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第六話 作戦
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イーデル様が帰った後、私はお父様の部屋に向かった。
ノックをして、お父様の部屋に入る。
「お父様、イーデル様とのお食事は、如何でしたか?」
言外に、「イーデル様はお父様のお眼鏡にかないましたか?」という文章を含んだ言葉だった。
「中々面白い男だったよ」
そう言って私に見せた笑顔は、とても実の父親とは思えない悪い笑顔だった。
「それは……良かったです?」
良かった……のだろうか?ただ、少なくとも気に入ったという訳ではなさそうだ。
「お父様、話は変わりますが、私は先程イーデル様主催のパーティにご招待いただきました」
「ふむ」
「しかし、パーティ用のドレスではなく、今着ているような、目立たないドレスを着用するようにと言われたのです」
「……ほう?」
お父様の顔から笑顔が消えた。
ここまで言えばお父様は、そのパーティでイーデル様が私に仕返しをするつもりだということが伝わったことだろう。
だからこそ、私は話を続ける。
「しかし、主催者の婚約者である私が、主催者に見合わないような目立たない娘ならば、アルトケッツァ家の名を貶めてしまうかもしれません」
「……確かにな」
イーデル様と婚約したが、お飾りの夫人にすらなれず、イーデル様の女遊びを許し放題となれば、アルトケッツァ家がサンブライデ家に服従したことを知らしめてしまうことになる。
今でこそサンブライデ家の方が力は強いが、アルトケッツァ家もそれなりの格がある。服従をするわけにはいかない。
「……そこで、お父様に少々協力していただきたいのですが……」
そう言って私は笑顔を見せた。
「……はっはっは。お前も、私に似て来たな……」
結局は親子。似てしまうものなのです。
ノックをして、お父様の部屋に入る。
「お父様、イーデル様とのお食事は、如何でしたか?」
言外に、「イーデル様はお父様のお眼鏡にかないましたか?」という文章を含んだ言葉だった。
「中々面白い男だったよ」
そう言って私に見せた笑顔は、とても実の父親とは思えない悪い笑顔だった。
「それは……良かったです?」
良かった……のだろうか?ただ、少なくとも気に入ったという訳ではなさそうだ。
「お父様、話は変わりますが、私は先程イーデル様主催のパーティにご招待いただきました」
「ふむ」
「しかし、パーティ用のドレスではなく、今着ているような、目立たないドレスを着用するようにと言われたのです」
「……ほう?」
お父様の顔から笑顔が消えた。
ここまで言えばお父様は、そのパーティでイーデル様が私に仕返しをするつもりだということが伝わったことだろう。
だからこそ、私は話を続ける。
「しかし、主催者の婚約者である私が、主催者に見合わないような目立たない娘ならば、アルトケッツァ家の名を貶めてしまうかもしれません」
「……確かにな」
イーデル様と婚約したが、お飾りの夫人にすらなれず、イーデル様の女遊びを許し放題となれば、アルトケッツァ家がサンブライデ家に服従したことを知らしめてしまうことになる。
今でこそサンブライデ家の方が力は強いが、アルトケッツァ家もそれなりの格がある。服従をするわけにはいかない。
「……そこで、お父様に少々協力していただきたいのですが……」
そう言って私は笑顔を見せた。
「……はっはっは。お前も、私に似て来たな……」
結局は親子。似てしまうものなのです。
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