23 / 89
スープの時間
しおりを挟む
そうこうしている内に料理が運ばれはじめた。
やや青ざめていたダーリーンはそれに気づくと露骨に口角を上げる。
イヴェットに以前伝えたグスタフ達の「好物」は真っ赤な嘘である。
グスタフは幼い頃から豚肉が大嫌いであった。
子供の頃は太っていて、あだ名が豚だったのである。
豚肉を出されると自分を馬鹿にされたと感じ我慢がならないらしい。
それでも豚のソーセージやハンバーグなどは普通に食べるのだから、ダーリーンは兄のそういったところを小ばかにしてた。
なんにせよグスタフの逆鱗に触れイヴェットは仕置きを受けるだろう。
それが今から楽しみだ。
カペル夫人もきのこが嫌いだ。細かく刻んであるものもちまちまと避けていく。
本人には死活問題なのだろうが正直見目が良くないとダーリーンは見下していた。
きのこはまあいい。好き嫌いなのだから好きにしたらいいのだ。
問題は卵の方だ。
夫人は卵を食べると口の周りが赤く腫れてしまうらしい。
さらには蕁麻疹も発症し、数日は人前には出られないとダーリーンは兄から聞いていた。
確かに夫人の料理にだけは卵がなかった。
卵そのものでなく、卵を使ったソースなどもないのだから本当なのだろう。
そんな危険なものをイヴェットが出したらどうなるか。
いくら意図したものではないとはいえ客を危険にさらしたのだ。
イヴェット・オーダムの評価は地に落ちるだろう。
もし夫人が卵を口にして医者にかかる事になればこの家から運ばれることになる。
そうなれば社交界での地位も危うい。
パウラもそうだ。
パウラはわがままだが、それ以上に今はコルセットを付け始めた事でダイエットに傾倒していた。
親切心から甘いお菓子をたっぷり出したりなどしたら、パウラは所かまわず暴れるはずである。
一度頭に血が上ったパウラは手が付けられないのだ。
ダーリーンは抑えきれずふふ、と笑ってしまった。
イヴェットは美しく着飾って一泡ふかせたつもりだろうが関係ない。
むしろ気取った事によってこれから慌てふためく姿がより滑稽になるというものだ。
夕食の始まる少し前、イヴェットは厨房にいた。
ざっと見渡し、大体の事を使用人と料理長に確認する。
豚肉は吊るされており、きのこ、卵がそれぞれバスケットの中に入っている。
今焼きあがったのか風通しが良い場所にケーキの土台が置いてある。
「良い香りね。食べる時が楽しみだわ。あれから問題はないかしら」
「はい、奥様。仰られたように準備いたしました」
「カペルご夫妻もそろそろご着席されるようです」
「そう、ありがとう。ここまで順調にこられたのもあなた達のおかげよ」
その会話をダーリーンは物陰から聞いていた。
計画が上手くいっているのを知り、ほくそ笑んでそこから離れる。
やや青ざめていたダーリーンはそれに気づくと露骨に口角を上げる。
イヴェットに以前伝えたグスタフ達の「好物」は真っ赤な嘘である。
グスタフは幼い頃から豚肉が大嫌いであった。
子供の頃は太っていて、あだ名が豚だったのである。
豚肉を出されると自分を馬鹿にされたと感じ我慢がならないらしい。
それでも豚のソーセージやハンバーグなどは普通に食べるのだから、ダーリーンは兄のそういったところを小ばかにしてた。
なんにせよグスタフの逆鱗に触れイヴェットは仕置きを受けるだろう。
それが今から楽しみだ。
カペル夫人もきのこが嫌いだ。細かく刻んであるものもちまちまと避けていく。
本人には死活問題なのだろうが正直見目が良くないとダーリーンは見下していた。
きのこはまあいい。好き嫌いなのだから好きにしたらいいのだ。
問題は卵の方だ。
夫人は卵を食べると口の周りが赤く腫れてしまうらしい。
さらには蕁麻疹も発症し、数日は人前には出られないとダーリーンは兄から聞いていた。
確かに夫人の料理にだけは卵がなかった。
卵そのものでなく、卵を使ったソースなどもないのだから本当なのだろう。
そんな危険なものをイヴェットが出したらどうなるか。
いくら意図したものではないとはいえ客を危険にさらしたのだ。
イヴェット・オーダムの評価は地に落ちるだろう。
もし夫人が卵を口にして医者にかかる事になればこの家から運ばれることになる。
そうなれば社交界での地位も危うい。
パウラもそうだ。
パウラはわがままだが、それ以上に今はコルセットを付け始めた事でダイエットに傾倒していた。
親切心から甘いお菓子をたっぷり出したりなどしたら、パウラは所かまわず暴れるはずである。
一度頭に血が上ったパウラは手が付けられないのだ。
ダーリーンは抑えきれずふふ、と笑ってしまった。
イヴェットは美しく着飾って一泡ふかせたつもりだろうが関係ない。
むしろ気取った事によってこれから慌てふためく姿がより滑稽になるというものだ。
夕食の始まる少し前、イヴェットは厨房にいた。
ざっと見渡し、大体の事を使用人と料理長に確認する。
豚肉は吊るされており、きのこ、卵がそれぞれバスケットの中に入っている。
今焼きあがったのか風通しが良い場所にケーキの土台が置いてある。
「良い香りね。食べる時が楽しみだわ。あれから問題はないかしら」
「はい、奥様。仰られたように準備いたしました」
「カペルご夫妻もそろそろご着席されるようです」
「そう、ありがとう。ここまで順調にこられたのもあなた達のおかげよ」
その会話をダーリーンは物陰から聞いていた。
計画が上手くいっているのを知り、ほくそ笑んでそこから離れる。
10
あなたにおすすめの小説
【完結】身勝手な旦那様と離縁したら、異国で我が子と幸せになれました
綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
恋愛
腹を痛めて産んだ子を蔑ろにする身勝手な旦那様、離縁してくださいませ!
完璧な人生だと思っていた。優しい夫、大切にしてくれる義父母……待望の跡取り息子を産んだ私は、彼らの仕打ちに打ちのめされた。腹を痛めて産んだ我が子を取り戻すため、バレンティナは離縁を選ぶ。復讐する気のなかった彼女だが、新しく出会った隣国貴族に一目惚れで口説かれる。身勝手な元婚家は、嘘がバレて自業自得で没落していった。
崩壊する幸せ⇒異国での出会い⇒ハッピーエンド
元婚家の自業自得ざまぁ有りです。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2022/10/07……アルファポリス、女性向けHOT4位
2022/10/05……カクヨム、恋愛週間13位
2022/10/04……小説家になろう、恋愛日間63位
2022/09/30……エブリスタ、トレンド恋愛19位
2022/09/28……連載開始
旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~
榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。
ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。
別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら?
ー全50話ー
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
私が生きていたことは秘密にしてください
月山 歩
恋愛
メイベルは婚約者と妹によって、崖に突き落とされ、公爵家の領地に倒れていた。
見つけてくれた彼は一見優しそうだが、行方不明のまま隠れて生きて行こうとする私に驚くような提案をする。
「少年の世話係になってくれ。けれど人に話したら消す。」
【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。
猫屋敷むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で――
私の願いは一瞬にして踏みにじられました。
母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、
婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。
「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」
まさか――あの優しい彼が?
そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。
子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。
でも、私には、味方など誰もいませんでした。
ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。
白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。
「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」
やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。
それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、
冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。
没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。
これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。
※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ
※わんこが繋ぐ恋物語です
※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
侯爵家の婚約者
やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。
7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。
その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。
カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。
家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。
だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。
17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。
そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。
全86話+番外編の予定
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる