国王への報告書(第三王女の公務記録)

ささやんX

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第2話 高台からの眺め

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グラン・フォルティシア城の高台に来たのは3年ぶりかしら。
流れる風が心地いいわ。近くに見えるのは城下町とそこで暮らす人達、遠くには収穫期を迎えた穀物の黄金色の波が見える。
王都アヴァロンの王立学院高等部三年に在学中の私が、まさかこの時期に故郷の光景が見れるとは思ってなかったわ。
(全然いい!)
国王(お父様)からの手紙には「公務に手が回らぬ。そなたの力を貸してほしい」と記されてたから、急いで帰国しましたのよと昨晩、恩は売っておいた。
(公務でも、なんでもいいわ)
そもそも、私が王都の学院に留学している理由は、アヴァロンの第二王女のご学友として、いわゆる「お取り巻き」要員として呼ばれただけ。
王都のあるアヴァロン国は、私の曾々祖父の初代国王アルトリウス一世が建国した一番最初の国で、その五人の子供達は、王都を守るように東西南北に国を作ったの。
王都アヴァロンは長兄の子孫が治め、そして私たちフォルティシア、東のルーメンブルク、南のテラミス、北のフローズヴェイルの四カ国が、略称・聖約諸国連合として
この地域を統治しているわけ。
出自が同じ血縁の王族だけど、王都アヴァロンとここでは財力が雲泥の差、他の聖約諸国連合と比べても一番小さいし、他国から援助も受けている。
それは、ここ西のフォルティシアは初代国王アルトリウス一世が息子4人に与えた領地の残りを末娘に与えた小さな国だからよとお母様から伺った事がある。
そのなごりとして、フォルティシアでは女王が代々婿を娶る事になっている。
そんな国の継承権三位の私は、お取り巻き集団の中では当然一番格下扱いされるのよ、俗に言うパシリね。これはしょうがない。
それに上手に「よいしょ」をするのが苦手で、最初は何かと眼を付けられていじめられる側だったわ。
まあこれは後で、やられた分はきっちりやり返したら収まったわ。
もちろん、この国に仕返しがないようにね。
おかげで今は、遠慮がちに私をパシリに使う程度の距離感かしら。
だから、代行する公務が少し気になったけど、是非も無く帰国したの。

「リアーナ様」
城の高台から故郷の景色を眺めていると、背後から控えめな足音が近づいてきた。
振り返るとシルフィアが、手に書類の束を抱えて立っていた。
「お嬢様、失礼いたします。明日からの公務について、概要書をお持ちしました」
その言葉に、私は顔を向けた。
「ああ、ありがとう。それで、どんな公務があるの? 読み上げてくれる?」
故郷での公務は、きっと学院での堅苦しい日々とは違う、もっと血の通ったものだろうと期待していたのだ。
シルフィアは恭しく頷くと、そのしなやかな指で書類の一枚を開き、流れるような声で読み上げ始めた。二人きりならタメ口でそんな声出さないのにと思う。
「はい。では、明日は『豊穣祭の初穂捧げの儀』。続いて、三日後には『フォルティシア大市場開設3周年記念式典』がございます。その後、来週には『騎士団合同武術大会の開会宣言』、そして月の終わりには『星読みの神殿における守護の祈り』が予定されております」その以外にも、些細な公務があるとの事。

彼女が読み上げる公務のタイトルは、どれもが興味をそそるものばかりだった。「豊穣祭」の響きは収穫の喜びを、「大市場」は人々の活気を、「武術大会」は力強い祭典を、「守護の祈り」は荘厳な儀式を連想させた。私の顔には自然と笑みが浮かび、俄然やる気が湧いてくる。
「楽しみだわ、お父様ありがとう」
「公務に前向きな姿勢は素晴らしいと思います」
しかし、ふとシルフィアの顔に目をやると、その表情が微かに曇っているように見えた。私の高揚とは裏腹に、何かを案じているような、あるいは憂いているような感じがしたけど、気にしない。だって国王、そして民のためだもの、彼女を安心させるように微笑んでみせた。
「それでは、明日の出発は明朝五時でございますので、よろしくお願いいたします」
「ああ、そうなの」
私は笑顔を崩さずに答えた。



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