婚活をがんばる枯葉令嬢は薔薇狼の執着にきづかない~なんで溺愛されてるの!?~

白井

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舞踏会5

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「誰に対してもそんなことを言っているの?」

 素朴な疑問にハウンドはまさか、と答えた。

「あなたにだけですよ。ステラ様こそ……婚約者はどなたのでもいいのですか?」

 びくりと身体が強張る。
 剣呑な光を瞳に宿したハウンドがステラの返答を待っている。
 そもそも婚約者探しを隠しきれるとも思っていなかったが、ばれているのならそれでもかまわなかった。

「誰でもいいわけじゃないわ。私は家柄も見た目も良くないんだから、色んな人に声をかけてみないと始まらないのよ」

 こんなこと説明させないでほしい。
 誰もが振り返る美貌を惜しげもなく晒しているハウンドには分からないのかもしれない。

「なるほど。そう思っていらっしゃるんですね。なぜあんな男と踊ろうとしたのか謎が解けました。もしや、私よりあのような感じがステラ様の好みなのかと不安になっていたんです」

 自分がそこらの男には負けるわけがないという大層な自信からくる発言だが、そのとおりなので腹も立たない。
 正直なところステラの中ではさっき少しだけ話した人はもう記憶の中で薄ぼんやりとしている。
 ハウンドはご機嫌でステラの耳元に口を近づける。

「いけない人ですね。私が贈ったドレスを着て他の男を誘うなんて」

「なっ」

 強制的に身体に入り込むような、甘い声。
 思わずステラはハウンドを見上げた。

 長い睫毛に縁どられた薔薇色の瞳の光彩まで見える距離。
 その双眸にまとわりつくような熱を感じる。

 そこでステラはまたずきんと頭が痛んだ。

(この熱に、覚えがある)

「……昔、あなたと会ったことがある?」

 その意味を考えず熱に浮かされるように口にしていた。

「……っ」

 ハウンドは目を見開いて、ほんの一瞬呼吸が止まったようだった。
 繋がった手、腰に回された腕に力が入って強張るのが伝わる。 

 そこで曲が終わった。

 はっと夢から覚めたような心地だった。
 ステラは慌てて膝を軽くまげたお辞儀をし、なぜだか分からないがハウンドから距離を取ろうとして……出来なかった。

 ダンスのために重ねられた手は、今やどこにも逃がさないとばかりにしっかりと掴まれている。
 そのまま隅にあるバルコニーへ連れられてしまった。
 ハウンドからグラスを渡される。

 ステラはそこではじめて慣れないドレスで踊った後で喉が渇いていたことに気付いた。
 いつの間にボーイから飲み物を受け取っていたのか、気遣いまでスマートだ。
 さっき言われたことを考えないように、ステラはなんとか話をしようとする。

「ありがとう。ちょうどほしかったの」

「私も緊張で喉が渇いていたんです」

「あなたが緊張したの? 言うだけあってダンスはかなり得意だったみたいだけれど」

「ステラ様を前にしていると、いつも緊張してしまいますよ」

 嘘ばっかり、と思うものの悪い気はしない。
 ふふっと笑ってしまってから、ステラはハウンドとの応酬に社交経験値の違いを思い知った。
 社交術に関しては、本で勉強するだけではなく実際に話した方が情報量が多い。

 そこに思い至って、ステラは周囲を見渡した。
 ホールでは扇子で口元を隠した女の子たちが頬を染めてハウンドへ熱い視線を投げている。
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