6 / 83
見せしめ舞踏会6
しおりを挟む
「どうでもいいに決まっているじゃない。私は今から帰るのだから」
これで男がブリジットについていけば、この男を押し付けることができる。
ついていかなくてもブリジットたちの鼻を明かすことはできる。
しかし美しき不審者の答えはステラの予想外だった。
「ステラ様がお帰りになるのでしたら私もご一緒します」
「えっ! あなた家までついてくる気なの?」
「もちろんです。私はあなたのしもべですから」
「頼んだ覚えないわよ」
キラキラと輝く笑顔で当然のように言われても困る。
しかし立ち上がってリードするように腕を差し出されると、有無を言わせない迫力があった。
(馬車はないみたいだし、どうせ危険ならこの変人男と一緒に帰る方が安全かしら)
夜闇と不審者のどちらが危険かは推し量れない。賭けだ。
なぜこんな負け試合に賭けなければならないのかとステラは心の中でため息をつく。
「ああそうだステラ様。この男はどうします?」
男はデリックに視線を投げる。
デリックは主役を完全に奪われ、ぼうっと突っ立っていた。
「どうって……」
どうするもこうするも、あんなことをした人間に関わりたくない。
表情を陰らせるステラを見て、男は微笑んだ。
「特に未練はないと考えてもよろしいですか?」
「なっ……あるわけないでしょ!」
「よかった」
男は安心したようにステラに笑いかけ、振り向きざまにデリックの頬をぶん殴った。
「がふっ!!」
デリックの身体が勢いよく吹っ飛び、ぴかぴかの床に転がった。
「雑巾なら雑巾らしく、床を磨いてる方がいいですよ」
(えっ……。ええ……?)
美貌にざわめいた会場が一気に静かになった。
雑巾改めデリックは完全に伸びていた。
突然の暴力にさすがのブリジットも青ざめている。
もちろんステラも背筋が冷たくなっていた。
デリックを殴った謎の男だけが平然としている。
「さあステラ様、帰りましょうか」
謎の美丈夫に身体をかがめられても、そのエスコート用の腕を取る気にはならなかった。
(怖すぎる)
一瞬でもこの男を頼ろうと思ったのが間違いだった。
ためらいなく人を殴る男と一緒だなんて冗談ではない。
剣術と馬術をたしなむデリックを一発でのすのだから、ステラなど分けないだろう。
「一人で帰ります」
「でも馬車がないんですよね」
「聞いてたの!?」
「ここに着いた時ちょうどその話だったんです。さあ共に帰りましょう」
「いやあああ!」
これで男がブリジットについていけば、この男を押し付けることができる。
ついていかなくてもブリジットたちの鼻を明かすことはできる。
しかし美しき不審者の答えはステラの予想外だった。
「ステラ様がお帰りになるのでしたら私もご一緒します」
「えっ! あなた家までついてくる気なの?」
「もちろんです。私はあなたのしもべですから」
「頼んだ覚えないわよ」
キラキラと輝く笑顔で当然のように言われても困る。
しかし立ち上がってリードするように腕を差し出されると、有無を言わせない迫力があった。
(馬車はないみたいだし、どうせ危険ならこの変人男と一緒に帰る方が安全かしら)
夜闇と不審者のどちらが危険かは推し量れない。賭けだ。
なぜこんな負け試合に賭けなければならないのかとステラは心の中でため息をつく。
「ああそうだステラ様。この男はどうします?」
男はデリックに視線を投げる。
デリックは主役を完全に奪われ、ぼうっと突っ立っていた。
「どうって……」
どうするもこうするも、あんなことをした人間に関わりたくない。
表情を陰らせるステラを見て、男は微笑んだ。
「特に未練はないと考えてもよろしいですか?」
「なっ……あるわけないでしょ!」
「よかった」
男は安心したようにステラに笑いかけ、振り向きざまにデリックの頬をぶん殴った。
「がふっ!!」
デリックの身体が勢いよく吹っ飛び、ぴかぴかの床に転がった。
「雑巾なら雑巾らしく、床を磨いてる方がいいですよ」
(えっ……。ええ……?)
美貌にざわめいた会場が一気に静かになった。
雑巾改めデリックは完全に伸びていた。
突然の暴力にさすがのブリジットも青ざめている。
もちろんステラも背筋が冷たくなっていた。
デリックを殴った謎の男だけが平然としている。
「さあステラ様、帰りましょうか」
謎の美丈夫に身体をかがめられても、そのエスコート用の腕を取る気にはならなかった。
(怖すぎる)
一瞬でもこの男を頼ろうと思ったのが間違いだった。
ためらいなく人を殴る男と一緒だなんて冗談ではない。
剣術と馬術をたしなむデリックを一発でのすのだから、ステラなど分けないだろう。
「一人で帰ります」
「でも馬車がないんですよね」
「聞いてたの!?」
「ここに着いた時ちょうどその話だったんです。さあ共に帰りましょう」
「いやあああ!」
345
あなたにおすすめの小説
【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件
三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。
※アルファポリスのみの公開です。
【完結】勤労令嬢、街へ行く〜令嬢なのに下働きさせられていた私を養女にしてくれた侯爵様が溺愛してくれるので、国いちばんのレディを目指します〜
鈴木 桜
恋愛
貧乏男爵の妾の子である8歳のジリアンは、使用人ゼロの家で勤労の日々を送っていた。
誰よりも早く起きて畑を耕し、家族の食事を準備し、屋敷を隅々まで掃除し……。
幸いジリアンは【魔法】が使えたので、一人でも仕事をこなすことができていた。
ある夏の日、彼女の運命を大きく変える出来事が起こる。
一人の客人をもてなしたのだ。
その客人は戦争の英雄クリフォード・マクリーン侯爵の使いであり、ジリアンが【魔法の天才】であることに気づくのだった。
【魔法】が『武器』ではなく『生活』のために使われるようになる時代の転換期に、ジリアンは戦争の英雄の養女として迎えられることになる。
彼女は「働かせてください」と訴え続けた。そうしなければ、追い出されると思ったから。
そんな彼女に、周囲の大人たちは目一杯の愛情を注ぎ続けた。
そして、ジリアンは少しずつ子供らしさを取り戻していく。
やがてジリアンは17歳に成長し、新しく設立された王立魔法学院に入学することに。
ところが、マクリーン侯爵は渋い顔で、
「男子生徒と目を合わせるな。微笑みかけるな」と言うのだった。
学院には幼馴染の謎の少年アレンや、かつてジリアンをこき使っていた腹違いの姉もいて──。
☆第2部完結しました☆
公爵令嬢 メアリの逆襲 ~魔の森に作った湯船が 王子 で溢れて困ってます~
薄味メロン
恋愛
HOTランキング 1位 (2019.9.18)
お気に入り4000人突破しました。
次世代の王妃と言われていたメアリは、その日、すべての地位を奪われた。
だが、誰も知らなかった。
「荷物よし。魔力よし。決意、よし!」
「出発するわ! 目指すは源泉掛け流し!」
メアリが、追放の準備を整えていたことに。
ツンデレ王子とヤンデレ執事 (旧 安息を求めた婚約破棄(連載版))
あみにあ
恋愛
公爵家の長女として生まれたシャーロット。
学ぶことが好きで、気が付けば皆の手本となる令嬢へ成長した。
だけど突然妹であるシンシアに嫌われ、そしてなぜか自分を嫌っている第一王子マーティンとの婚約が決まってしまった。
窮屈で居心地の悪い世界で、これが自分のあるべき姿だと言い聞かせるレールにそった人生を歩んでいく。
そんなときある夜会で騎士と出会った。
その騎士との出会いに、新たな想いが芽生え始めるが、彼女に選択できる自由はない。
そして思い悩んだ末、シャーロットが導きだした答えとは……。
表紙イラスト:San+様(Twitterアカウント@San_plus_)
※以前、短編にて投稿しておりました「安息を求めた婚約破棄」の連載版となります。短編を読んでいない方にもわかるようになっておりますので、ご安心下さい。
結末は短編と違いがございますので、最後まで楽しんで頂ければ幸いです。
※毎日更新、全3部構成 全81話。(2020年3月7日21時完結)
★おまけ投稿中★
※小説家になろう様でも掲載しております。
婚約破棄されたので田舎で猫と暮らします
たくわん
恋愛
社交界の華と謳われた伯爵令嬢セレスティアは、王太子から「完璧すぎて息が詰まる」と婚約破棄を告げられる。傷心のまま逃げるように向かったのは、亡き祖母が遺した田舎の小さな屋敷だった。
荒れ果てた屋敷、慣れない一人暮らし、そして庭に住みついた五匹の野良猫たち。途方に暮れるセレスティアの隣には、無愛想で人嫌いな青年医師・ノアが暮らしていた。
「この猫に構うな。人間嫌いだから」
冷たく突き放すノアだが、捨て猫を保護し、傷ついた動物を治療する彼の本当の姿を知るうちに、セレスティアの心は少しずつ惹かれていく。
猫の世話を通じて近づく二人。やがて明かされるノアの過去と、王都から届く縁談の催促。「完璧な令嬢」を脱ぎ捨てた先に待つ、本当の自分と本当の恋——。
『生きた骨董品』と婚約破棄されたので、世界最高の魔導ドレスでざまぁします。私を捨てた元婚約者が後悔しても、隣には天才公爵様がいますので!
aozora
恋愛
『時代遅れの飾り人形』――。
そう罵られ、公衆の面前でエリート婚約者に婚約を破棄された子爵令嬢セラフィナ。家からも見放され、全てを失った彼女には、しかし誰にも知られていない秘密の顔があった。
それは、世界の常識すら書き換える、禁断の魔導技術《エーテル織演算》を操る天才技術者としての顔。
淑女の仮面を捨て、一人の職人として再起を誓った彼女の前に現れたのは、革新派を率いる『冷徹公爵』セバスチャン。彼は、誰もが気づかなかった彼女の才能にいち早く価値を見出し、その最大の理解者となる。
古いしがらみが支配する王都で、二人は小さなアトリエから、やがて王国の流行と常識を覆す壮大な革命を巻き起こしていく。
知性と技術だけを武器に、彼女を奈落に突き落とした者たちへ、最も華麗で痛快な復讐を果たすことはできるのか。
これは、絶望の淵から這い上がった天才令嬢が、運命のパートナーと共に自らの手で輝かしい未来を掴む、愛と革命の物語。
完 独身貴族を謳歌したい男爵令嬢は、女嫌い公爵さまと結婚する。
水鳥楓椛
恋愛
男爵令嬢オードリー・アイリーンはある日父が負った借金により、大好きな宝石だけでは食べていけなくなってしまった。そんな時、オードリーの前に現れたのは女嫌いと有名な公爵エドワード・アーデルハイトだった。愛する家族を借金苦から逃すため、オードリーは悪魔に嫁ぐ。結婚の先に待ち受けるのは不幸か幸せか。少なくとも、オードリーは自己中心的なエドワードが大嫌いだった………。
イラストは友人のしーなさんに描いていただきました!!
混血の私が純血主義の竜人王子の番なわけない
三国つかさ
恋愛
竜人たちが通う学園で、竜人の王子であるレクスをひと目見た瞬間から恋に落ちてしまった混血の少女エステル。好き過ぎて狂ってしまいそうだけど、分不相応なので必死に隠すことにした。一方のレクスは涼しい顔をしているが、純血なので実は番に対する感情は混血のエステルより何倍も深いのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる