ハラスメント男との婚約を破棄して幸せになるのはダメですか？

第五話 言い訳と……

イーデル様はお父様に詰みにさせられたあとも言い訳をモゴモゴと言っていたが、お父様によって食事会はお開きとなった。

「私は自室に戻っているから、ヨロナはイーデル君を見送って差し上げなさい」

ということで、私はイーデル様を見送ることになり、玄関までやって来た。

「イーデル様、本日は食事会に来てくださり、ありがとうございました」

そう言って、深く頭を下げる。

「……ワタシを馬鹿にしているのか？」

しかし、帰って来た返事は、思っていたものとは違った。

「そんな、滅相もない。私はただ、感謝の気持ちを伝えようと……」

「うるさい！ワタシが貴様の父親に無様な姿を見せたことを、心の底で笑っているんだろう！？」

「無様だなんて、思っておりません」

ただ、笑ってはいました。

だが、否定したところでイーデル様の怒りがおさまるはずもなく。


「いいだろう、本当のことを教えてやるよ。貴様の家の料理などで腹を膨れさせたくは無かったからな、別の場所で食べて来たんだよ！」

え、えぇ……なんでそんなことを声高々に言えるんですかね……一生隠しておいて下さいます？

「……ふん、今度は貴様に恥をかかせてやる。ワタシの家のパーティに、貴様を招待してやるからな。婚約者として、その惨めな姿で来い」

惨めな姿というのは、貴方が指定した、この質素なドレスのことでしょうか……？

おそらく、パーティの主催者の婚約者なのに派手なドレスを着て来させないことで、私がイーデル様に従属していることを皆に知らしめたいんだろう。

だが、イーデル様の誘いだ。断るわけにもいかないのだ。


「……わかりました。楽しみにしております」

そう言って私は、また深々と頭を下げた。