゴンと
”戦っている”風にしか見えない周りは恐怖そのものだった。
遠くを見ていると明らかに赤のドラゴンが優勢に見える。
村人達は赤のドラゴンが紫のドラゴンを打ちのめしてる風にしか見えなかった。
そして、近くに立ってその光景を平然と立っている少女の異常な光景を遠めに見ていた。

「戦いが終わったら、こっちに来ないよな。」

「あの子は化け物だ。なんで平然としている。」

村人達が震えながら見ていると近くにアランとカインが来た。
山からライルを追いかけて村まで来たのだ。

「さっさとお前達もあの化け物の所に行って
 村から出ていけ!不吉だ。」

「あのドラゴン達と仲間だって思っているんなら
 俺達を迫害するお前らを消そうとすると思わねーのかよ。」

アランも火に油を注ぐ様なことを言い始めると
村人の後ろからかき分けるように叫びながら甲高い声で女性の声がした。
アンがすかさず村人からアランやカインの間に立って必死に説得をした。
いつも村人達とアレクとの間を取り持っていたのだ。

「何言ってるのよ。アランさん変なことを言わないで。
 村の人達もこれ以上ひどい事を言わないで。
 ドラゴンには敵わないのは分かっているじゃない。
 私達がどうしようと、何もできないのよ。」


「だが、こんな平和な村がアラン、お前さんが
 黒髪の赤子を連れてきてから上空をドラゴンが通るようになったり
 2人に増えた途端にドラゴンが2匹も現れたんじゃ。
 黒髪はドラゴンを呼ぶんじゃ。
 かつての暗黒時代のように、戦争が起きるかもしれん。」


「じいさんよ。知らねのかもしんないけど、
 その黒髪の英雄は戦争の時代を終わらせた、ドラゴンの導き手トーマ
 のことだろう?ダイラス国の初代皇帝の事だと知ってんのか?」


「それは隣の国の話じゃ。
 この村はかつてその英雄とやらの滅ぼされた国の子孫。敵みたいなもんじゃ。」


「それなら恨んでもしかたないが
 分かっているはずだ。お前たちの先祖が良い人間だったら
 お前たちの先祖が”英雄”と言われただろうよ。」


「我らを侮辱するな!現に黒髪がかつて現れた時戦争がはびこったんだ。
 世界が変わり果てたんだぞ。戦争だらけになったんじゃ。」


「違うな。悪政に悩まされた国々の国民が立ち上がったんだよ。
 現に、当時の悪とされている国々が全て倒れたんだ。
 当時良い国だった所は残っている。」


アランに言い返していた村人達は何も言えず黙ってしまった。
村人達も頭では分かっているのだ。
しかし、閉鎖的なこの村にとっては異質なものは恐怖でしかない。
特に、この村では かつて黒髪の男がドラゴンと共に戦場をかけまわり
当時のこの村の先祖の国を滅ぼした言い伝えが代々と語り継がれているのだ。

「ワシは知っているんだぞ!
 アランお前もドラゴンと関係があるって事を」

「どういう意味だ?」

「ワシが森の奥にたまたま行った時
 全身黒の怪しい男と話していただろ?
 しかもその男はドラゴンに乗って帰っていった。
 お前さんも何か隠してる所があるんじゃろ。」

「ああ、それで?」

「お前の死んだ父親はこの村の出身だ。
 じゃから、お前さんは大丈夫だと思ったのが間違いだった。
 お前の母親は確か隣のダイラス国出身で誘惑されてお前が生まれたんだよな。
 やはり、ろくでもない血が流れてるからドラゴンなんぞかかわるんじゃ。」

「......。俺はいい、俺の母親が、、、なんだって?」

「ヒッ.......」
アランの怒りに満ちた圧力に村人達は恐怖のあまり叫び黙った。

「アラン....」

アンも何も言えずにいると一連の流れを見ていた
カインが話し出した。

「もうやめてくれよ。
 じいちゃん達!俺ももうすぐ10歳だ。
 俺はこの村を出ていくからこれ以上アラン兄に酷い事を言わないでくれ」

「そうだな、そろそろ限界かもな
 カイル”俺は”じゃねーよ俺達だ。
 昔の因縁か知らねーけど、もうそろそろ俺も出る時が来たような気がする。
 これ以上は村には迷惑かけねーよ。」



アランとカイルと村人達が向かい合ってにらんでる時、
突然黒い影が覆われた。

「カイル!」

ドラゴン二頭が上空を旋回して、大きな影ができたのだ。
村人達は震え、みんな身を寄せながら固まって座り込んでしまった。


『なんだなんだ殺し合いか?殺していいのか?』

無邪気に発言していたジストにサクラはシッポで、はたいて吹っ飛ばした。
近くの地面にぶつかり大きな砂ぼこりが舞い、ジストはサクラに向かって
ぶつかったり火を噴いたりして抗議をしているみたいだ。
全てサクラは受け止めて返り討ちにしていた。


近くにいた村人達が恐怖のあまり叫びまくった。
その間にサクラに乗っていた私はサクラに下ろしてもらうとカイルが近寄ってきた。

「おい、ライル大丈夫なのか?お前もう光ってはないみたいだな。
 突然お前がいなくなったと思ったらドラゴン達が戦ってお前が傍に
 いたのを見て心配したんだぞ。
 それに、、、あの紫のドラゴンは大丈夫なのか?ボコボコにされているぞ。」

「私は大丈夫。あれ、しつけ。」
カイルにこたえていると、ふと違和感を感じた。
前よりもすんなり話せるような気がする。何でだろう。
そう言えば、サクラに名前をつけたりしたときから話せるようになったんだよね。
ジストに名前をつけたのも関係あるのかな。



「あれは、しつけなのか?、、、どう見ても戦ってるようにみえるぞ。
 ドラゴンのしつけは、こえーな。」

私がのん気に答えている間、サクラがジストをコテンパンに打ちのめしていた。



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