出ていってください!~結婚相手に裏切られた令嬢はなぜか騎士様に溺愛される~

白井

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視線の先

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それを聞いてダーリーンはアッハッハと高い声で笑い始めた。

「やだわこの子ったら。まだ気づいていないの?」

 掴まれた腕はさらに強い力で締め付けられる。
 骨が軋み顔をしかめるイヴェットのおとがいをダーリーンは扇子で持ち上げる。

「財宝を探しているのは本当よ。何度も自慢話されたんだもの見返したいわよね。グスタフもいるし場所だけ分かるのでもいいわ。でもあんたを連れてきたのは別の理由があるの」

 その時グスタフが苛立つように訪ねた。

「島の裏側まではあとどれくらいだ?」

「まだもう少しあるはずよ。ドームスにあった地図で確認したわ」

「裏側……?」

 ピラート島はピスカートル側は穏やかな砂浜が続いているが大海に面している方は波に削られて高い崖になっている。
 なぜそこに向かっているのだろうか。

(……まさか!)

 イヴェットは掴まれた腕を思い切り振り払う。
 しかし意表をついたその行動も、恐怖で力が入らない今の状態では何の効果も無かった。
 むしろさらに締め上げられて小さく悲鳴を上げてしまう。

「うあっ」

「逃げようとしても無駄よ。あんたはこのまま殺すわ」

「そんな! なぜなのですお義母様!」

 睨みつけるように問うとダーリーンは心底おかしそうに答えた。

「財宝がほしいのよ」

「財宝……?」

「そうオーダム家のお金っていう財宝。もう結構稼いだんでしょう? あんたが死ぬとそれが全てヘクターのものになるわよね。そうしたら私達で山分けするつもりなの。商会はいらないから売却して、あの屋敷も古いけれど好事家が買ってくれるかもしれないわ。そうしたら一生遊んで暮らせるくらいにはなるかしら。楽しみだわ」

「葬式でそんな嬉しそうにしてたら疑われるぞ」

「ちゃんとやるわよ。死んだ証拠が必要だから死体は探してあげるし、父親の隣に寝かせてあげるわよ。私だって悪魔じゃないんだから。あら、もうすぐじゃない?」

 視線を向けると林が明るくなっていた。
 木がないのだ。
 つまりもうすぐ崖で、そこに突き落とされる。

(い、いや)

 周囲の音は段々と聞こえなくなってくる。
 心臓の音だけが聴覚を支配しているようだ。
 今の状況の現実味がまるでない。
 前に進む度冷や汗が止まらない。

(計画をここまで話したという事はもう絶対に見逃すつもりはないという事)

 今は父の隣の墓に入れるつもりだというダーリーンの言葉をいっそ救いとするべきだろうか。

(死にたくない! 諦めてはだめ、なにか、何か考えなきゃ)

 しかし近づいてくる死を前に、ただでさえ力で劣るイヴェットは何もできない。
 周囲を見渡すが、木や下草しかない。
 掴めそうな石があっても引きずられている体勢ではうまく掴む事もできなかった。
 その時視界の端になにか異質なものがちらりとよぎった。
 ダーリーンも同時に気付いたのか、ぴたりと足を止める。

「どうした? 崖までもうすぐだろう」

「…………」

 ダーリーンは答えない。
 視線は真っすぐ前に向けられ硬直していた。
 視線の先を追ったグスタフとイヴェットも同時に息をのむ。

「ま、もの」
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